1 はじめに

WebLogic ServerおよびドメインをサポートされているバージョンのWebLogic ServerからWebLogic Server 14c (14.1.2.0.0)へアップグレードできます。既存のアプリケーションをWebLogic Server 14.1.2.0.0で実行するように更新することもできます。

バージョン14.1.2.0.0へアップグレードするときに、アプリケーションを変更したい、または変更する必要がある場合があります。ただし、このドキュメントでは、アプリケーションを変更せずにWebLogic Server 14.1.2.0.0に移行するときに考慮する必要のある問題についてのみ焦点を当てています。

このドキュメントの手順は、次のサポートされているアップグレード・シナリオに対応します:

  • スタンドアロンWebLogicサーバー14.1.1からWebLogicサーバー14.1.2.0.0へのアップグレード

  • WebLogicサーバー12.2.1.4からWebLogicサーバー14.1.2.0.0へのアップグレード

ノート:

アップグレード前の環境バージョンが12.2.1.4.0より前の場合、14.1.2.0.0へのアップグレードを開始する前に、まずサポート対象の最初のバージョンにアップグレードする必要があります。サポートされていないバージョンから14.1.2.0.0に直接アップグレードすることはできません。サポート対象の最初のバージョンへのアップグレードの詳細は、12c (12.2.1.4.0)アップグレード・ドキュメント・ライブラリのアップグレード手順を参照してください。

WebLogic Serverは一般的に、WebLogic Serverのバージョン全体でハイレベルのアップグレード機能をサポートします。このドキュメントの目的は、WebLogic Serverアップグレード・サポートの提供と、アップグレード中に直面する可能性のある問題の特定によって迅速な解決を促すことです。

ノート:

バージョン12.2.1.4からバージョン14.1.2.0.0にアップグレードする場合、再構成ウィザードは、アップグレードの一環としてJDKまたはOracleホームの場所が変更されたときにのみ実行する必要があります。OracleホームとJDKバイナリが同じ場所にある場合は、再構成ウィザードを実行する必要はありません。

バージョンの互換性

WebLogic Serverのアップグレード前に、WebLogic ServerとWebLogic Server 14.1.2.0.0のドメイン互換性要件を確認する必要があります。

『Oracle WebLogic Serverの理解』ドメイン内の互換性に関する項を参照してください。

重要な用語

WebLogic Serverアップグレードに関するドキュメントでは、特徴および機能を説明する際に様々な用語を使用します。これらの用語を十分に理解することが重要です。

  • アップグレード - このドキュメントでは、アップグレードという用語は、WebLogic Serverをアップグレードし、既存のアプリケーションを未変更のまま、新規の(アップグレードされた)WebLogic Serverバージョンに移動するプロセスのことを指します。

  • 再構成 - アップグレードしたWebLogic Serverのバージョンと互換性を持つように、以前のWebLogic Serverのバージョンで作成されたドメインをアップグレードするプロセスです。これは、再構成ウィザードまたはWLSTのいずれかを使用して実行できます。

  • アプリケーション環境 - アプリケーション環境には、アプリケーションとそのデプロイ先のWebLogicドメインが含まれます。また、そのドメインに関連するすべてのアプリケーション・データも含まれます。データベース・サーバー、ファイアウォール、ロード・バランサおよびLDAPサーバーなどのリソースが含まれる場合もあります。

  • 移行 - アプリケーションやドメイン構成を、サード・パーティ製品からOracle製品に移動すること。

  • 相互運用性 - (1)あるWebLogic Serverバージョンでデプロイされたアプリケーションが、別のWebLogic Serverバージョンでデプロイされた別のアプリケーションと通信する機能。(2) Oracle製品のコンポーネントが、標準のプロトコルを使用してサード・パーティ製のソフトウェアと通信する機能。

  • 互換性 - あるWebLogic Serverリリースで構築されたアプリケーションを、アプリケーションが再構築されたかどうかに関係なく、別のWebLogic Serverリリースで実行できること。

アップグレード・プロセスの概要

すべてのWebLogic Serverアプリケーションおよびドメインを同時にアップグレードし、アップグレードを正確に定義された順序で行う、あるいは一部のアプリケーションおよびドメインをアップグレードする一方、その他のアプリケーションおよびドメインは旧バージョンのWebLogic Serverにそのまま残すことができます。

アプリケーション環境のアップグレードに必要なプロセスは、アプリケーション・スコープにより異なります。アプリケーション環境は、WebLogicドメインとそれに関連付けられているアプリケーションおよびアプリケーション・データで構成されます。また、アプリケーション環境には、ファイアウォール、ロード・バランサ、LDAPサーバーなどの外部リソースも含まれます。図1-1に、WebLogicのアプリケーション環境の例を示します。

図1-1 WebLogicのアプリケーション環境の例

図1-1の説明が続きます
「図1-1 WebLogicのアプリケーション環境の例」の説明

表1-1に、図1-1に示されているWebLogicアプリケーション環境のコンポーネントとそのアップグレード要件を示します。

表1-1 WebLogicのアプリケーション環境例のコンポーネントのアップグレード要件

コンポーネント 説明 アップグレード要件

WebLogicドメイン

管理サーバー(AS)と必要に応じて1台または複数の管理対象サーバー(MS1、MS2、MS3、MS4など)で構成されます。ドメイン内のサーバーは、複数のマシンにまがたる場合があります。さらに、重要なアプリケーションにロード・バランシングとフェイルオーバー保護を適用できるよう管理対象サーバーをクラスタとしてグループ化することができます。WebLogicドメインの詳細は、Oracle WebLogic Serverドメイン構成の理解Oracle WebLogicドメインの理解に関する項を参照してください。

ドメイン内のすべてのコンピュータのドメイン・ディレクトリをアップグレードします。

アプリケーション

WebアプリケーションやEJBなどを含むすべてのJava EEアプリケーション。一般的に、アプリケーションはドメイン内の1つまたは複数の管理対象サーバーにデプロイされます。デプロイメント戦略に応じて、アプリケーションはコンピュータ上のローカルに配置したり、共有ディレクトリを使用してアクセスできます。さらに、外部クライアント・アプリケーションがファイアウォールの外側からアプリケーション環境にアクセスすることも可能です。

ほとんどのWebLogic Serverアプリケーションは、修正を加えることなくWebLogic Server 14.1.2.0.0の新たなアプリケーション環境で動作します。

外部リソース

ドメインとアプリケーション・データを格納するためのデータベース、ロード・バランサ、ファイアウォールなどのソフトウェア・コンポーネント。

すべての外部リソースがWebLogic Server 14.1.2.0.0と互換性があることを確認します。Oracle Fusion Middlewareのサポートされるシステム構成を参照してください。

WebLogic Serverにデプロイされているビジネス・アプリケーションのアップグレードには、複数のWebLogic Serverアプリケーションのアップグレードが必要な場合があり、一部のケースでは次の目的のためにドメインも連動してアップグレードする場合があります。

  • 使用対象のWebLogic Serverバージョンの整合性の維持

  • インストール全体における同一のサポートされた構成環境の使用

  • 特定の相互運用性の要件への対応

始める前に

WebLogic Serverのアップグレード前に、マシンがWebLogic Serverのアップグレードと実行の要件を満たした設定になっていることを確認します。アップグレードする環境の範囲と、どのアプリケーションをどの順序でアップグレードするかについても検討する必要があります。

このドキュメントの範囲では、アップグレードのすべての組合せを網羅することはできないので、アップグレードを計画する前に、次の点を検討してください。この内容は、単一ドメインで実行中の単一アプリケーションが関連するアップグレードを対象にしています。アップグレードを開始する前に、該当するすべてのタスクを実行します。必要なタスクを完了しないと、アップグレードが失敗したり、システムの停止時間が長引いたりする可能性があります。

  • ドメインを以前のリリースから14c (14.1.2.0.0)にアップグレードするときに、明示的なセキュア・モード設定がない場合、再構成ウィザードによって、アップグレード後のドメインではセキュア・モードが明示的に「無効」に設定されます。これは、元のドメインに存在していた動作を保持するためです。明示的なセキュア・モード設定がある場合、その設定がアップグレード後のドメインに保持されます。

  • 推奨される手順は、開発環境でアプリケーションをアップグレードし、標準のQA、テストおよびステージング・プロセスを使用して、アップグレードされたアプリケーションを本番環境に移動することです。

  • アプリケーションのアップグレードでは通常、既存ドメインのアップグレードまたは新規ドメインの作成のどちらかを行います。このドメインから新バージョンのWebLogic Serverでアプリケーションを実行できます。アップグレードするアプリケーションをテストするために、Fusion Middleware構成ウィザードまたは他の構成ツール(WLSTなど)を使用して、新規ドメインを作成する場合もあります。

  • WebLogic Serverのバージョン・アップグレードを計画する際は、Oracle Fusion Middlewareのサポート対象システム構成ページを参照して、アップグレードされた環境がOracleでサポートされていることを、特に次の点について確認します:

    • 現行および計画中のJVMおよびJDKのバージョン

    • オペレーティング・システムのバージョン

    • データベースのバージョン

    • Webサービスのバージョン

    • WebLogic Serverで同時使用または実行されるその他の製品のバージョン。これは、アップグレードされた環境が、WebLogic Serverで使用しているOracleまたは他のベンダーの製品によってサポートされているかを確認するためです。

  • オラクル社は非推奨(つまり今後のリリースでは廃止予定)となったAPIおよび機能について文書化しており、現在も進行中です。この目的は、アップグレード性を維持するために使用を避けた方がいいAPIおよび機能について通知することです。現行のリリースで実際に廃止されているAPIおよび機能についても文書化されているため、以前のバージョンからアップグレードする場合は、対象のアプリケーションがアップグレードによる影響を受けるかどうかを判断できます。使用されないAPIの識別を参照してください。

    アップグレードの際は、WebLogic Serverのすべての対象バージョンに対する、非推奨および廃止となった機能に関するドキュメントをすべて確認してください。

  • WebLogic Serverアプリケーションの構成、デプロイ、起動/停止または監視に使用する、あらゆるオートメーション(WLSTスクリプトなど)にアップグレード・プロセスが与えうる影響を(ある場合は)考慮する必要があります。アップグレード対象のアプリケーションおよびドメインとともに、オートメーションのアップグレードも必要になる場合があります。

  • アプリケーションでのサードパーティ・ライブラリの使用によって発生しうる潜在的影響を考慮する必要があります。WebLogic Serverに埋め込まれている別バージョンの同一ライブラリと競合する可能性があるためです。特に、新バージョンのWebLogic Serverでは、WebLogic Serverに埋め込まれているオープン・ソース・ライブラリのバージョンが変更されている場合があります。旧バージョンのWebLogic Serverでは正常に動作するアプリケーションで、アップグレード後に新規クラス競合が発生することがあります。

    サードパーティ・ライブラリが埋め込まれているアプリケーションをアップグレードする場合、Classloader Analysis Toolの使用と、WebLogic ServerアプリケーションのWebLogic Server 14.1.2.0.0へのアップグレード時にフィルタ・クラスローダーの使用を考慮する必要があります。このツールでは競合の特定、診断および解決が可能になり、アップグレード・プロセスも短縮される場合があります。

  • 旧バージョンのWebLogic Serverでアプリケーションを実行中で、WebLogic Serverパッチまたはバグ修正を使用中の場合、アップグレード先のWebLogic Serverのバージョンにそのパッチまたはバグ修正が組み込まれているかどうかを調べる必要があります。