Solaris のシステム管理 (第 3 巻)

DHCP サービスで IP アドレスを使用して作業する

DHCP Manager または pntadm コマンドを使用して、IP アドレスの追加、それらのアドレスの属性の変更、DHCP サービスからのアドレスの削除を実行することができます。IP アドレスを使用した作業を始める前に、IP アドレスの属性を知っておくため、表 11-6 を参照してください。この表を使用して、DHCP Manager と pntadm のユーザー向けの情報を知ることができます。


注 -

この節では、pntadm コマンドを使用するための手順については説明しません。ただし、表 11-6 では、IP アドレスの追加と変更をする際に pntadm を使用して IP アドレスの属性を指定する例を示しています。pntadm の詳細については、pntadm(1M) のマニュアルページも参照してください。


次の作業マップに、IP アドレスを追加、変更、および削除する際に実行する必要がある作業と、その手順を一覧表示します。

表 11-5 DHCP における IP アドレスの作業マップ

作業 

説明 

参照先 

単一または複数の IP アドレスを DHCP サービスに追加する 

DHCP Manager を使用して DHCP サービスですでに管理されているネットワークに IP アドレスを追加する 

「単一の IP アドレスを作成する方法 (DHCP Manager)」

「既存の IP アドレスを複製する方法 (DHCP Manager)」

「複数のアドレスを作成する方法 (DHCP Manager)」

IP アドレスの属性を変更する 

表 11-6 で説明している IP アドレスの属性を変更する

「DHCP サービスを有効にする方法 (コマンド行)」

DHCP サービスから IP アドレスを削除する 

指定された IP アドレスを DHCP から使用できないように設定する 

「アドレスを使用不可に指定する方法 (DHCP Manager)」

「DHCP サービスから IP アドレスを削除する方法 (DHCP Manager)」

一貫したアドレスを DHCP クライアントに割り当てる 

クライアントが要求するたびに同じ IP アドレスを受け取るようにクライアントを設定する 

「固定 IP アドレスを DHCP クライアントに割り当てる方法 (DHCP Manager)」

表 11-6 で、IP アドレスの属性を一覧表示して説明します。

表 11-6 IP アドレスの属性

属性 

説明 

pntadm コマンドで指定する方法

ネットワークアドレス 

作業の際に使用する IP アドレスを含むネットワークのアドレス 

このネットワークアドレスは、DHCP Manager のアドレスタブにあるネットワークリストに表示される 

 

ネットワークアドレスは、IP アドレスを作成、変更、または削除するために使用する pntadm コマンド行の最後の引数にする必要がある

たとえば、ネットワーク 172.21.0.0 に IP アドレスを追加するには次のように入力する 

pntadm -A ip-address options 172.21.0.0

IP アドレス 

作成、変更、または削除する IP アドレス 

この IP アドレスは、DHCP Manager のアドレスタブの最初の列に表示される 

この IP アドレスを操作する場合、pntadm コマンドに必ず -A-M-D オプションが付随する

たとえば、IP アドレス 172.21.5.12 を変更するには次のように入力する 

pntadm -M 172.21.5.12 options 172.21.0.0

クライアント名 

ホストテーブルで IP アドレスに割り当てられるホスト名。この名前は、アドレスが作成されたときに、DHCP Manager または dhcpconfig によって自動的に生成される。単一のアドレスを作成する場合、その名前を入力することができる。

-h オプションを使用してクライアント名を指定する

たとえば、172.21.5.12 にクライアント名 carrot12 を指定するには次のように入力する 

pntadm -M 172.21.5.12 -h carrot12 172.21.0.0

所有サーバー 

IP アドレスを管理し、DHCP クライアントの IP アドレス割り当て要求への応答を担当する DHCP サーバー 

-s オプションを使用して所有サーバー名を指定する

たとえば、サーバー blue2 が 172.21.5.12 を所有するように指定するには、次のように入力する 

pntadm -M 172.21.5.12 -s blue2 172.21.0.0

設定マクロ 

DHCP サーバーが dhcptab データベースからネットワーク設定オプションを取得するために使用するマクロ。サーバーを設定して、ネットワークを追加すると、いくつかのマクロが自動的に作成される。マクロの詳細については、「マクロについて」を参照のこと。サーバーマクロはデフォルトでは、DHCP Manager または dhcpconfig がアドレスを作成したときに選択される。

-m オプションを使用してマクロ名を指定する

たとえば、サーバーマクロ blue2 をアドレス 172.21.5.12 に割り当てるには、次のように入力する 

pntadm -M 172.21.5.12 -m blue2 172.21.0.0

クライアント ID 

クライアントの 16 進ハードウェアアドレスから導出されたテキスト文字列。文字列の前には Ethernet の 01 のようなネットワークのタイプを表す ARP コードが付く。ARP ハードウェアコードのすべてのリストについては、表 13-4 を参照

たとえば、16 進 Ethernet アドレス 8:0:20:94:12:1e を持つクライアントは、クライアント ID 0108002094121E を使用する。クライアントがアドレスを使用している場合、このクライアント ID は DHCP Manager と pntadm に一覧表示される。IP アドレスの属性を変更する際にクライアント ID を指定する場合は、そのアドレスを排他的に使用するために、そのアドレスとクライアントを手動で結び付ける

ヒント : クライアントマシンのスーパーユーザーとして、ifconfig -a を入力すると、そのインタフェースに関する Ethernet アドレスを取得することができる

-i オプションを使用してクライアント ID を指定する

たとえば、クライアント ID 08002094121E をアドレス 172.21.5.12 に割り当てるには、次のように入力する 

pntadm -M 172.21.5.12 -i 0108002094121E 172.21.0.0

予約済み 

クライアント ID で示されたクライアントについて、アドレスが排他的に予約されることを指定する設定。DHCP サーバーはアドレスの返還を要求できない。このオプションを選択した場合、アドレスはクライアントに手動で割り当てる 

-f オプションを使用して、アドレスの予約または手動を指定する

たとえば、あるクライアントについて IP アドレス 172.21.5.12 の予約を指定するには、次のように入力する 

pntadm -M 172.21.5.12 -f MANUAL 172.21.0.0

リースタイプ 

クライアントでの IP アドレスの使用方法を DHCP でどのように管理するかを指定する設定。リースは、動的または固定。詳細については、「動的および永続的リースタイプ」を参照のこと

-f オプションを使用して、アドレスが固定で割り当てられるように指定する。デフォルトではアドレスは動的にリースされる

たとえば、IP アドレス 172.21.5.12 を永続的リースに指定するには、次のように入力する 

pntadm -M 172.21.5.12 -f PERMANENT 172.21.0.0

リース有効期限 

リースが切れる日付。動的リースが指定された場合のみ利用できる。この日付は、mm/dd/yyyy のフォーマットで指定され、DHCP サーバーによって計算される。

-e を使用してリースの絶対的な有効期限を指定する

たとえば、有効期限を 2000 年 1 月 1 日に指定するには、次のように入力する 

pntadm -M 172.21.5.12 -e 01/01/2000 172.21.0.0

BOOTP 設定 

BOOTP クライアントに対してアドレスが予約されていることを指定する設定。BOOTP クライアントのサポートに関する詳細については、「DHCP サービスを使用した BOOTP クライアントのサポート」を参照

-f を使用して BOOTP クライアント用のアドレスを予約する

たとえば、IP アドレス 172.21.5.12 を BOOTP クライアント用に予約するには、次のように入力する 

pntadm -M 172.21.5.12 -f BOOTP 172.21.0.0

使用不能設定 

アドレスがクライアントに割り当てられないようにする設定 

-f を使用して、アドレスを使用不能に指定する

たとえば、IP アドレス 172.21.5.12 を使用不能に指定するには、次のように入力する 

pntadm -M 172.21.5.12 -f UNUSABLE 172.21.0.0

DHCP サービスへのアドレスの追加

アドレスを追加する前に、それらのアドレスを所有するネットワークを DHCP サービスに追加する必要があります。ネットワークの追加の詳細については、「DHCP ネットワークの追加」を参照してください。

DHCP Manager または dhcpconfig を使用してアドレスを追加することができます。コマンドを使用してアドレスを追加したい場合は、dhcpconfig の使用によるネットワークの構成」の説明に従って dhcpconfig を使用します。

DHCP Manager を使用した複数の方法で、すでに DHCP サービスで管理されているネットワークにアドレスを追加することができます。

図 11-8 は、「アドレスの作成 (Create Address)」ダイアログボックスを示しています。「アドレスの複製」ダイアログボックスは、テキストフィールドに既存のアドレスの値が表示されていることを除いて「アドレスの作成 (Create Address)」ダイアログボックスと同一です。

図 11-8 「アドレスの作成 (Create Address)」ダイアログボックス

Graphic

図 11-9 は、一定範囲の IP アドレスを作成するために使用するアドレスウィザードの最初のダイアログを示しています。

図 11-9 アドレスウィザード

Graphic

単一の IP アドレスを作成する方法 (DHCP Manager)

  1. 「アドレス (Address)」タブを選択します。

  2. 新しい IP アドレスを追加するネットワークを選択します。

  3. 「編集」メニューから「作成」を選択します。

    「アドレスの作成」ダイアログボックスが開きます。

  4. 「アドレス」と「リース」タブで、値を選択または入力します。

    設定の詳細については、表 11-6 を参照してください。

  5. 「了解」をクリックします。

既存の IP アドレスを複製する方法 (DHCP Manager)

  1. 「アドレス (Address)」タブを選択します。

  2. 新しい IP アドレスを配置するネットワークを選択します。

  3. 属性の複製を作るアドレスを選択します。

  4. 「編集」メニューから「複製」を選択します。

  5. そのアドレスの IP アドレスとクライアント名を変更します。

    他のオプションのほとんどは同じままにしておく必要がありますが、必要に応じてそれらのオプションを変更することができます。

  6. 「了解」をクリックします。

複数のアドレスを作成する方法 (DHCP Manager)

  1. 「アドレス (Address)」タブを選択します。

  2. 新しい IP アドレスを追加するネットワークを選択します。

  3. 「編集」メニューから「アドレスウィザード」を選択します。

    アドレスウィザードが起動し、IP アドレスの属性の値を入力するよう求めるダイアログを表示します。これらの属性の詳細については、表 11-6 を参照してください。「IP アドレス管理のための決定事項」では、さらに詳細な情報が説明されています。

  4. 情報を入力し終わったら画面ごとに右矢印ボタンをクリックし、最後の画面で「完了」をクリックします。

    「アドレス (Address)」 タブに新規アドレスが更新されます。

DHCP サービスでの IP アドレスの変更

IP アドレスを DHCP サービスに追加すると、DHCP Manager または pntadm -M コマンドを使用して、表 11-6 で説明している属性を変更することができます。pntadm -M の使用に関する詳細については、pntadm(1M) のマニュアルページを参照してください。

図 11-10 は、IP アドレスの属性を変更するために使用する「アドレスの属性 (Address Properties)」ダイアログボックスを示します。

図 11-10 「アドレスの属性 (Address Properties)」ダイアログボックス

Graphic

図 11-11 は、複数の IP アドレスを変更するために使用する「複数アドレスの変更 (Modify Multiple Addresses)」ダイアログボックスを示します。

図 11-11 「複数アドレスの変更 (Modify Multiple Addresses)」ダイアログボックス

Graphic

IP アドレスの属性を変更する方法 (DHCP Manager)

  1. 「アドレス (Address)」タブを選択します。

  2. その IP アドレスのネットワークを選択します。

  3. 変更する IP アドレスを 1 つまたは複数選択します。

    複数のアドレスを変更する場合は、Control キーを押しながらマウスをクリックして、複数のアドレスを選択します。Shift キーを押しながらマウスをクリックして、一定範囲のアドレスを選択することもできます。

  4. 「編集」メニューから「属性」を選択します。

    「アドレスの変更」ダイアログボックスまたは「複数アドレスの変更」ダイアログボックスが開きます。

  5. 適切な属性を変更します。

    属性の詳細については、表 11-6 を参照してください。

  6. 「了解 (OK)」をクリックします。

DHCP サービスからのアドレスの削除

特定の 1 つまたは複数のアドレスについて、DHCP サービスによる管理を停止したい場合があります。DHCP からアドレスを削除する方法は、その変更が一時的なものか、永続的なものかによって決まります。

DHCP サービスで IP アドレスを使用不可にする

-f UNUSABLE オプションを付けた pntadm -M コマンドを使用して、コマンド行からアドレスを使用不能に指定することができます。

DHCP Manager では、次の手順に示すとおり、図 11-10 の「アドレスの属性 (Address Properties)」ダイアログボックスを使用して各アドレスが指定でき、図 11-11 の「複数アドレスの変更 (Modify Multiple Addresses)」ダイアログボックスを使用して複数のアドレスが指定できます。

DHCP サービスからの IP アドレスの削除

IP アドレスを DHCP で管理したくない場合は、DHCP サービスデータベースからそのアドレスを削除する必要があります。pntadm -D コマンドまたは DHCP Manager の「アドレスの削除 (Delete Address)」ダイアログボックスが使用できます。

図 11-12 は、「アドレスの削除 (Delete Address)」ダイアログボックスを示します。

図 11-12 「アドレスの削除 (Delete Address)」ダイアログボックス

Graphic

アドレスを使用不可に指定する方法 (DHCP Manager)

  1. 「アドレス」タブを選択します。

  2. その IP アドレスのネットワークを選択します。

  3. 使用不能に指定したい IP アドレスを 1 つまたは複数選択します。

    複数のアドレスを使用不能に指定する場合は、Control キーを押しながらマウスをクリックして、複数のアドレスを選択します。また、Shift キーを押しながらマウスをクリックして、一定範囲のアドレスを選択することもできます。

  4. 「編集」メニューから「属性」を選択します。

    「アドレスの変更」ダイアログボックスまたは「複数アドレスの変更 (Modify Multiple Addresses)」ダイアログボックスが開きます。

  5. アドレスを 1 つ変更する場合は、「リース」タブを選択します。

  6. 「アドレスを使用しない」を選択します。

    複数のアドレスを編集する場合は、「すべてのアドレスを使用しない」を選択します。

  7. 「了解 (OK)」をクリックします。

DHCP サービスから IP アドレスを削除する方法 (DHCP Manager)

  1. 「アドレス」タブを選択します。

  2. その IP アドレスのネットワークを選択します。

  3. 削除する IP アドレスを選択します。

    複数のアドレスを削除する場合は、Control キーを押しながらマウスをクリックして、複数のアドレスを選択します。Shift キーを押しながらマウスをクリックして、一定範囲のアドレスを選択することもできます。

  4. 「編集」メニューから「削除」を選択します。

    削除する内容を確認できる「アドレスの削除」ダイアログボックスが開いて、選択したアドレスが一覧表示されます。

  5. DHCP Manager または dhcpconfig によって生成されたホスト名について、その名前をホストテーブルから削除したい場合、「ホストテーブルから削除」を選択します。

  6. 「了解」をクリックします。

一定の IP アドレスを DHCP クライアントに設定する

Solaris DHCP サービスは、以前に DHCP を使用してアドレスを取得したクライアントに同じ IP アドレスを与えようとします。しかし、動的リースを使用している場合は除きます。

ネットワークの機能にとって重要なルーター、NIS または NIS+、DNS サーバー、その他のホストは、IP アドレスを取得にあたってネットワークに依存するべきではないため、DHCP を使用するべきではありません。プリンタやファイルサーバーなどのクライアントも一定の IP アドレスを持つべきですが、DHCP を使用してネットワークの設定を受け取るように設定できます。

使用させたいアドレスにクライアントの ID を予約したり、手動で割り当てることによって、クライアントがその設定を要求するたびに同じ IP アドレスを受け取るように設定したりできます。予約されているアドレスは動的リースに設定してアドレスの使用を追跡しやすくしたり使用追跡が不要な場合に永続的リースに設定したりできます。しかし、固定リリースはお奨めしません。いったん永続的リースを取得すると、IP アドレスを解放したり DHCP リースネゴシエーションを再起動したりしない限り、クライアントはサーバーと連絡を取らず、更新された設定情報を取得できなくなるためです。

pntadm -M コマンドまたは DHCP Manager の「アドレスの属性 (Address Properties)」ダイアログボックスを使用することができます。

図 11-13 は、リースを変更するために使用する「アドレスの属性 (Address Properties)」ダイアログボックスの「リース (Lease)」タブを示しています。

図 11-13 「アドレスの属性 (Address Properties)」の「リース (Lease)」タブ

Graphic

固定 IP アドレスを DHCP クライアントに割り当てる方法 (DHCP Manager)

  1. 固定 IP アドレスを割り当てたいクライアントのクライアント ID を決定します。

    クライアント ID の決め方の詳細については、表 11-6 のクライアント ID の項目を参照してください。

  2. DHCP Manager の「アドレス」タブを選択します。

  3. 適切なネットワークを選択します。

  4. クライアントで使用したい IP アドレスをダブルクリックします。

    「アドレスの属性 (Address Properties)」ウィンドウが開きます。

  5. 「リース (Lease)」タブを選択します。

  6. 「クライアント ID」フィールドに、そのクライアントのハードウェアアドレスから決定したクライアント ID を入力します。

  7. 「予約」オプションを選択して、その IP アドレスがサーバーから返還を要請されないようにします。

  8. 「アドレスの属性」ウィンドウの「リースポリシー」領域で、「動的」または「常時」の割り当てを選択します。

    クライアントでリースを更新するネゴシエーションを行なって、アドレスが使用されている場合に追跡できるようにしたい場合は、「動的」を選択します。「予約」を選択したので、動的リースを使用した場合でもこのアドレスは返還を要請されることはありません。このリースについて有効期限を入力する必要はありません。DHCP サーバーがリース期間に基づいて有効期限を計算します。

    「常時」の選択はお奨めしません。トランザクションログを使用可能にしていない限り、IP アドレスの使用を追跡できないためです。