RAID-1 ボリュームの作成と保守

このセクションでは、ミラーの作成で役立つガイドラインを提供します。このセクションでは、作成するミラーのパフォーマンスに関するガイドラインも提供します。

RAID-1 ボリュームの構成のガイドライン

• ミラーを作成する前に、ミラーを構成する RAID-0 (ストライプまたは連結) ボリュームを作成します。

• ミラーを作成する場合、まず 1 方向のミラーを作成し、次に 2 番目のサブミラーを接続します。この方法により、再同期処理を開始します。さらに、この方法によりデータが破損しなくなります。1 方向のミラーは、将来の 2 方向または多方向のミラーとして使用するために作成することもできます。

• 1 つのコマンドで、1 方向ミラーから 2 方向ミラー、3 方向ミラー、4 方向ミラーを作成できます。1 つのコマンドで、すべてのサブミラーを作成することによって、作成プロセスを高速化できます。このプロセスは、既存のデータをミラー化しない場合およびすべてのサブミラー上のデータを破棄してもかまわない場合にのみ使用してください。

• スライス上に構築されている既存のファイルシステムから RAID-1 ボリュームを作成できます。プライマリ RAID-0 ボリューム (サブミラー) には、1 つのスライスのみを含めることができます。ルートまたは他のシステムクリティカルなファイルシステムをミラー化する場合、すべてのサブミラーが 1 つだけのスライスで構成されている必要があります。

• swap-l コマンドを使用して、すべての swap デバイスをチェックします。swap として指定された各スライスは、残りのスワップスライスから独立してミラー化される必要があります。

• Solaris 管理コンソール 内の拡張ストレージツール はミラー化されていないルート (/)、/opt、/usr、swap をサポートしません。実際に、ツールでは、システムの実行中にアンマウントできないファイルシステムのミラー化解除をサポートしていません。代わりに、これらのファイルシステムにはコマンド行プロシージャを使用します。

• 同じサイズのサブミラーを使用します。サイズが異なるサブミラーを使用すると、ディスク領域が無駄になります。

• ミラー内は、同じように構成されたサブミラーのみを使用します。特に、ラベルのないサブミラーでミラーを作成した場合、ディスクラベルを含むサブミラーを接続できなくなります。

• 最初に接続されたサブミラーがシリンダー 0 から開始していないミラー化されたファイルシステムを使用できます。接続するすべての追加のサブミラーもシリンダー 0 から始まっていない必要があります。この状況で始まっているサブミラーを接続しようとすると、次のエラーメッセージが表示されます。

  can't attach labeled submirror to an unlabeled mirror 

  特定のミラー内で使用することを意図されたサブミラーはすべてがシリンダー 0 から始まっているか、またはすべてがシリンダー 0 から始まっていない必要があります。

  開始シリンダーは、すべてのサブミラーで同じである必要はありません。ただし、すべてのサブミラーにシリンダー 0 が含まれるか、または含まれていない必要があります。

• ミラーを作成する前に、状態データベースの複製を追加して、ミラーのパフォーマンスを向上できます。原則として、システムに追加するミラーごとに、2 つの複製を追加します。Solaris Volume Manager はこれらの追加の複製を使用して、最適化された再同期を実行するために使用するダーティリージョンログ (DRL) を保存します。適切な数の複製を提供することで、RAID-1 ボリュームのパフォーマンスに対する I/O の影響を最小にすることができます。同じディスクまたはコントローラ上の少なくとも 2 つの複製を、複製が記録するミラーとして使用することも全体的なパフォーマンスの向上に役立ちます。

• 直接マウントできるのはミラーデバイスだけです。サブミラーがオフラインで、読み取り専用でマウントする場合を除き、サブミラーを直接マウントしないでください。サブミラーの一部であるスライスをマウントしないでください。このプロセスにより、データが破棄され、システムがクラッシュする可能性があります。

RAID-1 ボリュームのパフォーマンスのガイドライン

• サブミラーのスライスは、異なるディスクとコントローラに配置します。同じミラーの 2 つ以上のサブミラーのスライスを同じディスクに置くと、データの保護機能が大幅に低下します。同様に、サブミラーは、別個のコントローラに配置します。これは、コントローラやそのケーブルでは、ディスクよりも障害が発生する確率が高いためです。これにより、ミラーのパフォーマンスも向上します。

• 1 つのミラーでは、同じタイプのディスクとコントローラを使用します。特に、古い SCSI ストレージデバイスでは、ディスクやコントローラのパフォーマンスがモデルやブランドによって大幅に異なることがあります。パフォーマンスレベルが異なるディスクやコントローラを 1つのミラーで使用すると、パフォーマンスが大幅に低下することがあります。

• ミラー化すると読み取りパフォーマンスは向上する可能性がありますが、書き込みパフォーマンスは常に低下します。ミラー化によって読み取りパフォーマンスが向上するのは、スレッド化または非同期 I/O 状況の場合だけです。シングルスレッドによるボリュームの読み取りでは、パフォーマンスの向上は得られません。

• ミラーの読み取りポリシーを試してみて、パフォーマンスを向上させることができます。たとえば、デフォルトの読み取りモードは、ディスク間でラウンドロビン方式で交互に読み取ることです。このポリシーがデフォルトであるのは、ラウンドロビン方式が UFS マルチユーザー、マルチプロセッサアクティビティに最適に機能する傾向があるためです。

  場合によっては、geometric 読み取りオプションによって、ヘッドの動きとアクセス時間を最小にすることで、パフォーマンスが向上することがあります。このオプションは、次の場合にもっとも効果的です。

  • ディスクあたりにスライスが 1 つしかない

  • 一度に 1 つのプロセスだけがスライスまたはファイルシステムを使用する

  • I/O パターンの順次性が高いか、すべてのアクセスが読み取りの場合

• サービスを中断することなく、ミラーにサブミラーを接続できます。ミラーにサブミラーを接続して、2 方向、3 方向、4 方向のミラーを作成します。

• サブミラーをオフラインにすると、ミラーがサブミラーとの読み取りや書き込みができなくなります。ただし、サブミラーのミラーとの論理的関連付けは維持されます。サブミラーがオフラインの間、Solaris Volume Manager はミラーへのすべての書き込みを追跡します。書き込みは、サブミラーがオンラインに戻ると書き込まれます。最適化された再同期の実行によって、Solaris Volume Manager はサブミラー全体ではなく、変更されたデータのみを再同期するだけで済みます。サブミラーを切断すると、ミラーへのその論理的関連付けも切断されます。通常、サブミラーをオフラインにするのは、保守を実行するためです。サブミラーを切断して取り外します。

RAID-1 ボリュームオプションについて

ミラーのパフォーマンスを最適にするために、次のオプションを使用できます。

• ミラーからの読み取りポリシー

• ミラーへの書き込みポリシー

• ミラーが再同期される順番 (パス番号)

最初にミラーを作成するときに、ミラーオプションを定義できます。ミラーを設定して、実行した後に、ミラーオプションを変更することもできます。これらのオプションの変更に関するタスクについては、「RAID-1 ボリュームオプションを変更する方法」を参照してください。

RAID-1 ボリュームの読み取り/書き込みポリシー

Solaris Volume Manager では、RAID-1 ボリュームにさまざまな読み取り/書き込みポリシーを構成できます。読み取り/書き込みポリシーを適切に設定すると、特定の構成のパフォーマンスを向上できます。

表 10-1 RAID-1 ボリュームの読み取りポリシー

表 10-2 RAID-1 ボリュームの書き込みポリシー

パス番号

パス番号 (0 から 9 の範囲の数字) は、システムのリブート時に特定のミラーを再同期する順番を決定します。デフォルトのパス番号は 1 です。パス番号の小さいミラーが先に再同期されます。0 を使用すると、ミラーの再同期はスキップされます。パス番号 0 は、読み取り専用としてマウントされているミラーに対してのみ使用します。同じパス番号をもつミラーは同時に再同期されます。

保守作業を判断するためのサブミラーのステータスについて

Solaris Volume Manager の metastat コマンドは、RAID 1 ボリュームおよびサブミラーに関するステータス情報を報告します。ステータス情報は、RAID-1 ボリュームへの保守作業が必要かどうかを判断するために役立ちます。次の表に、RAID-1 ボリュームに対して、metastat コマンドを実行した場合に表示されるサブミラーの状態を説明します。

表 10-3 サブミラーの状態

さらに、サブミラー内の各スライスについて、metastat コマンドは次の情報を表示します。

デバイス

ストライプ内のスライスのデバイス名を示します

開始ブロック

スライスが開始するブロックを示します

Dbase

スライスに状態データベースの複製が格納されているかどうかを示します

状態

スライスの状態を示します

ホットスペア

スライスが障害のあるスライスのホットスペアとして使用されていることを示します。

サブミラーの状態は、サブミラーのステータスの一般的な情報のみを提供します。ミラーのエラーのトラブルシューティングを行なっている場合、スライスの状態は確認すべきもっとも重要な情報と考えられます。サブミラーで「保守が必要」状態が報告された場合、詳細について、スライスの状態を参照する必要があります。

スライスが「保守」状態にあるか、「最後にエラー」状態にあるかによって、異なる復元作業を実行します。「保守」状態のスライスしかない場合は、それらは任意の順番で修復できます。「保守」状態と「最後にエラー」状態の両方のスライスがある場合は、「保守」状態のスライスを先に修正する必要があります。「保守」状態のスライスを修正したら、次に、「最後にエラー」状態のスライスを修正します。詳細については、「RAID-1 および RAID-5 ボリューム内のコンポーネントの置き換えと有効化の概要」を参照してください。

次の表に、サブミラーのスライスの状態と、可能な対策を説明します。

表 10-4 サブミラーのスライスの状態