ファイングレイン・アクセス・コントロールのMarbleサンプル
Marbleチェーンコード・アプリケーションを使用すると、一意の属性(名前、サイズ、色および所有者)を持つアセット(marble)を作成し、これらのアセットをブロックチェーン・ネットワークの他の参加者とやり取りできます。
このサンプル・アプリケーションには様々な関数が用意されており、特定のユーザーに関数を制限するために、アクセス制御リストやグループをどのように使用するかを確認できます。
サンプルの概要
サンプルに含まれているテスト・シナリオには、アセットを管理するために次の制限があります:
- 赤のmarbleの一括転送が許可されるのは、
redMarblesTransferPermissionファブリック属性を持つIDのみです。 - 青のmarbleの一括転送が許可されるのは、
blueMarblesTransferPermissionファブリック属性を持つIDのみです。 - marbleの削除が許可されるのは、
deleteMarblePermissionファブリック属性を持つIDのみです。
これらの制限は、fgMarbles_chaincode.goチェーンコードに次のライブラリ・メソッドを実装することで強制されます:
bulkMarblesTransferGroupというファイングレインACLグループを作成します。このグループには、色に基づいてmarbleを転送できるすべてのIDを定義します(一括転送):createGroup(stub, []string{" bulkMarblesTransferGroup", "List of Identities allowed to Transfer Marbles in Bulk", "%ATTR%redMarblesTransferPermission=true, %ATTR%blueMarblesTransferPermission=true", ".ACLs"})bulkMarblesTransferGroupに赤いmarbleの一括転送アクセス権を付与するredMarblesAclというファイングレインACLを作成します:createACL(stub, []string{"redMarblesAcl", "ACL to control who can transfer red marbles in bulk", "redMarblesTransferPermission", "%GRP%bulkMarblesTransferGroup", "true", ".ACLs"})bulkMarblesTransferGroupに青いmarbleの一括転送アクセス権を付与するblueMarblesAclというファイングレインACLを作成します:createACL(stub, []string{"blueMarblesAcl", "ACL to control who can transfer blue marbles in bulk", "blueMarblesTransferPermission", "%GRP%bulkMarblesTransferGroup", "true", ".ACLs"})deleteMarbleAclというファイングレインACLを作成し、canDeleteMarble=trueファブリック属性に基づいてmarbleの削除を制限します:createACL(stub, []string{"deleteMarbleAcl", "ACL to control who can Delete a Marble", "deleteMarblePermission", "%ATTR%deleteMarblePermission=true", "true", ".ACLs"})marbleというファイングレインACLリソースを作成し、作成した各種ACLを使用して操作を制御します:createResource(stub, []string{"marble", "System marble resource", "deleteMarbleAcl,blueMarblesAcl,redMarblesAcl,.ACLs"})
前提条件と設定
marblesサンプルのファイングレイン・アクセス・コントロール・バージョンを実行するには、次のステップを実行します:
- marbleサンプルのファイングレイン・アクセス・コントロール・バージョンをダウンロードします。「開発者ツール」タブで、「サンプル」ペインを開き、ファイングレンACLを含むMarbleの下にあるダウンロード・リンクをクリックします。このパッケージを抽出します。このパッケージには、marblesサンプルのZIPファイル(
fgACL_MarbleSampleCC.zip)、サンプルを実行するNode.jsファイル(fgACL-NodeJSCode.zip)およびファイングレイン・アクセス・コントロール・ライブラリ(Fine-GrainedAccessControlLibrary.zip)が含まれます。 - Blockchain Platformにデプロイするチェーンコード・パッケージを生成します:
fgACL_MarbleSampleCC.zipファイルの内容をfgACL_MarbleSampleCCディレクトリに抽出します。fgACL_MarbleSampleCCディレクトリの内容は、fgACL_Operations.go、fgGroups_Operations.go、fgMarbles_chaincode.go、fgResource_Operations.goおよびgo.modファイルおよびoracle.comディレクトリになります。- コマンドラインから、
fgACL_MarbleSampleCCディレクトリに移動し、GO111MODULE=on go mod vendorを実行します。このコマンドは、必要な依存関係をダウンロードし、vendorディレクトリに追加します。 fgACL_MarbleSampleCCディレクトリのすべての内容(4つのGoファイル、go.modファイルおよびvendorディレクトリとoracle.comディレクトリ)をZIP形式で圧縮します。これで、チェーンコードをBlockchain Platformにデプロイできます。
- 「クイック・デプロイメントの使用」の説明に従って、更新されたサンプルのチェーンコード・パッケージ(
fgACL_MarbleSampleCC.zip)をインストールしてデプロイします。 - 「開発者ツール」タブで、「アプリケーション開発」ペインを開き、手順に従ってNode.js SDKをダウンロードします。
- 「開発者ツール」タブで、「アプリケーション開発」ペインを開き、開発パッケージのダウンロードをクリックします。
- サンプルと一緒にダウンロードしたNode.jsファイルがあるフォルダに開発パッケージを抽出します。
network.yamlファイルで、certificateAuthoritiesエントリとそのregistrarエントリを探します。network.yamlをダウンロードする際、管理者のパスワードはマスクされています(***に変換されています)。このサンプルを実行するときには、管理者のパスワードがクリア・テキストに置き換えられている必要があります。
- Blockchain Platformインスタンスに新しいIDを登録します:
- テナンシにマップされているIDCSのIDCS (次のステップで
<NewIdentity>と表記されているもの)に新規ユーザーを作成します。 - このユーザーに、インスタンスの
CA_Userアプリケーション・ロールを付与します。
- テナンシにマップされているIDCSのIDCS (次のステップで
ファイングレイン・アクセス・コントロールのMarbleサンプルの実装
新しいユーザーを登録し、Node.jsスクリプトを使用してACL制限を実装するには、次のステップを実行します。
- 新規ユーザーを登録します:
node registerEnrollUser.js <NewIdentity> <Password> - 初期化します: アクセス制御リストを初期化します。
node invokeQueryCC.js <NewIdentity> <Password> <ChannelName> <ChaincodeName> ACLInitialization - アクセス制御リスト、グループおよびリソースを作成します: これにより、概要で説明したACLリソースが作成されます。
node invokeQueryCC.js <NewIdentity> <Password> <ChannelName> <ChaincodeName> createFineGrainedAclSampleResources - テストmarbleリソースを作成します: これにより、複数のテストmarbleアセット(tomが所有するblue1およびblue2、jerryが所有するred1およびred2、spikeが所有するgreen1およびgreen2)が作成されます。
node invokeQueryCC.js <NewIdentity> <Password> <ChannelName> <ChaincodeName> createTestMarbles
アクセス制御のテスト
アクセス制御リストにより、各関数の実行が適切なユーザーのみに許可されていることをテストするには、サンプル・シナリオをいくつか実行します。
- marbleを転送します: marble
blue1をtmからjerryに転送します。1つのmarbleを転送できるユーザーに制限はないため、これは正常に完了します。node invokeQueryCC.js <NewIdentity> <Password> <ChannelName> <ChaincodeName> transferMarble blue1 jerry - marbleを管理ユーザーとして転送します: marble
blue1をjerryからspikeに転送します。1つのmarbleを転送できるユーザーに制限はないため、これも正常に完了します。node invokeQueryCC.js <AdminIdentity> <Password> <ChannelName> <ChaincodeName> transferMarble blue1 spike - 履歴を取得します:
blue1という名前のmarbleの履歴を問い合せます。最初にjerryに転送され、次にspikeに転送されたと返されます。node invokeQueryCC.js <AdminIdentity> <Password> <ChannelName> <ChaincodeName> getHistoryForMarble blue1 - 赤いmarbleをすべて転送します: 新しく登録されたIDには
redMarblesTransferPermission=trueという必要なファブリック属性があるため、redMarblesAclACLでこの転送が許可され、赤いmarble 2つがtomに転送されます。node invokeQueryCC.js <NewIdentity> <Password> <ChannelName> <ChaincodeName> transferMarblesBasedOnColor red tom - 管理ユーザーとして赤いmarbleをすべて転送します: 管理IDには
redMarblesTransferPermission=trueファブリック属性がないため、redMarblesAclACLにより、この転送はブロックされます。node invokeQueryCC.js <AdminIdentity> <Password> <ChannelName> <ChaincodeName> transferMarblesBasedOnColor red jerry - 緑のmarbleをすべて転送します: デフォルトでは、明示的に定義されたアクセスのみが許可されます。緑のmarbleの一括転送を許可するACLはないため、この転送は失敗します。
node invokeQueryCC.js <NewIdentity> <Password> <ChannelName> <ChaincodeName> transferMarblesBasedOnColor green tom - marbleを削除します: 新しく登録されたIDには
deleteMarblePermission=trueという必要なファブリック属性があるため、deleteMarbleAclACLではこの削除が許可されます。node invokeQueryCC.js <NewIdentity> <Password> <ChannelName> <ChaincodeName> delete green1 - 管理ユーザーとしてmarbleを削除します: 管理IDには
deleteMarblePermission=trueという必要なファブリック属性がないため、deleteMarbleAclACLによって、この削除は阻止されます。node invokeQueryCC.js < AdminIdentity > <Password> <ChannelName> <ChaincodeName> delete green2
サンプル・ファイル・リファレンス
後続の表には、サンプルに含まれているチェーンコードやアプリケーション・ファイルで使用可能なメソッドを示します。
fgMarbles_chaincode.go
| 関数 | 説明 |
|---|---|
initMarble |
新しいmarbleを作成します |
transferMarble |
名前に基づいて、ある所有者から別の所有者にmarbleを転送します |
createTestMarbles |
initMarbleをコールして、テスト用の新しいサンプルmarbleを作成します
|
createFineGrainedAclSampleResources |
テスト・シナリオで必要なファイングレイン・アクセス・コントロールのリスト(ACL)、グループおよびリソースを作成します |
transferMarblesBasedOnColor |
特定の色の複数のmarbleを別の所有者に転送します |
delete |
marbleを削除します |
readMarble |
名前に基づいてmarbleのすべての属性を返します |
getHistoryForMarble |
marbleの値の履歴を返します |
fgACL_Operations.go
| メソッド | パラメータ | 説明 |
|---|---|---|
getACL |
|
指定されたACLを取得するか、すべてのACLを読み取ります。メソッドを起動するユーザーには、指定されたACLに対するREADアクセス権が必要です。 |
createACL |
|
新しいACLを作成するには、メソッドを起動するユーザーに、.ACLsという名前のブートストラップ・リソースに対するCREATEアクセス権が必要です。ACLの名前を重複させることはできません
|
deleteACL |
|
メソッドを起動するユーザーには、指定されたACLに対するDELETEアクセス権が必要です。 |
updateACL |
|
メソッドを起動するユーザーには、指定されたリソースに対するUPDATEアクセス権が必要で、指定されたACLが存在する必要があります。 |
addAfterACL |
|
メソッドを起動するユーザーには、指定されたリソースに対するUPDATEアクセス権が必要で、指定されたACLが存在する必要があります。 |
addBeforeACL |
|
メソッドを起動するユーザーには、指定されたリソースに対するUPDATEアクセス権が必要で、指定されたACLが存在する必要があります。 |
addPatternToACL |
|
メソッドを起動するユーザーには、指定されたリソースに対するUPDATEアクセス権が必要で、指定されたACLが存在する必要があります。 |
removePatternFromACL |
|
メソッドを起動するユーザーには、指定されたリソースに対するUPDATEアクセス権が必要で、指定されたACLが存在する必要があります。 |
updateDescription |
|
メソッドを起動するユーザーには、指定されたリソースに対するUPDATEアクセス権が必要で、指定されたACLが存在する必要があります。 |
removeBindACL |
|
メソッドを起動するユーザーには、指定されたリソースに対するUPDATEアクセス権が必要で、指定されたACLが存在する必要があります。 |
addAccess |
|
メソッドを起動するユーザーには、指定されたリソースに対するUPDATEアクセス権が必要で、指定されたACLが存在する必要があります。 |
removeAccess |
|
メソッドを起動するユーザーには、指定されたリソースに対するUPDATEアクセス権が必要で、指定されたACLが存在する必要があります。 |
ACLInitialization |
|
この関数は、ファイングレインACLサポートの初期化に使用します。 |
fgGroups_Operations.go
| メソッド | パラメータ | 説明 |
|---|---|---|
getGroup |
|
name= メソッドを起動するユーザーには、このグループに対するREADアクセス権が必要です。 |
createGroup |
|
メソッドを起動するユーザーには、ブートストラップ・グループ |
deleteGroup |
|
メソッドを起動するユーザーには、このグループに対するDELETEアクセス権が必要です。 |
addAfterGroup |
|
メソッドを起動するユーザーには、このグループに対するUPDATEアクセス権が必要です。 |
addBeforeGroup |
|
メソッドを起動するユーザーには、このグループに対するUPDATEアクセス権が必要です。 |
updateDescriptionForGroup |
|
メソッドを起動するユーザーには、このグループに対するUPDATEアクセス権が必要です。 |
removeBindAclFromGroup |
|
メソッドを起動するユーザーには、このグループに対するUPDATEアクセス権が必要です。 |
addMembersToGroup |
|
メソッドを起動するユーザーには、このグループに対するUPDATEアクセス権が必要です。 |
removeMembersFromGroup |
|
メソッドを起動するユーザーには、このグループに対するUPDATEアクセス権が必要です。 |
fgResource_Operations.go
| メソッド | パラメータ | 説明 |
|---|---|---|
createResource |
|
メソッドを呼び出すユーザーには、.Resourcesという名前のブートストラップ・リソースに対するCREATEアクセス権が必要です。リソースの名前を重複させることはできません。
|
getResource |
|
メソッドを起動するユーザーには、リソースに対するREADアクセス権が必要です |
deleteResource |
|
メソッドを起動するユーザーには、指定されたリソースに対するDELETEアクセス権が必要です |
addAfterACLInResource |
|
メソッドを起動するユーザーには、このリソースに対するUPDATEアクセス権が必要です |
addBeforeACLInResource |
|
メソッドを起動するユーザーには、このリソースに対するUPDATEアクセス権が必要です |
updateDescriptionInResource |
|
メソッドを起動するユーザーには、このリソースに対するUPDATEアクセス権が必要です |
removeBindACLInResource |
|
メソッドを起動するユーザーには、このリソースに対するUPDATEアクセス権が必要です |
checkResourceAccess |
|
メソッドを起動している現在のユーザーに、指定リソースに対する指定のアクセス権があるかどうかを確認します。 |