プライマリ元帳からの複製が制御された法的エンティティ固有のセカンダリ元帳

金融サービスやその他のサービス業界の一部の企業では、複数の国で事業を運営する際に、単一の機能通貨を共有し、複数の国の会計を単一のプライマリ元帳に記録するという決定をする場合があります。

たとえば、カナダと米国の事業運営をUSDの機能通貨で表示し、会計トランザクションをVision Corporation North Americaという単一のプライマリ元帳に記録するとします。

セカンダリ元帳は、各国の法定レポート要件に対応するために必要になる場合があります。この例では、次の補助元帳がそれぞれ作成されます:

  • Vision Corporation Canada
  • Vision Corporation US

Vision Corporation North Americaのプライマリ元帳に仕訳が転記されると、通常はそのすべての会計仕訳が、関連するセカンダリ元帳(Vision Corporation Canada、Vision Corporation US)に伝播されます。「プライマリ元帳からの複製が制御された法的エンティティ固有のセカンダリ元帳」機能を使用すると、仕訳レベルのセカンダリ元帳に、関連するプライマリ元帳の部分的な会計表示のみを含めることができます。

プライマリ元帳を仕訳レベルのセカンダリ元帳にマッピングするときに、仕訳換算ルールを設定できます。このルールには、含めるか除外する仕訳ソースとカテゴリを指定します。プライマリ元帳仕訳が転記されると、これらのルールによって、セカンダリ元帳で作成するのに適格な仕訳が決定されます。

仕訳換算ルールに加えて、プライマリ貸借一致セグメント値に対する換算ルールを定義して、プライマリ元帳とその法的エンティティに割り当てられているプライマリ貸借一致セグメント値のサブセットを割り当てることができます。たとえば、Vision Corporation North Americaのプライマリ元帳をVision Corporation Canadaのセカンダリ元帳にマップする場合は、カナダの法的エンティティに関連付けられているVision Corporation North Americaのプライマリ元帳のプライマリ貸借一致セグメント値を選択して、プライマリ貸借一致セグメント換算ルールを定義します。

Vision Corporation North Americaのプライマリ元帳に仕訳が転記されると、プライマリ貸借一致セグメント値換算ルールに定義されているプライマリ貸借一致セグメント値を持つ仕訳明細のみが、会計プロセスによってVision Corporation Canadaのセカンダリ元帳に伝播されます。

この機能により、プライマリ元帳が複数の法的エンティティまたは国を表している場合に、特定の法的エンティティの仕訳レベルのセカンダリ元帳に組織が効果的に値を移入できます。これは、補助元帳レベルのセカンダリ元帳または補助元帳トランザクションに基づくレポートが求められる、規制要件が厳しい企業に対してはサポートされていません。

ノート: 「プライマリ元帳からの複製が制御された法的エンティティ固有のセカンダリ元帳」機能を採用する前に考慮する必要がある事項の完全なリストは、My Oracle SupportのCloud ERP Enterprise Structures White Paper (文書ID 2415848.1)を参照してください。

この機能を設定および使用するためのステップの要約を次に示します:

  1. プライマリ貸借一致セグメント値による複製を有効にします。
  2. プライマリ貸借一致セグメント値換算ルールを定義します。
  3. 「プライマリ貸借一致セグメント値による仕訳の複製」プロセスを実行します。
ノート: この機能は、仕訳データ換算レベルがあるセカンダリ元帳にのみ適用できます。

プライマリ貸借一致セグメント値からの複製の制御の使用に関する考慮事項

法的エンティティ固有のセカンダリ元帳機能はセカンダリ元帳に直接入力するため、Oracle AssetsやOracle Costingなどの評価方法アプリケーションには該当しません。

ただし、これらは両方とも、このアプローチとの互換性を保つための機能をサポートしています。

  • 資産管理では、複数の台帳を元帳に割り当てることができます。国ごとに個別の会計用資産台帳を定義します。プライマリ元帳にそれを割り当てて、対応する税務資産台帳を国固有のセカンダリ元帳に割り当てます。
  • 原価計算では、原価組織と取得価額台帳の組合せが、プライマリ元帳、または評価方法に対応したセカンダリ元帳に割り当てられます。原価組織は単一の法的エンティティに属している(さらに法的エンティティは国固有である)ため、国ごとに個別の原価組織を定義してください。

法的エンティティ固有のセカンダリ元帳では、すべての国の現地の規制に完全には準拠できない場合があります。この構成を採用する前に、次の点を慎重に検討してください:

  • 現地のコンプライアンス。必要なすべてのレポートが現地の規制および監査要件に準拠していることを確認してください。特に、Oracle Subledger Accountingの仕訳に依存するセカンダリ元帳で実行するレポートが、予期しない結果になる可能性があります。税金および監査レポートの詳細な要件がある国では問題が発生します。
  • 設定の適用可能性。元帳オプションは、すべての国と法的エンティティに適用されます。たとえば、会計オプションや連番などが含まれます。プライマリ元帳によってホストされるすべての国に対して、自分の選択が有効かどうかを判断してください。
  • 国固有のプロセス。元帳レベルの処理を個別に管理しないでください。たとえば、期間のクローズなどです。個別の国に対して、期間をオープンおよびクローズすることはできません。
  • 自動処理のデフォルト。自動プロセスによってデフォルト設定された値が、すべての国に対して有効であることを確認してください。
  • ユーザビリティ。手動仕訳などの手動手続きによってデフォルト設定された値が、すべての国に当てはまることを確認してください。そうでない場合、ユーザーがデフォルト値を上書きできるように準備する必要があります。
  • その他の国固有の機能。国の事業運営のサブセットに対して機能が実装されている場合は、他の国の事業の円滑な運営に影響がないことを確認してください。

法的エンティティ固有のセカンダリ元帳は、規制レポート要件が緩い国で事業を展開している財務サービスの会社に最も適しています。Oracle Fusion Cloud ERPのビジネス・ユニットには、他にも考慮事項があります。My Oracle SupportのCloud ERP Enterprise Structures White Paper (文書ID 2415848.1)のBusiness Units, Ledgers, and Legal Entities in Financialsの項を参照してください。

プライマリ貸借一致セグメント値による複製の有効化

この例では、Vision Corporation North Americaは、米国に拠点を置くグローバル企業であり、すべてのプライマリ会計トランザクションが国内の様々な法的エンティティにまたがって記録され、USDがグローバル通貨になっています。

法的エンティティの現地規制の税レポートのために、セカンダリ元帳(Vision Corporation CanadaやVision Corporation USなど)がそれぞれの国に作成されています。Vision Corporation Canadaの会計仕訳には、米国などVision Corporation North Americaの他の国の会計トランザクション入力ではなく、カナダの法的エンティティに属する会計トランザクションのみをレポートする必要があります。

カナダの法的エンティティに関連する会計トランザクションのみを保持するために、Vision Corporation North Americaのプライマリ元帳からVision Corporation Canadaのセカンダリ元帳へのプライマリ貸借一致セグメント値ごとの仕訳の複製を管理者が有効にできます。

複製を有効にするステップは、次のとおりです。

  1. 「設定および保守」作業領域で、「標準参照の管理」タスクに移動し、ORA_ERP_CONTROLLED_CONFIG参照タイプを検索します。
  2. 「参照コード」セクションで、参照コードGL_35799450を追加し、「使用可能」チェック・ボックスを選択します。該当する開始日を入力して保存します。
  3. 「設定および保守」作業領域で、プライマリ元帳からセカンダリ元帳へのマッピングの完了タスクに移動します。
    • オファリング: 財務
    • 機能領域: 一般会計
    • タスク: プライマリ元帳の範囲をVision Corporation North America、セカンダリ元帳の範囲をVision Corporation Canadaに設定して、プライマリ元帳からセカンダリ元帳へのマッピングを完了する
  4. 「プライマリ元帳からセカンダリ元帳へのマッピング」ページの「プライマリ貸借一致セグメント値換算ルール」セクションで、「プライマリ貸借一致セグメント値による仕訳の複製」チェック・ボックスを選択します。
    注意: このチェック・ボックスは有効にすると無効にできないため、このステップを実行する前に、この機能を使用するためのお客様の要件を確認してください。

    チェック・ボックスを有効にした後、プライマリ貸借一致セグメント値ルールを定義する前に監査を有効にすることをお薦めします。これは、任意の時点で追加または削除されたプライマリ貸借一致セグメント値を監査者が追跡するのに役立ちます。

  5. マッピングを保存します。
ノート: 新規または既存のセカンダリ元帳に対して複製を有効にできます。新しいセカンダリ元帳については、「レポート通貨またはセカンダリ元帳での期首残高仕訳の作成」プロセスを実行して、プライマリ貸借一致セグメント値による複製を有効にする前に、セカンダリ元帳の残高を初期化できます。

プライマリ貸借一致セグメント値換算ルールの定義

プライマリ貸借一致セグメント値換算ルールを定義する前に、監査を有効にして、任意の時点で追加または削除されるプライマリ貸借一致セグメント値を追跡することをお薦めします。

監査を有効にするには、「設定および保守」作業領域で「監査ポリシーの管理」タスクに移動します。

  • オファリング: 財務
  • 機能領域: アプリケーション拡張
  • 製品のビジネス・オブジェクト属性の構成: 一般会計
  • オブジェクト名: プライマリ貸借一致セグメント値換算ルール

プライマリ貸借一致セグメント値換算ルールは、「プライマリ元帳からセカンダリ元帳へのマッピング」ページの「プライマリ貸借一致セグメント値換算ルール」セクションで定義します。「設定および保守」作業領域で、プライマリ元帳からセカンダリ元帳へのマッピングの完了タスクに移動します。

  • オファリング: 財務
  • 機能領域: 一般会計
  • タスク: プライマリ元帳とセカンダリ元帳の範囲を設定して、プライマリ元帳からセカンダリ元帳へのマッピングを完了する
これらの値タイプに対してプライマリ貸借一致セグメント値ルールを定義できます。
ノート: 値、摘要および法的エンティティに基づいてプライマリ貸借一致セグメント値を検索できます。
  • 単一値: 子値を含むルール。
  • 親値: 値セットに親値を含むルール。
  • すべての値: すべてのプライマリ貸借一致セグメント値のプライマリ元帳から、関連するセカンダリ元帳に仕訳が複製されます。

    たとえば、「プライマリ貸借一致セグメント値による仕訳の複製」チェック・ボックスを有効にしたが、Vision Corporation North Americaのプライマリ元帳およびその法的エンティティのプライマリ貸借一致セグメント値のサブセットは、Vision Corporation Canadaのセカンダリ元帳に割り当てる必要がない場合は、「すべての値」値タイプを選択して1つのルールを定義できます。

ノート: 「単一値」および「親値」値タイプを使用して値のサブセットを定義することも、すべての値に対してルールを定義することもできます。どちらも相互に排他的です。値タイプが「すべての値」のルールを定義すると、値のサブセットを指定したルールを定義できなくなります。

次に、ツリー・コードとツリー・バージョンの考慮事項を示します。

  • 「親値」値タイプを使用してプライマリ貸借一致セグメント値ルールを定義する場合は、関連するツリー・コードおよびバージョンを選択する必要があります。プライマリ貸借一致セグメント値に関連付けられたデフォルト・ツリー・コードがデフォルト設定されます。セカンダリ元帳の要件のために特別なレポート・ツリー・コードを維持する必要がある場合は、関連するツリー・コードを選択できます。
  • 選択したツリー・コードのすべてのアクティブなツリー・バージョンが「ツリー・バージョン」フィールドにリストされます。親値ベースのプライマリ貸借一致セグメント値ルールを定義する関連ツリー・バージョンを選択できます。
  • プライマリ貸借一致セグメント値変換ルールの定義後にツリー・コードまたはバージョンを変更すると、親値タイプのルールが新しいツリー・コードおよびバージョンに対して有効かどうかが検証されます。そうでない場合、警告メッセージが表示され、無効な親値が削除されます。ツリー・コードおよびバージョンはいつでも変更できますが、レポート要件に対応するために、プライマリ貸借一致セグメント値による複製に対しては特定のツリー・コードを使用することをお薦めします。

プライマリ貸借一致セグメント値による仕訳の複製方法

プライマリ貸借一致セグメント値換算ルールを定義すると、プライマリ元帳の仕訳を転記しても、プライマリ元帳仕訳がセカンダリ元帳に複製またはコピーされなくなります。

かわりに、プライマリ貸借一致セグメント値による複製が有効な場合は、「プライマリ貸借一致セグメント値による仕訳の複製」プロセスを実行する必要があります。

次に、パラメータを示します。

  • ソース元帳: これはプライマリ元帳です。
  • ターゲット元帳: これはセカンダリ元帳です。選択したソース元帳に対してプライマリ貸借一致セグメント値による複製が有効なすべてのセカンダリ元帳が値リストに表示されます。

このプロセスでは、割当済プライマリ貸借一致セグメント値に基づいて、ソース元帳(Vision Corporation North Americaなど)のすべての転記済仕訳が、セカンダリ元帳(Vision Corporation Canadaなど)に複製されます。プライマリ貸借一致セグメント値換算ルールの割当済プライマリ貸借一致セグメント値に基づいて、プライマリ元帳の会計仕訳のサブセットがセカンダリ元帳に伝播されます。

ノート: 「ターゲット元帳」パラメータを空白のままにすると、プライマリ貸借一致セグメント値による複製が有効なすべての関連セカンダリ元帳にプライマリ元帳仕訳が複製されます。割当済プライマリ貸借一致セグメント値に基づいて会計仕訳が複製されます。

たとえば、Vision Corporation North Americaのプライマリ元帳の、Vision Corporation Canadaのセカンダリ元帳とVision Corporation USのセカンダリ元帳の間のように、セカンダリ元帳に関連した法的エンティティ間の会社間トランザクションがある場合に、プライマリ貸借一致セグメント値のサブセットの複製をセカンダリ元帳で有効にすると、Vision Corporation Canadaのセカンダリ元帳とVision Corporation USのセカンダリ元帳の2つの仕訳の間で会社間トランザクション仕訳明細がそれぞれ分割されます。このプロセスでは、Vision Corporation North Americaのプライマリ元帳から会社間貸借一致明細が、関連するセカンダリ元帳にコピーされます。