9 データ・ディクショナリと動的パフォーマンス・ビュー

各Oracle Databaseの読取り専用の参照表とビューの中核的なセットは、データ・ディクショナリと呼ばれます。動的パフォーマンス・ビューは、データベースがオープンされ、使用されている間に継続的に更新される特別なビューです。

データ・ディクショナリの概要

データ・ディクショナリはOracle Databaseの重要な部分であり、データベースに関する管理メタデータを提供する読取り専用の表の集合です。

データ・ディクショナリの目的

データ・ディクショナリには、データベースの内容を記述するメタデータが含まれています。

たとえば、データ・ディクショナリには次のような情報が含まれています。

  • 列のデフォルト値、整合性制約情報など、データベース内の各スキーマ・オブジェクトの定義

  • スキーマ・オブジェクトに割り当てられている領域、およびスキーマ・オブジェクトによって現在使用されている領域の容量

  • Oracle Databaseユーザーの名前、ユーザーに付与された権限とロール、およびユーザーに関連する監査情報

データ管理

データ・ディクショナリは、すべてのOracle Databaseでデータ管理の中心的な部分となります。

たとえば、データベースでは次のアクションを実行します。

  • ユーザー、スキーマ・オブジェクトおよび記憶域構造に関する情報を検索するために、データ・ディクショナリにアクセスします。

  • DDL文が発行されるたびに、データ・ディクショナリを変更します

Oracle Databaseでは、データ・ディクショナリのデータは、他のデータと同様に表に格納されるため、ユーザーはSQLを使用してデータの問合せを実行できます。たとえば、ユーザーは自分の権限、自分のスキーマに存在する表、自分の表に存在する列、これらの列に対して索引が構築されているかどうかなどを判断するために、SELECT文を実行できます。

関連項目:

CDBでのデータ・ディクショナリの分離

CDBでは、データ・ディクショナリ・メタデータは、CDBルートとPDBの間で分割されています。ユーザーおよびアプリケーションから見て、CDBの各コンテナのデータ・ディクショナリは分かれています。

ユーザー・データがまだ含まれていない新規に作成されたCDBでは、CDBルートのデータ・ディクショナリにはシステム・メタデータのみが含まれています。たとえば、TAB$表には、Oracle提供の表(TRIGGER$およびSERVICE$など)のみを説明する行が含まれます。次の図は、3つの基礎的なデータ・ディクショナリ表で、赤い棒はシステムを説明する行を示しています。

図9-1 CDBルートのデータ・ディクショナリのメタデータ

図9-1の説明が続きます
「図9-1 CDBルートのデータ・ディクショナリのメタデータ」の説明

PDBを作成し、このPDBにemployees表とdepartments表を含むhrスキーマを作成するとします。PDBのデータ・ディクショナリには、Oracle提供のエンティティについて記述された行、およびユーザーが作成したエンティティについて記述されたその他の行が含まれています。たとえば、PDBのディクショナリのTAB$表には、employees表のメタデータの行とdepartments表の行があります。

図9-2 CDBのデータ・ディクショナリ・アーキテクチャ

図9-2の説明が続きます
「図9-2 CDBのデータ・ディクショナリ・アーキテクチャ」の説明

前図は、PDBのデータ・ディクショナリには、CDBルートにあるデータ・ディクショナリに対するポインタが含まれていることを示しています。内部では、データ・ディクショナリ表の定義やPL/SQLパッケージなど、Oracleが提供するオブジェクトは、CDBルートで1回のみ表されます。このアーキテクチャは、CDBで2つの主な目的を達成します。

  • 重複の減少

    たとえば、すべてのPDBにDBMS_ADVISOR PL/SQLパッケージのソース・コードを格納するかわりに、CDBではコードがCDB$ROOTに1回のみ格納され、ディスク領域が節約されます。

  • データベースのアップグレードの容易さ

    データ・ディクショナリ表の定義がすべてのPDBに存在し、その定義が新リリースで変わる場合、その変更を反映するには、各PDBを別々にアップグレードする必要があります。表定義をCDBルートに1回格納すれば、この問題はなくなります。

データ・ディクショナリのコンポーネント

データ・ディクショナリは、実表およびビューで構成されています。

これらのオブジェクトは次のように定義されます。

  • 実表

    データベースに関する情報を格納します。これらの表に読取り/書込みできるのはOracle Databaseのみです。これらの表は正規化され、データのほとんどは、暗号形式で格納されているため、ユーザーが直接アクセスすることはほとんどありません。

  • ビュー

    実表にあるデータを、ユーザー名や表の名前などの実用的な情報にデコードし、結合とWHERE句を使用して情報を簡略化します。ビューには、データ・ディクショナリ内のすべてのオブジェクトの名前と説明が含まれています。すべてのユーザーがアクセスできるビューもいくつかありますが、その他のビューは管理者のみが使用するように設計されています。

一般的に、データ・ディクショナリはセットとしてグループ化されています。多くの場合、次の表で示すように、そのセットは、類似した情報が格納されている3つのビューで構成され、それぞれが接頭辞によって区別されます。適切なビューに問合せを発行すると、自分に関係のある情報にのみアクセスできます。

表9-1 データ・ディクショナリ・ビューのセット

接頭辞 ユーザー・アクセス 内容 ノート

DBA_

データベース管理者

すべてのオブジェクト

一部のDBA_ビューには、管理者にとって有用な情報を含む列が追加されています。

ALL_

すべてのユーザー

ユーザーが権限を持つオブジェクト

ユーザーが所有するオブジェクトが含まれています。これらのビューは有効化されている現在の一連のロールに従います。

USER_

すべてのユーザー

ユーザーによって所有されているオブジェクト

接頭辞がUSER_のビューには、通常、列OWNERは含まれません。この列は、問合せを発行するユーザーとして、USER_ビューに暗黙的に含まれています。

ビュー・セットには必ずしも3つのメンバーが含まれるわけではありません。たとえば、データ・ディクショナリにはDBA_LOCKビューはありますが、ALL_LOCKビューはありません。

システムによって提供されているDICTIONARYビューには、すべてのデータ・ディクショナリ・ビューの名前と短い説明が含まれています。次に、このビューに対する問合せと出力サンプルの一部を示します。

SQL> SELECT * FROM DICTIONARY
  2  ORDER BY TABLE_NAME;

TABLE_NAME                     COMMENTS
------------------------------ ----------------------------------------
ALL_ALL_TABLES                 Description of all object and relational
                               tables accessible to the user
 
ALL_APPLY                      Details about each apply process that
                               dequeues from the queue visible to the
                               current user
.
.
.

関連項目:

CDBのコンテナ・データ・オブジェクト

コンテナ・データ・オブジェクトは、複数のコンテナまたはCDB全体に関連するデータを含む表またはビューです。

コンテナ・データの権限は、複数のPDBが1つのCDBに存在する一般的な要件をサポートしますが、異なるローカル管理の要件があります。たとえば、ローカル管理を行わないアプリケーションDBAは、適切なビューに対するコンテナ・データの権限を共有ユーザーに付与できます。この場合、CDB管理者はこれらのPDBのデータにアクセスできます。これに対して、CDB管理者がデータにアクセスしないようにする必要があるPDB管理者は、コンテナ・データの権限を付与しません。

名前がV$およびCDB_で始まるOracle提供ビューは、コンテナ・データベース・オブジェクトの例です。すべてのコンテナ・データベース・オブジェクトには、CON_ID列があります。次の表に、この列の値の意味を示します。

表9-2 コンテナID値

コンテナID 関連行

0

CDB全体

1

CDB$ROOT

2

PDB$SEED

その他すべてのID

ユーザー作成のPDB、アプリケーション・ルートまたはアプリケーション・シード

CDBでは、各DBA_ビューに、対応するCDB_ビューが存在します。CDB_ビューの所有者は、対応するDBA_ビューの所有者です。次の図は、異なるカテゴリのディクショナリ・ビューの間の関係を示しています。

図9-3 CDBのディクショナリ・ビュー

図9-3の説明が続きます
「図9-3 CDBのディクショナリ・ビュー」の説明

現在のコンテナがPDBである場合、ユーザーは現在のPDBのデータ・ディクショナリ情報のみを表示できます。ただし、現在のコンテナがCDBルートである場合、共通ユーザーは、CDBルートとこのユーザーが権限を持つPDBのメタデータを確認するために、CDB_ビューに問い合せることができます。

ノート:

CDBルートから問合せされる際、CDB_ビューおよびV$ビューはデータをAL32UTF8文字セットに暗黙的に変換します。AL32UTF8に変換される際に文字セットで文字を表すためにバイト数がさらに必要な場合、そしてビューの列幅が特定のPDBのデータを収容できない場合、データの切捨てが可能です。

次の表に、CDB_ビューの問合せを示します。各行は、前の行のアクションの後に発生するアクションについて説明します。

表9-3 CDB_ビューの問合せ

操作 説明
SQL> CONNECT SYSTEM
Enter password: ********
Connected.

SYSTEMユーザーは、CDBのすべてのコンテナに対して共通で、CDBルートに接続します(CDBの共通ユーザー・アカウントを参照)。

SQL> SELECT COUNT(*) FROM CDB_USERS 
WHERE CON_ID=1;

COUNT(*)
--------
      38

SYSTEMCDB_USERSに対して、CDBルートの共通ユーザー数を取得するように問い合せます。出力は、CDBルートに38個の共通ユーザーが存在することを示しています。

SQL> SELECT COUNT(DISTINCT(CON_ID)) 
FROM CDB_USERS;
 
COUNT(DISTINCT(CON_ID))
-----------------------
                      4

SYSTEMCDB_USERSに対して、CDBの個別のコンテナ数を確認するように問い合せます。

SQL> CONNECT SYSTEM@hrdb
Enter password: ********
Connected.

SYSTEMユーザーは、今度はhrpdbというPDBに接続します。

SQL> SELECT COUNT(*) FROM CDB_USERS;
 
  COUNT(*)
----------
        48

SYSTEMCDB_USERSに対して問い合せます。出力は、現在のコンテナ(hrpdb)に48個の共通ユーザーおよびローカル・ユーザーが存在することを示しています。

SQL> SELECT COUNT(*) FROM DBA_USERS;
 
  COUNT(*)
----------
        48

SYSTEMDBA_USERSに対して問い合せます。出力は、前述の問合せと同じです。SYSTEMはCDBルートに接続していないため、DBA_USERSビューにはCDB_USERSと同じ出力が表示されます。DBA_USERSには現行コンテナ内のユーザーのみが表示されるため、48と表示されます。

接頭辞がDBA_のビュー

接頭辞がDBA_のビューには、データベース全体の関連情報がすべて表示されます。DBA_ビューは、管理者のみが使用するように設計されています。

次の問合せの例では、データベース内のすべてのオブジェクトに関する情報が表示されます。

SELECT OWNER, OBJECT_NAME, OBJECT_TYPE
FROM   DBA_OBJECTS
ORDER BY OWNER, OBJECT_NAME;

関連項目:

管理権限の詳細は、『Oracle Database管理者ガイド』を参照

接頭辞がALL_のビュー

接頭辞がALL_のビューは、ユーザーのデータベース全体の概要を参照します。

これらのビューは、ユーザーが所有しているスキーマ・オブジェクトに加えて、権限とロールのPUBLICへの付与や明示的な付与によってそのユーザーがアクセスできるようになったスキーマ・オブジェクトに関する情報を戻します。

たとえば次の問合せは、アクセス権を持っているすべてのオブジェクトに関する情報を戻します。

SELECT OWNER, OBJECT_NAME, OBJECT_TYPE 
FROM   ALL_OBJECTS
ORDER BY OWNER, OBJECT_NAME; 

ALL_ビューは有効化されているロールの現在のセットに従うため、問合せの結果は、次に示す例のように、どのロールが有効化されているかによって異なります。

SQL> SET ROLE ALL;
 
Role set.
 
SQL> SELECT COUNT(*) FROM ALL_OBJECTS;
 
COUNT(*)
----------
68295
 
SQL> SET ROLE NONE;
 
Role set.
 
SQL> SELECT COUNT(*) FROM ALL_OBJECTS;
 
COUNT(*)
----------
53771

ストアド・プロシージャはロールがデフォルトで有効化されていないため、ここでALL_ビューを使用する場合、アプリケーション開発者はロールが及ぼす影響について認識しておく必要があります。

接頭辞がUSER_のビュー

通常のデータベース・ユーザーが最も頻繁に使用するのは、接頭辞がUSER_のビューです。

これらのビューには、次のような特長があります。

  • ユーザーが作成したスキーマ・オブジェクトやユーザーによる権限付与に関するメタデータなど、ユーザーのプライベートなデータベース環境を参照します。

  • ユーザーに関係する行のみを表示し、ALL_ビューにある情報のサブセットを戻します。

  • OWNERが暗黙的に想定されることを除いて、他のビューと同一の列を持っています。

  • 使用しやすいように短縮したPUBLICシノニムを持つことができます。

たとえば、次の問合せは、自分のスキーマに入っているすべてのオブジェクトを戻します。

SELECT OBJECT_NAME, OBJECT_TYPE 
FROM   USER_OBJECTS
ORDER BY OBJECT_NAME;
DUAL表

DUAL表は、既知の結果を保証するために、Oracle Databaseとユーザー作成のプログラムによって参照されるデータ・ディクショナリ内の小さな表です。

DUAL表は、現在の日時など、値を1回のみ戻す必要がある場合に役立ちます。DUALにはすべてのデータベース・ユーザーがアクセスできます。

DUAL表にはDUMMYという1つの列と、値Xを格納する1つの行があります。次の例では、算術演算を行うためにDUAL表に対する問合せを発行しています。

SQL> SELECT ((3*4)+5)/3 FROM DUAL;
 
((3*4)+5)/3
-----------
 5.66666667

データ・ディクショナリの仕組み

データ・ディクショナリのすべての実表とユーザー・アクセス可能ビューは、Oracle Databaseユーザー・アカウントSYSが所有しています。

データベースの操作時に、Oracle Databaseはデータ・ディクショナリを読み取って、スキーマ・オブジェクトが存在すること、およびユーザーのアクセス権が適切に付与されていることを確認します。Oracle Databaseは、データベース構造、監査、権限付与およびデータの変更を反映するために、継続的にデータ・ディクショナリを更新します。

たとえば、ユーザーhrinternsという表を作成すると、新しい表、列、セグメント、エクステントおよびhrがその表に対して持っている権限を反映するために、新しい行がデータ・ディクショナリに追加されます。この新しい情報は、次回ディクショナリ・ビューを問い合せるときに表示されます。

データ・ディクショナリの実表内のデータは、Oracle Databaseを機能させるために必要です。データ・ディクショナリの情報はOracle Databaseによってのみ書込みまたは変更される必要があります。したがって、データ整合性が損われることがあるため、Oracle DatabaseのユーザーはSYSスキーマに含まれている行またはスキーマ・オブジェクトを変更できません。セキュリティ管理者は、この重要なアカウントを厳しく管理し続ける必要があります。

警告:

データ・ディクショナリ表のデータを変更したり操作すると、データベースの操作に永続的な悪影響を与えるおそれがあります。

メタデータ・リンクとデータ・リンク

CDBは、内部リンク・メカニズムを使用して、データ・ディクショナリ情報を分けます。

具体的には、Oracle Databaseでは、自動的に管理される次のポインタを使用します。

  • メタデータ・リンク

    Oracle Databaseでは、ディクショナリ・オブジェクトのメタデータは、CDBルート内にしか格納されません。たとえば、DBA_OBJECTSデータ・ディクショナリ・ビューの基礎であるOBJ$ディクショナリ表の列定義は、CDBルートにしか存在しません。図9-2に示すように、各PDB内のOBJ$表はメタデータ・リンクと呼ばれる内部メカニズムを使用して、CDBルートに格納されているOBJ$の定義を指し示します。

    メタデータ・リンクに対応するデータは、CDBルートではなく、そのPDBに常駐します。たとえば、hrpdbに表mytableを作成し、これに行を追加する場合、その行はCDBルートのデータ・ファイルではなく、PDBのデータ・ファイルに格納されます。

    PDBおよびCDBルートのデータ・ディクショナリ・ビューには、異なる行が含まれます。たとえば、mytableを説明する新しい行は、hrpdbOBJ$表に存在し、CDBルートのOBJ$表には存在しません。したがって、CDBルートのDBA_OBJECTSの問合せと、hrdpbDBA_OBJECTSでは、異なる結果が表示されます。

  • データ・リンク

    ノート:

    データ・リンクはOracle Database 12cリリース1 (12.1.0.2)でオブジェクト・リンクと呼ばれていました。

    場合によっては、Oracle Databaseで(メタデータのみではなく)オブジェクトのデータがアプリケーション・コンテナのアプリケーション・ルートに1回しか格納されません。複数の地域で別々のPDBを持つE-Commerceの会社を考えてみてください。アプリケーション・ルートには、postal_codesという名前の表が格納されていて、米国のすべての郵便番号がリストされています。このコンテナのすべてのアプリケーションPDBは、共通のpostal_codes表にアクセスする必要があります。

    アプリケーションPDBでは、データ・リンクと呼ばれる内部メカニズムを使用してアプリケーション・ルートのオブジェクトが参照されます。データ・リンクが作成されたアプリケーションPDBには、データ・リンクの説明も格納されます。データ・リンクは、参照先のオブジェクトのデータ型を継承します。

  • 拡張データ・リンク

    拡張データ・リンクは、データ・リンクとメタデータ・リンクを合成したものです。データ・リンクと同じように、拡張データ・リンクはアプリケーション・ルートのオブジェクトを参照します。しかし、拡張データ・リンクはアプリケーションPDBの対応するオブジェクトも参照します。たとえば、アプリケーションPDBに米国の郵便番号とカナダの郵便番号の両方を格納する拡張データ・リンク表がある場合があります。メタデータ・リンクと同じように、アプリケーションPDBのオブジェクトはアプリケーション・ルートの対応するオブジェクトからメタデータを継承します。

    アプリケーション・ルートで問合せを実行すると、拡張データリンク表はアプリケーション・ルートからのみ行をフェッチします(米国の郵便番号のみなど)。ただし、アプリケーションPDBで問合せを実行すると、拡張データリンク表は、アプリケーション・ルートとアプリケーションPDBの両方から行をフェッチします(たとえば、米国の郵便番号とカナダの郵便番号)。

Oracle Databaseでは、CDB$ROOTに対するメタデータ・リンクとデータ・リンクが自動的に作成および管理されます。ユーザーは、これらのリンクを追加、変更または削除できません。

関連項目:

データ・ディクショナリ・ビューのパブリック・シノニム

多くのデータ・ディクショナリ・ビューにユーザーが簡単にアクセスできるようにするため、Oracle Databaseはパブリック・シノニムを作成します。

セキュリティ管理者は、システム全体で使用するスキーマ・オブジェクトのパブリック・シノニムを作成して追加することもできます。プライベート・スキーマ・オブジェクトとパブリック・シノニムに同じ名前を使用しないことをお薦めします。

データ・ディクショナリ・キャッシュ

データ・ディクショナリの情報の多くは、データ・ディクショナリ・キャッシュに含まれており、これは、ユーザーのアクセスの妥当性のチェックや、スキーマ・オブジェクトの状態検証のため、データベースで常にこれらの情報が必要とされるためです

通常、キャッシュには解析情報が含まれます。表とそれらの列について記述しているCOMMENTS列は、ディクショナリ・キャッシュには保持されませんが、データベース・バッファ・キャッシュに保持されることがあります。

他のプログラムとデータ・ディクショナリ

他のOracle Database製品は、既存のビューを参照したり、独自のデータ・ディクショナリ表またはビューを追加できます。

データ・ディクショナリを参照するプログラムを記述するアプリケーション開発者は、基礎となる表ではなくパブリック・シノニムを使用することをお薦めします。これは、シノニムの方がリリース間での変更が少ないためです。

データ・ディクショナリの記憶域

CDB全体のメタデータを格納するデータ・ディクショナリは、システム表領域にのみ格納されます。

特定のPDBのメタデータを格納するデータ・ディクショナリは、このPDB専用の自己完結型表領域に格納されます。PDB表領域には、アプリケーション・バックエンドのデータとメタデータの両方が格納されます。このため、データ・ディクショナリ表の各セットは、それぞれの専用の表領域のセットに格納されます。

関連項目:

SYSTEM表領域の詳細は、「SYSTEM表領域」を参照してください

動的パフォーマンス・ビューの概要

Oracle Databaseは、操作中ずっと、カレント・データベース・アクティビティを記録する一連の仮想表を保持しています。

これらのビューは、データベースがオープンで使用中の間は継続的に更新されるため、動的です。このビューは、名前がV$で始まるため、V$ビューと呼ばれることもあります。

動的パフォーマンス・ビューには次のような情報が含まれています。

  • システムおよびセッション・パラメータ

  • メモリー使用量および割当て

  • ファイルの状態(RMANバックアップ・ファイルなど)

  • ジョブおよびタスクの進行状況

  • SQLの実行

  • 統計およびメトリック

動的パフォーマンス・ビューの主な用途は、次のとおりです。

  • Oracle Enterprise Managerがデータベースに関する情報を取得するためにこのビューを使用します。

  • 管理者はこのビューを使用して、パフォーマンスを監視し、デバッグを実行できます。

関連項目:

動的パフォーマンス・ビューの完全なリストは、Oracle Databaseリファレンスを参照してください。

動的パフォーマンス・ビューの内容

動的パフォーマンス・ビューは、データベース管理者が変更または削除できないため、固定ビューと呼ばれます。しかし、データベース管理者は、これらの表のビューに問合せを発行したり、ビューを作成したり、それらのビューにアクセスする権限を他のユーザーに付与できます。

動的パフォーマンス表はSYSが所有し、その名前はV_$で始まります。これらの表に対してビューが作成され、V$という接頭辞を持つパブリック・シノニムが作成されます。たとえば、V$DATAFILEビューにはデータファイルに関する情報が格納されます。V$FIXED_TABLEビューにはすべての動的パフォーマンス表およびビューに関する情報が格納されます。

ほとんどのV$ビューに対して、対応するGV$ビューが存在します。Oracle Real Application Clusters (Oracle RAC)では、GV$ビューに対して問合せを実行すると、該当するすべてのインスタンスからV$ビュー情報が取り出されます。

Database Configuration Assistant(DBCA)を使用してデータベースを作成する場合は、データ・ディクショナリがOracleによって自動的に作成されます。Oracle Databaseでは、自動的にcatalog.sqlスクリプトが実行され、このスクリプトには、その動的パフォーマンス・ビューの、ビューおよびパブリック・シノニムの定義が含まれます。これらのビューとシノニムを作成するには、catalog.sqlを実行する必要があります。

関連項目:

動的パフォーマンス・ビューの記憶域

動的パフォーマンス・ビューは、データベースのメモリー構造から構築された仮想表に基づいています。

これらのビューはデータベース内に格納される従来型の表ではありません。これらのビューではデータが動的に更新されるため、読取り一貫性は保証されません。

動的パフォーマンス・ビューは実際の表ではないため、データはデータベースおよびデータベース・インスタンスの状態によって異なります。たとえば、データベースが起動されており、マウントされていないとき、V$INSTANCEおよびV$BGPROCESSに対する問合せを発行できます。ただし、データベースがマウントされるまでは、V$DATAFILEに対する問合せは発行できません。

データベース・オブジェクト・メタデータ

DBMS_METADATAパッケージには、データベース・オブジェクトの完全な定義を抽出するためのインタフェースが用意されています。

これらの定義は、XMLまたはSQL DDLのいずれかで表現されます。Oracle Databaseでは、柔軟で洗練された、プログラム制御用のインタフェースと、単純化された、非定型問合せ用のインタフェースの2つのスタイルのインタフェースが提供されます。

関連項目:

DBMS_METADATAの詳細は、『Oracle Database PL/SQLパッケージおよびタイプ・リファレンス』を参照してください