AutoUpgradeを使用したアップグレード前チェックの実行
AutoUpgradeユーティリティは、Oracleによって提供されるJava JARファイルで、アップグレードが正常に完了したことを確認するために役立ちます。
- AutoUpgradeユーティリティのシステム・チェックについて
アップグレードが成功したことを確認するために、分析モードでAutoUpgradeユーティリティを使用してシステムを確認することをお薦めします。 - 分析モードを使用したAutoUpgradeの事前チェックの実行の例
アップグレード前にAutoUpgradeを使用して非CDBのOracleデータベースをチェックする方法を確認するには、この例を使用して手順を理解してください。 - アップグレード・チェックの概要ファイルの確認
AutoUpgradeアップグレード・チェックの概要ファイルを使用してアップグレードの準備をする方法を学習します。 - AutoUpgradeの事前チェックをCDBで実行するための構成ファイルの作成
AutoUpgradeがアップグレードの事前チェックを実行して、マルチテナント・アーキテクチャのOracleデータベースにPDBを含めたり除外する方法をどのようにして制御できるかを確認します。 - 以前のリリースのOracleデータベースでのAutoUpgrade修正の実行
この例を使用して、システムに分析モードで生成されるAutoUpgrade修正の実行方法を確認します。
親トピック: Oracle Databaseのアップグレードの準備
AutoUpgradeユーティリティのシステム・チェックについて
アップグレードが成功したことを確認するために、分析モードでAutoUpgradeユーティリティを使用してシステムを確認することをお薦めします。
アップグレードにAutoUpgradeユーティリティを使用するには、最初に分析モードでAutoUpgradeを実行する必要があります。
AutoUpgradeと分析モード
AutoUpgradeユーティリティには、アップグレード中に発生する可能性がある多くの問題を回避するのに役立つ広範なシステム・チェックが含まれています。このユーティリティは、新しいOracle Databaseバイナリ・ホームにあります。ただし、最新の更新を取得するには、My Oracle Supportドキュメント2485457.1.から最新バージョンのツールをダウンロードすることをお薦めします。ダウンロードしたファイルは、任意のディレクトリに配置できます。データベースを以前のリリースで実行している間に、Analyzeを実行して新しいリリースへのアップグレードの準備状況を確認するには、target_version
パラメータを使用して、構成ファイルにターゲット・バージョンを手動で指定する必要があります。例: upg1.target_version=23
。
分析モードでAutoUpgradeを実行すると、AutoUpgradeではデータベースからのデータの読取りのみを実行し、データベースに対する更新は実行しません。通常の営業時間に分析モードを使用してAutoUpgradeを実行できます。ターゲット・リリースのOracle Databaseホームを設定する前に、ソースOracle Databaseホームで分析モードでAutoUpgradeを実行できます。
分析モードを使用したAutoUpgradeの事前チェックの実行の例
アップグレード前にAutoUpgradeを使用して非CDBのOracleデータベースをチェックする方法を確認するには、この例を使用して手順を理解してください。
AutoUpgradeを使用するには、Java 8がインストールされている必要があります。Oracle Databaseリリース12.1 (12.1.0.2)または新しいOracleホームには、デフォルトで有効なJavaバージョンがあります。次の構文を使用して分析モードでAutoUpgradeを起動します。ここで、Oracle_home
はOracleホーム・ディレクトリまたはOracleホームに設定された環境変数で、yourconfig.txt
は構成ファイルです。
java -jar autoupgrade.jar -config yourconfig.txt -mode analyze
AutoUpgradeの実行中に進行状況の概要を取得する場合は、LinuxおよびUnixシステムでlsj
コマンドを入力できます。すべてのチェックが完了すると、ツールは、システムの準備状況に関するレポートを提供するアップグレード前修正HTMLファイルを書き込んで、ジョブ実行のステータスを画面に表示し、終了します。すべてのジョブが「正常に終了しました」とリストされている場合は、先に進んでデータベースをアップグレードできることを意味します。ただし、アップグレードを開始する前に従う必要があるお薦めの事項があるかどうかを確認するために、アップグレード前修正HTMLファイルを参照することをお薦めします。いずれかのジョブが「失敗」とリストされている場合は、アップグレードの開始を妨げるエラーがあることを意味します。
例2-4 分析モードでのAutoUpgradeの使用によるOracle Database 12c非CDBシステムのチェック
この例では、AutoUpgradeを/tmp
フォルダにダウンロードして、非CDBのOracle Database 12cリリース2 (12.2)システムから新しいOracle Databaseリリースにアップグレードするための構成ファイルを使用してAutoUpgradeを実行しています。
java -jar /tmp/autoupgrade.jar -config 122-to-new.txt -mode analyze
このチェックのために呼び出される構成ファイル(122-to.new.txt
)は次のとおりです。
#12.2-to-19c config file
#
global.autoupg_log_dir=/home/oracle/autoupgrade
upg1.source_home=/u01/app.oracle/product/12.2.0.1
upg1.target_home=/u01/app/oracle/product/19
upg1.sid=dbsales
upg1.start_time=now
upg1.log_dir=/home/oracle/autoupgrade/dbsales
upg1.upgrade_node=localhost
pdbs
パラメータが指定されていないことに注意してください。チェックする特定のPDBを示し、CDB上の他のPDBを除外する場合にのみ、pdbs
パラメータを指定する必要があります。log_dir
に指定する値は、AutoUpgradeがアップグレード前修正HTMLファイルを配置する場所です。ファイルは次の形式を使用して書き込まれます。ここで、log-path
はログ・ファイルに指定するパス、sid
はOracle Databaseシステム識別子で、job-number
はAutoUpgradeジョブ番号です。
/log-path/sid/job-number
/prechecks
AutoUpgradeを実行すると、出力は次のように表示されます。
AutoUpgrade tool launched with default options
+--------------------------------+
| Starting AutoUpgrade execution |
+--------------------------------+
1 databases will be analyzed
Type 'help' to list console commands
upg>
.
.
.
Job 100 completed
------------------- Final Summary -------------------
Number of databases [1]
Jobs finished successfuly [1]
Jobs failed [0]
Jobs pending [0]
------------- JOBS FINISHED SUCCESSFULLY -------------
Job 100 FOR DB12
この場合、構成ファイルは、ログ・ファイルを/home/oracle/autoupgrade
パスに配置するように指定しています。Oracle Databaseシステム識別子(SID)はdbsales
で、AutoUpgradeジョブは100
であるため、このジョブのアップグレード・チェックの概要ファイルは、パス/home/oracle/autoupgrade/dbsales/100/prechecks
に置かれています。
アップグレード・チェックの概要ファイルを確認し、アップグレードを続行する前にレポートされたエラーを修正します。AutoUpgradeを修正モードで実行すると、多くのエラーを修正できます。
CDBでは、同じプロシージャおよび同じ構成ファイルを使用できます。
ノート:
AutoUpgradeをCDBに対して分析または修正モードで実行すると、AutoUpgradeはCDB内のすべてのPDBを開き、アクションを完了します。PDBが閉じている場合は、AutoUpgradeがPDBを開いて、分析または修正の完了後にOPEN状態のままにします。PDBを閉じたままにしてチェックや修正を実行しない場合は、構成ファイル・パラメータpdb
を使用してAutoUpgradeでチェックするPDBをリストすることにより、特定のPDBのみがチェックまたは修正されるように指定できます。
アップグレード・チェックの概要ファイルの確認
AutoUpgradeアップグレード・チェックの概要ファイルを使用してアップグレードの準備をする方法を学習します。
log_dir
パラメータで指定したディレクトリにファイルが配置されます。ファイルは次の形式を使用して書き込まれます。ここで、log-path
はログ・ファイルに指定するパス、sid
はOracle Databaseシステム識別子(SID)で、job-number
はAutoUpgradeジョブ番号です。
/log-path/sid/job-number
/prechecks
DB12
で、ジョブ番号が100の場合は、次のようになります。/home/oracle/autoupgrade/DB12/DB12/100/prechecks
アップグレード・チェックの概要ファイルを確認し、アップグレードを続行する前にレポートされたエラーを修正します。AutoUpgradeを修正モードで実行し、多くのエラーを修正することもできます。
結果ファイルの例では、ファイルのトピック領域にCDB$ROOT
の2つのレポート・メッセージが表示され、チェックの名前、修正モードでAutoUpgradeを使用して実行可能な修正があるかどうか、問題の重大度、および実行されているAutoUpgradeのステージが示されます。
CDBでAutoUpgradeの事前チェックを実行するための構成ファイルの作成
AutoUpgradeがアップグレードの事前チェックを実行して、マルチテナント・アーキテクチャのOracleデータベースにPDBを含めたり除外する方法をどのようにして制御できるかを確認します。
マルチテナント・コンテナ・データベース(CDB)およびプラガブル・データベース(PDB)で構成されたOracle Databaseサーバーをチェックするには、非CDBのOracleデータベースで使用するのと同じプロシージャおよび構成ファイルを使用できます。分析または修正モードの実行中にAutoUpgradeがチェックを実行すると、CDB内のすべてのPDBが開かれます。AutoUpgradeをCDB上で実行し、PDBが閉じている場合、AutoUpgradeはPDBを開き、分析チェックや修正アクションの後、AutoUpgradeはPDBを開いたままにします。
チェックのために開くPDBを管理して、一部のPDBを閉じたままにできるようにするには、構成ファイルのオプションpdbs
を使用して、チェックするPDBのみを含むリストを指定できます。チェックするPDBのリストを指定すると、AutoUpgradeによって、CDB$ROOT
、PDB$SEED
およびリストに指定したすべてのPDBがチェックされます。この例では、denver-sales2
という名前のPDBが指定されています。
例2-5 CDBおよびPDBのAutoUpgrade構成ファイル
次の例は、denver-sales2
という名前のPDBのみを開いて分析することを指定しています。
global.autoupg_log_dir=/home/oracle/autoupgrade
upg1.source_home=/u01/app/oracle/product/12.2.0
upg1.target_home=/u01/app/oracle/product/19
upg1.sid=CDB1
upg1.start_time=now
upg1.log_dir=/home/oracle/autoupgrade/CDB1
upg1.pdbs=denver-sales2
以前のリリースのOracleデータベースでのAutoUpgrade修正の実行
この例を使用して、システムに分析モードで生成されるAutoUpgrade修正の実行方法を確認します。
AutoUpgradeを修正モードで実行すると、AutoUpgradeは分析モードでも実行するチェックを実行します。これらのチェックが完了した後、アップグレードを開始する前に、AutoUpgradeによって、新しいリリースに必要なすべての自動修正が実行されます。データベースを新しいリリースに移動する予定がある場合は、修正モードを使用してデータベースをアップグレードする準備をします。
注意:
修正モードでAutoUpgradeを実行する前に、分析モードでAutoUpgradeを個別に実行することをお薦めします。修正モードでは、ソース・データベースを変更できます。
アップグレードの準備の一環として、アップグレード中にエラーの原因となるような状態をソース・データベースで修正する必要がある場合には、修正モードでAutoUpgradeを実行することでソース・データベースに対して自動修正が実行されます。修正モードでのAutoUpgradeの実行は別のシステムに移動する際に実行するステップであるため、保証付きリストア・ポイントは作成されません。このモードは通常の営業時間外で実行することをお薦めします。
Java 8がソースOracleホームにある場合、次の構文を使用して修正モードでAutoUpgradeを起動します。ここで、Oracle_home
はOracleホーム・ディレクトリまたはOracleホームに設定された環境変数で、yourconfig.txt
は構成ファイルです。
$ java -jar autoupgrade.jar -config yourconfig.txt -mode fixup