5 Oracle Exadata System Softwareリリース20.xの新機能
Oracle Exadata System Softwareリリース20.xでは、いくつかの新機能が導入されました。
5.1 Oracle Exadata System Softwareリリース20.1.0の新機能
Oracle Exadata System Softwareリリース20.1.0の新機能は次のとおりです:
5.1.1 ExadataセキュアRDMAファブリック分離
ExadataセキュアRDMAファブリック分離では、RDMA over Converged Ethernet (RoCE)を使用するOracle Exadataシステム上のOracle Real Application Clusters (Oracle RAC)クラスタの厳密なネットワーク分離が可能です。
セキュア・ファブリックは、Oracle Exadata上の複数のテナント(各テナントは専用の仮想マシン(VM)クラスタにある)をセキュアに統合するための重要なインフラストラクチャを提供します。この機能を使用すると、次のようになります。
- 別々のクラスタにあるデータベース・サーバーが相互に通信することはできません。それらはネットワーク上で互いから完全に独立しています。
- 複数のクラスタ内のデータベース・サーバーが、すべてのストレージ・サーバー・リソースを共有できます。しかしながら、様々なクラスタで同じストレージ・ネットワークが共有されていても、クラスタ間のネットワーク・トラフィックは発生しません。
ExadataセキュアRDMAファブリック分離では、RoCE VLANを使用することで、あるVMクラスタからのネットワーク・パケットが別のVMクラスタに見えることがないようになっています。VLANタグの強制はKVMホスト・レベルで実施されます。つまり、データベース・サーバーVM上のソフトウェアエクスプロイトや構成ミスによってセキュリティが回避されることはありません。
ExadataセキュアRDMAファブリック分離の使用を参照してください。
最小要件:
- Oracle Exadata System Softwareリリース20.1.0
- Oracle Exadata X8M-2
- デプロイメントに、Oracle Linux KVMを使用するVMクラスタが含まれている必要があります
- Oracle Grid Infrastructure:
- パッチ適用済の19.6.0.0.200114
- パッチ適用済の18.8.0.0.191015
- パッチ適用済の12.2.0.1.191015
- パッチ適用済の12.1.0.2.190716
- Oracle Database:
- パッチ適用済の19.6.0.0.200114
- パッチ適用済の18.8.0.0.191015
- パッチ適用済の12.2.0.1.191015
- 12.1.0.2.180831
- 11.2.0.4.180717
必要なパッチの詳細は、My Oracle Support Doc ID 888828.1を参照してください。
5.1.2 スマート・フラッシュ・ログ・ライトバック
容量の大きいOracle Exadata Storage Serverでは、すべてのREDOログ・エントリがハード・ディスク・ドライブ(HDD)に書き込まれる必要があります。Exadataスマート・フラッシュ・ログを使用してもログ書込みでのまれな異常の発生を防ぐことはできますが、ログ書込みの合計スループットはHDDによって制約されたままとなります。したがって、大量のREDOログ・アクティビティが原因で、またはGolden Gateログ・マイニング、ログ・アーカイブ、RMANバックアップおよびリストアなどのI/O負荷の高いその他のアクティビティが原因で、HDDでI/O帯域幅が飽和状態の場合は、ログ書込みがパフォーマンス・ボトルネックになる可能性があります。
スマート・フラッシュ・ログ・ライトバック機能では、Exadataスマート・フラッシュ・キャッシュがライトバック・モードで使用されてREDOログ・ファイルの内容全体が自動的かつ透過的に格納されるため、HDDがパフォーマンス・ボトルネックになる可能性がなくなります。システムのワークロードによっては、ログ書込みの全体的なスループットが250%向上する可能性があります。
スマート・フラッシュ・ログ・ライトバックは、Exadataスマート・フラッシュ・ログと連携して透過的に動作します。スマート・フラッシュ・ログ・ライトバックがログ書込みの全体的なスループットを向上させ、Exadataスマート・フラッシュ・ログがログ書込みの待機時間が通常より長くなることを防ぎ続けます。
スマート・フラッシュ・ログ・ライトバックは、Oracle Data Guardのプライマリ・データベースおよびスタンバイ・データベースと連携し、オンラインREDOログ・ファイルとスタンバイREDOログ・ファイルのスループットを向上させます。
IORMプランでフラッシュ・キャッシュ領域のリソース管理が構成されている場合、REDOログ・ファイルのキャッシュは、各マルチテナント・コンテナ・データベース(CDB)またはCDB以外のデータベースの領域計算に含まれます。
最小要件:
- Oracle Exadata System Softwareリリース20.1.0
- Oracle Exadata Database Machine X7。
- ライトバック・モードのExadataスマート・フラッシュ・キャッシュ。
ARCHIVELOG
モードのOracle Database。
5.1.3 高速なインメモリー列指向キャッシュ作成
インメモリー・データベース形式の列指向キャッシュは、データがハード・ディスクから読み取られたときに作成され、ハイブリッド列形式で格納されます。この機能では、フラッシュ・キャッシュから中間形式でデータを読み取るときにインメモリー・データベース形式の列指向キャッシュも作成されます。
この機能により、列指向キャッシュの作成のパフォーマンスが大幅に向上します。特に、ハード・ディスクのIO帯域幅が複数のワークロードで同時に使用される場合です。たとえば、ハード・ディスク帯域幅を使用するバックアップでは、インメモリー列指向キャッシュ作成とこの帯域幅を共有する必要がなくなりました。その結果、バックアップとインメモリー列指向キャッシュ作成はどちらもより高速に実行されるようになります。
インメモリー列指向キャッシュ形式の詳細は、Oracle Exadata System Softwareユーザーズ・ガイドのインメモリー列指向形式のサポートを参照してください。
最小要件:
- Oracle Exadata System Softwareリリース20.1.0
5.1.4 セルからセルへのリバランスにおけるPMEMキャッシュ移入の保持
データのリバランスは様々な理由で発生する可能性があります。たとえば、リバランス操作は、ハード・ディスクに実際の障害や予測障害が発生した場合にデータの冗長性を維持するために実行される可能性があります。リバランス操作によってデータが別のストレージ・サーバーに移動されるときに、一部のデータが永続メモリー(PMEM)キャッシュにキャッシュされることがあります。これは、永続メモリー・データ・アクセラレータとも呼ばれます。
Oracle Exadata System Softwareリリース20.1.0以降では、リバランス操作でデータが別のストレージ・サーバーに移動されるときに、関連するPMEMキャッシュ・エントリが自動的にターゲット・ストレージ・サーバーにレプリケートされます。
この機能は、セルからセルへのリバランス操作中にExadataスマート・フラッシュ・キャッシュ内のデータを保持する既存の機能を基に構築されており、リバランス操作後のアプリケーション・パフォーマンスの一貫性が増します。
最小要件:
- Oracle Exadata System Softwareリリース20.1.0
- Oracle Exadata Database Machine X8M。
5.1.5 特定のデータベースの永続メモリー使用量の制御
この機能では、データベース間IORMプランの新しい2つのディレクティブである、pmemcache
およびpmemlog
が導入されます。これらのディレクティブを使用すると、特定のデータベースの永続メモリー使用量を制御し、貴重な永続メモリー・リソースを重要なデータベース用に確保できます(特に統合環境において)。
pmemcache=off
を設定すると、指定したデータベースによる永続メモリー(PMEM)キャッシュの使用を防ぐことができます。同様に、pmemlog=off
を設定すると、指定したデータベースによるPMEMログの使用を防ぐことができます。デフォルトでは、すべてのデータベースで、キャッシュおよびロギングに永続メモリーを使用できます。
現在のIORMプラン設定を確認するには、CellCLIでコマンドLIST IORMPLAN DETAIL
を発行します。
詳細は、Oracle Exadata System Softwareユーザーズ・ガイドのIORMの使用によるフラッシュおよびPMEMリソースへのデータベース・アクセスの制御およびPMEMキャッシュおよびPMEMログへのアクセスの制御を参照してください。
最小要件:
- Oracle Exadata System Softwareリリース20.1.0
- Oracle Exadata X8M
5.1.6 管理サーバーに関するアプリケーション・サーバーの更新
このリリースでは、Oracle Exadata System Softwareによって内部的に使用されるアプリケーション・サーバー・エンジンとして(具体的には、管理サーバー(MS))、Oracle WebLogic ServerのかわりにEclipse Jettyが使用されるようになりました。
Oracle Exadata System Softwareでは、Oracle WebLogic Serverで提供される高度な機能のほとんどは必要ありません。そのため、Eclipse Jettyに移行することで次のような利点があります。
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速度 — Eclipse Jettyは軽量のWebサーバーであり、Oracle WebLogic Serverなどのフル機能のアプリケーション・サーバーよりも、消費するシステム・リソースはかなり少なくなります。そのため、Eclipse Jettyは必要なタスクをより効率的に実行でき、リソースを解放して全体的なシステムパフォーマンスを向上させることができます。
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セキュリティ — 軽量のWebサーバーであるEclipse Jettyを使用すると、攻撃のベクトルが減ることでセキュリティが向上します。さらに、Eclipse Jettyのセキュリティは、様々なプロジェクトおよび製品で、開発と本番の両方において使用されていることから実証されています。
最小要件:
- Oracle Exadata System Softwareリリース20.1.0