分析およびダッシュボードでのライトバックの構成

ダッシュボード・ページまたは分析のユーザーは表に表示されているデータを変更する機能を使用できる場合があります。

この機能は、通常ライトバックと呼ばれます。管理者は、コンテンツ・デザイナがユーザー用にライトバック機能を構成できるように支援します。

次の各項では、ライトバックの構成方法について説明します。

管理者のライトバックについて

ライトバックにより、ユーザーはダッシュボードおよび分析からデータを直接更新できます。

「データベースへのライトバック」権限を持つユーザーは、ライトバック・フィールドを分析での編集可能フィールドとみなします。入力した値はデータベースに保存されます。ユーザーが「データベースへのライトバック」権限を持っていない場合、ライトバック・フィールドは通常のフィールドとして表示されます。

ユーザーが編集可能なフィールドに値を入力してライトバック・ボタンをクリックすると、アプリケーションはライトバック・テンプレートに定義されているSQLのinsertまたはupdateコマンドを実行します。コマンドが成功した場合、分析は新しい値で更新されます。テンプレートの読取りまたはSQLコマンドの実行でエラーが発生した場合は、エラー・メッセージが表示されます。

insertコマンドは、レコードがまだ存在せず、ユーザーが新しいデータを表に入力したときに実行されます。この場合、ユーザーが入力した表内のレコードの値は、入力前はnullとなっています。updateコマンドは、ユーザーが既存のデータを変更する場合に実行されます。まだ物理表に存在していないレコードを表示するには、同様の表をもう1つ作成します。この同様の表を使用して、ユーザーが変更できるプレースホルダ・レコードを表示します。

ノート: ライトバック・テンプレートを作成する際、挿入コマンドと更新コマンドを、それらの両方が使用されていなくても含める必要があります。たとえば、挿入のみを実行している場合、空の更新文<update></update>を次のXMLコードに示すように含める必要があります:

<?xml version="1.0" encoding="utf-8" ?>
<WebMessageTables xmlns:xsi="http://www.w3.org/2001/XMLSchema-instance" xmlns="oracle.bi.presentation/writebackschemas/v1">
<WebMessageTable lang="en-us" system="WriteBack" table="Messages">
   <WebMessage name="SetQuotaUseID">
      <XML>
         <writeBack connectionPool="Supplier">
            <insert>INSERT INTO regiontypequota VALUES(@{c0},@{c1},'@{c2}','@{c3}',@{c4})</insert>
            <update></update>
         </writeBack>
      </XML>
   </WebMessage>
<WebMessage name="SetForecastUseID">
      <XML>
         <writeBack connectionPool="Supplier">
            <insert>INSERT INTO regiontypeforecast VALUES(@{c0},@{c1},'@{c2}','@{c3}',@{c4})</insert>
            <update></update>
         </writeBack>
      </XML>
   </WebMessage>
</WebMessageTable>
</WebMessageTables>

分析およびダッシュボードでのライトバックの有効化

管理者は、ユーザーによる分析およびダッシュボードでデータの編集を有効にできます。

  1. セマンティック・モデルを設定します:
    1. モデル管理ツールで、セマンティック・モデル(.rpdファイル)を開きます。
    2. 物理レイヤーで、ライトバックを有効にする列を含む物理表をダブルクリックします。
    3. 「物理表」ダイアログの「一般」タブで、「キャッシュ可能」が選択されていないことを確認します。このオプションの選択を解除することによって、プレゼンテーション・サービスのユーザーが更新内容を即座に表示できるようになります。
    4. 「ビジネス・モデルとマッピング」レイヤーで、対応する論理列をダブルクリックします。
    5. 「論理列」ダイアログで、「書込み可能」を選択してから、「OK」をクリックします。
    6. 「プレゼンテーション」レイヤーで、ライトバックを有効にした論理列に対応する列をダブルクリックします。
    7. 「プレゼンテーション列」ダイアログで、「権限」をクリックします。
    8. 該当するユーザーとアプリケーション・ロールの「読取り/書込み」権限を選択します。
    9. 変更を保存します。
  2. 1つ以上のライトバック・テンプレートを使用してXMLドキュメントを作成します。
    XMLドキュメントには、複数の付加されたテンプレートを含めることができます。この例は、2つのテンプレートを含むXMLドキュメントを示しています:
    <?xml version="1.0" encoding="utf-8" ?>
    <WebMessageTables xmlns:xsi="http://www.w3.org/2001/XMLSchema-instance" xmlns="oracle.bi.presentation/writebackschemas/v1">
    <WebMessageTable lang="en-us" system="WriteBack" table="Messages">
       <WebMessage name="SetQuotaUseID">
          <XML>
             <writeBack connectionPool="Supplier">
                <insert>INSERT INTO regiontypequota VALUES(@{c0},@{c1},'@{c2}','@{c3}',@{c4})</insert>
                <update>UPDATE regiontypequota SET Dollars=@{c4} WHERE YR=@{c0} AND Quarter=@{c1} AND Region='@{c2}' AND ItemType='@{c3}'</update>
             </writeBack>
          </XML>
       </WebMessage>
    <WebMessage name="SetForecastUseID">
          <XML>
             <writeBack connectionPool="Supplier">
                <insert>INSERT INTO regiontypeforecast VALUES(@{c0},@{c1},'@{c2}','@{c3}',@{c4})</insert>
                <update>UPDATE regiontypeforecast SET Dollars=@{c4} WHERE YR=@{c0} AND Quarter=@{c1} AND Region='@{c2}' AND ItemType='@{c3}'</update>
             </writeBack>
          </XML>
       </WebMessage>
    </WebMessageTable>
    </WebMessageTables>
    ノート: <insert>要素および<update>要素を、それらの両方が使用されていなくても含める必要があります。たとえば、挿入のみを実行している場合、空の更新文<update></update>を含める必要があります。
  3. ライトバック・テンプレートをクリップボードにコピーします。
  4. Oracle Analyticsでライトバック・テンプレートを適用します。
    1. 「コンソール」をクリックしてから、「システム設定」をクリックします。
    2. ライトバック・テンプレートXMLに、ステップ2でコピーしたライトバック・テンプレートを貼り付けます。
  5. ライトバック・コードを使用する権限を付与します。
    1. クラシック・ホームに移動し、「管理」をクリックします。
    2. 「セキュリティ」で、「権限の管理」をクリックし、「ライトバック」に移動します。
    3. 認証されたユーザーに「データベースへのライトバック」を付与します。
    4. BIサービス管理者に「ライトバックの管理」を付与します。
  6. 列でのライトバックを有効にするには:
    1. 分析エディタで、ライトバックを有効にする列の「列のプロパティ」を表示します。
    2. 「列のプロパティ」ダイアログで、「ライトバック」タブをクリックします。
      セマンティック・モデルで、列に対してライトバックが有効になっている場合、「ライトバックの有効化」ボックスが使用可能です。
    3. 「ライトバックの有効化」オプションを選択します。
    4. デフォルトを変更する場合は、他のオプションの値を指定します。
    5. 変更を保存します。
    列を含む分析で、この列に対してライトバックが有効になります。
  7. 表ビューでのライトバックを有効にするには:
    1. 分析エディタで、編集する表ビューを開きます。
    2. 「プロパティの表示」をクリックします。
    3. 「表のプロパティ」ダイアログで、「ライトバック」タブをクリックします。
    4. 「ライトバックの有効化」オプションを選択します。
    5. 「テンプレート名」ボックスを選択し、ステップ2で指定したライトバック・テンプレートに"WebMessage name="の値を指定します。
      たとえば、ステップ2のサンプル・テンプレートの「テンプレート名」は'SetQuotaUseID'です。
    6. 変更を保存します。

ライトバックの制限

ユーザーは、Oracle BIサーバーからSQL問合せを実行できるあらゆるデータソース(ADFデータソースを除く)に対してライトバックを実行できます。ライトバックの構成時には、次の制限に留意してください。

  • 数値列に入力できるのは数字のみです。ドル記号($)、ポンド記号またはハッシュ記号(#)、パーセント記号(%)などのデータ書式設定文字は使用できません。

  • テキスト列に入力できるのは文字列データのみです。

  • ライトバックを使用してデータが変更された分析を含むダッシュボードを、ログオンしたユーザーがすでに表示している場合、ダッシュボードではデータが自動的にリフレッシュされません。更新されたデータを参照するには、ユーザーがダッシュボードを手動でリフレッシュする必要があります。

  • テンプレート・メカニズムは、表のビューで単一値に対してのみ使用できます。ピボット表のビューや他のあらゆるタイプのビュー、複数値データおよび単一値データのドロップダウン列には、テンプレート・メカニズムはサポートされていません。

  • ライトバック列の値はすべて編集可能です。編集可能フィールドは、プリンタ優先以外のコンテキストで表示された場合、ユーザーに「データベースへのライトバック」権限が与えられているかのように表示されます。しかし、論理列が変更可能な物理列にマップされている場合、論理列は複数のレベルの共通部分に対する値を返します。このシナリオの場合、問題が発生する可能性があります。

  • 作成したライトバック表から導出されたものではないフィールドも含めて、分析内のあらゆるフィールドにライトバックのフラグを設定できます。ただし、表がライトバック有効に設定されていないと、ライトバック操作を正常に実行できません。フィールドへの正しいタグ付けは、コンテンツ・デザイナが責任を持って行います。

  • テンプレートではinsertとupdate以外のSQL文も使用できます。ライトバック機能はこれらの文をデータベースに渡します。しかし、insertまたはupdate以外の文の使用はサポートされていません。使用しないことをお薦めします。

  • プレゼンテーション・サービスが実行するのは、データ入力の最小限の検証のみです。数値フィールドにユーザーがテキスト・データを入力した場合、プレゼンテーション・サービスはこれを検出し、無効なデータがデータベースに送られるのを防止します。しかし、他の形式の無効なデータ入力(範囲外の値、テキストと数値の混合など)は検出されません。ユーザーがライトバック・ボタンをクリックして挿入または更新を実行した場合、データが無効なときは、データベースからエラー・メッセージが出力されます。その後、ユーザーは、誤った入力を修正できます。コンテンツ・デザイナは、"数値データ・フィールドには英数字が混ざった値を入力できません"といった、ユーザーを支援するテキストをライトバック分析に含めることができます。

  • テンプレート・メカニズムは、任意の新しいレコードの入力には適しません。このメカニズムをデータ入力ツールとして使用しないでください。

  • ライトバック用にテーブルを作成する場合、少なくとも1つの列にライトバック機能が組み込まれず、各行に固有かつNULL以外の値が含まれるようにします。

  • ライトバック分析ではドリルダウンがサポートされていません。ドリルダウンを実行すると表の構造が変わるため、ライトバック・テンプレートが機能しなくなります。

    注意:

    テンプレート・メカニズムでは、ユーザーの入力が取得され、データベースに直接書き込まれます。物理データベースのセキュリティについては、管理者が責任を持って対処してください。最大限のセキュリティを確保するには、ライトバック・データベース表を固有のデータベース・インスタンスに格納します。

ライトバック・テンプレート・ファイルの作成

ライトバック・テンプレート・ファイルは、1つ以上のライトバック・テンプレートを含むXML形式のファイルです。

ライトバック・テンプレートは、テンプレートの名前を指定するWebMessage要素、接続プール、および作成したライトバック表と列のレコードの挿入と更新に必要なSQL文で構成されます。コンテンツ・デザイナがライトバックに対して表ビューを有効にした場合、コンテンツ・デザイナは、表ビューでのレコードの挿入および更新に使用するライトバック・テンプレートの名前を指定する必要があります。

複数のライトバック・テンプレート・ファイルを作成できます。複数のライトバック・テンプレートを1つのテンプレート・ファイルに含め、それぞれのテンプレートを特定の分析で使用するフィールド用にカスタマイズできます。ただし、1つのファイルには1つのテンプレートのみを含めることをベスト・プラクティスとしてお薦めします。

コンソールで設定することもできます。コンソールでの詳細システム設定の構成分析、ダッシュボードおよびピクセルパーフェクト・レポートのオプションを参照してください。

  1. XMLファイルを作成します。custommessagesフォルダにあるすべてのXMLファイルがシステムに読み取られるため、ライトバック・テンプレート・ファイルには任意の名前を付けることができます。
  2. 「ライトバック・テンプレートの要件」に指定された要件と「例: ライトバック・テンプレート・ファイル」に示した例に従って適切な要素を追加します。
  3. ライトバック・テンプレート・ファイルは、管理者が静的ファイルとカスタマ・メッセージ用に構成した、次の場所にあるmsgdbディレクトリに保存します。

    SDD/components/OBIPS/custommessages

    SDDは、DOMAIN_HOME/bidataなどのシングルトン・データ・ディレクトリです。

    言語固有のユーザー・インタフェースに影響するXMLメッセージはローカライズする必要がありますが、ライトバック・テンプレートの構成に使用するXMLファイルは、言語に依存しないため、通常翻訳しません。

    まれに、ライトバック・テンプレート・ファイルを言語固有にする必要がある場合があります(たとえば、l_es(スペイン語)ロケールを使用してログインするユーザーと、l_fr(フランス語)ロケールを使用してログインするユーザーが、異なるSQLコマンドを使用する場合など)。その場合は、ライトバック・テンプレート・ファイルを適切な言語ディレクトリに配置します。

ライトバック・テンプレートの要件

ライトバック・テンプレートでは、次の要件を満たす必要があります。

  • ライトバック・テンプレートの名前は、WebMessage要素のname属性を使用して指定する必要があります。

    ライトバックを正しく機能させるには、ライトバックに対して表ビューを有効にする際に、ビューでのレコードの挿入および更新に使用するライトバック・テンプレートの名前をコンテンツ・デザイナが指定する必要があります。

    次の例では、SetQuotaUseIDというライトバック・テンプレートを指定しています。

    <WebMessage name="SetQuotaUseID">
    
  • セキュリティ要件を満たすために、レコードの挿入と更新を実行するSQLコマンドとともに接続プールを指定する必要があります。これらのSQLコマンドでは、ライトバック・スキーマで渡され、データベース表を変更するためのSQL文を生成する値が参照されます。値は列位置(@1や@3など)または列ID(@{c1234abc}や@{c687dfg}など)によって参照できます。列位置の開始番号は1です。列IDの使用が優先されます。各列IDはランダムに生成された英数字であり、分析エディタの「詳細設定」タブにある分析のXML定義に表示されます。

  • <insert>要素と<update>要素の両方をテンプレートに含める必要があります。これらの要素内にSQLコマンドを挿入しない場合は、開始タグと終了タグの間に空白を挿入する必要があります。たとえば、次のように要素を入力する必要があります。

    <insert> </insert>
    

    次は不適切な例です

    <insert></insert>
    

    空白を省略すると、「システムがライトバック・テンプレート'my_template'を読み取ることができません。」のようなライトバック・エラー・メッセージが表示されます。

  • パラメータのデータ型が整数または実数でない場合は、一重引用符で値を囲みます。データベースがコミットを自動的に実行しない場合は、insertノードとupdateノードの後にオプションのpostUpdateノードを追加してコミットを強制的に実行します。一般的なpostUpdateノードの例を次に示します。

    <postUpdate>COMMIT</postUpdate>
    

例20-1 例: ライトバック・テンプレート・ファイル

列IDで値を参照するライトバック・テンプレート・ファイルは次のようなものです。

<?xml version="1.0" encoding="utf-8" ?>
<WebMessageTables xmlns:sawm="com.siebel.analytics.web/message/v1">
<WebMessageTable lang="en-us" system="WriteBack" table="Messages">
   <WebMessage name="SetQuotaUseID">
      <XML>
         <writeBack connectionPool="Supplier">
            <insert>INSERT INTO regiontypequota VALUES(@{c0},@{c1},'@{c2}','@{c3}',@{c4})</insert>
            <update>UPDATE regiontypequota SET Dollars=@{c4} WHERE YR=@{c0} AND Quarter=@{c1} AND Region='@{c2}' AND ItemType='@{c3}'</update>
         </writeBack>
      </XML>
   </WebMessage>
</WebMessageTable>
</WebMessageTables>

列位置で値を参照するライトバック・テンプレート・ファイルは次のようなものです。

<?xml version="1.0" encoding="utf-8" ?>
<WebMessageTables xmlns:sawm="com.siebel.analytics.web/message/v1">
<WebMessageTable lang="en-us" system="WriteBack" table="Messages">
   <WebMessage name="SetQuota">
      <XML>
         <writeBack connectionPool="Supplier">
            <insert>INSERT INTO regiontypequota VALUES(@1,@2,'@3','@4',@5)</insert>
            <update>UPDATE regiontypequota SET Dollars=@5 WHERE YR=@1 AND Quarter=@2 AND Region='@3' AND ItemType='@4'</update>
         </writeBack>
      </XML>
   </WebMessage>
</WebMessageTable>
</WebMessageTables>

LightWriteback要素の設定

ユーザーが値のライトバックを実行できるようにするには、instanceconfig.xmlファイルにLightWriteback要素を手動で追加する必要があります。

  1. 次のinstanceconfig.xmlファイルを開いて編集します。

    BI_DOMAIN/config/fmwconfig/biconfig/OBIPS

  2. LightWriteback要素を追加する必要があるServerInstanceセクションを見つけます。
  3. 次の例に示すように、必要な要素とその祖先要素を追加します。
    <WebConfig>
        <ServerInstance>
            <LightWriteback>true</LightWriteback>
        </ServerInstance>
    </WebConfig>
    

    ファイルに含まれていても、Fusion Middleware Controlによって集中管理され、手動による変更はできない要素については、この例では除外されていることに注意してください。

  4. 変更内容を保存し、ファイルを閉じます。
  5. システムを再起動します。