1.2 Autonomous Health Frameworkのコンポーネント

この項では、Oracle Autonomous Health Frameworkの一部である診断コンポーネントについて説明します。

1.2.1 Oracle Autonomous Health Framework構成監査ツールの概要

Oracle OrachkおよびOracle Exachkには、ソフトウェアおよびハードウェア・コンポーネントのOracleスタック用の軽量かつ非割込み型の状態チェック・フレームワークが用意されています。

Oracle OrachkおよびOracle Exachk:

  • ビジネスが影響を受ける前のリスク識別と事前の通知を自動化します
  • 重大であり、繰り返される問題に基づいてヘルス・チェックを実行します
  • 既知の問題に対するシステム状態のリスクと脆弱性に関して、概要レベルのレポートを提示します
  • 特定の問題にドリルダウンして解決を理解できるようにします
  • 定期的なヘルス・チェックのスケジュールを可能にします
  • デーモン・モードでの実行中に、電子メール通知および差分レポートを送信します
  • 結果をOracle Health Check Collections Managerおよびその他の任意のツールに統合します
  • 環境内で実行でき、Oracleに送信が必要なものはありません

既存のサポート契約に対する有効なアドオンとしてのOracle OrachkおよびOracle Exachkにアクセスできます。Oracle OrachkおよびOracle Exachkを実行するための追加の料金やライセンスは必要ありません。

Oracle Exachkは、Oracle Database Applianceを除くOracleエンジニアド・システムに使用します。その他すべてのシステムではOracle Orachkを使用します。

Oracle製品のヘルス・チェックは、コマンドライン・オプションを使用して実行します。

1.2.2 Oracle Trace File Analyzerの概要

Oracle Trace File Analyzerは、単一インスタンスの非クラスタ化データベース以外に、Oracle Clusterware、Oracle Grid InfrastructureおよびOracle Real Application Clusters (Oracle RAC)システムの診断データ収集を簡素化するための、ターゲットを絞った診断収集のユーティリティです。

Oracle Trace File Analyzerはデフォルトで有効になっており、次のように動作します:

  • 最初の障害診断の包括的な収集の提供
  • 診断データの効率的な収集、パッケージ化およびOracleサポートへの転送
  • 顧客とOracle間のやり取りの回数の削減

Oracle Trace File Analyzerによって適切な診断データの取得にかかる時間が短縮され、最終的にはコスト削減につながります。

詳細は、Oracle Autonomous Health Frameworkチェックおよび診断ユーザーズ・ガイドを参照してください。

クリティカルな問題を効率よく解決するための新しい注意喚起ログ

データベース問題の診断機能は、新しい注意喚起ログおよびデータベース・トレース・ファイルに書き込まれる情報の分類によって強化されます。新しい注意喚起ログは構造化形式(XMLまたはJSON)で書き込まれるため、処理、解釈が非常に簡単であり、管理者の対応が必要な情報のみが含まれています。トレース・ファイルの内容には、セキュリティや機密性などのトレース・メッセージの分類を大幅に簡易化する情報が含まれるようになりました。

強化された診断機能により、データベース管理が簡素化され、データ・セキュリティが向上します。

詳細は、「注意喚起ログ」を参照してください

1.2.3 AHFインサイトの概要

AHFインサイトを使用すると、システム全体を俯瞰し、さらにドリルダウンして根本原因を分析できます。

ノート:

AHF 23.8以降では、制限のある環境でAHFインサイトを使用しているお客様の場合の、CDNへのplotly.jsの依存性がなくなっています。

以前は、様々なAHFコンポーネントの結果を単一のダッシュボードで利用できなかったため、組み合せて関連付けることが困難でした。これを緩和するために、AHFインサイトは、AHFキットの一部であるすべての診断データ・コレクタおよびアナライザに対して、WebページをホストするWebサーバーを必要としないWebベースのグラフィカル・ユーザー・インタフェースを提供します。

AHFは、特定の期間のコンテキスト診断収集を実行して、データベース・システムのパフォーマンスを分析します。コレクションには、次のような様々なAHF機能からの診断データが含まれています。
  • 構成
  • 環境トポロジ
  • メトリック
  • ログ
システムから収集されたこの診断データはAHFインサイトを通過し、次の領域の分析を含むオフライン・レポートが生成されます。
  • システム構成
  • システム状態
  • オペレーティング・システムの異常
  • ベスト・プラクティスのコンプライアンス
  • システム・トレース
  • 一部の異常なケースにおける問題の根本原因と修正
開始するには、次のコマンドを実行します。
ahf analysis create --type insights

例1-1 ahf analysis create --type insights

[root@node02 ~]# tfactl print status

.-----------------------------------------------------------------------------------------------.
| Host   | Status of TFA | PID    | Port | Version    | Build ID             | Inventory Status |
+----------------+---------------+--------+------+------------+----------------------+----------+
| node02 | RUNNING       | 134679 | 5000 | 22.3.0.0.0 | 22300020221031131221 | COMPLETE         |
| node01 | RUNNING       | 128438 | 5000 | 22.3.0.0.0 | 22300020221031131221 | COMPLETE         |
'----------------+---------------+--------+------+------------+----------------------+----------'
[root@node02 ~]# ahf analysis create --type insights --last 2h
Starting analysis and collecting data for insights
Collecting data for AHF Insights (This may take a few minutes per node)
AHF Insights report is being generated for the last 2h
From Date : 11/20/2022 01:16:41 UTC - To Date : 11/20/2022 03:17:15 UTC
Report is generated at : /opt/oracle.ahf/data/repository/collection_Sun_Nov_20_03_16_36_UTC_2022_node_all/cgexa-ogmn12_insights_2022_11_20_03_18_13.zip

1.2.4 Oracle Cluster Health Advisorの概要

Oracle Cluster Health Advisorは、クラスタ・ノードおよびOracle RACデータベースでパフォーマンスや可用性の問題の兆候がないかを継続的に監視し、問題が重大になる前に早期に警告します。

Oracle Cluster Health Advisorは、Oracle Enterprise Manager Cloud Control (EMCC)インシデント・マネージャに組み込まれています。

Oracle Cluster Health Advisorは、次のことを行います:

  • ノードおよびデータベースのパフォーマンスの問題の検出
  • 早期警告アラートおよび修正処理の提供
  • 感度を高めるためのオンサイト調整のサポート

Oracle Database 12cリリース2 (12.2.0.1)では、Oracle Cluster Health AdvisorがOracle Real Application Clusters (Oracle RAC)の2つの重要なサブシステム、データベース・インスタンスおよびホスト・システムの監視をサポートしています。Oracle Cluster Health Advisorが監視対象システムの状態ステータスを特定し、トラッキングします。様々なキー測定値を監視対象システムから定期的にサンプリングします。

100以上のデータベースやクラスタ・ノードの問題がモデル化されており、このような問題の進行や存在を示す固有のオペレーティング・システム・メトリックおよびOracle Databaseメトリックが特定されています。この情報を使用して、ターゲット・システムの通常の運用期間に基づいてトレーニングされた調整モデルを構築します。

Oracle Cluster Health Advisorは、1分間に複数回の分析を実行します。Oracle Cluster Health Advisorは、デフォルト・モデルに基づいて、観測した入力の予測値を推定します。次にOracle Cluster Health Advisorは、観測された値と予測された値の差異に基づいて、各入力に関する異常検出を実行します。Oracle Cluster Health Advisorは、特定の問題に関連付けられている入力の異常が十分な量になると、警告を発行し、対象を絞った診断および修正処理がただちに生成されます。

Oracle Cluster Health Advisorのモデルは、誤った警告の通知を防ぐため、保守的なものとなっています。ただし、デフォルトの構成は、クリティカルな本番システムにとって十分な機密性がない可能性があります。そのため、Oracle Cluster Health Advisorは、実際の本番ワークロード・データをデフォルト設定のベースとして使用し、ノード・モデルとデータベース・モデルの精度と感度を高めるオンサイト・モデル調整機能を備えています。

また、Oracle Cluster Health Advisorは、Oracle Clusterwareイベント通知プロトコルを使用して、警告メッセージをEnterprise Manager Cloud Controlに送信します。

Oracle Cluster Health Advisorを使用して、過去の問題を診断およびトリアージすることもできます。過去の日付を指定するには、Oracle Enterprise Manager Cloud Control (EMCC)インシデント・マネージャまたはコマンドライン・インタフェースのCHACTLを使用します。

1.2.5 AHFスコープの概要

AHFスコープは、Oracle Cluster Health Advisor (CHA)のスタンドアロンの対話型リアルタイム対応フロントエンドです。AHFスコープが監視対象システム上で必要とするフットプリントは非常に小さいものになります。

AHFスコープは、/opt/oracle.ahf/ahfscope/bin/ディレクトリで使用可能なahfscopeスクリプトを使用して起動されます。AHFスコープは、主にクラスタまたはデータベースのエキスパート向けに設計されています。大量のデータを効率的に処理できます。そのレイアウトと操作モードは、機能効率を考慮して設計されています。ほとんどの操作は、位置ポインタとホット・キーまたはカーソル位置で使用できるフローティング・メニューを使用して実行できます。

AHFスコープは、JDBC接続を使用してグリッド・インフラストラクチャ管理リポジトリ(GIMR)に直接接続し、現在のデータをリアルタイムで読み取ります。AHFスコープは、GIMRから抽出されたデータ・アーカイブを使用してGIMRに接続せずにローカルで動作することもできます。

1.2.6 AHFバランスの概要

AHFバランスは、クラスタで実行されている一連のデータベースの過去のCPU消費データおよびデータベース・リソース・マネージャ(DBRM)設定を分析するコマンドライン・ユーティリティです。

これは、CPUベースのノイジー・ネイバーの問題の履歴の理解を支援し、ノイジー・ネイバーの問題のリスクを最小限に抑えるために適切なDBRM設定を推奨します。

1.2.7 クラスタ状態モニターの概要

クラスタ状態モニターはOracle Grid Infrastructureのコンポーネントであり、Oracle Clusterwareおよびオペレーティング・システム・リソースのメトリックを継続的に監視し、格納します。

クラスタ状態モニターはデフォルトで有効になっており、次のように動作します:

  • ノード除去分析の支援
  • すべてのプロセス・データのローカルでの記録
  • 固定プロセスの定義の有効化
  • CSSおよびGIPCイベントのリスニング
  • プロセスのタイプによる分類
  • traceroutenetstatpingなどのプラグイン・コレクタのサポート
  • 分析を容易にするCSV出力の提供

クラスタ状態モニターは、Oracle Cluster Health Advisorなど、他のOracle Autonomous Health Frameworkコンポーネント用のデータ・フィードとして機能します。

1.2.8 ブロッカ・リゾルバの概要

ブロッカ・リゾルバは、自律的に遅延を解決し、リソースの可用性を維持するOracle Real Application Clusters (Oracle RAC)環境の機能です。

ブロッカ・リゾルバはデフォルトで有効になっており、次のように動作します:

  • データベースの遅延およびデッドロックの確実な検出
  • データベースの遅延およびデッドロックの自律的な解決
  • すべての検出および解決の記録
  • 感度(高/低)およびトレース・ファイルのサイズを構成するためのSQLインタフェースの提供

データベースは、あるセッションによって1つ以上のセッションのチェーンがブロックされた場合に遅延します。ブロックしているセッションは、ロックやラッチなどのリソースを保持し、ブロックされているセッションの進捗を妨げます。セッションのチェーンには、チェーン内のその他すべてのセッションをブロックするルートまたは最終ブロッカ・セッションがあります。ブロッカ・リゾルバは、遅延を検出して解決することによって、これらの問題を自律的に解決します。