Solaris のシステム管理 (基本編)

新しい SPARC ブートアーキテクチャーについて

SPARC プラットフォームのブートプロセスは、x86 ブート動作との共通性を高めるために再設計および改善されました。新しい SPARC ブートデザインでは、ブートチェーンの複数の部分に変更を加えなくても、新しいファイルシステムタイプなどの新機能を追加できます。変更には、ブートフェーズの独立性の実装も含まれます。

これらの改善の重要点は、次のとおりです。

次の 4 つのブートフェーズは、互いに独立しています。

  1. OBP (Open Boot PROM) フェーズ

    SPARC プラットフォームでのブートプロセスの OBP フェーズは変わっていません。

    ディスクデバイスの場合、ファームウェアドライバは通常 OBP ラベルパッケージの「読み込み」メソッドを使用します。このメソッドは、ディスクの先頭にある VTOC ラベルを解析して、指定されたパーティションを見つけます。 そして、パーティションのセクター 1 - 15 がシステムのメモリーに読み込まれます。この領域は一般にブートブロックと呼ばれ、通常はファイルシステムリーダーが格納されています。

  2. ブーターフェーズ

    このフェーズの間に、ブートアーカイブが読み取られ、実行されます。ブートファイルシステムの形式を認識しておく必要があるのは、ブートプロセスのこのフェーズだけです。場合によっては、ブートアーカイブがインストールミニルートでもあることがあります。ブートローダーとブートアーカイブの転送に使用されるプロトコルには、ローカルディスクアクセス、NFS、および HTTP があります。

  3. RAM ディスクフェーズ

    RAM ディスクは、Oracle Solaris OS のインスタンスのブートに必要なカーネルモジュールおよびその他のコンポーネント、またはインストールミニルートで構成されるブートアーカイブです。

    SPARC ブートアーカイブは、x86 ブートアーカイブと同じです。ブートアーカイブのファイルシステム形式は非公開です。そのため、システムのブート時に使用されるファイルシステムタイプ (HSFS または UFS ファイルシステムなど) の情報は、ブーターやカーネルには必要ありません。RAM ディスクはブートアーカイブからカーネルイメージを抽出して、それを実行します。RAM ディスク、特にシステムのメモリーに常駐するインストールミニルートのサイズを最小化するため、ミニルートの内容が圧縮されます。この圧縮はファイルレベルごとに行われ、個々のファイルシステム内で実装されます。ファイルを圧縮して、ファイルに圧縮済みのマークを付けるには、/usr/sbin/fiocompress ユーティリティーが使用されます。


    注 –

    このユーティリティーには、ファイル圧縮ファイルシステム dcfs との非公開インタフェースが備わっています。


  4. カーネルフェーズ

    カーネルフェーズは、ブートプロセスの最終段階です。このフェーズの間に、Oracle Solaris OS が初期化され、ブートアーカイブから構築された RAM ディスク上に最小ルートファイルシステムがマウントされます。ブートアーカイブがインストールミニルートである場合、OS は引き続きインストールプロセスを実行します。それ以外の場合は、指定されたルートデバイス上にルートファイルシステムをマウントするために十分な 1 組のカーネルファイルおよびドライバが RAM ディスクに格納されます。

    そして、カーネルはブートアーカイブから主モジュールの残りを抽出し、それ自体を初期化し、実際のルートファイルシステムをマウントして、ブートアーカイブを破棄します。

ミニルートの圧縮と展開

RAM ディスクベースのミニルートは、root_archive コマンドによって圧縮および展開されます。 新しいブートアーキテクチャーをサポートする SPARC システムだけがミニルートの圧縮版を圧縮および展開できます。


注意 – 注意 –

Oracle Solaris 10 バージョンの root_archive ツールは、ほかの Oracle Solaris リリースに含まれているツールのバージョンと互換性がありません。そのため、RAM ディスクの操作はアーカイブと同じ リリースが動作するシステムでのみ行うようにしてください。


ミニルートの圧縮および展開の詳細については、root_archive(1M)のマニュアルページを参照してください。

ソフトウェアのインストールとアップグレード

Oracle Solaris OS をインストールまたはアップグレードするには、CD/DVD またはネットワークからブートする必要があります。どちらの場合も、ミニルートのルートファイルシステムは RAM ディスクです。このプロセスを使用すると、システムをリブートしなくても Solaris ブート CD または DVD を取り出すことができます。ブートアーカイブにはミニルート全体が含まれています。インストール DVD の構築は、HSFS ブートブロックを使用するように変更されました。ミニルートは、RAM ディスクとして読み込まれる単一の UFS ファイルに圧縮されます。ミニルートはすべての OS インストールタイプに使用されます。

インストールのメモリー要件

Oracle Solaris 10 9/10 では、SPARC システムをインストールするための最小メモリー要件は 384M バイトです。このメモリー容量では、テキストベースのインストールだけが可能になります。x86 システムの場合、最小メモリー要件は 768M バイトです。また、インストール GUI プログラムを実行するには、768M バイト以上のメモリーが必要です。

ネットワークブートサーバーの設定プロセスの変更点

ネットワークブートサーバーの設定プロセスが変更されました。ブートサーバーは、ブートストラッププログラムだけでなく、RAM ディスクにも対応するようになりました。RAM ディスクは、CD/DVD からブートしようと、NFS または HTTP を使ってネットワークインストールを実行しようと、すべてのインストールの単一のミニルートとしてダウンロードされ、ブートされます。NFS または wanboot プログラム (HTTP) によるネットワークブート用のネットワークブートサーバーの管理は何も変わりません。 ただし、ネットワークブートプロセスの内部実装は、次のように変更されました。

  1. ブートサーバーはブートアーカイブの形でブートストラップをターゲットシステムに転送する。

  2. ターゲットシステムはブートアーカイブを RAM ディスクに展開する。

  3. ブートアーカイブは読み取り専用の初期ルートデバイスとしてマウントされる。

SPARC システムのブートについては、「SPARC システムのブート (作業マップ)」を参照してください。

複数の カーネルのブートのサポート

SPARC システムでは、ok プロンプトからシステムをブートすると、デフォルトのブートデバイスが自動的に選択されます。代替ブートデバイスを指定するには、boot-device の NVRAM 変数を変更します。ブート時にコマンド行から代替ブートデバイスまたは代替カーネル (ブートファイル) を指定することもできます。「SPARC: デフォルトのカーネル以外のカーネルをブートする方法」を参照してください。