46 保護された本番モードの使用
WebLogic Serverドメインでは、ドメイン・モードによって、ドメインのセキュリティ構成に適用するデフォルト値が決まります。保護された本番モードでは、ドメインのセキュリティ構成に最も厳密なデフォルト値が適用されます。
ドメイン・モードは、最もセキュアでないデフォルト値から最もセキュアなデフォルト値の順に、次のとおりです。
- 開発モード
- 本番モード
- 保護された本番モード
保護された本番モードを有効にすると、WebLogic Serverによって、一部のセキュリティ構成がよりセキュアな値に自動的に設定されます。ただし、追加の構成が必要な特定のセキュリティ構成があります。
ドメイン・モードは、ドメインのセキュリティ構成のデフォルト値のみを指定します。個々の構成を変更して、デフォルト値をオーバーライドすることもできます。デフォルト値をオーバーライドすると、機能要件およびセキュリティ要件を満たすように構成を微調整できますが、保護された本番モードのデフォルト値をオーバーライドすると、環境が保護されなくなる可能性があるため、慎重に行う必要があります。
ドメインがドメイン・モードのセキュリティ基準を満たしていない場合、WebLogic Serverはセキュアでない値にフラグを付け、セキュリティ警告としてレポートします。セキュリティ検証の警告の詳細は、『Oracle WebLogic Server本番環境の保護』の潜在的なセキュリティの問題の確認に関する項を参照してください。ドメインを管理しようとすると、動作の問題が発生することもあります。
各ドメイン・モードのデフォルト値の詳細は、『Oracle WebLogic Server本番環境の保護』のドメインのモードがデフォルトのセキュリティ構成に与える影響の理解に関する項を参照してください。
保護された本番モードは、ドメインを保護するための強力なツールになりますが、複雑さと多様なWebLogic Server環境によって制限されます。ドメインを適切に保護するには、「WebLogicドメインのセキュリティの構成」および『Oracle WebLogic Server本番環境の保護』で説明されている推奨事項を確認してから、必要に応じて環境に適用する必要があります。
ドメイン・モードの変更
ドメイン・モードは、初期ドメイン構成プロセスの一部として指定します。ドメインの作成後にドメイン・モードを変更することは可能ですが、既存のドメイン構成と新しいドメイン・モードによって適用される構成との間の相互作用によって、予期しない結果が生じる可能性があります。
ドメイン・モードはデフォルト値のみを制御するため、明示的に設定した構成はすべて、ドメイン・モードの変更後に保持され、それ以外に使用される値より優先されます。また、新しいドメイン・モードの構成のデフォルト値が既存の明示的な値と一致する場合は、ドメイン構成から明示的な構成(およびその値)が削除されます。その後、以前のドメイン・モードに戻すことにした場合、明示的な構成は残りません。
ドメイン・モードを保護された本番モードに変更する前に、ドメイン構成ファイルconfig.xml
を慎重に確認し、その既存の値をドメイン・モードによって決定されるMBean属性と比較してください。『Oracle WebLogic Server MBeanリファレンス』のMBean属性のセキュアな値に関する項を参照してください。ドメインの作成後にドメイン・モードを変更するには、「ドメイン・モードの変更」を参照してください。
保護された本番モードを有効にするタイミング
WebLogic 14.1.2.0.0では、ドメイン・モードを本番モードに設定すると、デフォルトで保護された本番モードが有効になります。以前のリリースでは、本番モードを有効にすると、保護された本番モードはデフォルトで無効になっており、明示的に有効にする必要がありました。
WebLogic Server 14.1.1.0.0以前からアップグレードした場合、ドメイン・モードの動作は変更されません。たとえば、本番モードのドメインを14.1.1.0.0から14.1.2.0.0以降にアップグレードした場合、保護された本番モードは無効のままになります。ただし、本番モードではないドメインを14.1.2.0.0以上にアップグレードし、その後ドメイン・モードを本番モードに変更すると、デフォルトで保護された本番モードが有効になります。
ノート:
本番モードは、保護された本番モードを無効にした状態で引き続き使用できますが、保護された本番モードを明示的に無効にする必要があります。Oracle WebLogic Remote Consoleオンライン・ヘルプのドメイン・モードの変更に関する項を参照してください。
ドメイン構成ファイルconfig.xml
は、保護された本番モードが有効化されていることを明示的に示しません。これは、保護された本番モードが本番モードのデフォルト状態になったためです。
表46-1 ドメイン構成ファイル(config.xml)でのドメイン・モード
WebLogic Serverのリリース | 保護された本番モードが有効 | 保護された本番モードが無効 |
---|---|---|
14.1.2.0.0以降 |
|
|
14.1.1.0.0以前 |
|
|
ドメイン・モードの変更
既存のドメインでドメイン・モードを変更できます。
ドメイン・モードの変更には、ドメイン全体の再起動が必要です。ローリング再起動では不十分です。オフライン・ツール(WLSTオフラインなど)を使用してドメイン・モードを変更することをお薦めします。WebLogicリモート・コンソールなどのツールを使用して、実行中のドメインのドメイン・モードを変更する場合は、ドメイン内のすべてのサーバーを停止してから、一度に1台ずつサーバーを再起動する必要があります。
既存のドメインのドメイン・モードを変更する場合は、ドメイン・モードの変更後に新しいconfig.xml
ファイルと比較できるように既存のconfig.xml
ファイルを保存し、変更した設定を評価することを検討してください。既存のドメインでドメイン・モードを変更することによる潜在的な影響については、「ドメイン・モードの変更」を参照してください。
- WLSTオフラインを使用する場合:
- WebLogicリモート・コンソールを使用する場合は、Oracle WebLogic Remote Consoleオンライン・ヘルプのドメイン・モードの変更に関する項を参照してください。
ドメイン・モードを変更すると、管理サーバーのデフォルトURLに影響する可能性があります。SSL/TLSおよび管理ポートが有効になっている場合(デフォルトでは、両方とも保護された本番モードで有効)、デフォルトのURLは、https://hostname:9002
またはt3s://hostname:9002
です。プロトコルおよびポート番号をノートにとっておきます。SSL/TLSおよび管理ポートが無効になっている場合(デフォルトでは、両方とも開発モードで無効)、デフォルトのURLは、http://hostname:7001
またはt3://hostname:7001
です。
保護された本番モードを有効にすると、WebLogic Serverでは特定のセキュリティ構成が行われていることが想定されます。適切に構成されていない場合は、セキュアでないと判断された設定にフラグが付けられ、セキュアでないドメイン・モードで以前は使用可能だったポートまたはアドレスのトラフィックがブロックされる可能性があります。
ドメイン・モードのオーバーライド(単一サーバー・ドメインのみ)
ドメインの現在のドメイン・モードは、サーバーのライフサイクル中にオーバーライドできます。サーバーを再起動すると、通常のドメイン・モードに戻ります。
このタスクは、開発環境またはテスト環境の単一サーバー・ドメインでのみ実行してください。
ノート:
コマンドラインでドメイン・モードをオーバーライドすると、config.xml
ファイルまたはWebLogicリモート・コンソールの「ツリーの編集」パースペクティブに有効なドメイン・モードが表示されません。かわりに、WLSTまたはWebLogicリモート・コンソールの「構成ビュー・ツリー」パースペクティブを使用して、ドメインの有効な状態を確認できます。『Oracle WebLogic Serverコマンド・リファレンス』のコマンド行で設定した属性値の確認に関する項を参照してください。
ドメインの現在のドメイン・モードをオーバーライドする場合は、管理サーバー起動スクリプトを実行し、有効なドメイン・モードを決定するシステム・プロパティを含めます。システム・プロパティとその使用方法については、表46-2を参照してください。
たとえば、本番モードを試すには、次を実行します。
startWebLogic.sh -Dweblogic.ProductionModeEnabled=true
同じ結果になるように環境変数を設定することもできます。たとえば:
export DOMAIN_PRODUCTION_MODE="true"
startWebLogic.sh
表46-2 コマンドラインでのドメイン・モードのオーバーライド
現在のドメイン・モード | ターゲット・ドメイン・モード | システム・プロパティ | 環境変数 |
---|---|---|---|
開発 |
本番 ノート: 保護された本番モードはデフォルトで有効になっています。 |
weblogic.ProductionModeEnabled=true |
DOMAIN_PRODUCTION_MODE="true" |
開発 |
本番(保護された本番モードが無効) |
次の両方のシステム・プロパティを含めます。
|
次の両方の環境変数を設定します。
|
本番(保護された本番モードが無効) |
保護された本番 |
weblogic.securemode.SecureModeEnabled=true |
SECURE_PRODUCTION_MODE="true" |
本番 |
開発 |
weblogic.ProductionModeEnabled=false |
DOMAIN_PRODUCTION_MODE="false" |
保護された本番 |
本番(保護された本番モードが無効) |
weblogic.securemode.SecureModeEnabled=false |
SECURE_PRODUCTION_MODE="false" |
保護された本番 |
開発 |
weblogic.ProductionModeEnabled=false |
DOMAIN_PRODUCTION_MODE="false" |
WebLogicリモート・コンソールを使用した管理サーバーへの接続
既存のセキュリティ設定によっては、保護された本番モードが有効になっているドメインを管理する前に、追加の構成を実行する必要がある場合があります。
WebLogicリモート・コンソールを使用した管理対象サーバーの起動
WebLogicリモート・コンソールを使用して管理対象サーバーを起動する場合は、カスタム・キーストアのプロパティを登録するようにノード・マネージャを構成する必要があります。
開発環境での保護された本番モード
保護された本番モードの機能を評価するが、カスタム・キーストアの設定に労力を費やす必要がない場合は、WebLogic Serverに含まれているデモンストレーション用キーストアで保護された本番モードを使用するようにWebLogic Serverを構成できます。
デモンストレーション用キーストアの詳細は、「開発環境でのキーストアと証明書の使用」を参照してください。OPSSキーストア・サービスを使用する場合は、「Oracle OPSSキーストア・サービスの構成」も参照してください。
ノート:
次の手順は、テストおよび開発の目的でのみ適しています。実際の本番環境ではデモ・キーストアを使用しないでください。
デモンストレーション用キーストアを使用した保護された本番モードの使用
保護された本番モードが有効になっているドメインでのセキュアでないデモ・キーストアの使用をサポートするために、追加の構成を実行する必要がある場合があります。
KSSによるデモンストレーション用キーストアを使用した保護された本番モードの使用
保護された本番モードが有効になっているドメインでキーストア・サービスを介して提供されるセキュアでないデモ・キーストアの使用をサポートするために、追加の構成を実行する必要がある場合があります。
Oracle Platform Security Service (OPSS)キーストア・サービス(KSS)は、ドメイン内のすべてのサーバーに対するキーと証明書の一元的な管理および格納を提供します。「Oracle OPSSキーストア・サービスの構成」を参照してください。
OPSS KSSはJRFテンプレートのみで利用でき、デフォルトのWebLogic Server構成では利用できません。次の設定の一部は、デフォルトでJRFテンプレートによってすでに構成されています。これらのデフォルト値を変更していない場合は、SSL/TLSの構成やKSSの明示的な有効化など、特定のステップをスキップできる場合があります。
KSSによるデモ・キーストアを使用したドメインでのWLSTの使用
WLSTを使用する場合は、保護された本番モードが有効になっているドメインでのセキュアでないデモ・キーストアの使用をサポートするために、追加の構成を実行する必要があります。
SSL/TLSを使用しない保護された本番モードの使用
デフォルトでは、保護された本番モードのドメインが起動すると、デフォルトのSSL/TLSおよび管理チャネルが使用されます。ドメインまたはその起動メカニズムが適切に構成されていない場合、接続できません。ただし、SSL/TLSの要件を無視するようにドメインを変更できます。
- WebLogicリモート・コンソールの「ツリーの編集」で、「環境」、「ドメイン」の順に移動します。
- 「リスニング・ポート有効」オプションをオンにします。
- 「管理ポートの有効化」オプションをオフにします。
- 「SSL有効」オプションをオフにします。
- 「保存」をクリックします。
- ドメインにクラスタが含まれている場合は、「環境」、「クラスタ」の順に移動します。各クラスタで、次の変更を行います。
- 「レプリケーション」タブで、「セキュア・レプリケーションの有効化」をオフにします。
- 「保存」をクリックします。
- 変更をコミットします。
- 管理サーバーおよびすべての管理対象サーバーを再起動します。
WLSTオフラインを使用して、SSL/TLS要件を無効にすることもできます。『WebLogic Scripting Toolの理解』の例: 保護された本番モードにおけるドメインでのTLS/SSLの無効化に関する項を参照してください。