Solaris 8 1/01 リリースで、Diskless Client Management により Solstice AdminSuiteTM 2.3 ディスクレスクライアントツールが更新されました。AdminSuite 2.3 ディスクレスクライアントツールは GUI をベースとしたもので、一方 Diskless Client Management はコマンド行インタフェースからのみ構成されています。
次のものがサポートされます。
Solaris 8 1/01 オペレーティング環境を実行する SPARC アーキテクチャまたは IA OS サーバー
OS サーバーから Solaris 8 1/01、Solaris 2.7、または Solaris 2.6 オペレーティング環境のいずれかを実行する SPARC アーキテクチャのディスクレスクライアント
ディスクレスクライアントとは、オペレーティングシステム、ソフトウェア、および記憶装置を OS サーバーまたはあるホストに依存するワークステーションです。ディスクレスクライアントは、そのルート (/)、/usr、およびその他のファイルシステムを OS サーバーからマウントします。ディスクレスクライアントは独自の CPU と物理メモリーを持っており、データをローカルで処理することができます。しかしディスクレスクライアントは、ネットワークから切り離されたり、その OS サーバーが正しく機能しない場合は機能できません。ディスクレスクライアントは、ネットワークを経由して継続的に機能する必要があるため、多大なネットワークトラフィックを発生させます。
Diskless Client Management ツールは、コマンド行インタフェースを使用して動作させます。独自のシェルスクリプトを書いて 表 4-1 に示すコマンドを使用することにより、ディスクレスクライアント環境を簡単にセットアップし管理することができます。
表 4-1 Diskless Client Management のコマンド
コマンド |
サブコマンド |
タスク |
---|---|---|
/usr/sadm/bin/smosservice |
add |
OS サービスを追加する |
delete |
OS サービスを削除する |
|
list |
OS サービスをリスト表示する |
|
patch |
OS サービスのパッチを管理する |
|
/usr/sadm/bin/smdiskless |
add |
ディスクレスクライアントを OS サーバーに追加する |
delete |
ディスクレスクライアントを OS サーバーから削除する |
|
list |
OS サーバー上のディスクレスクライアントをリスト表示する |
|
modify |
ディスクレスクライアントの属性を変更する |
次に示す 2 種類の方法で、これらのコマンドに関するヘルプを参照することができます。
「使用法」 - 「使用法」を参照するには、コマンドとサブコマンドの入力後に -h オプションを使用します。たとえば、smdiskless add の「使用法」を表示するには、/usr/sadm/bin/smdiskless add -h を実行します。
マニュアルページ - マニュアルページを参照するには、man の後にコマンド名を入力します。たとえば smdiskless のマニュアルページを表示するには、man smdiskless を実行します。
ユーザーは、割り当てられている権利に応じて、Diskless Client Management コマンドのサブセットまたはすべてのいずれかを利用することができます。表 4-2 は、Diskless Client Management コマンドの使用に必要な権利を示します。
表 4-2 必要な権利
権利 |
コマンド |
タスク |
---|---|---|
基本的な Solaris ユーザー、ネットワーク管理 |
smosservice list smosservice patch smdiskless list |
OS サービスをリスト表示する OS パッチをリスト表示する ディスクレスクライアントをリスト表示する |
ネットワーク管理 |
smdiskless add |
ディスクレスクライアントを追加する |
システム管理者 |
すべてのコマンド |
ディスクレスクライアント環境をセットアップする前に、作成される各パーティションに必要なスペースがあることを確認します。表 4-3 は、各 Diskless Client Management パーティションに必要なディスクスペースを示します。
表 4-3 必要なディスクスペース
パーティション |
必要なスペース (単位: M バイト) |
---|---|
/export/Solaris_version |
10 |
/export/exec |
800 |
/export/share |
5 |
/export/dump/diskless_client_name |
32 |
/export/root/templates/Solaris_version |
30 |
/export/root/clone/Solaris_version/machine_class |
30 〜 60。マシンのクラスによる |
/export/root/diskless_client_name (上記のクローン) |
30 〜 60。マシンのクラスによる |
/export/swap/diskless_client_name |
32 |
/tftpboot/inetboot.machine_class.Solaris_version |
machine_class.Solaris_version 1 つにつき、200K バイト |
次に示すどちらの手順から開始するかを選択します。
/usr/sadm/bin/admhostdel コマンドを使用して、既存の AdminSuite 2.3 ディスクレスクライアントを削除します。
/usr/sadm/bin/admhostmod コマンドを使用して、既存の AdminSuite 2.3 OS サービスを削除します。
OS サーバーとして指定されたマシンを Solaris 8 1/01 オペレーティング環境へアップグレードします。
Solaris Management Console (SMC) ログビューアのディスクレスクライアントのエラーメッセージを参照するには、コマンド行で次を実行して SMC を起動します。
% /usr/sadm/bin/smc & |
SMC の メインスクリーンから「ログビューア」を選択します。
必要な OS サービスを追加します。「OS サービスを追加する準備」 および 「OS サービスを追加するには」を参照してください。
ディスクレスクライアントを追加します。「ディスクレスクライアントを追加するには」を参照してください。
boot net コマンドを使用して、PROM レベルから各ディスクレスクライアントをブートします。boot net コマンドについての詳細は、『Solaris のシステム管理 (第 1 巻)』を参照してください。
smosservice add コマンドを使用して OS サービスを追加する場合は、サポートしたい各ディスクレスクライアントのプラットフォームの platform、mediapath、および cluster を入力する必要があります。そのため、各ディスクレスクライアントについて以下のことを決定するために最初にいくつかのハイレベルの作業を行う必要があります。
platform (プラットフォーム) - instruction_set.machine_class.Solaris_os_version の形式でディスクレスクライアントのプラットフォームを指定します。たとえば、sparc.sun4u.Solaris_8 などです。以下に、利用できるプラットフォームのオプションを示します。
instruction_set |
machine_class |
Solaris_os_version |
---|---|---|
sparc |
sun4u sun4m sun4c sun4d |
Solaris_8 Solaris_2.7 Solaris_2.6 |
i386 |
i86pc |
Solaris_8 Solaris_2.7 Solaris_2.6 |
media path (メディアパス) - ディスクレスクライアント用にインストールしたいオペレーティングシステムを含む CD-ROM またはネットワークイメージへのフルパス。たとえば、/net/install_files など。
SOLARIS 8 SOFTWARE CD から OS サービスをロードする場合 - Solaris 8 オペレーティング環境は、複数の CD で提供されます。しかし、Diskless Client Management ソフトウェアはこの複数 CD による提供をサポートしていません。ユーザーは、次のことを行うために、SOLARIS 8 SOFTWARE CD (およびオプションの LANGUAGES CD) にあるスクリプトを実行する必要があります。
サーバー上にインストールイメージを作成する。インストールサーバーのセットアップについての情報は、『Solaris 8 のインストール (上級編)』を参照してください。
イメージから必要な OS サービスをロードする。
SOFTWARE 1 of 2 CD 用 - /cdrom/cdrom0/s0/Solaris_8/Tools/setup_install_server
SOFTWARE 2 of 2 CD 用 - /cdrom/cdrom0/s0/Solaris_8/Tools/add_to_install_server
LANGUAGES CD 用 - /cdrom/cdrom0/s0/Solaris_8/Tools/add_to_install_server
cluster (クラスタ) - ディスクレスクライアントの構成によって、Diskless Client の機能を含む次の 4 つのクラスタのうち 1 つを指定することができます。SUNWCXall、SUNWCall、SUNWCprog、または SUNWCuser です。同じマシン (SPARC または IA) 上で同じオペレーティング環境を実行するディスクレスクライアントには、「同じクラスタ」を使用しなければなりません。
たとえば、次のディスクレスクライアントをセットアップするとします。
sparc.sun4m.Solaris_8
sparc.sun4u.Solaris_8
sparc.sun4d.Solaris_8
sun4u マシンを使用している場合、または高速化 8 ビットカラーメモリーフレームバッファー (cgsix) を備えたマシンを使用している場合は、クラスタとして必ず SUNWCXall を指定する必要があります。
各ディスクレスクライアントについてプラットフォーム、メディアパス、およびクラスタを決定したら、OS サービスを追加する準備ができたことになります。追加する各 OS サービスについて、次のディレクトリが作成され移植されます。
/export/Solaris_version/Solaris_version_instruction_set.all (/export/exec/Solaris_version/Solaris_version_instruction_set.all へのシンボリックリンク)
/export/Solaris_version
/export/Solaris_version/var
/export/Solaris_version/opt
/export/share
/export/dump
/export/root/templates/Solaris_version
/export/root/clone
/export/root/clone/Solaris_version
/export/root/clone/Solaris_version/machine_class
必要なメディアパス、プラットフォーム、およびクラスタのオプションとともに /usr/sadm/bin/smosservice add コマンドを使用して、1 つ目の OS サービスを追加します。
たとえば、次のコマンドは sun4u マシンクラスについて Solaris 8 ソフトウェアの OS サービスを追加しています。ここでは、OS サーバーはネームサービスを使用していません。
% /usr/sadm/bin/smosservice add -- -x mediapath=/net/image/5.8/sparc ¥ -x platform=sparc.sun4u.Solaris_8 -x cluster=SUNWCXall |
/usr/sadm/bin/smosservice add コマンドを繰り返し使用して、他の OS サービスを追加します。
OS サービスの追加が完了したら、/usr/sadm/bin/smosservice list コマンドを使用して OS サービスがインストールされたことを確認します。
追加する各ディスクレスクライアントについて、次のデフォルトのディレクトリが OS サーバー上に作成されます。
/export/root/diskless_client_name
/export/swap/diskless_client_name
/export/dump/diskless_client_name
/tftpboot/diskless_client_ipaddress_in_hex
-x オプションを使用すると、/root、/swap、および /dump ディレクトリのデフォルトのロケーションを変更することができます。ただし、/export の下にはこれらのディレクトリを作成しないでください。
ディスクレスクライアントを追加するには、以下の手順を実行します。
追加したい 1 つめのディスクレスクライアントについて、必要な IP アドレス、Ethernet アドレス (MAC アドレス)、名前、およびオペレーティングシステムのオプションとともに smdiskless add コマンドを使用します。
たとえば、次の例では sun4u マシン上で Solaris 8 を実行する「client1」ディスクレスクライアントを追加しています。
% /usr/sadm/bin/smdiskless add -- -i 129.9.200.1 ¥ -e 8:0:11:12:13:14 -n client1 -x os=sparc.sun4u.Solaris_8 |
オペレーティングシステムは、instruction_set.machine_class.Solaris_os_version のフォーマットで、OS サービスのセットアップのために smosservice コマンドを使用した時に指定した platform と同じにします。
/usr/sadm/bin/smdiskless add コマンドを繰り返し使用して、その他のディスクレスクライアントを追加します。
ディスクレスクライアントの追加が完了したら、/usr/sadm/bin/smdiskless list コマンドを使用してディスクレスクライアントがインストールされたことを確認します。
/usr/sadm/bin/smosservice patch コマンドを使用して、OS サービスのパッチの管理を行います。次のことができます。
OS サーバー上に /export/diskless/Patches パッチスプールディレクトリを確立する
パッチスプールディレクトリにパッチを追加する
パッチスプールディレクトリからパッチを削除する
パッチスプールディレクトリ内のパッチをリスト表示する
スプールされたパッチをクライアントに同期させる (クライアントがパッチの更新を認識できるように、各同期させたクライアントをリブートする必要があります)。
ディスクレスクライアントは、OS サーバー上で /export/exec/Solaris_version/Solaris_version_instruction_set.all ディレクトリを共有します。このディレクトリは共有されるため、ディスクレスクライアントから showrev -p コマンドを実行した場合このディレクトリに適用するパッチは表示されません。しかしカーネルパッチはディスクレスクライアントのルートディレクトリに適用され、そのためディスクレスクライアントから showrev -p コマンドを実行した場合に表示されます。
OS サーバーに Solaris 以外のパッチを追加したい場合は、次の手順を実行します。