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第 1 章

概要

SPARC、x86 システムで、サン・マイクロシステムズ社の浮動小数点環境を利用すると、正確、高性能、かつ移植性のある数値計算アプリケーションを開発できます。また、この環境は、他のユーザーが作成した数値計算プログラムが異常な動作をした場合に原因を究明するのに便利です。これらのシステムは、 IEEE 規格 754 (2 進浮動小数点演算) で規定された演算モデルを実装しています。このマニュアルは、これらのシステム上で IEEE 規格によって可能となったオプション、および柔軟性について、その使用方法を説明しています。

浮動小数点環境

浮動小数点環境は、データ構造、アプリケーションプログラマが IEEE 規格 754 を実装したハードウェア、ソフトウェア、およびソフトウェアライブラリから構成されています。IEEE 規格 754 を使用することによって、数値計算アプリケーションの作成がさらに簡単になります。IEEE 規格 754 は、数値計算プログラミングの作成において利用するコンピュータ算術の既に確立された基礎となるものです。

たとえば、ハードウェアは IEEE データ形式に対応する記憶装置書式、IEEE 形式のデータに関する演算、これらの演算が生成する結果の丸めの制御、IEEE 数値例外の発生を知らせるステータスフラグ、およびこのような例外の発生に対してユーザーがハンドラを定義していない場合の IEEE 規定の結果などを提供します。システムソフトウェアは IEEE 例外処理をサポートします。数学ライブラリ libm および libsunmath を含むソフトウェアライブラリは、式の生成を考慮した IEEE 規格 754 に従った方法で、exp(x)sin(x) などの関数を実装しています (浮動小数点の算術演算で十分に定義された結果を得られない場合は、システムは例外を発生してユーザーに伝えます) 。また、数学ライブラリは Inf (無限大) や NaN (非数) のような特別な IEEE の値を返す関数呼び出しも行います。

浮動小数点環境では上記の 3 つの要素は微妙に影響し合いますが、一般的にはこれらの相互作用はアプリケーションプログラマには見えません。プログラマは、IEEE 標準に規定され、推奨された計算メカニズムだけを見ることができます。一般には、このマニュアルではプログラマが有効に IEEE メカニズムを使用し、アプリケーションを効果的に作成することを目標としています。

浮動小数点に関する質問には、基本的な演算に関するものがかなりあります。たとえば、次のような質問です。

その他の質問は、例外や例外処理に関連しています。たとえば、次のような問題が発生した場合です。

特別な分野での算術では、基本的演算に関する質問にも期待するような解答が得られないかもしれません。また、例外処理に関する疑問についても、基本的演算の場合と同じと言わざるを得ません。プログラムが直ちに終了するか、あるいは古いマシンでは計算を続行し、誤った結果を出すことになります。

IEEE 規格 754 は、演算で数学的に期待した結果をもたらし、数学的に役立つ演算特性を提供します。また、ユーザーが特別にその他の選択をしなければ、例外におけるケースでは、確実に指定した結果 (デフォルトの結果) が得られます。

このマニュアルでは、NaN非正規数など、馴染みのうすい用語が使用されているかもしれません。浮動小数点演算に関する用語については、「用語集」で定義しています。


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