Solaris ボリュームマネージャの管理

RAID-1 (ミラー) ボリュームの概要

RAID-1 ボリューム (またはミラー) とは、同じデータのコピーを複数の RAID-0 (ストライプ方式または連結方式) ボリュームで保持しているボリュームのことです。ミラー化された RAID-0 ボリュームをサブミラーと呼びます。ミラー化するためには、より多くのディスク容量が必要です。少なくとも、ミラー化するデータ量の 2 倍のディスク容量が必要になります。また、ミラー化ではデータがすべてのサブミラーに書き込まれるため、書き込み要求の処理時間が長くなります。

構成したミラーは、物理スライスと同じように使用できます。

既存のファイルシステムを含め、どのようなファイルシステムでもミラー化できます。これらのファイルシステムは、ルート (/)、swap、および /usr です。また、ミラーは、データベースなど、どのようなアプリケーションにも使用できます。


ヒント –

データの安全性と可用性を確保するためには、Solaris ボリュームマネージャのホットスペア機能とミラーを併用します。ホットスペアについては、第 16 章「ホットスペア集合 (概要)」第 17 章「ホットスペア集合 (作業)」を参照してください。


サブミラーの概要

ミラーは、サブミラーと呼ばれる 1 つ以上の RAID-0 ボリューム (ストライプ方式または連結方式) からなります。

ミラーには最大 4 つのサブミラーを使用できます。しかし通常、ほとんどのアプリケーションでは、2 面ミラーによって十分なデータ冗長性が得られますし、ディスクドライブのコストも低くなります。 3 つめのサブミラーを構成すると、オンラインでバックアップを取ることができます。この場合、バックアップのために 1 つのサブミラーがオフラインになっていても、データの冗長性は失われません。

サブミラーを「オフライン」にすると、ミラーはそのサブミラーに対する読み書きを停止します。この時点で、このサブミラーへのアクセスが可能になり、バックアップを実行できます。ただし、オフライン状態のサブミラーは読み取り専用になります。サブミラーがオフライン状態の間、Solaris ボリュームマネージャはミラーに対するすべての書き込みを追跡管理します。サブミラーがオンライン状態に戻ると、サブミラーがオフラインの間に書き込まれた部分 (再同期領域) だけが再同期されます。また、サブミラーをオフラインにすると、エラーが発生した物理デバイスの問題を追跡したり修復したりすることが可能になります。

サブミラーは、いつでもミラーに接続したり、ミラーから切断できます。ただし、少なくとも 1 つのサブミラーが常時、接続されている必要があります。

通常は、サブミラーが 1 つだけのミラーを作成します。あとで 2 つめのサブミラーを追加します。

シナリオ—RAID-1 (ミラー) ボリューム

図 10–1に、ミラー d20 を示します。このミラーは、2 つのボリューム (サブミラー) d21d22 からなります。

この例で Solaris ボリュームマネージャは、複数の物理ディスク上でデータを複製し、アプリケーションに 1 つの仮想ディスク d20 を提供します。ディスクへの書き込みはすべて複製されます。ディスクからの読み取りはミラーを構成するサブミラーの 1 つから行われます。ミラー d20 の容量は、もっとも小さいサブミラーのサイズと同じになります (サブミラーのサイズが異なる場合)。

図 10–1 RAID-1 (ミラー) の例

2 つの RAID-0 ボリュームを合わせて RAID-1 (ミラー) ボリュームとして使用し、冗長性のある記憶領域を提供しています。

RAID-1+0 と RAID-0+1 の提供

Solaris ボリュームマネージャは、RAID-1+0 と RAID-0+1 の冗長性を両方ともサポートします。RAID-1+0 の冗長性は、ミラーの後にストライプ化される構成です。RAID-0+1 の冗長性は、ストライプの後にミラー化される構成です。Solaris ボリュームマネージャインタフェースは、すべての RAID-1 デバイスを RAID-0+1 として扱いますが、可能であれば、ボリュームを構成するコンポーネントやミラーを個別に認識します。


注 –

Solaris ボリュームマネージャは、RAID-1+0 機能を常に提供できるわけではありません。しかし、両方のサブミラーが同じで、(ソフトパーティションではなく) ディスクスライスで構成されている場合、RAID-1+0 は可能です。


3 つのストライプ化されたスライスからなる 2 面ミラーでの RAID-0+1 の実装について考えてみます。Solaris ボリュームマネージャを使用しなかった場合、1 つのスライスで障害が発生すると、ミラーの片面が使用できなくなる可能性があります。ホットスペアが使用されていない場合、2 つめのスライスで障害が発生すると、このミラーは使用不能になります。Solaris ボリュームマネージャを使用すると、最大 3 つのスライスで障害が発生しても、ミラーが使用できなくなることはありません。ミラーが使用不能にならないのは、ストライプ化された 3 つのスライスのそれぞれが、ミラーのもう一方の側の対応するスライスに対してミラー化されているからです。

図 10–2 に、RAID-1 ボリュームではスライスが失われることがあるのに対して、RAID-1+0 の実装ではデータ損失が起きないことを示します。

図 10–2 RAID-1+ 0 の例

RAID-1 ボリュームの 6 つのスライスのうち 3 つに障害が発生しても、RAID-1 + 0 を実装しているために、データを失わずにすむケースを示しています。

RAID-1 ボリュームは、2 つのサブミラーからなります。各サブミラーは、同じ飛び越し値が設定された3 つの同一物理ディスクからなります。3 つのディスク A、B、および F で障害が発生しても、支障はありません。ミラーの論理ブロック範囲全体が少なくとも 1 つの正常なディスクに格納されています。ボリュームの全データが使用可能です。

ただし、ディスク A と D で障害が発生した場合は、ミラーの一部分のデータがどのディスクでも使用できなくなります。これらの論理ブロックにはアクセスできません。しかし、データが使用可能なミラー部分へのアクセスは、引き続き可能です。この場合、ミラーは、不良ブロックを含む単一ディスクのように機能します。損傷部分は使用不能になりますが、残りの部分は使用可能です。