Solaris のシステム管理 (基本編)

ディスクレスクライアント管理の概要

次の節と第 7 章ディスクレスクライアントの管理 (手順)では、Oracle Solaris OS でのディスクレスクライアントサポートの管理方法について説明します。

「ディスクレスクライアント」とは、オペレーティングシステム、ソフトウェア、および記憶装置を「OS サーバー」に依存しているシステムのことです。ディスクレスクライアントは、そのルート (/)、/usr、およびその他のファイルシステムを OS サーバーからマウントします。ディスクレスクライアントは独自の CPU と物理メモリーを持っており、データをローカルで処理することができます。しかしディスクレスクライアントは、ネットワークから切り離されたり、その OS サーバーが正しく機能しない場合は機能できません。ディスクレスクライアントは、ネットワークを経由して継続的に機能する必要があるため、多大なネットワークトラフィックを発生させます。

Solaris 9 以降のリリースでは、ディスクレスクライアントの smosservice コマンドと smdiskless コマンドを使って、OS サービスやディスクレスクライアントサポートを管理できるようになりました。Solaris 8 リリースでは、Solstice GUI 管理ツールでディスクレスクライアントが管理されていました。

OS サーバーおよびディスクレスクライアントのサポート情報


注意 – 注意 –

一方のシステムは新しいブート方式を実装しているが、もう一方のシステムは実装していない OS クライアントサーバー構成を使用してディスクレスクライアントサポートを追加しようとすると、深刻な互換性の問題が発生する可能性があります。新しいブート (GRUB) は、Solaris 10 1/06 リリースから x86 プラットフォームで実装され、Solaris 10 10/8 リリースから SPARC プラットフォームで実装されました。OS サーバー上で実行されているリリースよりも新しい Solaris リリースを実行しているシステムでのディスクレスサポートの追加も、サポートされていない構成です。問題が発生する可能性を回避するために、ディスクレスクライアントサポートを追加する前に最新の Solaris リリースをインストールすることをお勧めします。


smosservice および smdiskless コマンドでサポートされる Solaris リリースおよびアーキテクチャーの種類は次のとおりです。

次の表に、smosservice および smdiskless コマンドでサポートされる x86 OS クライアントサーバー構成を示します。この情報は、Solaris 9 および Oracle Solaris 10 FCS (3/05) リリースに適用されます。

Solaris 10 1/06 リリース以降を実行している場合は、ディスクレスクライアントサポートを追加する前に、同じリリースをインストールするか、同じリリースにアップグレードすることをお勧めします。

表 6–3 クライアントとサーバーでの x86 OS のサポート
 

ディスクレスクライアント OS

 

サーバー OS

Oracle Solaris 10 3/05

Solaris 9

Oracle Solaris 10 3/05

サポートされています 

サポートされています 

Solaris 9

サポートされていません 

サポートされています 

次の表に、smosservice コマンドと smdiskless コマンドでサポートされる SPARC OS クライアントサーバー構成を示します。この情報は、Solaris 8 と Solaris 9 リリース、および 10 5/08 OS までの Oracle Solaris OS に適用されます。

Solaris 10 10/08 リリース以上を実行している場合は、ディスクレスクライアントサポートを追加する前に、同じリリースをインストールするか、同じリリースにアップグレードすることをお勧めします。

表 6–4 クライアントとサーバーでの SPARC OS のサポート
 

ディスクレスクライアント OS

   

サーバー OS

Oracle Solaris 10 3/05 から Solaris 10 5/08

Solaris 9

Solaris 8

Oracle Solaris 10 3/05 から Solaris 10 5/08

サポートされています 

サポートされています 

サポートされています 

Solaris 9

サポートされていません 

サポートされています 

サポートされています 

Solaris 8

サポートされていません 

サポートされていません 

サポートされています 

ディスクレスクライアント管理機能

smosservice コマンドおよび smdiskless コマンドを使うと、ネットワークにディスクレスクライアントサポートを追加したり、維持したりすることができます。ネームサービスを使うと、システム情報を一元管理できるので、ホスト名などの重要なシステム情報をネットワーク上のすべてのシステムに複製する必要がありません。

smosservice コマンドおよび smdiskless コマンドを使うと、次の作業を実行できます。

x86 システム上で GRUB ベースのブートを実行する場合は、DHCP 構成を手動で設定する必要があります。詳細は、「x86: GRUB ベースのブート環境にディスクレスクライアントを追加するための準備方法」を参照してください。


注 –

ディスクレスクライアントコマンドは、ディスクレスクライアントのブートの設定にのみ使用できます。このコマンドは、リモートインストールまたはプロファイルサービスなど、ほかのサービスの設定では使用できません。リモートインストールを設定するには、sysidcfg ファイルにディスクレスクライアント仕様を定義する必要があります。詳細は、『Oracle Solaris 10 9/10 インストールガイド (カスタム JumpStart/上級編)』を参照してください。


ディスクレスクライアントコマンドの使用

次の表のコマンドを使って独自のシェルスクリプトを記述すると、簡単にディスクレスクライアント環境を設定および管理できます。

表 6–5 ディスクレスクライアントコマンド

コマンド 

サブコマンド 

作業 

/usr/sadm/bin/smosservice

add

OS サービスを追加します 

 

delete

OS サービスを削除します 

 

list

OS サービスをリスト表示します 

 

patch

OS サービスのパッチを管理します 

/usr/sadm/bin/smdiskless

add

ディスクレスクライアントを OS サーバーに追加します 

 

delete

ディスクレスクライアントを OS サーバーから削除します 

 

list

OS サーバー上のディスクレスクライアントをリスト表示します 

 

modify

ディスクレスクライアントの属性を変更します 

次に示す 2 種類の方法で、これらのコマンドに関するヘルプを参照することができます。

ディスクレスクライアント管理に必要な RBAC 権限

smosservice コマンド および smdiskless コマンドはスーパーユーザーとして使用できます。役割によるアクセス制御 (RBAC) を使用している場合、割り当てられた RBAC 権限に応じて、すべてのディスクレスクライアントコマンドまたはそのサブセットのいずれかを使用できます。次の表にディスクレスクライアントコマンドを使用するのに必要な RBAC 権限を示します。

表 6–6 ディスクレスクライアント管理に必要な RBAC 権限

RBAC 権限 

コマンド 

作業 

基本的な Solaris ユーザー、ネットワーク管理 

smosservice list

OS サービスをリスト表示します 

 

 

smosservice patch

OS サービスのパッチリストを表示します 

 

smdiskless list

OS サーバー上のディスクレスクライアントのリストを表示します 

Network Management 

smdiskless add

ディスクレスクライアントを追加します 

システム管理者 

すべてのコマンド 

すべての作業 

OS サービスの追加

Oracle Solaris OS サーバーとは、ディスクレスクライアントシステムをサポートするオペレーティングシステム (OS) サービスを提供するサーバーのことです。OS サーバーを新たにサポートすることも、smosservice コマンドを使ってスタンドアロンシステムを OS サーバーに変換することもできます。

サポートする各プラットフォームグループおよび Oracle Solaris リリース用に、特定の OS サービスを OS サーバーに追加する必要があります。たとえば、Oracle Solaris リリースが動作する SPARC sun-4u システムをサポートするには、sun-4u/Oracle Solaris 10 OS サービスを OS サーバーに追加する必要があります。サポートするディスクレスクライアントごとに、そのクライアント用の OS サービスを OS サーバーに追加する必要があります。たとえば、Oracle Solaris 10 や Solaris 9 リリースが動作する SPARC sun-4m システムまたは x86 システムは、それぞれ異なるプラットフォームグループに属しているため、それぞれのシステムをサポートするための OS サービスを追加する必要があります。

OS サービスを追加するには、該当する Oracle Solaris ソフトウェア CD、DVD、またはディスクイメージへのアクセス権が必要です。

OS サーバーにパッチが適用された場合に OS サービスを追加する

OS サーバーに OS サービスを追加しようとすると、サーバー上の OS と追加するサービスの OS のバージョンが一致しないというエラーメッセージが表示される場合があります。このエラーメッセージは、OS サーバーにインストールされている OS のパッケージにパッチが適用されていても、追加しようとしている OS サービスのパッケージにはパッチが適用されていない (パッチがパッケージに組み込まれているため) 場合に表示されます。

たとえば、最新の Solaris リリースまたは Oracle Solaris OS が動作するサーバーがあるとします。このサーバーには、パッチがすでに適用された Solaris 9 SPARC sun-4m OS サービスなど、追加の OS サービスがロードされている可能性があります。このため、Solaris 8 SPARC sun-4u OS サービスを CD-ROM からこのサーバーに追加しようとすると、次のエラーメッセージが表示されることがあります。


Error: inconsistent revision, installed package appears to have been 
patched resulting in it being different than the package on your media. 
You will need to backout all patches that patch this package before 
retrying the add OS service option.

OS サーバーに必要なディスク容量

ディスクレスクライアント環境を設定する前に、ディスクレスクライアントの各ディレクトリに必要なディスク容量があるかどうかを確認する必要があります。

以前のバージョンの Solaris リリースでは、インストール中にディスクレスクライアントサポートについてのプロンプトが表示されました。Solaris 9 以降のリリースでは、手動で、インストール中に /export ファイルシステムを割り当てるか、インストール後に作成する必要があります。具体的なディスク容量要件については、次の表を参照してください。

表 6–7 Solaris OS サーバーおよびディスクレスクライアントのディスク容量に関する推奨事項

サーバー OS/アーキテクチャータイプ

ディレクトリ

必要なディスク容量

Oracle Solaris 10 SPARC の OS サーバー 

/export

5 - 6.8G バイト 

Oracle Solaris 10 x86 の OS サーバー 

/export

5 - 6.8G バイト 

Oracle Solaris 10 SPARC のディスクレスクライアント 

/export

1 台のディスクレスクライアントにつき 200 - 300M バイトの容量を確保してください。 

Oracle Solaris 10 x86 のディスクレスクライアント 

/export

1 台のディスクレスクライアントにつき 200 - 300M バイトの容量を確保してください。 


注 –

ディスク容量に関する推奨事項は、インストールされている Oracle Solaris リリースによって異なる場合があります。最新の Solaris リリースでのディスク容量に関する推奨事項の詳細については、『Oracle Solaris 10 9/10 インストールガイド (インストールとアップグレードの計画)』「ソフトウェアグループごとの推奨ディスク容量」を参照してください。