8.2.2.1 ローリング更新および非ローリング更新の理解

データベースがオンラインで使用可能な間はローリング形式でソフトウェア更新を実行し、Oracle ClusterwareおよびOracle Databaseが停止している場合は非ローリング形式で実行できます。

更新を実行する形式は、更新の頻度には影響しませんが、更新にかかる時間には影響します。一般に、次の2つの方式があります。

  • ローリング・ソフトウェア更新 — ローリング・ソフトウェア更新は、一度に1つの特定のコンポーネントに対して実行される更新で、他のコンポーネントはリクエストの処理中オンラインのままです。ローリング・ソフトウェア更新について次の重要な点に注意してください。

    • ローリング更新では、アプリケーション停止時間が非ローリング更新より短くなります。

    • 更新が完了するまでの時間全体は長くなります。これは、1つのコンポーネントがオフラインで一度に更新され、他のすべてのコンポーネントはオンラインのままで稼働しているためです。

    • 既存のデータベース接続への影響は、更新されるコンポーネントに応じて異なります。

      • Oracle Exadataストレージ・サーバーまたはRDMAネットワーク・ファブリック・スイッチのローリング更新 — ローリング更新中、すべてのデータベースは完全にオンラインで使用可能なままです。データベース接続への中断はありません。

      • Oracle Exadataデータベース・サーバー、Oracle Grid InfrastructureまたはOracle Databaseのローリング更新 — Oracle Real Application Clusters (Oracle RAC)を使用するマルチインスタンス・データベースは、更新中も使用可能です。ただし、ローカル・データベース・インスタンスが停止すると、更新されるサーバー上のデータベース接続は中断されます。表8-1に説明されているように、クライアントの高可用性のためのOracle RACの機能を使用して、アプリケーションの中断を最小限にします。

  • 非ローリング・ソフトウェア更新 — 非ローリング・ソフトウェア更新は、すべての特定のコンポーネントに対して実行される更新で、これらのコンポーネントはオフラインになります。非ローリング・ソフトウェア更新について次の重要な点に注意してください。

    • 非ローリング更新は、メンテナンス時間全体ではローリング更新より高速です。これは、複数のコンポーネントがパラレルに更新されるためです。
    • 更新中、すべての特定のコンポーネントがオフラインで、1つのデータベース(またはシステム上のすべてのデータベース)もオフラインになるため、結果としてアプリケーションへの完全な停止となります
    • 非ローリング形式で更新されるOracle Exadataによって処理された重要なアプリケーションは、Oracle Data Guardを使用する環境のスタンバイ・システムに頻繁に移動されます。
  • ローリング・ソフトウェア更新と非ローリング・ソフトウェア更新の組合せ — 同じメンテナンス・ウィンドウで複数のコンポーネントを更新する場合、ローリング方式と非ローリング方式の組合せを使用して、アプリケーションの停止時間とメンテナンス時間の望ましいバランスを実現できます。アプリケーションが接続の中断を効率的に処理しない状況で使用される一般的な組合せとして、Oracle Exadataストレージ・サーバーとRDMAネットワーク・ファブリック・スイッチの更新をローリング形式で実行してから、Oracle Grid InfrastructureOracle DatabaseおよびOracle Exadataデータベース・サーバーの更新を非ローリング形式で実行します。

patchmgr更新ユーティリティは、Oracle Exadataのインフラストラクチャ・コンポーネント(ストレージ・サーバー、データベース・サーバーおよびRDMAネットワーク・ファブリック・スイッチ)のローリング形式または非ローリング形式での更新オーケストレーションを管理します。

次の表は、各コンポート・タイプでサポートされる更新方式を説明しています。

表8-1 ローリング・アップグレードと非ローリング・アップグレード

方式 コンポーネントのサポート 更新中のデータベース可用性の影響

ローリング

Oracle Exadataストレージ・サーバー

影響なし。

Oracle RACおよび単一インスタンス・データベースは、クラスタ内のすべてのノードで完全に使用可能なままです。

ローリング

RDMAネットワーク・ファブリックのスイッチ

影響なし。

Oracle RACおよび単一インスタンス・データベースは、クラスタ内のすべてのノードで完全に使用可能なままです。

ローリング

Oracle Exadataデータベース・サーバー

ローカル接続が切断され、すべてのローカル・インスタンスが停止します。

Oracle RACデータベースは、クラスタ内の他のノード全体で使用可能なままです。

ローリング

Oracle Grid Infrastructure

ローカル接続が切断され、すべてのローカル・インスタンスが停止します。

Oracle RACデータベースは、クラスタ内の他のノード全体で使用可能なままです。

ローリング

Oracle Database - リリース更新(RU)

更新されるデータベース・ホームでは、ローカル接続が切断され、ローカル・インスタンスが停止します。

Oracle RACデータベースは、クラスタ内の他のノード全体で使用可能なままです。

他のOracle Databaseソフトウェア・ホームから実行するデータベースは影響を受けません。

非ローリング

  • Oracle Exadataストレージ・サーバー

  • Oracle Exadataデータベース・サーバー

  • Oracle Grid Infrastructure

  • Oracle Database - リリース更新(RU)

  • Oracle Database - パッチ・セット

  • Oracle Database - リリース

データベース使用不可

ワークロードをOracle Data GuardまたはOracle GoldenGateスタンバイ・システムに移動して、影響を最小限に抑えます。