4 リカバリ・アプライアンス・バックアップ・モジュールの概要

リカバリ・アプライアンス・バックアップ・モジュールはOracleが提供するSBTライブラリで、メディア管理ライブラリとして機能します。RMANではリカバリ・アプライアンス・バックアップ・モジュールを使用して、バックアップ・データをネットワーク経由でリカバリ・アプライアンスに転送します。バックアップ・モジュールは、リカバリ・アプライアンスへのバックアップまたはリカバリ操作で使用するRMAN SBTチャネルの割当て/構成を行う際に参照されます。リカバリ・アプライアンスへのバックアップ操作および完全バックアップ・セットのリストア操作はすべてこのバックアップ・モジュールを介して実行されます。

リカバリ・アプライアンス・バックアップ・モジュールのインストール場所

リカバリ・アプライアンス・バックアップ・モジュールは次の場所にインストールする必要があります。

  • RMANを使用してリカバリ・アプライアンスにバックアップされるすべての保護されたデータベースのOracleホーム内

    特定のOracleホームが複数の保護されたデータベースによって使用されている場合、このOracleホームにはバックアップ・モジュールを1回だけインストールする必要があります。

  • レプリケーション環境でバックアップをダウンストリーム・リカバリ・アプライアンスに送信するすべてのアップストリーム・リカバリ・アプライアンス上

    リカバリ・アプライアンス・バックアップ・モジュールのライブラリ(libra.so)は、リカバリ・アプライアンスに事前インストールされています。ただし、レプリケーション・ユーザー資格証明が含まれているOracleウォレットが、アップストリーム・リカバリ・アプライアンスで構成されている必要があります。

リカバリ・アプライアンス・バックアップ・モジュールの構成ファイル

リカバリ・アプライアンス・バックアップ・モジュールの構成ファイルには、保護されたデータベースとリカバリ・アプライアンスとの通信で使用する構成設定が含まれています。リカバリ・アプライアンス・バックアップ・モジュールが保護されたデータベースのホストにインストールされる際に、構成ファイルが自動的に作成されます。

リカバリ・アプライアンス・バックアップ・モジュールの一部の構成パラメータは、リカバリ・アプライアンスで使用するRMAN SBTチャネルを構成または割り当てる際にインラインで設定することもできます(例3-3および例3-4を参照)。

関連項目:

リカバリ・アプライアンス・バックアップ・モジュールのインストール時に指定可能な構成パラメータについては、「リカバリ・アプライアンス・バックアップ・モジュールの構成パラメータ」を参照してください

リカバリ・アプライアンス・バックアップ・モジュールの構成パラメータ

表4-1に、リカバリ・アプライアンス・バックアップ・モジュールのインストール時に使用される構成パラメータを示します。これらのパラメータは、リカバリ・アプライアンスへのバックアップ時とリカバリ・アプライアンスからのリストア時に、保護されたデータベースで使用します。

表4-1 リカバリ・アプライアンス・バックアップ・モジュールのインストーラ・パラメータ

パラメータ名 必須/オプション 説明

dbUser

必須

保護されたデータベースのバックアップへの接続や送受信に必要な権限を持つリカバリ・アプライアンス・ユーザーのユーザー名。

dbPass

必須

dbUserユーザーのパスワード。

host

必須

リカバリ・アプライアンスのSCANホスト名。

port

必須

リカバリ・アプライアンスのメタデータ・データベースのリスナー・ポート番号。

serviceName

必須

リカバリ・アプライアンスのメタデータ・データベースのサービス名。

walletDir

必須

リカバリ・アプライアンスへの接続に使用するリカバリ・アプライアンス・ユーザーの資格証明とプロキシ情報が格納されるOracleウォレットの場所。

ノート: このディレクトリ内にOracleウォレットがすでに存在する場合、リカバリ・アプライアンス・バックアップ・モジュールのインストーラによって既存のウォレットが上書きされます。

proxyHost

オプション

リカバリ・アプライアンスへのHTTP接続に使用するプロキシ・サーバーのホスト名(IPアドレス)およびTCPポート(書式: host:port)。

configFile

オプション

リカバリ・アプライアンス・バックアップ・モジュールの構成パラメータが格納されている構成ファイルの場所。

Linux/UNIXでは、デフォルトの場所は$ORACLE_HOME/dbs/raORACLE_SID.oraです。Windowsでは、デフォルトの場所は$ORACLE_HOME\database\raORACLE_SID.oraです。

libDir

オプション

リカバリ・アプライアンス・バックアップ・モジュールの共有ライブラリの格納場所。このライブラリを使用して、バックアップ・データをネットワーク経由でリカバリ・アプライアンスに転送します。

共有ライブラリは、$ORACLE_HOME/lib (Linux/UNIXの場合)および$ORACLE_HOME\database\lib (Windowsの場合)に格納することをお薦めします。

このパラメータを省略すると、インストーラは共有ライブラリをダウンロードしません。以前にバックアップ・モジュールをインストール済のOracleホームにOracleウォレットと構成ファイルを再生成する場合は、ライブラリをダウンロードする必要はありません。

libPlatform

オプション

リカバリ・アプライアンス・バックアップ・モジュールをインストールする必要がある保護されたデータベースのホストのプラットフォーム名。

通常、リカバリ・アプライアンス・バックアップ・モジュールのインストーラが、実行中のプラットフォームを自動的に判断します。このパラメータを設定する必要があるのは、プラットフォームを特定できないことを示すエラーがインストーラによって表示された場合のみです。

プラットフォーム名として有効な値は、linux64、windows64、solaris_sparc64、solaris_sparcx64、zlinux64、aix_ppc64およびhpux_ia64です。

argFile

オプション

リカバリ・アプライアンス・バックアップ・モジュールのインストール時に読み取る必要のある他のコマンドライン・パラメータの読取り元ファイル。

リカバリ・アプライアンス・バックアップ・モジュールのインストール

保護されたデータベースは、リカバリ・アプライアンス・バックアップ・モジュールを介してリカバリ・アプライアンスと通信します。保護されたデータベースをリカバリ・アプライアンスに登録する前に、保護されたデータベースのホストにバックアップ・モジュールをインストールする必要があります。

リカバリ・アプライアンス・バックアップ・モジュールのインストール時に、保護されたデータベースとリカバリ・アプライアンスとの認証に必要な資格証明が格納されるOracleウォレットが作成されます。追加のOracleウォレットも作成できます。

リカバリ・アプライアンス・バックアップ・モジュールをインストールするには:

  1. 「リカバリ・アプライアンス・バックアップ・モジュールのインストールの準備」で説明している準備タスクを完了します。
  2. 「リカバリ・アプライアンス・バックアップ・モジュールのインストーラの入手」の説明に従って、リカバリ・アプライアンス・バックアップ・モジュールのインストーラをダウンロードします。
  3. 「リカバリ・アプライアンス・バックアップ・モジュールのインストーラの実行」の説明に従って、1つ以上の保護されたデータベースが含まれている各Oracleホームに、リカバリ・アプライアンス・バックアップ・モジュールをインストールします。

関連項目:

リカバリ・アプライアンス・バックアップ・モジュールのインストールの準備

リカバリ・アプライアンス・バックアップ・モジュールをインストールする前に、次のステップを完了してください。

  • Javaバージョン1.5以上が搭載されていることを確認します。

  • リカバリ・アプライアンス管理者に問い合せて、次の情報を入手します。

    • リカバリ・アプライアンスのホスト名およびポート番号

    • 保護されたデータベースとリカバリ・アプライアンスとの認証で使用するリカバリ・アプライアンス・ユーザーの資格証明

      保護されたデータベースのバックアップおよびリカバリ操作の実行に必要な権限を、リカバリ・アプライアンス・ユーザーに割り当てる必要があります。

  • 保護されたデータベースのリリースがOracle Database 10gリリース2以上であることを確認します。

リカバリ・アプライアンス・バックアップ・モジュールのインストーラの入手

リカバリ・アプライアンス・バックアップ・モジュールのインストーラは、Oracle Technology Network (OTN)からダウンロードするか、リカバリ・アプライアンスから入手できます。

リカバリ・アプライアンスでは、インストーラはra_installer.zipという名前で、ORACLE_HOME/libディレクトリ内にあります。インストール時、リカバリ・アプライアンス・バックアップ・モジュールはまず、ご使用のプラットフォームに必要なモジュールをOTNからダウンロードしようとします。OTNにアクセスできない場合、インストーラは必要なライブラリをリカバリ・アプライアンスから取得します。

リカバリ・アプライアンス・バックアップ・モジュールのインストーラをOTNからダウンロードするには:

  1. 次のOTNのURLにアクセスします。
  2. OTNアカウントの資格証明を使用してサインインします。
  3. 「ライセンス契約に同意する」を選択し、OTNライセンス契約に同意します。
  4. サポートされているすべてのプラットフォームをクリックして、ご使用のプラットフォーム用のリカバリ・アプライアンス・バックアップ・モジュールをダウンロードします。

    リカバリ・アプライアンスのインストーラの名前はra_installer.zipです。

リカバリ・アプライアンス・バックアップ・モジュールのインストーラの実行

保護されたデータベースのホスト・ファイル・システムにリカバリ・アプライアンス・バックアップ・モジュールをインストールします。リカバリ・アプライアンス・バックアップ・モジュールは共有ライブラリなので、保護されたデータベースのすべてのインスタンスが参照できる共有ライブラリの検索パス内の場所にインストールする必要があります。たとえばOracleデータベースでは、$ORACLE_HOME/libが共有ライブラリのデフォルトの場所です。

リカバリ・アプライアンス・バックアップ・モジュールの場所は、ALLOCATE CHANNELまたはCONFIGURE CHANNELコマンドで、SBT_LIBRARYパラメータを指定して使用できます。

リカバリ・アプライアンス・バックアップ・モジュールのインストーラを実行するには:

  1. 「リカバリ・アプライアンス・バックアップ・モジュールのインストーラの入手」でダウンロードしたインストーラをローカル・ディレクトリに解凍します。

    インストーラには、ra_install.jarおよびra_readme.txtの各ファイルが含まれています。

  2. ORACLE_HOME環境変数が保護されたデータベースのOracleホームに設定されていることを確認します。
  3. 必須パラメータを指定してインストーラra_install.jarを実行します。表4-1に、リカバリ・アプライアンス・バックアップ・モジュールのインストールに必要なパラメータを示します。

    たとえば、次のコマンドではVPCのユーザー名rauser11およびパスワードrau11pswdを使用して、リカバリ・アプライアンスのインストーラを実行します。リカバリ・アプライアンスの資格証明が格納されているOracleウォレットは$ORACLE_HOME/dbs/ra_walletに、リカバリ・アプライアンス・バックアップ・モジュール用のSBTライブラリは$ORACLE_HOME/libにそれぞれ格納されます。リカバリ・アプライアンスの単一クライアント・アクセス名(SCAN)はra-scan、リカバリ・アプライアンスのメタデータ・データベースのリスナー・ポート番号は1521、リカバリ・アプライアンスのメタデータ・データベースのサービス名はmyzdlraです。

    % java -jar ra_install.jar -dbUser rauser11 -dbPass rau11pswd -host ra-scan -port 1521 
    -serviceName myzdlra -walletDir $ORACLE_HOME/dba/ra_wallet -libDir $ORACLE_HOME/lib 
    -proxyHost www-proxy.mycompany.com
    

保護されたデータベースの操作を管理するEnterprise Manager管理者の作成

Enterprise Manager管理者とは、1つ以上の保護されたデータベースのデータ保護を管理するために必要なロールおよび権限を持つEnterprise Managerユーザーです。

protdb_adminという名前のEnterprise Manager管理者を作成するには:

  1. 他のEnterprise Manager管理者アカウントを作成する権限を持つEnterprise Manager管理者として、Cloud Controlにログインします。

  2. 「設定」メニューから、「セキュリティ」「管理者」の順に選択します。

    管理者ページが表示されます。

  3. 「作成」をクリックして、「管理者の作成: プロパティ」ページを表示します。

  4. 「名前」および「パスワード」の各フィールドに、新しいEnterprise Manager管理者の資格証明を入力します。この例では、Enterprise Manager管理者の名前はprotdb_adminです。

    「パスワード・プロファイル」フィールドではDEFAULTが選択されています。この値を変更する必要はありません。このページの他のフィールドには必要に応じて情報を入力します。

  5. 「次へ」をクリックして、「管理者protdb_adminの作成: ロール」ページを表示します。

  6. EM_USERロールを「使用可能なロール」リストから「選択したロール」リストに移動して、「次へ」をクリックします。

    「管理者protdb_adminの作成: ターゲット権限」ページが表示されます。

  7. 「ターゲット権限」セクションで、新しいEnterprise Manager管理者がアクセスする必要があるすべてのターゲットの権限を追加します。保護されたデータベースの操作を管理する管理者に必要なターゲット権限は次のとおりです。

    • このEnterprise Manager管理ユーザーによって管理される保護されたデータベースに対応するターゲット: 完全権限

    • このEnterprise Manager管理ユーザーによって管理される各保護されたデータベースのホストに対応するターゲット: 完全権限

    • 保護されたデータベースのバックアップの送信先になるリカバリ・アプライアンスに対応するターゲット: 表示権限。

    これらのターゲットに対して権限を追加するには、次のようにします。

    1. 「追加」をクリックして、「検索と追加: ターゲット」ダイアログを表示します。

    2. 「ターゲット名」、「ターゲット・タイプ」、「ホスト上」の各フィルタを使用して、ターゲットを検索します。ターゲットを選択し、「選択」をクリックします。

      選択したターゲットが「ターゲット権限」セクション内のターゲットのリストに追加されます。

    3. 権限は、「すべてに付与」ボタンを使用してリスト内のすべてのターゲットに指定するか、個々のターゲットを選択し、「選択したものに付与」ボタンをクリックして指定できます。いずれの場合も、上で指定したターゲットに適切な権限を後続の権限の割当て画面で選択し、「続行」をクリックして「ターゲット権限」ページに戻ります。

    新しいEnterprise Managerユーザーによって管理されるターゲットごとに、必要に応じてこれらのステップを繰り返します。

  8. 「次へ」をクリックして、「管理者protdb_adminの作成: EMリソース権限」ページを表示します。

  9. 次のステップを実行してください。

    • ジョブ・システム権限の場合は、「権限付与の管理」列の「編集」アイコンをクリックします。「リソース・タイプ権限」セクションで、「作成」を選択してから、「続行」をクリックします。

    • EM管理ユーザーに既存の資格証明へのアクセス権を付与するには、「名前付き資格証明」列の「編集」アイコンをクリックします。「リソース権限」セクションで「追加」をクリックし、このEnterprise Manager管理者に関連付ける必要がある名前付き資格証明を選択します。

  10. 「確認」をクリックして、「管理者protdb_adminの作成: 確認」ページを表示します。

    この新しいユーザーのプロパティ、ロールおよび権限が表示されます。設定を確認し、修正する場合は「戻る」をクリックします。

  11. 「終了」をクリックすると、Enterprise Manager管理者が作成されます。