5 Oracle Linuxのアップグレードのトラブルシューティング
この章では、トラブルシューティング情報を提供し、アップグレード・プロセスに影響する可能性のある既知の問題について説明します。
トラブルシューティングのためのツール
次のオプションを使用して、アップグレード前のレポートの生成時または実際のアップグレードの実行時に、さらに出力を生成します。
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--verboseは、警告、エラー・メッセージおよびその他の重要な情報を表示します。 -
--debugは、--verboseオプションと同じ出力に加えてデバッグ情報を追加します。
トラブルシューティング情報を取得するために、次のリソースとツールを使用できます。
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/var/log/leapp/leapp-report.txt -
/var/log/leapp/leapp-upgrade.log -
/var/log/leapp/dnf-debugdata/デバッグ情報のディレクトリ。なお、このディレクトリは、preupgradeまたはupgradeコマンドの発行時に--debugオプションを使用した場合にのみ作成されます。 -
journalctlコマンド
既知の問題
Oracle Linux 9システムをOracle Linux 10にアップグレードする際に発生する可能性がある既知の問題を次に示します。
アップグレードの問題
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インストール対象としてマークされている不足パッケージがLeappによってレポートされることがある
/var/log/leapp/leapp-preupgrade.logまたは/var/log/leapp/leapp-upgrade.logファイルで、次のような警告がレポートされることがあります:Warning: Packages marked by Leapp for install not found in repositories metadata: rpcgen python3-pyxattr libnsl2-devel rpcsvc-proto-devel
これらのパッケージは、開発者リポジトリである
Oracle Linux10 Codeready Builderリポジトリ内にあり、デフォルトでは無効になっています。システムでこれらのパッケージが必要な場合は、アップグレード前またはアップグレード・フェーズの間に、
--enablerepo ol10_codeready_builderオプションを適切なLeappコマンドに追加します。次に例を示します:sudo leapp upgrade --oraclelinux --enablerepo ol10_codeready_builderLeappによるアップグレードの間に有効になったリポジトリが、アップグレード完了後もOracle Linux 10システム上で有効なままになります。
または、アップグレードの完了後、dnfコマンドを使用して、インストールに必要なパッケージを手動でインストールできます。
バグID 32827043
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一部の
el9パッケージがアップグレードされないことがある前の項目で示したのと同じ、MySQL関連の
*.el9パッケージを検出するrpm -qaコマンド構文で、システム上のアップグレードされなかったその他の*el9パッケージも一覧表示されることがあります。開発者リポジトリなど、Leappでサポートされていないリポジトリからインストールされたパッケージは、アップグレードされない可能性があります。そのようなパッケージの場合、次を実行します。-
https://yum.oracle.comにアクセスして、必要なパッケージが含まれているOracle Linux 10リポジトリを確認します。
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アップグレードが完了したら、それらのOracle Linux 10リポジトリからそのパッケージを手動でインストールします。
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必要なすべてのパッケージがインストールされたら、残っている
el9パッケージをシステムから削除します。
バグID 32878386
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(aarch64)アップグレード・ログでvmdモジュール関連のエラーがレポートされることがある
aarch64システムでのアップグレードの完了後に、Leappのアップグレード・ログで次のメッセージがレポートされることがあります。
dracut-install: Failed to find module 'vmd'
VMDモジュールはArmアーキテクチャには適用されないため、このエラー・メッセージは無視してかまいません。
バグID 34172552
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leappアップグレードの再起動フェーズで、
signature is not aliveというエラーが表示されます再起動フェーズでアップグレードが失敗し、
Signature ... created at ... invalid: signature is not aliveのようなエラーが発生した場合は、システム時間が同期されていることを確認するか、後でアップグレードを試行します。システムのローカル時間がパブリックRPMパッケージの最新リリースのビルド日と比較して過去の時間である場合は、インプレース・アップグレード・プロセスが失敗することがあります。(バグ38083008)
ファイル・システムとストレージの問題
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RAID構成にBtrfsがあるシステムはアップグレードできない
RAID構成でBtrfsファイル・システムが使用されているシステムは、アップグレードできません。preupgradeコマンドによって生成された
/var/log/leapp/leapp-report.txtでは、この構成は阻害要因としてフラグ付けされ、処置は提供されません。システムをアップグレードし、その構成が検出されると、アップグレード・プロセスは停止します。 -
bigtime機能のないXFSファイル・システムを検出した。
Oracle Linux 9では、XFS v5ファイル・システム形式に
bigtime機能が導入され、2038年以降のタイムスタンプが提供されます。bigtime機能が有効になっていないXFSファイル・システムは、タイムスタンプ・オーバーフローの問題に対して脆弱なままです。長期的な互換性を確保し、潜在的な障害を防ぐために、すべてのXFSファイルシステムでこの機能を有効にすることをお薦めします。次のXFSファイル・システムでは、bigtime機能が有効になっていません:
XFS v5ファイルシステムで- /kvm - /boot - /bigtime機能を有効にするには、次のコマンドを使用します:xfs_admin -O bigtime=1 <filesystem_device>古いXFS v5ファイル・システムの場合、このステップは(ファイル・システムがマウントされていない状態など)オフラインでのみ実行できます。
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ネットワークにマウントされたファイル・システムがあるホストはアップグレードできない
Leappでは、ネットワーク・ストレージ、NFSまたはiSCSIにマウントされたファイル・システムがあるシステムのアップグレードはサポートされていません。回避策として、ファイル・システムをアンマウントし、
/etc/fstabのそれらのエントリをコメント・アウトします。アップグレードが完了したら、エントリを復元し、ファイル・システムを再マウントできます。
ネットワークの問題
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カーネルで使用されるNICと同じ接頭辞が付いた複数のNICがシステムにある場合はアップグレード・エラーが発生する可能性がある
アップグレードするシステムに、カーネルで使用されているNICと同じ接頭辞(
ethなど)を共有する複数のNICがある場合は、インプレース・アップグレード・プロセスでエラーが発生することがあります。アップグレード後に、システムのネットワーク接続性が失われます。詳細は、Oracle Linux 10: NetworkManagerによるネットワーキングの設定の「ネットワーク・インタフェース名について」を参照してください。
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NetworkManagerがアップグレード完了後に起動されないことがある
アップグレード後、システムの
NetworkManagerが、その名前解決サービスが失敗したことが原因で起動されない場合があります。この障害は、サービスのステータスを確認することによって確認できます。systemctl status systemd-resolved.service
● systemd-resolved.service - Network Name Resolution Loaded: loaded (/usr/lib/systemd/system/systemd-resolved.service; disabled; > Active: inactive (dead) Docs: man:systemd-resolved.service(8) https://www.freedesktop.org/wiki/Software/systemd/resolved/var/log/messagesファイルには、次のエラーも報告されます。dbus-daemon[742]: [system] Activation via systemd failed for unit 'dbus-org.freedesktop.resolve1.service': Unit dbus-org.freedesktop.resolve1.service not found.
この問題を解決するには、次のいずれかの回避策を選択します。
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NetworkManagerを、systemd-resolved.serviceを使用しないように構成します。次のエントリを
/etc/NetworkManager/conf.d/no-systemd-resolved.confファイルに追加します。[main] systemd-resolved=false
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次のように
systemd-resolved.serviceを有効にします。systemctl enable systemd-resolved.service
Created symlink /etc/systemd/system/dbus-org.freedesktop.resolve1.service → /usr/lib/systemd/system/systemd-resolved.service. Created symlink /etc/systemd/system/multi-user.target.wants/systemd-resolved.service → /usr/lib/systemd/system/systemd-resolved.service.
systemctl start systemd-resolved.service
特定の設定に使用しているネットワーク名解決モデルとより一貫性のある他の方法を採用することもできます。役立つ情報については、Oracle Linux 10: NetworkManagerによるネットワーキングの設定の「ネットワーク・インタフェース名について」を参照してください。
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ハードウェア関連の問題
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認識されないハードウェアがあるシステムはアップグレードできない
e1000ドライバなどの特定のハードウェアに対するサポートが削除されました。そのようなハードウェアがインストールされているプラットフォームでは、アップグレードを続行できません。UEKが引き続きハードウェアをサポートしていても、システムでハードウェアが検出された場合、アップグレード手順は抑制されます。
Leappオーバーレイ・サイズの問題
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アップグレードでオーバーレイ・サイズの拡張が必要なことがある
多数のパッケージを含むOracle Linux 9システムをOracle Linux 10にアップグレードすると、アップグレード中に使用されるLeappオーバーレイ・ファイル・システム内の領域が不足しているために、失敗することがあります。次のエラーメッセージが表示されることがあります。
Error: Transaction test error: installing package package-name needs 4MB on the / filesystem回避策として、
LEAPP_OVL_SIZE変数を増やします。デフォルト・サイズは4096です。実際に必要なサイズは、設定に応じて大きくなることがあります。次のコマンドを使用します。sudo export LEAPP_OVL_SIZE=new-size