PL/SQLオプティマイザ
Oracle Database 10gリリース1より前のPL/SQLコンパイラは、パフォーマンスの向上のための変更を適用せずに、作成されたソース・テキストをシステム・コードに変換していました。今回のリリースのPL/SQLでは、コードのパフォーマンスが向上するように再調整する機能を持つオプティマイザが使用されます。
このオプティマイザは、デフォルトで使用可能です。まれに、オプティマイザのオーバーヘッドによって、非常に大規模なアプリケーションをコンパイルするときに時間が長くかかる場合がありますが、この場合、(デフォルト値2のかわりに)コンパイル・パラメータPLSQL_OPTIMIZE_LEVEL=1
を設定して、最適化レベルを低くすることができます。また、非常にまれですが、PL/SQLによって予測より早く例外が呼び出されたり、例外が1つも呼び出されなくなる場合があります。PLSQL_OPTIMIZE_LEVEL=1
に設定すると、コードは再調整されません。
関連項目:
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PLSQL_OPTIMIZE_LEVEL
コンパイル・パラメータの詳細は、『Oracle Databaseリファレンス』を参照してください。 -
PLSQL_OPTIMIZE_LEVEL
コンパイル・パラメータの変更例については、『Oracle Database開発ガイド』を参照してください。 -
静的ディクショナリ・ビュー
ALL_PLSQL_OBJECT_SETTINGS
の詳細は、『Oracle Databaseリファレンス』を参照してください。
サブプログラムのインライン化
コンパイラが実行できる最適化の1つとして、サブプログラムのインライン化があります。
サブプログラムのインライン化によって、サブプログラムの起動は、起動先サブプログラムのコピーに置き換えられます(起動先と起動元のサブプログラムが同じプログラム・ユニット内に存在する場合)。サブプログラムのインライン化を実行できるようにするには、PLSQL_OPTIMIZE_LEVEL
コンパイル・パラメータのデフォルト値(2)を受け入れるか、またはこのパラメータを3に設定します。
PLSQL_OPTIMIZE_LEVEL=2
の場合、次のようにINLINE
プラグマを使用して、インライン化する各サブプログラムを指定する必要があります。
PRAGMA INLINE (subprogram, 'YES')
subprogram
がオーバーロードされた場合、前述のプラグマは、指定された名前を持つすべてのサブプログラムに適用されます。
PLSQL_OPTIMIZE_LEVEL=3
の場合、PL/SQLコンパイラは、サブプログラムをインライン化する機会を探ります。インライン化するサブプログラムをユーザーが指定する必要はありません。ただし、(前述の構文に従って)INLINE
プラグマを使用し、サブプログラムのインライン化に高い優先順位を指定することができ、その後、他の考慮事項または制限のためインライン化が望ましくない場合を除き、コンパイラによってサブプログラムがインライン化されます。
特定のサブプログラムがインライン化されている場合は、ほぼ常にパフォーマンスが向上します。ただし、コンパイラは最適化プロセスの初期の段階でサブプログラムをインライン化するため、サブプログラムのインライン化によって、後の段階でのより強力な最適化が妨げられる可能性があります。
サブプログラムのインライン化によって特定のPL/SQLプログラムのパフォーマンスが低下する場合は、PL/SQL階層型プロファイラを使用して、インライン化を無効にするサブプログラムを識別します。サブプログラムのインライン化を無効にするには、INLINE
プラグマを次のように使用します。
PRAGMA INLINE (subprogram, 'NO')
INLINE
プラグマは、直後にある宣言または文および一部の種類の文にのみ影響します。
INLINE
プラグマが宣言の直前にある場合は、次のものに影響します。
-
その宣言に指定されたサブプログラムのすべての起動
-
その宣言内のすべての初期化値(レコードのデフォルトの初期化値を除く)
INLINE
プラグマは、次に示すいずれかの文の直前にある場合、その文に指定されたサブプログラムのすべての起動に影響します。
-
代入
-
CALL
-
条件付き
-
CASE
-
CONTINUE
WHEN
-
EXECUTE
IMMEDIATE
-
EXIT
WHEN
-
LOOP
-
RETURN
INLINE
プラグマは、前述のリストにない文には影響しません。
複数のプラグマが、同じ宣言または文に影響する場合があります。各プラグマは、文に対して独自の影響を及ぼします。PRAGMA
INLINE(
subprogram,
'YES')
およびPRAGMA
INLINE(
identifier,
'NO')
に同じsubprogram
が含まれている場合、'NO'
は'YES'
をオーバーライドします。1つのPRAGMA
INLINE(
subprogram,
'NO')
は、任意の数のPRAGMA
INLINE(
subprogram,
'YES')
をオーバーライドしますが、これらのプラグマの順序は重要ではありません。
関連項目:
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PL/SQL階層プロファイラの詳細は、『Oracle Database開発ガイド』を参照してください
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PLSQL_OPTIMIZE_LEVEL
コンパイル・パラメータの詳細は、『Oracle Databaseリファレンス』を参照してください。 -
静的ディクショナリ・ビュー
ALL_PLSQL_OBJECT_SETTINGS
の詳細は、『Oracle Databaseリファレンス』を参照してください。
例13-1 サブプログラムのインライン化の指定
この例では、PLSQL_OPTIMIZE_LEVEL=2
の場合、INLINE
プラグマは、プロシージャの起動p1(1)
およびp1(2)
には影響しますが、プロシージャの起動p1(3)
およびp1(4)
には影響しません。
PROCEDURE p1 (x PLS_INTEGER) IS ...
...
PRAGMA INLINE (p1, 'YES');
x:= p1(1) + p1(2) + 17; -- These 2 invocations to p1 are inlined
...
x:= p1(3) + p1(4) + 17; -- These 2 invocations to p1 are not inlined
...
例13-2 オーバーロードされたサブプログラムのインライン化の指定
この例では、PLSQL_OPTIMIZE_LEVEL=2
の場合、INLINE
プラグマは、p2
という名前の両方のファンクションに影響します。
FUNCTION p2 (p boolean) return PLS_INTEGER IS ...
FUNCTION p2 (x PLS_INTEGER) return PLS_INTEGER IS ...
...
PRAGMA INLINE(p2, 'YES');
x := p2(true) + p2(3);
...
例13-3 サブプログラムの非インライン化の指定
この例では、INLINE
プラグマは、プロシージャの起動p1(1)
およびp1(2)
には影響しますが、プロシージャの起動p1(3)
およびp1(4)
には影響しません。
PROCEDURE p1 (x PLS_INTEGER) IS ...
...
PRAGMA INLINE (p1, 'NO');
x:= p1(1) + p1(2) + 17; -- These 2 invocations to p1 are not inlined
...
x:= p1(3) + p1(4) + 17; -- These 2 invocations to p1 might be inlined
...
例13-4 PRAGMA INLINE ... 'NO'によるPRAGMA INLINE ... 'YES'のオーバーライド
この例では、2番目のINLINE
プラグマは1番目と3番目のINLINE
プラグマをオーバーライドします。
PROCEDURE p1 (x PLS_INTEGER) IS ... ... PRAGMA INLINE (p1, 'YES'); PRAGMA INLINE (p1, 'NO'); PRAGMA INLINE (p1, 'YES'); x:= p1(1) + p1(2) + 17; -- These 2 invocations to p1 are not inlined ...