Sun Java System Calendar Server 6 2005Q4 管理ガイド

第 1 章 概要

Sun JavaTM System Calendar Server 6 2005Q4 (Calendar Server) は、企業やサービスプロバイダのカレンダおよびスケジュール管理を集中化するためのスケーラブルな Web ベースのソリューションです。Calendar Server は、個人およびグループの予定や作業のカレンダ機能に加え、会議室や機器などのリソースのカレンダ機能をサポートします。

基本設定のシナリオについては、『Sun Java System Communications Services 6 2005Q4 Deployment Planning Guide』を参照してください。

この章では、次の項目について説明します。


注 –

この章と以降の章で、完全修飾のディレクトリパスが指定された場合、そのパスは Solaris プラットフォームのディレクトリパスを示します。Solaris のデフォルトパスは次のとおりです。

/opt/SUNWics5/cal

/var/opt/SUNWics5

/etc/opt/SUNWics5

Linux® のデフォルトパスは次のとおりです。

/opt/sun/calendar

/var/opt/sun/

/etc/opt/sun

Linux ユーザーは、Solaris のデフォルトとして表示されているどのコマンドも Linux のデフォルトパスに置き換える必要があります。


Calendar Server のインストール

Calendar Server のインストールおよび設定は、従来の Calendar Server リリース (2003Q4 以前のバージョン) から大幅に変更されています。Calendar Server 単独のインストーラはなくなりました。

Calendar Server 2003Q4 (6.0) 以降のバージョンをまだインストールしていない場合は、Sun Java Enterprise System インストーラを使用して 2005Q4 バージョンを入手する必要があります。このインストーラを使用すると、ほかの Sun コンポーネントおよびパッケージをインストールすることもできます。Sun Java Enterprise System インストーラについては、『Sun Java Enterprise System 2005Q4 Installation Guide for UNIX』を参照してください。

以前のバージョンの Sun Java Enterprise System からアップグレードする場合、アップグレードのプロセスは『Sun Java System 2005Q4 Upgrade and Migration Guide』に説明されています。

旧バージョンの Calendar Server からの移行については、第 4 章「データベース移行ユーティリティー」を参照してください。

インストール後の設定

Calendar Server をインストールしたあとに、設定を行う必要があります。インストーラのインストールプロセスでは、設定は行われません。

Procedure高レベルの作業一覧

手順
  1. Directory Server セットアップスクリプト comm_dssetup.pl を実行して Sun Java System Directory Server 5 を設定します (まだスクリプトが実行されていない場合)。

    このスクリプトは、次のディレクトリに格納されています。/opt/SUNWcomds/sbin

    このスクリプトの実行については、第 2 章「ディレクトリ準備スクリプト (comm_dssetup.pl)」を参照してください。

  2. Calendar Server 設定プログラム csconfigurator.sh を実行してサイト固有の要件を設定し、新しい ics.conf 設定ファイルを作成します。

    ics.conf ファイルのパラメータについては、付録 E 「Calendar Server の設定パラメータ」 を参照してください。

    このプログラムは、 次のディレクトリに格納されています。/opt/SUNWics5/sbin

    csconfigurator.sh の実行については、第 3 章「Calendar Server 設定プログラム (csconfigurator.sh)」を参照してください。

Calendar Server の特別なアカウント

Calendar Server の特別なアカウントには次のものがあります。

Calendar Server 管理者 (calmaster)

Calendar Server 管理者とは、関連付けられた特定のユーザー名とパスワードの組み合わせのうち、Calendar Server の管理権限を付与されているもののことです。たとえば、Calendar Server 管理者は Calendar Server サービスの起動と停止、ユーザーの追加と削除、カレンダの作成と削除などを実行できます。このユーザーは Calendar Server の管理権限を持ちますが、ディレクトリサーバーの管理権限を持つとは限りません。

Calendar Server 管理者のデフォルトのユーザー ID は calmaster ですが、Calendar Server の設定時に別のユーザーを指定することもできます。インストール後に別のユーザーを指定する場合は、ics.conf ファイルの service.admin.calmaster.userid パラメータの設定を変更します。

Calendar Server 管理者として指定するユーザー ID は、ディレクトリサーバー内の有効なユーザーアカウントである必要があります。Calendar Server の設定時に Calendar Server 管理者のユーザーアカウントがディレクトリサーバーに存在していない場合には、設定プログラムがアカウントを自動的に作成します。

次の表は、ics.conf ファイルで設定できる Calendar Server 管理者の構成パラメータを示しています。

表 1–1 Calendar Server (calmaster) 管理者の構成パラメータ

パラメータ 

説明 

service.admin.calmaster.userid

Calendar Server 管理者として指定されたユーザーのユーザー ID。Calendar Server のインストール時に、この必須値を指定する必要があります。デフォルトは "calmaster" です。

service.admin.calmaster.cred

Calendar Server 管理者として指定されたユーザー ID のパスワード。インストール時に、この必須値を指定する必要があります。 

caldb.calmaster

Calendar Server 管理者の電子メールアドレス。デフォルトは "root@localhost" です。

service.admin.calmaster.overrides.

accesscontrol

Calendar Server の管理者がアクセス制御に優先してアクセスできるかどうかを指定します。デフォルトは "no" です。

service.admin.calmaster.wcap.

allowgetmodifyuserprefs

 

Calendar Server 管理者が WCAP コマンドを使用してユーザー設定を取得、設定できるかどうかを指定します。デフォルトは "no" です。

service.admin.ldap.enable

service.admin.calmaster.userid に指定されたユーザーの認証に LDAP サーバーを使用するかどうかを指定します。デフォルトは “yes” です。

Calendar Server ユーザーおよびグループ

これらの特別なアカウントは Calendar Server の実行に使用されるユーザー ID とグループ ID を示しています。特別なアカウントが存在しないときは、特別な理由がないかぎり、設定プログラムによって自動的に作成されるデフォルト値 icsuser および icsgroup を使用することをお勧めします。

ただし、Calendar Server 設定プログラムの実行時に icsuser および icsgroup 以外の値を指定することもできます。これらの値は、それぞれ ics.conf ファイルの local.serveruid および local.servergid パラメータに格納されます。

スーパーユーザー (root)

Calendar Server をインストールするには、スーパーユーザー (root) としてログインするか、スーパーユーザーになる必要があります。スーパーユーザーとしてコマンド行ユーティリティーを実行し、Calendar Server を管理することもできます。ただし、一部の作業については Calendar Server ファイルへのアクセスの問題を回避するために、スーパーユーザーとしてではなく、icsuser および icsgroup (または選択した値) として実行する必要があります。

プロキシ管理者のログイン

管理者がユーザーカレンダを管理できるようにするには、設定ファイル ics.conf でパラメータを設定する必要があります。デフォルトは "no" で、この種のプロキシ認証が許可されないことを意味します。

Communications Express を使用している場合は、このパラメータを "yes" に設定する必要があります。

このパラメータの設定方法およびプロキシログインが機能しているかどうかの確認方法については、「ログインと認証の設定」を参照してください。

Calendar Server のエンドユーザー管理

エンドユーザーは、Sun Java System Communications Express の Web グラフィカルユーザーインタフェース (GUI) を使用して、クライアントマシンから Calendar Server に接続します。ユーザーは LDAP ディレクトリに一意のエントリを持っている必要があります。各ユーザーは 1 つ以上のカレンダを所有し、1 つ以上のグループに所属できます。

適切な権限を持つ管理者は、Delegated Administrator ユーティリティー (コマンド行) またはコンソール (GUI) を使用して、ユーザー LDAP エントリまたはリソース LDAP エントリを追加、削除、または変更できます。

Delegated Administrator ユーティリティー (commadmin) のマニュアルについては、『Sun Java System Communications Services 6 2005Q4 Delegated Administrator Guide』を参照してください。

Delegated Administrator コンソールのマニュアルについては、コンソールのオンラインヘルプを参照してください。

また、必要があれば、ldapmodify を使用して LDAP エントリを直接変更することもできます。ldapmodify については、『Sun ONE Directory Server Resource Kit 5.2 Tools Reference』を参照してください。


注意 – 注意 –

csuser など、Java Enterprise System 以前のバージョンで使用されるユーティリティープログラムは、今回のバージョンでも Calendar Server にバンドルされています。Access Manager を使用している場合は、ユーザー、ドメイン、またはリソース LDAP エントリの管理や作成にこれらのユーティリティーを使用しないでください。これには例外がいくつかあります。このような場合、このマニュアルでは適切なユーティリティーを示します。


この節では、ユーザーおよびそのカレンダ管理に関する次の点について説明します。

Calendar Server ユーザーの作成

Calendar Server ユーザーは、手動または自動で作成できます。

Calendar Server ユーザーの認証

Calendar Server は、ユーザーの認証とユーザー設定の格納に使用する、Sun Java System Directory Server などのディレクトリサーバーを必要とします。ただし、LDAP 以外のディレクトリサーバーに定義されているユーザーによるアクセスを許可できるように、Calendar Server には LDAP 以外のディレクトリにアクセスする場合に必要となるプラグインを記述するための Calendar Server API (CSAPI) が用意されています。CSAPI については、『Sun Java System Calendar Server 6 2005Q4 Developer’s Guide』を参照してください。

Calendar Server のユーザー設定

Calendar Server では、ユーザーはディレクトリサーバーに格納されているユーザー設定属性を使用して、カレンダデータの表示方法をカスタマイズすることができます。ユーザー設定 (これと対をなすのが Calendar Server の設定パラメータ) は、ユーザーインタフェースでのカレンダデータの表示に適用され、カレンダを表示する際のユーザー名、電子メールアドレス、表示色などの項目がこれに含まれます。

設定できる項目については、『Sun Java System Calendar Server 6 2005Q4 Developer’s Guide』get_userprefs および set_userprefs の WCAP コマンドを参照してください。

カレンダグループ

カレンダグループとは、個々の登録済みカレンダの集合体であり、グループには名前がついています。カレンダをグループ化することで、複数のカレンダを組み合わせて 1 つのカレンダとして表示できます。ユーザーは、Communications Express のグラフィカルユーザーインタフェースを使用してグループを作成します。

たとえば、プライベートなカレンダ、部署のカレンダ、会社の休日カレンダをカレンダグループとして組み合わせることができます。また、カレンダグループを利用してカレンダのリストを並べて表示し、カレンダの所有者に予定への出席を依頼することもできます。

これらのグループが LDAP グループと混同されることはありません。このユーザーインタフェースで作成したグループは、icsSet 属性内のユーザーの LDAP エントリに格納されます。したがって、ほかのユーザーが LDAP 内の出席者を検索するときには、ユーザーインタフェースで作成したグループを表示することはできません。

Calendar Server ユーザーについては、第 14 章「ユーザーとリソースの管理」を参照してください。

カレンダリソース

リソースとは、会議室、またはプロジェクタなど、カレンダを使ってスケジューリングできるものをいいます。そのような項目ごとに異なるリソース LDAP エントリがあります。LDAP エントリとそれに関連するカレンダの作成には、次の該当するツールを使用してください。

Calendar Server データ

この節では、Calendar Server データに関する次の項目について説明します。

Calendar Server データの形式

Calendar Server のデータ形式は、RFC 2445「Internet Calendaring and Scheduling Core Object Specification (iCalendar)」に準拠しています。Calendar Server は次の形式をサポートしています。

CSAPI を使用して、WCAP プロトコル用のトランスレータ DLL または共有ライブラリを開発できます。WCAP および CSAPI については、『Sun Java System Calendar Server 6 2005Q4 Developer’s Guide』を参照してください。

カレンダデータのインポートとエクスポート

カレンダデータは、iCalendar (.ical) 形式または XML (.xml) 形式でインポートおよびエクスポートできます。Calendar Server の管理者は、Calendar Server の csimport および csexport ユーティリティーを使用してカレンダデータをインポートおよびエクスポートできます。エンドユーザーは、Communications Express のユーザーインタフェースを使用してカレンダデータをインポートおよびエクスポートできます。

データ交換のためのカレンダリンク

カレンダは、電子メールメッセージや Web ページに埋め込んだリンクとして参照させることができます。カレンダが読み取りアクセスを許可しているかぎり、ユーザーは Calendar Server にログインすることなく、リンクをクリックするだけでカレンダを表示することができます。たとえば、次のリンクは Auditorium というリソース空間を指定しています。

http://calendar.sesta.com:8080/?calid=Auditorium

Calendar Server アラーム

Calendar Server は、受信者リストに送信されるサーバー側の電子メールアラームをサポートしています。電子メールメッセージの形式は設定変更が可能で、ユーザーまたはカレンダの属性としてではなく、サーバーの属性として維持されます。Calendar Server が限定的にサポートするのは、予定用の ITIP メソッド PUBLISHREQUESTREPLYCANCEL を含む ITIP/IMIP 標準 (RFC 2446 および RFC 2447) です。

LDAP データキャッシュオプション

LDAP データキャッシュオプションを使用すると、LDAP ディレクトリサーバーが、コミットされたデータの利用可能性に遅延が発生するように設定されている場合でも、コミットされるとすぐに LDAP データが利用できるようになります。

たとえば、Calendar Server がスレーブ LDAP ディレクトリサーバー経由でマスター LDAP ディレクトリにアクセスするマスター/スレーブ LDAP 構成がサイトに配備されており、コミットされた LDAP データの利用可能性に遅延が発生している場合でも、LDAP データキャッシュを使用すると、Calendar Server クライアントは正確な LDAP データを入手できるようになります。

ここで説明する内容は次のとおりです。

LDAP データキャッシュの使用に関する注意事項

次のガイドラインを使用して、サイトで LDAP データキャッシュを設定すべきかどうかを判断してください。

マスター/スレーブ LDAP 構成

マスター/スレーブ LDAP 構成には、マスター (ルート) ディレクトリサーバーと、1 つ以上のスレーブ (コンシューマまたはレプリカ) ディレクトリサーバーが含まれます。Calendar Server は、マスター LDAP ディレクトリサーバーに直接アクセスすることも、スレーブディレクトリサーバー経由でアクセスすることもできます。

LDAP データキャッシュ

LDAP データキャッシュは、マスターディレクトリサーバーが各スレーブディレクトリサーバーをまだ更新していない場合でも、Calendar Server クライアントに最新の LDAP データを提供することにより、マスター/スレーブ LDAP 構成の問題を解決します。

LDAP データキャッシュが有効になっていると、Calendar Server は、コミットされた LDAP データをキャッシュデータベース (ldapcache.db ファイル) に書き込みます。LDAP キャッシュデータベースは、デフォルトでは ldap_cache データベースディレクトリに配置されますが、必要に応じて別の場所を設定できます。

クライアントが単一ユーザーの LDAP データを変更すると、Calendar Server は、変更されたデータをスレーブディレクトリサーバーだけでなく、LDAP キャッシュデータベースにも書き込みます。以降のクライアント操作では、LDAP データがキャッシュデータベースから取得されます。このデータ取得は、単一ユーザーの次の操作に適用されます。

これにより、LDAP データキャッシュデータベースでは次のことが可能になります。

制限事項

LDAP データキャッシュでは、次のことを行うことはできません。

カレンダのアクセス制御

Calendar Server は、ACL (アクセス制御リスト) を使用して、カレンダ、カレンダプロパティー、予定や仕事 (作業) などのカレンダコンポーネントへのアクセスを制御します。

ここで説明する内容は次のとおりです。

セキュリティー保護された Calendar Server へのログイン

ユーザーが Communications Express 経由で Calendar Server にログインする場合、デフォルトでは、認証プロセスはユーザー名とパスワードを含むログイン情報を暗号化しません。サイトへのセキュリティー保護されたログインを希望する場合は、SSL (Secure Sockets Layer) プロトコルを使用してログインデータを暗号化するように Calendar Server を設定します。詳細は、第 8 章「SSL の設定」を参照してください。

ユーザー別のアクセス制御

カレンダ、カレンダプロパティー、カレンダコンポーネントへのアクセスの可否を決定する上で、Calendar Server は次のユーザーを区別します。

アクセス制御リスト (ACL)

Calendar Server は、カレンダ、カレンダプロパティー、予定や仕事 (作業) などのカレンダコンポーネントへのアクセスを制御するために、ACL (アクセス制御リスト) を使用します。ACL は、1 つ以上の ACE (アクセス制御エントリ) から構成されます。ACE は同じカレンダまたはコンポーネントに集合的に適用される文字列であり、ACL 内の各 ACE はセミコロンで区切られます。次に例を示します。

ACE には次の要素が含まれ、各要素はキャレット (^) で区切られます。

たとえば、jsmith^c^wd^g という ACE は次のように機能します。

Who

Who 要素は、個人、ユーザー、ドメイン、特定のユーザータイプなど、ACE の適用対象を指定する ACE の主要値です。

Who 要素は UPN (Universal Principal Name) と呼ばれます。ユーザーの UPN はユーザーのログイン名とユーザーのドメインを組み合わせたものです。たとえば、ドメイン sesta.com に属するユーザー bill の UPN は、bill@sesta.com です。

表 1–2 ACE (アクセス制御エントリ) 文字列の “Who” 要素の形式

形式 

説明 

user

特定のユーザーを表します。例: jsmith。 

user@domain

特定ドメインの特定ユーザーを表します。例: jsmith@sesta.com

@domain

指定ドメインの任意のユーザーを表します。 

例: @sesta.com は、jsmith@sesta.comsally@sesta.com、および sesta.com に属する任意のユーザーを表します。

ドメインのユーザー全体を対象にアクセスを許可または拒否するときは、この形式を使用します。 

@

すべてのユーザーを表します。 

@@{d|p|o|n}

カレンダの所有者を表します。 

  • @@d: 一次所有者のドメイン

  • @@p: 一次所有者のみ

  • @@o: 一次所有者を含むすべての所有者

  • @@n: 所有者以外

What

What 要素は、カレンダ、カレンダコンポーネント (予定または作業)、カレンダプロパティーなど、アクセスの対象となるターゲットを指定します。

表 1–3 ACE (アクセス制御エントリ) 文字列の “What” 要素の値

値 

説明 


c                           

予定や作業などのカレンダコンポーネントを指定します 


p                           

名前、説明、所有者などのカレンダプロパティーを指定します 


a                           

コンポーネントとプロパティーの両方を含むカレンダ全体 (すべて) を指定します 

How

How 要素は、読み取り、書き込み、削除など、許可されるアクセス権の種類を指定します。

表 1–4 ACE (アクセス制御エントリ) 文字列の “How” 要素の種類

種類 

説明 

r

読み取りアクセス。 

w

書き込みアクセス。新規項目の追加、既存項目の変更を含みます。 

d

削除アクセス。 

s

スケジュール (出席依頼) アクセス。要求の送信、応答の受け付け、その他の ITIP スケジューリング操作を実行できます。 

f

空き/予定ありアクセス権のみ。空き/予定ありアクセスでは、ユーザーはカレンダにスケジュールされている時刻を確認することはできますが、予定の詳細を確認することはできません。その代わりに、スケジュールが組まれている時間帯には「利用不可」だけが表示されます。予定がスケジュールされていない時間帯には、「空き時間」が表示されます。 

ドメインのルックアップアクセス 

e

応答アクセスの代行操作。このアクセス権を持つユーザーは、カレンダの一次所有者に代わって出席依頼を受け入れるか、または拒否することができます。ユーザーがカレンダの一次所有者以外の所有者として指定された段階で暗黙的に付与される権限であるため、このアクセス権を明示的に付与する必要はありません。 

i

出席依頼アクセスの代行操作。このアクセス権を持つユーザーは、カレンダの一次所有者に代わってほかのユーザーに出席を依頼したコンポーネントを作成、変更することができます。ユーザーがカレンダの一次所有者以外の所有者として指定された段階で暗黙的に付与される権限であるため、このアクセス権を明示的に付与する必要はありません。 

c

キャンセルアクセスの代行操作。このアクセス権を持つユーザーは、カレンダの一次所有者に代わってほかのユーザーに出席を依頼したコンポーネントを取り消すことができます。ユーザーがカレンダの一次所有者以外の所有者として指定された段階で暗黙的に付与される権限であるため、このアクセス権を明示的に付与する必要はありません。 

z

自己管理アクセス。認証されたユーザーは、アクセス制御エントリを追加または削除する権限を付与されます。この権限を持つユーザーは、自分自身で権限を追加したり削除したりすることができます。たとえば、UserA は、UserB のカレンダへの書き込みアクセス権はありませんが、UserB のカレンダへの自己管理アクセスを許可されているとします。これにより、UserA は、UserB のカレンダへの書き込みアクセスを自分自身に許可するためのアクセス制御エントリを追加できます。 

注: この特権を使用した場合も、UserA は、UserB のカレンダへのアクセスをほかのユーザーに許可することはできません。たとえば、UserA が自己管理の特権を使用して、UserB のカレンダへのアクセスを UserC に許可することはできません。 

Grant

Grant 要素は、d (削除) や r (読み取り) など、指定されたアクセス権の許可または拒否を指定します。

表 1–5 ACE (アクセス制御エントリ) 文字列の Grant 要素の値

値 

説明 

g

指定したアクセス制御権を付与します。 

d

指定したアクセス制御権を拒否します。 

ACE の例

次に、ACE の使用例を示します。

ACL への ACE の配置

Calendar Server は、ACL を読み取るときに、ターゲットに対するアクセスの許可または拒否を指示する ACE のうち、最初に見つかったものを使用します。このため、ACL の順序は重要で、より一般的な制御の前に、より具体的な制御が配置されるように ACE 文字列の順序を決定する必要があります。

たとえば、カレンダ jsmith:sports の ACL 内の最初の ACE がすべてのユーザーに読み取りアクセス権を付与すると仮定します。次に、Calendar Server はこのカレンダに対する bjones によるアクセスを拒否する第 2 の ACE を見つけます。この場合、Calendar Server はこのカレンダに対する読み取りアクセス権を bjones に付与し、最初の ACE と矛盾する第 2 の ACE は無視されます。このため、bjones のような特定のユーザーのアクセス権を有効にするには、カレンダのすべてのユーザーに適用される ACE のように一般的なエントリの前に、bjones 用の ACE を配置する必要があります。

Calendar Server の内部サブシステム

Sun Java System Calendar Server には、次の内部サブシステムが含まれます。

次の図は、これらのサブシステム間の論理フローを示しています。

図 1–1 Calendar Server 内部サブシステムの論理フロー

この図は、Calendar Server のサブシステムとコンポーネントの概念を示しています。これらのサブシステムとコンポーネントはこのあとに説明されています。

プロトコルサブシステム

クライアントは、HTTP プロトコル層を使用して要求を送信することによりカレンダデータを取得します。これは、カレンダ要求のサポートを効率化するための最小の HTTP サーバー実装です。これを実現するために、URL に WCAP (Web カレンダアクセスプロトコル) コマンドを追加します。

WCAP は Calendar Server 用の独自のインタフェースの記述に利用できるオープンプロトコルです。WCAP コマンド (拡張子は .wcap) を使用することにより、特定の管理コマンドを除くほとんどのサーバーコマンドを実行できます。WCAP コマンドを使用すると、HTML でラップされた XML または iCalendar として出力を要求できます。

WCAP コマンドについては、『Sun Java System Calendar Server 6 2005Q4 Developer’s Guide』を参照してください。

コアサブシステム

コアサブシステムには、アクセス制御コンポーネント、カレンダデータベースコンポーネントから受信したデータをデータトランスレータを使用してフォーマットする WCAP、および任意の CSAPI プラグインが含まれます。コアサブシステムはカレンダ要求を処理し、WCAP 出力を生成します。また、コアサブシステムは 「Calendar Server API (CSAPI)」を含むユーザー認証も処理します。

データベースサブシステム

データベースサブシステムは、Sleepycat Software の Berkeley DB (データベース API は未公開) を使用します。データベースサブシステムは、データベースとの間で予定、仕事 (作業)、アラームなどのカレンダデータを取得、格納します。カレンダデータは iCalendar 形式に基づいており、Calendar Server データに使用されるスキーマは iCalendar 標準のスーパーセットです。

データベースサブシステムは低次の形式でデータを返し、次にコア UI ジェネレータが、その低次のデータを変換して WCAP 経由で送信します。

配布されたカレンダデータベース用に、Calendar Server では Distributed Wire Protocol (DWP) を使用してネットワーク機能を提供します。詳細は、「分散型データベースサービス: csdwpd」を参照してください。

カレンダデータベースについては、第 16 章「csdb を使用した Calendar Server データベースの管理」を参照してください。

Calendar Server サービス

Calendar Server サービスは、デーモン (プロセス) として実行されます。次のサービスがあります。

管理サービス: csadmind

csadmind サービスは、Calendar Server を管理するためのシングルポイントの認証を提供します。また、csadmind サービスはアラーム通知やグループスケジュール要求も管理します。

HTTP サービス: cshttpd

Calendar Server はプライマリトランスポートとして HTTP を使用するため、cshttpd サービスは Calendar Server エンドユーザーからの HTTP コマンドを待機し、ユーザーコマンドを受け取って、受信した WCAP コマンドで指定された形式に応じたカレンダデータを返します。データは、標準の RFC 2445 iCalendar 形式 (text/calendar) または XML 形式 (text/xml) でフォーマットできます。

自動バックアップサービス: csstored

設定が正しく行われると、csstored サービスによってカレンダデータベースの自動バックアップが作成されます。ただし、このサービスは設定されていない状態でインストールされます。Calendar Server の自動バックアップの設定は、csconfigurator.sh 設定プログラムの実行時に行うことも、このマニュアルの説明に従ってあとで行うこともできます。

サービスが設定されていない、無効の状態で起動されると、自動バックアップが無効になっていることを示すメッセージが 24 時間ごとに管理者に送信されます。

バックアップが実行されるようにこのサービスを設定する方法については、第 10 章「自動バックアップ (csstored) の設定」を参照してください。

設定が正しく行われると、サービスには次の機能が備わります。

予定通知サービス (ENS): csnotifyd および enpd

ENS サービスは、次のサービスから構成されます。


注 –

enpd サービスと csnotifyd サービスは、cshttpdcsdwpd、および csadmind プロセスと同じサーバーで実行する必要はありません。


分散型データベースサービス: csdwpd

csdwpd サービスは、カレンダデータベースを複数のバックエンドサーバーに分散させる場合に必要です。csdwpd サービスを使用すると、カレンダデータベースを同じ Calendar Server 構成内の複数のバックエンドサーバーに分散させることにより、分散型のカレンダストアを形成できます。

csdwpd サービスはバックエンドサーバーでバックグラウンドで実行され、カレンダデータベースへのアクセスを必要とする DWP (データベースワイヤプロトコル) 準拠の要求を受け入れます。DWP は、Calendar Server データベースのネットワーク機能を提供する内部プロトコルです。

Calendar Server の API と SDK

Calendar Server には、次の API と SDK が含まれています。

WCAP (Web カレンダアクセスプロトコル)

Calendar Server は、クライアントの通信に利用する、高レベルのコマンドベースプロトコルである WCAP 3.0 をサポートします。クライアントは、WCAP コマンド (拡張子は .wcap) を使用して、カレンダコンポーネント、ユーザー設定、カレンダプロパティー、タイムゾーンなどのその他のカレンダ情報を取得、変更、削除します。時刻、文字列、パラメータなど、WCAP 要素の多くは RFC 2445、RFC 2446、RFC 2447 仕様に準拠します。

WCAP は、次の形式の HTTP メッセージとして出力カレンダデータを返します。

WCAP コマンドを使用し、login.wcap を使用してログインする Calendar Server 管理者は、次の権限を持ちます。

詳細は、『Sun Java System Calendar Server 6 2005Q4 Developer’s Guide』を参照してください。

Calendar Server API (CSAPI)

Calendar Server API (CSAPI) を利用すると、ユーザーのログイン認証、アクセス制御、カレンダの検索など、Calendar Server の機能面をカスタマイズできます。たとえば、Calendar Server はユーザー認証とユーザー設定の格納に LDAP ディレクトリサーバーのエントリを使用します。CSAPI を利用して LDAP ディレクトリサーバーを使用しない異なる認証メカニズムを実装することで、Calendar Server のデフォルトの認証を変更することができます。

CSAPI については、『Sun Java System Calendar Server 6 2005Q4 Developer’s Guide』を参照してください。

ENS (予定通知サービス) API

ENS (予定通知サービス) は、アラームキューで予定を検出し、これらの予定に関する通知を登録者に送信するアラームディスパッチャーです。プログラマは ENS API を使用して Calendar Server が使用する公開と登録機能を変更し、予定の登録、予定の登録解除、登録者への予定の通知などの機能を実行させることができます。ENS API は、Published API、Subscriber API、Publish and Subscribe Dispatcher API から構成されます。

ENS API については、『Sun Java System Communications Services 6 2005Q4 Event Notification Service Guide』を参照してください。

プロキシ認証 SDK (authSDK)

Calendar Server には、ユーザー認証のための authSDK が用意されています。authSDK を使用して既存のポータルサービスと Calendar Server を統合することで、ユーザーは再認証の必要なくさまざまなアプリケーションにアクセスできるようになります。authSDK は、DLL/ 共有オブジェクトライブラリとヘッダーファイルにパッケージ化された機能から構成されます。

Calendar Server と authSDK の間の接続は、信頼関係を形成します。ユーザーがログインし、authSDK への認証が正常に行われると、Calendar Server はプロキシによって生成される証明書を受け付け、機能へのアクセスを許可します。

authSDK については、『Sun Java System Calendar Server 6 2005Q4 Developer’s Guide』を参照してください。