6.3.9.1 AWRを使用したセル・ディスクI/Oの監視

自動ワークロード・リポジトリ(AWR)レポートの次の各セクションは、ExadataのI/O負荷を把握するのに特に役立ちます。

多くの場合、I/O負荷に関する特性をさらに理解するために、これらのセクションの統計をAWRレポートの他のセクションと相互に関連付けることができます。

ディスク・アクティビティ

ディスク・アクティビティ・セクションには、ディスク・アクティビティの潜在的なソースの概要が表示されます。ディスク・アクティビティ・セクションは、AWRレポートのExadata統計→パフォーマンス・サマリーの下にあります。

図6-26 AWRレポート: ディスク・アクティビティ

この画像は、AWRレポートのディスク・アクティビティ・セクションの例を示しています。

I/O負荷が高いか、ディスク・アクティビティのパターンが大きく変化している場合は、さらに調査が求められることがあります。次の原因が考えられます:

  • REDOログ書込み — REDOがディスクに書き込まれるときにディスク書込みが発生します。Exadataスマート・フラッシュ・ログを使用する場合、REDOはExadataスマート・フラッシュ・ログとオンラインREDOログ・ファイルの両方に書き込まれることに注意してください。また、Oracle Exadata System Softwareリリース20.1では、ディスク・ストレージではなくExadataスマート・フラッシュ・キャッシュをライトバック・モードで使用する、スマート・フラッシュ・ログ・ライトバックと呼ばれる最適化がさらに追加されています。詳細は、AWRレポートのデータベースREDOアクティビティおよびスマート・フラッシュ・ログを確認してください。
  • スマート・スキャン — Exadataスマート・フラッシュ・キャッシュを使用して対応されないリクエストのためのディスク読取りが発生します。通常、これらは大規模の読取りです。詳細は、AWRレポートのスマートIOを確認してください。
  • フラッシュ・キャッシュ・ミス — リクエストされたデータがExadataスマート・フラッシュ・キャッシュに存在しない場合、ディスク読取りが発生します。通常、これらは小規模の読取りです。詳細は、AWRレポートのフラッシュ・キャッシュ・ミスを確認してください。
  • フラッシュ・キャッシュ読取りスキップ — リクエストされたデータがExadataスマート・フラッシュ・キャッシュの対象でない場合は、ディスク読取りが発生します。詳細は、AWRレポートのフラッシュ・キャッシュ・ユーザー読取り - スキップを確認してください。
  • フラッシュ・キャッシュ書込みスキップまたはフラッシュ・キャッシュLW拒否 — データがExadataスマート・フラッシュ・キャッシュの対象でない場合は、ディスク書込みが発生します。詳細は、AWRレポートのフラッシュ・キャッシュ・ユーザー書込み - スキップおよびフラッシュ・キャッシュ・ユーザー書込み - 大規模の書込み拒否を確認してください。
  • ディスク・ライター書込み — ライトバック・モードのExadataスマート・フラッシュ・キャッシュのデータがディスクに永続化されるときに、ディスク書込みが発生します。詳細は、AWRレポートのフラッシュ・キャッシュ内部書込みを確認してください。
  • スクラブIO — Oracle Exadata System Softwareがハード・ディスクを自動的に検査および修復するときに発生します。スクラブI/Oはハード・ディスクがアイドル状態のときに定期的に実行され、ほとんどの場合大規模のディスク読取りが発生し、ディスクがI/Oバウンドになると自動的に抑制されます。

このセクションにリストされている具体的な原因は、使用しているOracle Databaseのバージョンによって異なります。

Exadataリソース統計

Exadataリソース統計セクションには多くの統計が含まれ、複数のサブセクションに編成されています。主に、統計には、ストレージ・サーバーのオペレーティング・システム(OS)およびOracle Exadata System Softwareからの情報を使用して、ストレージ・サーバーで発生したI/Oが列挙されます。OSの場合は、I/O数/秒(IOPS)、スループット、使用率、サービス時間および待機時間に関連する統計が含まれます。これらの統計は、iostatコマンドで表示される統計と同等です。Oracle Exadata System Softwareの場合は、IOPS、スループットおよびレイテンシに関連する統計が含まれます。これらも、小規模の読取り、小規模の書込み、大規模の読取りおよび大規模の書込み別に分類されます。これらの統計は、セル・ディスク・メトリックに基づいています。

これらの統計は、デバイス・タイプ別に集計された後、セルまたはディスク別に集計されます。デバイス・タイプが異なるとパフォーマンス特性が異なることが予想されるため、確実に同じデバイス・タイプ間で比較するには、デバイス・タイプの集計を使用します。これらの統計は2つの方法で表示されます。まず、外れ値分析を実行できるように表示されます。また、特定の統計の上位Nのセルまたはディスクを表示するように編成されています。

外れ値分析表示を使用すると、すべてのストレージ・サーバーで集計された統計を、セル別およびディスク別にすばやく表示できます。この表示には、統計平均値、標準偏差および標準範囲も含まれます。標準範囲は、観測された下限値と上限値ではなく、平均値と標準偏差に基づいています。セルの場合、標準範囲は、平均値の±1の標準偏差の値の範囲です。ディスクの場合、標準範囲は、平均値の±3の標準偏差の値の範囲です。標準範囲外のセルまたはディスクがある場合、それらは外れ値としてレポートされます。この単純な外れ値分析は、さらに調査する領域を強調表示するように設計されています。ただし、使用中のセルまたはディスクの数と標準偏差の値によっては、外れ値分析で外れ値が識別されない場合があります。

上位Nの表示では、単に、特定の統計の上位ランクのセルまたはディスクが表示されます。この表示では、他のセルまたはディスクよりも多くの作業または少ない作業を実行するセルまたはディスクを識別できます。この表示を使用すると、外れ値分析で識別されない外れ値を識別できる可能性があります。また、これらのセクションで強調表示されているのは、デバイスの予想される最大IOPSまたはデバイスの予想される最大スループットを超えるセルまたはディスクです。

次のリストは、AWRレポートのExadataリソース統計セクションのサブセクションの概要を示しています。

  • Exadata外れ値サマリー — 様々な外れ値サブセクションで識別される外れ値のサマリーが表示されます。
  • Exadata OS統計外れ値 — IOPS、スループット(MB/秒)、使用率、サービス時間、待機時間、セル当たりのCPU使用率など、OS統計に基づいたセルおよびディスクの外れ値サブセクションが含まれます。
  • Exadataセル・サーバー統計 — IOPS、スループット(MB/秒)、レイテンシなど、セル・ディスク・メトリックに基づいたセルおよびディスクの外れ値サブセクションが含まれます。これらの統計は、I/Oタイプ(小規模の読取り、小規模の書込み、大規模の読取りまたは大規模の書込み)でさらに分類されます。
  • Exadata外れ値詳細 — 識別された外れ値の詳細情報と、外れ値に関連するその他の統計が表示されます。
  • Exadata OS統計上位 — IOPS、レイテンシ、CPU使用率など、OS統計に基づいたセルおよびディスクの上位Nサブセクションが含まれます。
  • Exadataセル・サーバー統計上位 — IOPS、スループット(MB/秒)、レイテンシなど、セル・ディスク・メトリックに基づいたセルおよびディスクの上位Nサブセクションが含まれます。これらの統計は、I/Oタイプ(小規模の読取り、小規模の書込み、大規模の読取りまたは大規模の書込み)でさらに分類されます。

次の例は、AWRレポートの2つのExadataセル・サーバー統計外れ値サブセクションを示しています。この例では、ハード・ディスクのスループット(IOPS)が予想される最大値を超えていること、および特定のディスクが明らかに他のディスクよりも多くの小規模の読取りを実行していることが強調表示されています。

図6-27 AWRレポート: Exadataセル・サーバーIOPS統計の外れ値

この画像は、AWRレポートのExadataセル・サーバーIOPS統計 - 外れ値セル・セクションおよびExadataセル・サーバーIOPS統計 - 外れ値ディスク・セクションの例を示しています。

Exadata IO理由

データベースがI/OリクエストをExadataに送信すると、そのリクエストにはI/Oの理由を含む情報がタグ付けされます。この情報は、AWRレポートのExadata IO理由セクションに集約され、I/Oを実行する理由を把握できます。

AWRレポートには、リクエスト別の上位IO理由およびMB別の上位IO理由(スループット)を表示するサブセクションが含まれます。AWRレポートの新しいバージョンでは、リクエスト別の上位IO理由がさらに分類され、フラッシュからの読取りリクエスト、フラッシュへの書込みリクエスト、ディスクからの読取りリクエストおよびディスクへの書込みリクエストが分類されます。

次の例は、リクエスト別の上位IO理由を示しています。この出力例は、スマート・スキャンに関連付けられたI/Oの割合が高く、すべてのストレージ・サーバーで類似したI/Oプロファイルを持つ、パフォーマンスの高いシステムの典型的なものです。

図6-28 AWRレポート: リクエスト別の上位IO理由

この画像は、AWRレポートのリクエスト別の上位IO理由セクションの例を示しています。

内部IO理由

報告された上位IO理由の中に内部IOがある場合、AWRレポートには内部IO理由を要約したセクションが含められます。

図6-29 AWRレポート: 内部IO理由

この画像は、AWRレポートの内部IO理由セクションの例を示しています。

内部I/Oの考えられる原因には、次のものがあります。

  • ディスク・ライター読取り — ディスク・ライターがライトバック・モードでExadataスマート・フラッシュ・キャッシュから読み取り、データをディスクに永続化するときに、フラッシュ読取りが発生します。詳細は、AWRレポートのフラッシュ・キャッシュ内部読取りを確認してください。
  • ディスク・ライター書込み — ディスク・ライターがライトバック・モードでExadataスマート・フラッシュ・キャッシュからディスクにデータを永続化するときに、ディスク書込みが発生します。詳細は、AWRレポートのフラッシュ・キャッシュ内部読取りを確認してください。
  • 移入 — リクエストされたデータがExadataスマート・フラッシュ・キャッシュに読み込まれるときに、フラッシュ書込みが発生します。データがディスクから読み取られると、Exadataスマート・フラッシュ・キャッシュにも移入されます。多くの場合、これはフラッシュ・キャッシュ・ミスと相関関係があります。詳細は、AWRレポートのフラッシュ・キャッシュ・ユーザー読取りおよびフラッシュ・キャッシュ内部書込みを確認してください。
  • メタデータ — 新しいデータがライトバック・モードでExadataスマート・フラッシュ・キャッシュに書き込まれるときに、フラッシュ書込みが発生します。多くの場合、これは最初の書込みが原因で発生します。詳細は、AWRレポートのフラッシュ・キャッシュ・ユーザー書込みを確認してください。

このセクションにリストされている具体的な原因は、使用しているOracle Databaseのバージョンによって異なります。