1 スタンドアロン・クライアントの概要

スタンドアロン・クライアントは、WebLogic Serverから独立した実行時環境を持つクライアントです。(Webサービスなどの管理対象クライアントは、サーバーへのアクセスに必要な実行時環境を提供するうえで、サーバー側のコンテナに依存します。)WebLogic Serverアプリケーションにアクセスするスタンドアロン・クライアントは、標準のI/Oを使用する単純なコマンド・ライン・ユーティリティから、Java Swing/AWTクラスを使用して構築された高度な対話型のGUIアプリケーションまで様々です。クライアントの種類、クライアントの機能、およびクライアントの配布方法について学習します。

ノート:

WebLogic Server 14.1.1.0.0では、WebLogic FullクライアントとシンIIOPクライアントは削除されました。かわりに、シンT3クライアントまたはインストール・クライアントを使用することをお薦めします。

クライアントJARファイルの配布

クライアントJAR、およびスタンドアロン・クライアントの作成のためにOracle WebLogic Serverで提供されるその他のリソースを使用するときのライセンス要件について学習します。

「スタンドアロンWebLogicクライアント」を参照してください。

WebLogic T3クライアント

WebLogic T3クライアントは、Oracle T3プロトコルを使用してWebLogic Serverと通信するJava RMIクライアントです。T3クライアントは、他のクライアント・タイプよりもパフォーマンスに優れており、最も推奨されるタイプのクライアントです。

WebLogicシンT3クライアント

WebLogicシンT3 Javaクライアントは、WebLogicインストール・クライアントにかわる軽量のクライアントです。このクライアントは、インストール・クライアントと同じパフォーマンスを実現しますが、使用するJARファイルははるかに小さくなります。シンT3クライアントでは、インストール・クライアントを使用できるほとんどのユース・ケースをサポートしています。

ノート:

WebLogic Server 14.1.1.0.0では、WebLogic FullクライアントとシンIIOPクライアントは削除されました。かわりに、シンT3クライアントまたはインストール・クライアントを使用することをお薦めします。

シンT3クライアントには、Java EEをサポートするバージョンと、Jakarta EEをサポートするバージョンの2つがあります。Java EEシンT3クライアントは、スタンドアロン・アプリケーションで使用でき、外部の(WebLogic以外の)サーバーで実行するアプリケーションで使用できるように設計されています。一般的なユース・ケースの1つは、WebLogic JMS宛先との統合です。JakartaバージョンのシンT3クライアントは、Helidon 3.x JMSが統合されたWebLogic Serverで使用されます。

WebLogicインストール・クライアント

WebLogicインストール・クライアントは、WebLogic Serverのフル・インストールで使用できます。WL_HOME/server/libにあるweblogic.jarファイルを使用し、すべてのWebLogic Server固有の拡張機能のクライアント側のサポートを提供します。次などのサーバー側の操作をサポートする唯一のクライアントです。

  • ejbcコンパイラなど、デプロイメント目的に必要な操作。

  • デプロイメントなどの管理操作。

  • サーバー側の操作を呼び出すWLSTおよびクライアント側のJSR 88アプリケーション。

Java IIOP

IIOPは、Java RMIで記述されたインタフェースを持つ分散アプリケーション向けのトランスポート・プロトコルです。IIOPクライアントの使用が任意の場合には、IIOPクライアントではなくT3クライアントを使用することをお薦めします。

IIOPプロトコルJavaクライアントがWebLogic Server 14.1.1.0.0以降で動作するのは、すべてのJava (リモートおよびローカル)がJDK 8であるか、すべてのJavaがJDK 11である場合、かつ次に該当する場合のみです。
  • Javaクライアントが、相互運用性全体がサポートされているバージョンの別のWebLogic Serverである場合。

  • Javaクライアントが、相互運用性全体がサポートされているバージョンのWebLogicインストール・クライアント(weblogic.jar)である場合。

  • JavaクライアントがWebLogicフル・クライアント(wlfullclient.jar)である場合(クライアントがWLS 14.1.1.0.0より前のバージョンのWebLogic Serverであることが前提)。wlfullclient.jarは、WLS 14.1.1.0.0で削除されたことに注意してください。

  • JavaクライアントがIIOP WebLogicクライアントJAR (wlclient.jar)である場合(クライアントがWLS 14.1.1.0.0より前のバージョンのWebLogic Serverであることが前提)。wlclient.jarは、WLS 14.1.1.0.0で削除されたことに注意してください。

Java IIOPの制限については、表1-1を参照してください。

相互運用性の詳細は、『Oracle WebLogic Serverの理解』プロトコルの互換性に関する項を参照してください。

また、『Oracle WebLogic Server RMIアプリケーションの開発』IIOPでのRMIの使用に関する項も参照してください。

CORBAクライアント

Java単独の環境以外で作業している場合には、IIOPを使用してJavaプログラムをCORBA (Common Object Request Broker Architecture)クライアントに接続し、CORBAオブジェクトを実行できます。IIOPは、インタフェースがJava RMIまたはインタフェース定義言語(Interface Definition Language: IDL)で記述された分散アプリケーション用のトランスポート・プロトコルです。ただし、この2つのモデルは、異種システム間での相互運用可能な環境を作成する方法が明確に異なります。

プログラミングする際に、IDLまたはRMIインタフェースのいずれを使用するかを決定する必要があります。それらを混在させることはできません。WebLogic Serverは、次のCORBAクライアント・モデルをサポートしています。

JMXクライアント

JMXクライアントを使用すると、WebLogic Server MBeanにアクセスできます。

『Oracle WebLogic Server JMXによるカスタム管理ユーティリティの開発』JMXを使用したWebLogic Server MBeanへのアクセスに関する項を参照してください。

JMSクライアント

WebLogic Serverには、Java EEおよびWebLogic JMSの機能を提供するJMSクライアントが数多く用意されています。

ヒント:

Oracle WebLogic JMSクライアントでは、すべての場合においてT3プロトコルを使用する必要があります。

Webサービス・クライアント

スタンドアロンのWebサービス・クライアントは、WebLogicクライアント・クラスを使用して、WebLogic Serverまたは他のアプリケーション・サーバー上でホストされているWebサービスを呼び出します。

Webサービス・クライアントには、Java EEをサポートするバージョンと、Jakarta EEをサポートするバージョンの2つがあります。JakartaバージョンのWebサービス・クライアントは、Helidon 3.x Webサービスが統合されたWebLogic Serverで使用されます。これらのクライアントは、WL_HOME/modules/clientsにあります。

WebLogic Tuxedo Connectorクライアント

WebLogic Tuxedo Connectorでは、WebLogic ServerアプリケーションとTuxedoサービスとの相互運用が実現されます。

次を参照してください。

クライアントと機能

WebLogic Server環境でサポートされているクライアントのタイプおよび機能について学習します。

次の表に、WebLogic Server環境でサポートされるクライアントのタイプと、それぞれの特徴、機能および制約についてまとめます。

ノート:

複数のクライアントを組み合せて拡張機能セットを作成することはサポートされていません。環境に最も適したクライアントを1つ選択し、その種類のクライアントに指定されているクライアント・クラスのみを使用してください。

表1-1 WebLogic Serverクライアントの種類と機能

クライアント 種類 言語 プロトコル クライアント・クラス要件/バンドルされているリソース 主な機能

WLシンT3クライアント

RMI

Java

T3

wlthint3client.jar (Java EEのサポート)

wlthint3client.jakarta.jar (Jakarta EEのサポート)

  • 小さいフットプリント。

  • Oracle WebLogic ServerのRemote Method Invocation (RMI)用のT3/T3Sプロトコル。

  • WebLogic Serverクラスタリングをサポートします。

  • JSSE SSLをサポートします(HTTPトンネリングを伴うものを除く)。

  • IIOPクライアントよりも高速で、スケーラビリティでも優れています。

  • wlsaft3client.jarを使用したWebLogicストア・アンド・フォワード(SAF)サービスを含む、WebLogicクライアントJMSのほとんどの機能。

  • ほとんどのJava EE機能をサポートします。

  • 「WebLogicシンT3クライアントの開発」を参照してください。

クライアントのインストール

RMI

Java

IIOP

weblogic.jar

  • JSSE SSLをサポートします。

  • ほとんどのJava EE機能をサポートしますが、WebLogicクライアントJMSはサポートしません。

  • ejbcコンパイラなど、デプロイメント目的に必要な操作。

  • デプロイメントなどの管理操作をサポートします。

  • サーバー側の操作を呼び出すWLSTおよびクライアント側のJSR 88アプリケーションをサポートします。

  • 「WebLogicインストール・クライアント」を参照してください

クライアントのインストール

RMI

Java

T3

weblogic.jar

  • Oracle WebLogic ServerのRemote Method Invocation (RMI)用のT3/T3Sプロトコル(T3/T3SのHTTPトンネリングを含む)をサポートします。

  • WebLogic Serverクラスタリングをサポートします。

  • JSSE SSLをサポートします。

  • IIOPクライアントよりも高速で、スケーラビリティでも優れています。

  • WebLogic JMSクライアント・ストア・アンド・フォワード(SAF)サービスを含む、WebLogicクライアントJMSのすべての機能。

  • ほとんどのJava EE機能をサポートします。

  • ejbcコンパイラなど、デプロイメント目的に必要な操作をサポートします。

  • デプロイメントなどの管理操作をサポートします。

  • サーバー側の操作を呼び出すWLSTおよびクライアント側のJSR 88アプリケーションをサポートします。

  • 「WebLogicインストール・クライアント」を参照してください

CORBA/IDL

CORBA

OMG IDLからマップする言語(C++、C、Smalltalk、COBOLなど)

IIOP

WebLogicクラスは不要

JMS SAFクライアント

(WebLogic Server 9.2で導入)

RMI

Java

T3

wlsaft3client.jarおよびwlthint3client.jar

JMS Cクライアント

(WebLogic Server 9.0で導入)

JNI

C

T3

WebLogic JMS対応の任意のJavaクライアント(wlthint3client.jarなど)

  • WebLogic JMSアプリケーションおよびリソースにアクセスできるCクライアント・アプリケーション。

  • SSLをサポートします。

  • 「WebLogic JMS C API」を参照してください

JMS .NETクライアント

(WebLogic Server 10.3で導入)

T3

.NET

T3

WebLogic.Messaging.dll動的ライブラリ

WebLogic AQ JMSクライアント

(WebLogic Server 10.3.1で導入)

JNDI

Java

IIOP/T3 +

aqapi.jaro6.jarおよびorai18n.jarに加えて、weblogic.jar(インストール・クライアント)またはwlthint3client.jarのいずれかが必要です。

『Oracle WebLogic Server JMSリソースの管理』スタンドアロンのWebLogic AQ JMSクライアントに関する項を参照してください。

Webサービス

SOAP

Java

HTTP/S

com.oracle.webservices.wls.jaxws-wlswss-client.jar (Java EEのサポート)

com.oracle.webservices.wls.jaxws-wlswss-client.jakarta.jar (Jakarta EEのサポート)

『Oracle WebLogic Server JAX-WS Webサービスの開発』スタンドアロンJava SEクライアントからのWebサービスの起動に関する項を参照してください。

C++クライアント

CORBA

C++

IIOP

Tuxedoライブラリ

TuxedoサーバーおよびネイティブCORBAクライアント

CORBAまたはRMI

C++

Tuxedo-General-Inter-Orb-Protocol

(TGIOP)

Tuxedoライブラリ

RESTful Webサービス・クライアント

JAX-RS

Java

HTTP/S

jersey-client.jar

JAX-RSクライアントAPIをサポートします。