サービス・レベル合意の設定および使用

サービス・レベル合意(SLA)は、指定した期間における予測されるサービス品質に関する、サービス・プロバイダと顧客との間の契約です。SLAは、異なるビジネス・カレンダおよび異なるサービス期間用に、提供するサービス・レベルを定義する、1つまたは複数のサービス・レベル・オブジェクト(SLO)で構成されます。SLAを満たしているかどうかは、基礎となるSLOの評価に基づきます。サービス・レベル・インジケータ(SLI)は、SLOを測定および定量化できます。SLOには、1つ以上のSLIを使用できます。

SLOは提供されるサービス・レベルの目標を定義します。SLOは想定可能な個別のサービス・レベル・インジケータ(SLI)の論理グループです。たとえば、SLOはユーザーがサービスを使用可能な時間の割合や、応答時間またはボリュームを単位としてサービスがどの程度実行されているかなどを定義できます。サービス・レベル・インジケータ(SLI)は、定量化可能なパフォーマンスおよび使用状況メトリックで、サービスの品質を評価するのに使用できます。

SLAを作成するには、次のステップに従います。

  1. EM_ADMINISTRATORロールを持つユーザーでEnterprise Managerにログインします。
  2. 「ターゲット」メニューから「サービス」を選択します。
  3. リストで「汎用サービス」ターゲットをクリックします。「サービス・ホーム」ページが表示されます。
  4. 「汎用サービス」メニューで、「サービス・レベル合意」「構成」の順に選択します。サービス・レベル合意構成ページが表示されます。
  5. このページには、選択したサービスに対して定義されたすべてのSLAのリストが表示されます。このリストからSLAを選択し、「サービス・レベル合意の詳細」表に詳細を表示します。SLAを作成することも、既存のSLAのコピーを作成(Create Like)することもできます。
  6. 「サービス・レベル合意」リージョンで、「作成」をクリックします。サービス・レベル合意ページが表示されます。

    図9-1 サービス・レベル合意の作成: サービス・レベル合意の構成


    サービス・レベル合意の構成

    次の詳細を入力します。

    • SLAの名前と説明。

    • SLAが作成されている顧客の名前。

    • SLAのライフサイクル・ステータス。SLAの作成中は、定義ステージング内に存在します。ライフサイクル・ステータスの詳細は、「SLAのライフサイクル」を参照してください。

    • 「SLA期間」を指定します。これは、SLAがコンプライアンスに対して決定および評価される契約上の期間です(四半期、月次、週次SLAなど)。「選択」アイコンをクリックして、「毎月」、「毎週」、または「毎日」を選択します。SLAが評価される頻度と、SLAが評価される元のデータを入力します。SLAが評価されると、SLAの目標はリセットされます。

      たとえば、SLAの評価期間を「毎月」に、「頻度」を12に、日付を09/01/24に指定した場合、SLAはその日に評価され、その後、連続して11回(10月、11月、というように)評価されます。

    • SLA合意期間を指定します。これは繰返しSLA期間が有効となる「開始」および「終了日」です。ここで「終了日」を指定しないと、SLAの有効期限は「無期限」になります。

    • SLOはサービスにスケジュールされた計画停止またはブラックアウトのため、評価されないときがあります。「サービス・レベル合意の評価オプション」リージョンで、「サービス・レベル目標値評価にブラックアウト時間(計画ダウンタイム)を含める」チェック・ボックスを選択し、ブラックアウト時間をSLO評価に含めるかどうかを指定します。次のいずれかを選択できます。

      • 満たす条件として時間を含める

      • 満たさない条件として時間を含める

      • SLOの全体の計算で、ブラックアウト時間を除外します。

      たとえば、1週間のうちブラックアウトまたは計画停止が1日の場合、週の可用性は(7-1) / (7-1)日で、これは依然として100%の可用性です。

      デフォルトでは、「サービス・レベル目標値評価にブラックアウト時間(計画ダウンタイム)を含める」オプションは選択されていません。

  7. 「次」をクリックします。サービス・レベル目標値ページで、SLAの一部として、1つ以上のSLOを定義します。SLAの「評価条件」を次のように選択できます。
    • すべてのサービス・レベル目標値を満たす必要があります

    • 1つ以上のサービス・レベル目標値を満たす必要があります

    SLAには1つ以上のSLOが必要です。一度に複数のSLOをアクティブにできます。すべてのSLOを満たす必要がある、または1つ以上のSLOを満たす必要があるかのいずれかを指定できます。

  8. 「作成」をクリックして、新しいSLOを定義します。詳細は、「サービス・レベル目標の作成」を参照してください。
  9. SLOを追加、または定義済のSLOを編集できます。「次」をクリックします。サービス・レベル合意の有効化ページで、SLAが有効化されるときを指定できます。次のいずれかを選択できます。
    • 有効にしない: 有効化されていないSLAは定義状態であり、必要に応じて変更できます。

    • すぐに有効化: 有効化されているSLAはアクティブ状態なので変更できません。

    • 後で有効化: SLAは指定した日に、後で変更できます。

  10. 「次へ」をクリックして、SLAの詳細を確認し、「発行」をクリックします。SLAが指定した日に有効化され、サービス・レベル合意構成ページに戻ります。

SLAのアクション可能なアイテム・ルール

次の表に、SLAでその状態に基づき実行できるアクションのリストを示します。

SLAの状態 類似作成 編集 有効化 無効化 削除

定義

はい

はい

はい

いいえ

はい

スケジュール済

はい

はい

いいえ

はい

いいえ

アクティブ

はい

いいえ

いいえ

はい

いいえ

撤収

はい

いいえ

いいえ

いいえ

はい

  • 状態が「スケジュール済」または「アクティブ」のSLAは直接削除できません。削除する前にSLAを無効化する必要があります。

  • 「スケジュール済」状態のSLAを編集するときは、SLAの状態は「定義」に変わります。

サービス・レベル目標値の作成

サービス・レベル目標では、指定した測定ウィンドウに対する1つ以上のインジケータのサービス・レベルを測定します。サービス・レベル目標(SLO)は提供されるサービス・レベルを定義します。SLAが満たしているとみなす条件を指定できます。

  • すべてのサービス・レベル目標値を満たしている。

  • 1つ以上のサービス・レベル目標値を満たしている。

SLOを作成するには、次のステップに従います。

  1. サービス・レベル目標値の構成ページで「作成」をクリックします。サービス・レベル目標値の作成ページが表示されます。

    図9-2 サービス・レベル目標値の作成


    サービス・レベル目標値の作成

  2. 次の詳細を入力します:
    • 定義されるSLOの名前。

    • SLOのタイプ: SLOは可用性またはパフォーマンス・メトリックに基づくことができます。

    • 予測されるサービス・レベル(%): SLAが満たされていることを保証する、SLO条件が満たす時間の割合。

    • 警告アラート・レベル(%): SLO条件が指定したしきい値を満たしていない場合、クリティカル・アラートが生成されます。

      たとえば、「予測されるサービス・レベル(%)」が90%で、「実際のサービス・レベル(%)」が90から99%の範囲の場合、警告アラートが生成されます。「実際のサービス・レベル(%)」が90%より下の場合、クリティカル・アラートが生成されます。これはSLAが違反していることを示します。「実際のサービス・レベル(%)」が99%より上の場合、SLA条件は十分満たされていることを示します。

    • 測定ウィンドウ: SLOが有効な期間。測定ウィンドウには複数の期間を割り当てることができます。たとえば、測定ウィンドウを、月曜日から金曜日の午前9時から午後6時までを平日のピーク時間として、週末のピーク時間を午前10時から午後2時として構成することができます。

      SLOの作成時に、SLO用に複数のビジネス・カレンダを選択できます。たとえば、各SLOを午前8時から午後5時まで昼食時間(正午から午後1時)を除いて評価するとします。2つの測定ウィンドウを作成し、測定対象から昼食時間を除くことができます。

      2つの測定ウィンドウをマージする別の例は、カレンダ評価を使用して週次評価を結合する場合です。SLOを毎週月曜日と毎月の15日に評価する場合、2つのモニタリング・ウィンドウを作成し、両方のウィンドウにその条件を含めることができます。

      デフォルトでは、3つの事前定義済のビジネス・カレンダがあります。さらに、独自のカレンダを作成することもできます。詳細は「カスタムSLAビジネス・カレンダの定義」を参照してください。

  3. 「次」をクリックします。サービス・レベル・インジケータの作成ページで、SLOを測定できるようにする、1つ以上のSLIまたは条件を追加できます。

    図9-3 サービス・レベル・インジケータの作成


    サービス・レベル・インジケータの作成

    たとえば、パフォーマンスSLIを追加している場合、ページ・リード時間が3秒以下である必要があると指定できます。この条件が満たされないと、SLIは違反しているとみなされます。SLIの評価条件を指定します。

    • すべてのサービス・レベル・インジケータを満たす必要があります

    • 1つ以上のサービス・レベル・インジケータを満たす必要があります。

  4. 「追加」をクリックして、1つ以上のメトリックを追加し、値と評価条件を指定します。「発行」をクリックして、サービス・レベル目標値の構成ページに戻ります。

SLAのライフサイクル

次の図に、SLAのライフサイクルを示します。

図9-4 SLAのライフサイクル


SLAのライフサイクル

SLAのライフサイクルは、次のフェーズで構成されます。

  • 定義: SLAが作成されSLOが定義されるステージです。SLAがアクティブ化されるまでSLA定義を構成または編集できます。

  • スケジュール済: このステージはSLAが将来の日付に有効化されるようにスケジュールされる前の期間を表します。

  • アクティブ: スケジュール済SLAの開始日に達する、またはSLAが手動で有効化されるステージです。

  • 撤収: SLAが有効期限に達する、またはSLAが手動で無効化されるステージです。

  • 無効: SLAが有効期限に達する前に、手動で無効化できます。SLAを一度無効化すると、再度有効にすることができなくなります。「類似作成」オプションを使用して類似のSLAを作成し、有効化する必要があります。

  • 期限切れ: SLAが有効期限に達した、またはすでにアクティブでないステージです。

  • 削除済: 定義または撤収ステージのSLAは削除できます。「アクティブ」または「スケジュール済」ステージのSLAは削除できません。

サービスのSLAのステータスの表示

サービスのすべてのSLAのステータスを表示できます。サービスのSLAの現在のステータスを表示するには、次のステップに従います。

  1. 「ターゲット」メニューから「サービス」を選択します。
  2. リストで「汎用サービス」ターゲットをクリックします。「サービス・ホーム」ページが表示されます。
  3. 「汎用サービス」メニューで、「サービス・レベル合意」「現在のステータス」の順に選択します。サービス・レベル合意の現在のステータス・ページが表示されます。
  4. このページには、このサービスに定義されたすべてのアクティブなSLAのリストが表示されます。SLAごとに、SLAのステータス、SLA評価期間、およびサービス・レベル目標が表示されます。
  5. SLA内の詳細な情報を表示するSLAを選択します。次の詳細が表示されます。
    • ステータスのトラッキング: これはSLIの瞬時のステータスです。可用性SLOの場合、これはターゲットのステータスです。パフォーマンスSLOの場合、特定の時点のパフォーマンスまたは使用状況メトリックの値です。

    • サービス・レベル(%): SLO条件を満たすか、または「ステータスのトラッキング」がtrueの時間(現在の評価期間の最初から現在の日付まで)の割合。「実際のサービス・レベル(%)」が「予測されるサービス・レベル(%)」よりも低い場合、またはSLO条件を満たしている場合、「サービス・レベル%」グラフは緑色です。

    • タイプ: SLAに対して定義されたSLOのタイプ。これは可用性またはパフォーマンス・メトリックに基づくことができます。可用性SLOは、レスポンス・メトリック[サービス・ターゲット可用性]に基づきます。可用性の目標を満たす必要のあるときの時間の割合または量の形で指定します。パフォーマンスSLOはサービスがどれくらい効率的に実行されているかを測定します。スループットまたはワークロードといった速さおよびボリューム(応答時間、トランザクション/時など)の測定が含まれます。SLOパフォーマンスは、SLIのセット、SLO条件、および可用性の目標を満たす必要のあるときの時間の割合または量のいずれかの形で指定します。

    • SLO違反: 各SLA評価期間の許容違反。

      • 合計: 評価期間 * (予測されるサービス・レベル)の期間。

      • 実績: 評価期間中にSLOが満たされない時間。

      • 残り: SLAの違反なしでSLOを満たすことができない時間。SLOが評価期間中、常に満たされている場合は、使用される許容がなく、「実績」フィールドの値は0になります。

カスタムSLAビジネス・カレンダの定義

ビジネス・カレンダは、サービス・レベル目標値(SLO)を測定する特定の期間を定義する測定ウィンドウです。すぐに使用できる事前定義済のビジネス・カレンダが用意されています。それとは別に、カスタムのビジネス・カレンダを作成できます。カスタムのビジネス・カレンダを作成するには、「ターゲット」メニューから「サービス」を選択します。「サービス機能」メニューから、「ビジネス・カレンダ」を選択します。

定義されたビジネス・カレンダのリストは、ここに表示されます。次の操作を実行できます。

  • 作成: 「作成」をクリックして、ビジネス・カレンダを設定します。ビジネス・カレンダの追加/編集ページが表示されます。

  • 類似作成: カレンダを選択し、「類似作成」をクリックして、このカレンダのコピーを作成します。

  • 編集: カレンダを選択し、「編集」をクリックし、ビジネス・カレンダの追加/編集ページで必要な変更を行います。

  • 削除: カレンダを選択し、「削除」をクリックして削除します。1つ以上のSLAに関連するビジネス・カレンダは編集または削除できません。

  • 関連するサービス・レベル合意の表示: 1つ以上のSLAは、ビジネス・カレンダを使用できます。ビジネス・カレンダを選択し、「関連するサービス・レベル合意の表示」をクリックして、このカレンダに関連付けられているSLAを表示します。