データ・バイアス検出 - 例
データにおけるバイアスは、そのデータの一部の要素について表現が多すぎるか重みが大きすぎるときに発生する可能性があります。データ・バイアス・ディテクタでは、何をバイアスとみなすかについてしきい値を事前に定義することのない、データ・バイアスの定量的な測定が提供されます。データ・バイアス評価は、そのデータの顕著な特徴と、対処する特有の問題によって異なります。達成する必要がある目標に基づいて、独自の許容可能バイアス・レベルを設定する必要があります。
データ・バイアス検出のワークフロー
- アクセス・トークンの取得
- データ・バイアス検出ジョブを作成し実行します。
- データ・バイアス・ジョブの詳細を表示します。
- 出力表を問い合せて、センシティブ特徴について検出されたデータ・バイアス詳細を表示します。
1: アクセス・トークンの取得
OML Servicesにリクエストを送信するには、Oracle Machine Learning (OML)アカウントの資格証明を使用して認証トークンを取得する必要があります。トークンを認証および取得するには、-d
オプションを指定したcURL
を使用して、Oracle Machine Learningユーザー管理クラウド・サービスRESTエンドポイント/oauth2/v1/token
にOracle Machine Learningアカウントの資格証明を渡します。次のコマンドを実行して、アクセス・トークンを取得します:
$ curl -X POST --header 'Content-Type: application/json' --header 'Accept: application/json' -d '{"grant_type":"password", "username":"'<yourusername>'",
"password":"' <yourpassword>'"}'"<oml-cloud-service-location-url>/omlusers/api/oauth2/v1/token"
-X POST
で、HTTPサーバーとの通信時にPOSTリクエストを使用することを指定します-header
で、リクエストに必要なヘッダー(application/json)を定義します-d
で、ユーザー名およびパスワードの認証資格証明をPOSTリクエストのデータとしてHTTPサーバーに送信しますContent-Type
で、レスポンス形式(JSON)を定義しますAccept
では、レスポンス形式(JSON)を定義しますyourusername
は、デフォルトのOML_DEVELOPERロールを持つOracle Machine Learningユーザーのユーザー名ですyourpassword
は、ユーザー名のパスワードですoml-cloud-service-location-url
は、テナンシIDおよびデータベース名を含むOracle Machine Learningユーザー管理クラウド・サービスのインスタンスURLのRESTサーバー部分を含むURLです。URLは、Oracle Autonomous Databaseインスタンスのサービス・コンソールの「開発」タブから取得できます。
2: データ・バイアス検出ジョブの作成
この例で使用されているデータセットであるAdultデータセット(Census Incomeデータセットとも呼ばれる)は、多変量データセットです。これには、30,940人の成人の国勢調査データが含まれています。このデータセットに関連付けられている予測タスクは、個人の年収が50K
を超えているかどうかを判断することです。
表 - Adultデータセットの属性
属性 | タイプ | 説明 |
---|---|---|
Income | Binary | >50K または<=50K ノート: この属性は、分類モデルのoutcome として使用されます。
|
Age | Continuous | 17から90才まで |
Gender | Binary | 男性、女性 |
Marital Status | Categorical |
|
/omlmod/v1/jobs
エンドポイントに送信します。
ノート:
OML Servicesは、DBMS_SCHEDULER
と対話してジョブに関するアクションを実行します。
次に、データ・バイアス検出ジョブのリクエストの例を示します:
curl -v -X POST <oml-cloud-service-location-url>/-H "Content-Type:
application/json" -H "accept: application/json" -d
'{"jobProperties":{
"jobName":"jobNametest",
"jobType":"DATA_BIAS",
"jobServiceLevel":"MEDIUM",
"inputSchemaName":"OMLUSER",
"outputSchemaName":"OMLUSER",
"outputData":"adultbias_tab",
"jobDescription":"Data_Bias job,specify all parameters",
"inputData":"ADULT",
"sensitiveFeatures":["\"GENDER\""],
"strata":["\"MARITAL_STATUS\""],
"outcomeColumn":"INCOME",
"positiveOutcome":">50K",
"categoricalBinNum":6
"numericalBinNum":10}}'
-H 'Authorization:Bearer <token>'
データ・バイアス検出ジョブ作成リクエストのレスポンス:
"jobId":"OML$53D60B34_A275_4B2B_831C_2C8AE40BCB53","links":[{"rel":"self","href":"http://<oml-cloud-service-location-url>/omlmod/v1/jobs/OML%2453D60B34_A275_4B2B_831C_2C8AE40BCB53"}]}
このコマンドで使用されているパラメータを次に示します:
jobName:
OMLジョブの名前。この例では、名前はjobNametest
です。jobType:
実行するジョブのタイプを指定します。これは、データ・バイアス・ジョブの場合はDATA_BIAS
に設定されます。jobServiceLevel:
MEDIUMinputSchemaName:
OMLUSERoutputSchemaName:
OMLUSERoutputData:
これは、出力データ表の名前です。この例では、出力データ表の名前はadultbias_tab
ですjobDescription:
これは、Data_Bias
ジョブの説明です。inputData:
これは、入力データ表の名前です。この例では、表名はADULT
です。sensitiveFeatures:
これは、データ・バイアスの検出と軽減が実行される特徴のリストです。デフォルトでは、250個の特徴をデータ・バイアス検出のためにモニターできます。250個を超える特徴がある場合は、エラーになります。指定できる特徴は、数値型またはカテゴリ型のどちらかです。この例では、センシティブ特徴用に渡されている属性はGENDER
です。ノート:
このリリースでは、テキスト、ネストおよび日付データ型はサポートされていません。strata:
これは、strataという3番目の変数を条件付けることで、交絡変数からのデータ・バイアスの影響を軽減するための条件付き人口統計差異(CDD)を計算する、ストラタ名の配列です。この例では、strataに指定されている名前はMARITAL_STATUS
です。outcomeColumn:
これは、機械学習モデルのトレーニングの結果である、入力データ内の特徴の名前です。この結果は、数値型またはカテゴリ型のどちらかである必要があります。この例では、それはINCOME
です。positiveOutcome:
これは、データセット内の特定のグループを有利にする値です。これにより、基本的に、そのグループについては陽性結果が示されます。この例では、陽性結果の値は>50K
です。categoricalBinNum:
カテゴリ型の特徴に対してビニングを実行するかどうかを示します。ビンの数は6
に設定されています。numericalBinNum:
数値型の特徴に対してビニングを実行するかどうかを示します。ビンの数は、デフォルト値10
に設定されています。
3: 発行済ジョブの詳細の表示
次のコマンドを実行すると、ジョブの詳細が表示されます:
curl -v -X GET <oml-cloud-service-location-url>/omlmod/v1/jobs/'OML$53D60B34_A275_4B2B_831C_2C8AE40BCB53'
-H "Content-Type: application/json" -H 'Authorization:Bearer <token>'
$token
は、認可APIを介して取得されたトークンに割り当てられる環境変数を表します。OML$53D60B34_A275_4B2B_831C_2C8AE40BCB53
はジョブIDです
ジョブ詳細リクエストのレスポンス
次に、ジョブ詳細リクエストのレスポンスを示します。ジョブがすでに以前に1回実行されている場合は、最後のジョブ実行に関する情報が返されます。
{"jobId":"OML$53D60B34_A275_4B2B_831C_2C8AE40BCB53","jobRequest":{"jobSchedule":null,"jobProperties":{"jobType":"DATA_BIAS","inputSchemaName":"OMLUSER","outputSchemaName":"OMLUSER","outputData":"adultbias_tab","jobDescription":"Data_Bias job test case400,specify all parameters","jobName":"jobNametest","disableJob":false,"jobServiceLevel":"MEDIUM","inputData":"ADULT","sensitiveFeatures":["\"GENDER\""],"strata":["\"MARITAL_STATUS\""],"outcomeColumn":"INCOME","outcomeThreshold":null,"positiveOutcome":">50K","replaceResultTable":null,"pairwiseMode":null,"categoricalBinNum":6,"numericalBinNum":10}},"jobStatus":"CREATED","dateSubmitted":"2024-08-06T08:20:05.688706Z","links":[{"rel":"self","href":"http:<oml-cloud-service-location-url>/omlmod/v1/jobs/OML%2453D60B34_A275_4B2B_831C_2C8AE40BCB53"}],"jobFlags":[],"state":"SUCCEEDED","enabled":false,"lastStartDate":"2024-08-06T08:20:05.837534Z","runCount":1,"lastRunDetail":{"jobRunStatus":"SUCCEEDED","errorMessage":nul* Connection #0 to host <oml-cloud-service-location-url> left intact l,"requestedStartDate":"2024-08-06T08:20:05.752235Z","actualStartDate":"2024-08-06T08:20:05.837615Z","duration":"0 0:0:1.0"}}
ノート:
ジョブ・レスポンスでのjobId
とoutputData
名を書き留めます。これらは、出力表を問い合せて、ジョブ・リクエストで定義されていたセンシティブ特徴について検出されたデータ・バイアスの詳細を表示するために必要です。
4. データベースへの接続による出力表へのアクセス
inputSchemaName:
OMLUSERoutputSchemaName:
OMLUSERoutputData:
これは出力データ表です。この例では、名前はadultbias_tab
です。
- 次のSQL問合せを実行して出力表内のレコードの数をカウントします:
select * from OML$53D60B34_A275_4B2B_831C_2C8AE40BCB53_ADULTBIAS_TAB;
この例では、OML$53D60B34_A275_4B2B_831C_2C8AE40BCB53
はジョブIDです。ADULTBIAS_TAB
は出力表名です。
次に、パラメータ
sensitiveFeature
に渡されたGENDER
についてと、パラメータstrata
に渡されたMARITAL_STATUS
についてデータ・バイアス結果を示します:{ "metric": [ { "group_a": "MALE", "CI": 0.33841, "SP": 0.19628 }, { "group_a": "FEMALE", "CI": -0.33841, "SP": -0.19628 } ], "cdd": [ { "strata": "MARITAL_STATUS", "result": [ { "group_a": "MALE", "CDD": 0.092269, "detail": [ { "subgroup": "MARRIED-CIV-SPOUSE", "DD": -0.0036665 }, { "subgroup": "NEVER-MARRIED", "DD": 0.11335 }, { "subgroup": "DIVORCED", "DD": 0.23977 }, { "subgroup": "SEPARATED", "DD": 0.38267 }, { "subgroup": "WIDOWED", "DD": 0.31675 }, { "subgroup": "MARRIED-SPOUSE-ABSENT", "DD": 0.18168 }, { "subgroup": "", "DD": 0.015385 } ] }, { "group_a": "FEMALE", "CDD": -0.092269, "detail": [ { "subgroup": "MARRIED-CIV-SPOUSE", "DD": 0.0036665 }, { "subgroup": "NEVER-MARRIED", "DD": -0.11335 }, { "subgroup": "DIVORCED", "DD": -0.23977 }, { "subgroup": "SEPARATED", "DD": -0.38267 }, { "subgroup": "WIDOWED", "DD": -0.31675 }, { "subgroup": "MARRIED-SPOUSE-ABSENT", "DD": -0.18168 }, { "subgroup": "", "DD": -0.015385 } ] } ] } ], "reweighing_matrix": [ { "group_a": "MALE", "group_a_pos_weight": 0.78764, "non_group_a_pos_weight": 2.2, "group_a_neg_weight": 1.0935, "non_group_a_neg_weight": 0.85251 }, { "group_a": "FEMALE", "group_a_pos_weight": 2.2, "non_group_a_pos_weight": 0.78764, "group_a_neg_weight": 0.85251, "non_group_a_neg_weight": 1.0935 } ] }
GENDER
およびMARITAL_STATUS
に対して計算されたメトリックを見てみましょう:
- 属性
GENDER
についてとグループMALE
ついて計算されたクラス不均衡(CI)および統計的均一性(SP)は正です。一方、グループFEMALE
のCI値とSP値は負です。これは、不利なグループ(female)のデータ・ポイントが、有利なグループより少ないことを示しています。機械学習トレーニング・プロセスの間に、モデルは、全体的なエラー率を最小限に抑えようとします。その結果、モデルは、多数派クラスの予測を得意とし、少数派または不利なクラスに関しては不得意になる傾向があります。 - グループ
MALE
とFEMALE
の条件付き人口統計差異は、それぞれ0.092269
と-0.092269
です。strataMARITAL_STATUS
についての計算されたCDDの合計がゼロであることに注目してください。これは、MARITAL_STATUS
を考慮に入れた後であっても、このデータはまだMALE
グループに偏っており(CDDが正であるため)、FEMALE
グループに不利(CDDが負であるため)になっています。 GENDER
については、リウェイト・マトリックスが計算されます。リウェイトは、データ・バイアスを軽減するための方法です。リウェイトにより、不利なグループ内の正ラベルが付いたインスタンスに、より大きな重みを割り当てることで、データ・バイアスを減らします。基本的に、分類子では、重みがより大きいインスタンスに、より注意が払われ、それらの正しい分類が優先されます。目標は、分類子によって有利なグループが優先されず不利なグループへの既存の偏りが許可されないようにすることです。リウェイト・マトリックスをどのように適用できるかを次に示します:一部の機械学習パッケージでは、特定のモデルのトレーニング・パラメータとして行重みやサンプル重みが受け入れられます。たとえば、OracleのDBMS_DATA_MININGパッケージでは、一般化線形モデル(GLM)をトレーニングする間に「グローバル設定」で
ODMS_ROW_WEIGHT_COLUMN_NAME
を設定できます。トレーニング・プロセスに行重みを組み込めない分類アルゴリズムの場合、重み付けマトリックスは、データのリサンプリングのためのガイダンスの役割を果たします。
Adultのデータセットには偏りがあり、結果は、偏ったグループに依存しています。このため、グループMALE
の所得率は、他の不利なグループFEMALE
よりも高い正の値になります。このバイアスを軽減するために、トレーニングの間に、有利なグループにはより低い重みが割り当てられ、逆もまた同様のことが行われます。理想的なシナリオでは、データセットが偏っていないときは、偏ったグループMALES、WHITE
などと、結果>50K、<=50K
は独立しています。つまり、個人に、偏ったグループ(ここでは、それはGENDER)であっても結果が割り当てられます。