1 管理タスクと管理ツール

このトピックには、次の項があります。

1.1 管理者が実行するタスク

管理者の作業は、次の2つのタスクに大きく分類できます。
セットアップ・タスク
アプリケーションの起動前にシステムを準備するために必要なすべてのタスク。
実行時の管理
起動されたアプリケーションで実行する任意のタスク。

1.1.1 セットアップ・タスク

管理者は、セットアップ時に、Oracle Tuxedoシステムの計画、設計、インストール、セキュリティの設定、および構成を行う責任があります。次の表は、セットアップ時の必須のタスクとオプションのタスクを示します。

表1-1 セットアップ・フェーズの必須タスクとオプションのタスク

セットアップ・タスク 必須 オプション
アプリケーションの設計者、プログラマ、およびビジネス・ユーザーから情報を収集する X -
ハードウェアとソフトウェアの設定、およびOracle Tuxedoシステムとアプリケーションのインストールを行う(インストール) X -
アプリケーションがコンポーネントをどのように使用するかを決定するOracle Tuxedoシステムのパラメータを設定する(構成) X -
ドメイン、マシン、グループ、インタフェース、サービス、およびその他の必須コンポーネントに対応したトランザクションを設定する(構成) X -
アプリケーションとデータを保護するためのセキュリティ方式を選択および実装する X -
CORBA環境でインターネットORB間プロトコル(IIOP)のリスナー/ハンドラを構成し、マシンの構成を変更する X -
ルーティング・ツールを使用して分散アプリケーションを設定する: CORBA環境ではファクトリ・ベース・ルーティングを、ATMI環境ではデータ依存型ルーティングを使用 - X
ネットワーク・アプリケーションを設定する - X
ローカル・ドメインおよびリモート・ドメインを構成する - X
ワークステーション・クライアントを設定する: 環境表とワークステーション・リスナーを追加し、マシンの構成を変更する - X
アプリケーションのキュー・スペースを作成し、キューに登録されたメッセージがサポートされるように構成を変更する - X
サービス・バージョンをOracle Tuxedoアプリケーションに適用する - X
Tuxedoのインストール後、デプロイメント/アンデプロイメント・ツールを使用して集中制御プラットフォームからアプリケーションをデプロイ/アンデプロイする - X

1.1.2 実行時のタスク

Oracle Tuxedoシステムをインストールし、TUXCONFIGファイルをロードすると、アプリケーションの起動準備は完了です。アプリケーションを起動したら、アプリケーションのアクティビティをモニタリングし、問題が発生していないかどうか、または問題の原因となり得る現象がないかどうかを確認する必要があります。次の表は、実行時の必須のタスクとオプションのタスクを示します。

表1-2 実行時フェーズの必須タスクとオプションのタスク

実行時のタスク 必須 オプション
アプリケーションを起動および停止する X -
バッファを管理する X -
アプリケーションのセキュリティを管理する X -
アプリケーションのアクティビティ、問題、およびパフォーマンスをモニターする X -
ATMI環境では、トランザクションを管理する - X
CORBA環境では、インタフェースを管理する - X
ネットワーク・アプリケーションを管理する - X
リモート・ワークステーション・クライアントを管理する - X
イベントをサブスクライブする - X
キュー待機メッセージングを使用する - X
問題が発生した場合に、問題の内容を明らかにし、解決する(トラブルシューティング) - X
MASTERマシンで問題が発生した場合に、アプリケーションの基本的な役割をMASTERマシンから代替(BACKUP)マシンに再び割り当てる(移行) - X
ニーズの変化に応じて、システム・パラメータやサービスの種類を変更する(動的な変更) - X
新しいマシンやサーバーなどの追加コンポーネントの導入に合わせてアプリケーションを調整する(動的な再構成) - X

実行時には、問題の原因となり得る現象や、アプリケーション要件の変化にすばやく対応する必要があります。これらの機能を簡単に実行するために、3つのツールを選択できます:

  • Oracle Tuxedo管理コンソール
  • コマンド行インタフェース
  • AdminAPI

次の表は、介入が必要な状況をいくつか示します。

表1‑3 介入が必要な状況

目的 次を実行します...
パフォーマンスを最大化する インタフェースおよびサービスに対してロード・バランシングを行うか、優先度を設定します。
MASTERマシン上で発生するおそれのある問題を修復する 指定したBACKUPマシンに置換します。
処理およびリソースの使用率に関する要件を変更する マシン、サーバー、クライアント、インタフェース、サービスなどを追加します。

1.1.3 Oracle Tuxedo ATMI環境およびCORBA環境の違い

Oracle Tuxedo CORBA環境では、Oracle Tuxedoの管理機能により、オブジェクト・リクエスト・ブローカ(ORB)とTPフレームワークのコンテキスト内で実行するアプリケーションの管理がサポートされます。

Oracle Tuxedo CORBA環境のUBBCONFIG構成ファイルには、クライアント・アプリケーションとサーバー・アプリケーションの構成をサポートする以下のセクションがあります。

  • RESOURCESセクション。アプリケーション全体にわたるデフォルト値を設定し、掲示板の表サイズを指定します。
  • MACHINESセクション。プロセッサ固有の値を指定し、表のサイズ指定に適用できます。
  • INTERFACESセクション。アプリケーションで使用されるCORBAインタフェースに関する情報を指定できます。
  • ROUTINGセクション。Tuxedo CORBA環境で使用される各種ルーティング基準をサポートします。Oracle Tuxedo ATMIデータ依存型ルーティングのパラメータを指定する既存のROUTINGセクションをそのまま使用することもできます。
  • Oracle Tuxedo ATMI環境では、クライアント・アプリケーションからサーバー・アプリケーションへの接続用にワークステーション・ハンドラとリスナーを構成します。管理者側から見ると、このタスクはOracle TuxedoのCORBA環境でのタスクと似ています。

    ただし、Oracle TuxedoのCORBA環境では、異なる通信プロトコルを使用して、リモートおよび外部クライアントからOracle Tuxedoサーバー・アプリケーションに接続します。このプロトコルが、標準インターネットORB間プロトコル(IIOP)です。Oracle Tuxedoのワークステーション・ハンドラ(WSH)プロセスとワークステーション・リスナー(WSL)プロセスのかわりに、CORBA環境では、そのゲートウェイ・プロセスであるIIOPハンドラ(ISH)とIIOPリスナー(ISL)を呼び出します。この場合、構文がわずかに異なり、各アプリケーションのUBBCONFIG構成ファイルにあるSERVERSセクションで、WSLのかわりにISLを使用します。

全体的に、Oracle Tuxedo CORBAおよびATMI環境の管理タスクは似ています。次に、環境間にあるいくつかの根本的な違いを示します:

  • どちらの環境でも、ルーティング基準を使用して特定のサーバー・グループに処理を分散します。Oracle TuxedoのCORBA環境のルーティング・メカニズムは、ファクトリ・ベース・ルーティングと呼ばれます。このメカニズムは、Oracle Tuxedo ATMIのデータ依存型ルーティング・メカニズムとは基本的に異なります。

    Oracle Tuxedo ATMI環境では、サービス呼出しに使用されるFMLフィールドをチェックして、データ依存型のルーティング基準を確認することができます。これに対しOracle TuxedoのCORBA環境の場合、システム設計者は、CORBAインタフェースのルーティング基準に個別にアクセスする必要があります。Oracle TuxedoのCORBA環境には、ルーティングに使用するサービス・リクエスト・メッセージ・データや関連バッファ情報が用意されていません。これは、CORBA環境のルーティングが、ターゲットのCORBAオブジェクトのメソッド呼出しではなく、ファクトリで実行されるためです。

  • 実行時にCORBAインタフェースを動的に通知することはできません。ただし、CORBAインタフェースを一時停止して、再びアクティブにすることは可能です。
  • CORBAインタフェースをACLで直接制御することはできません。管理者レベルでサーバントを制御することはできません。UBBCONFIG構成ファイルのMANDATORY_ACLパラメータからSECURITYパラメータまでは無視されます。
  • LDAPの単一のセキュリティ管理機能はCORBAインタフェースではサポートされていません。

ノート:

管理情報ベース(MIB)で一連のクラスを定義し、そのクラスによってアプリケーションの基本的な側面を構成および管理することができます。MIBクラスによって、Oracle Tuxedo CORBAおよびATMI環境への管理用プログラミング・インタフェースが提供されます。

1.2 アプリケーションの設計計画の作成

管理者は、顧客のビジネス上の要件を把握し、ソフトウェアがどのように使用されるかを知っておく必要があります。これらのニーズを理解しておけば、管理者は、システム設計者やアプリケーション開発者と協力して、要件を満たすアプリケーションの構成を実現できます。

アプリケーションの設計を計画する前に、以下の事項を確認してください。

  1. 使用するマシンの台数____________________
  2. クライアント・アプリケーションは、サーバー・アプリケーション側から見てリモートのマシンに存在するかどうか_____________________
  3. ATMI環境のアプリケーションで提供するサービス____________________________________________________________________________________________________________________________
  4. CORBA環境のクライアントまたはサーバー・アプリケーションで使用するインタフェース__________________________________________________________________________________________________________________________
  5. アプリケーションで使用されるリソース・マネージャ(データベース)の種類と場所__________________________________________________________________________________________________________________________
  6. リソース・マネージャに必要な"オープンな"文字列 ____________________________________________________________________________________________________________________________
  7. RDBMSに必要なセットアップ情報__________________________________________________________________________________________________________________________________________________________________________________________
  8. トランザクションの分散を行うかどうか________________
  9. アプリケーションでグローバル・トランザクションを使用するかどうか________________
  10. 使用するバッファ・タイプの種類____________________________________________________________
  11. データを複数のマシンに分散するかどうか_________________________________________________________
  12. アプリケーションがサービスをエクスポートする対象となる外部ドメインの種類アプリケーションがサービスをインポートする元となる外部ドメインの種類 ____________________________________________________________________________________________________________________________________________________________________________________________
  13. アプリケーションでファクトリ・ベース・ルーティングまたはデータ依存型ルーティングを使用するかどうか_________________________________________________________
  14. CORBAインタフェースまたはATMIサービスの名前_________________________________________________________________________________________________________________________
  15. 使用可能なインタフェースまたはサービスの優先度_________________________________________________________________________________________________________________________
  16. 信頼性の要件。冗長なリスナー・ポートおよびハンドラ・ポートは必要かどうか。サーバー・アプリケーションのレプリケートは必要かどうか____________________________________________________________________________________________________________________________
  17. CORBA環境のドメインでインタフェース・リポジトリ(IR)データベースが必要かどうか。要な場合、ドメインにIRの複製を作成した方がよいかどうか。また、いくつのIRサーバー・アプリケーションを定義する必要があるか____________________________________________________________________________________________________________________________
  18. 会話型サービスがあるかどうか。ある場合、どのリソース・マネージャにアクセスするか。また、どのバッファ・タイプを使用するか____________________________________________________________________________________________________________________

1.3 アプリケーションの管理用ツール

Oracle Tuxedoシステムには、Oracle Tuxedo ATMIまたはCORBA環境のいずれかで同じ種類の管理タスクを実行する方法がいくつか用意されています。グラフィカル・ユーザー・インタフェースに慣れている場合も、シェル・プロンプトでのコマンド入力に慣れている場合も、Oracle Tuxedoアプリケーションの管理作業がしやすい方法が用意されています。次の図は、構成ファイルへの書込みや、実行時のOracle Tuxedoアプリケーション管理に使用できるツールを示しています。

図1-1 管理ツール


管理ツールの図

  • Oracle Tuxedo MIBアプリケーション・プログラミング・インタフェース - MIB内の情報にアクセスしたり、これらの情報を変更するためのプロシージャ用のインタフェースです。
  • コマンド行ユーティリティ - アプリケーションの管理(tmadmin(1))、アクティブ化(tmboot(1))、構成(tmconfig、wtmconfig(1))および非アクティブ化(tmshutdown(1))を実行するためのコマンド群です。詳細については、『Oracle Tuxedoコマンド・リファレンス』を参照してください
ツールの種類 使用方法
Oracle Tuxedo MIBアプリケーション・プログラミング・インタフェース 管理者用にTUXCONFIGファイルを変更するプログラムを作成します。
コマンド行インタフェース
  1. テキスト・エディタで、UBBCONFIGファイル(テキスト形式のTUXCONFIG)を作成および編集します。
  2. tmloadcfを実行して、UBBCONFIGファイルをバイナリ形式のTUXCONFIGファイルに変換します。

関連項目: