speculate

これ以降の節の部分については、指定したIDで識別される投機バッファをDTraceが使用するように切り替える特殊な関数。

void speculate(int)

speculate関数は、DTraceが節の残りの部分に対して、指定されたidで指定された投機バッファを使用するようにする特殊な関数です。

投機を使用するには、speculationから返された識別子を、データ記録関数の前に節でspeculate関数に渡す必要があります。speculateを含む節の後続のデータ記録関数は、すべて投機的にトレースされます。1つのDプローブ節でデータ記録関数の後にspeculateがコールされた場合は、Dコンパイラでコンパイル時エラーが生成されます。したがって、節には投機トレース・リクエストのみ、またはそれ非投機トレース・リクエストのみを含めることができ、両方を含めることはできません。

集積関数、破壊的関数およびexit関数は、投機的になりません。speculateを含む節でこれらの関数のいずれかを実行しようとすると、コンパイル時エラーが発生します。また、speculatespeculateの後には続きません。1つの節に許可される投機は1つのみです。speculateしか含まない節は、有効なプローブIDのみをトレースするように定義されているデフォルトの関数を投機的にトレースします。

例7-44 投機の使用方法

次の例は、投機の使用方法を示しています。投機の正しい動作には、すべての投機関数が一緒に使用されている必要があります。

投機はsyscall::open:entryプローブに対して作成して、投機のIDはスレッド・ローカル変数にアタッチします。open()システム・コールの最初の引数は、printf関数を使用して投機バッファにトレースされます。

syscall::open:returnプローブには、さらに3つの節が含まれています。それらの節の最初で、投機バッファにerrnoをトレースします。2番目の節の述語では、ゼロ以外のerrno値をフィルタ処理して、投機バッファをコミットします。3番目の節の述語では、ゼロのerrno値をフィルタ処理して、投機バッファを破棄します。

プログラムの出力は主データ・バッファに返されるため、open()システム・コールが失敗すると、プログラムは実質的にファイル名とエラー番号を返します。このコールが失敗しない場合は、投機バッファにトレースされた情報が破棄されます。

syscall::open:entry
{
  /*
   * The call to speculation() creates a new speculation. If this fails,
   * dtrace will generate an error message indicating the reason for
   * the failed speculation(), but subsequent speculative tracing will be
   * silently discarded.
   */
  self->spec = speculation();
  speculate(self->spec);

  /*
   * Because this printf() follows the speculate(), it is being
   * speculatively traced; it will only appear in the primary data buffer if the
   * speculation is subsequently committed.
   */
  printf("%s", copyinstr(arg0));
}

syscall::open:return
/self->spec/
{
  /*
   * Trace the errno value into the speculation buffer.
   */
  speculate(self->spec);
  trace(errno);
}

syscall::open:return
/self->spec && errno != 0/
{
  /*
   * If errno is non-zero, commit the speculation.
   */
  commit(self->spec);
  self->spec = 0;
}

syscall::open:return
/self->spec && errno == 0/
{
  /*
   * If errno is not set, discard the speculation.
   */
  discard(self->spec);
  self->spec = 0;
}