この章では、簡易性やパフォーマンスを損うことなく現在の構成をMaximum Availability Architecture(MAA)環境に移動して、冗長性と信頼性を備えたシステムおよびデータベースを作成するための推奨ベスト・プラクティスについて説明します。
この章には、次の各項が含まれます。
MAAでは、Oracle Real Application Clusters(Oracle RAC)のスケーラビリティおよび可用性のメリットが、Oracle Data Guardのデータおよびサイト保護機能と組み合されます。
MAA環境は、Oracle RACプライマリ・データベースの存在する1つのサイトと、最低1つのフィジカル・スタンバイ・データベースまたはロジカル・スタンバイ・データベースをホストするクラスタの存在するもう1つのサイトで構成されます(可能であれば、ロジカル・スタンバイ・データベースとフィジカル・スタンバイ・データベースを組み合せてホストするのが理想的です)。この環境では、Oracle RACを使用したOracle Database 11gとOracle Data Guardを使用したOracle Database 11gの両方の機能とメリットが継承されるため、計画外および計画済の停止に対して最も包括的なソリューションが提供されます。
MAA構成には、Oracle RACプライマリ・データベースとOracle RACスタンバイ・データベースの両方が含まれることが理想ですが、ビジネス要件やその他の考慮事項によっては異なる終了構成を選択することや、MAAへの段階的移行を進めることも可能です。実際、一部の終了構成は、Oracle RACプライマリとOracle RACスタンバイの組合せ構成を段階的に実装する場合の中間形態と考えることができます。
構成をMAA環境へ移動するためのベスト・プラクティスは、Oracle Enterprise Manager 10gのGrid Control(リリース10.2.0.5以上)を使用することです。
第3章で、ポイント&クリックで操作するGrid Controlを使用すると、任意の実装レベルにある既存の構成を、最小の停止時間で完全なMAAアーキテクチャ(Data Guard、Oracle RAC、ASMなど)にもたらせることを示しました。Grid Control環境では実質的にすべての手順を実行することができます。
Grid Controlでは次のことが可能です。
最小の停止時間での高可用性MAA環境の作成と拡張。この機能には次が含まれます。
フィジカル・スタンバイ・データベースの作成を通して堅牢で可用性の高いストレージに移動すること(たとえばファイル・システムからASMへ)。発生する停止時間は、スタンバイ・データベースへのスイッチオーバーの実行に必要な時間に限られています。
フィジカル・スタンバイ・データベースをOracle RACに変換することによって、排他単一インスタンスのデータベースからクラスタ化へ移動すること。発生する停止時間は、スタンバイ・データベースへのスイッチオーバーの実行に必要な時間に限られています。
既存のOracle RACデータベースに含まれるインスタンスやノードを増加する拡張。停止時間は生じません。
単一インスタンスとOracleクラスタウェアの両方、ASMおよびOracle RACソフトウェアを、新規または既存の環境にデプロイする、完結した反復可能な手順。インストールと構成を、自動的、計画済の単一の実行で行う際に必要なすべての手順が処理されます。
既存のOracleクラスタウェア、ASMおよびOracle RAC環境に追加のノードを追加するための、停止時間を伴わない、完結した反復可能な手順。現在のクラスタ環境を拡張のソースとして使用して、インストールと構成を、自動的、計画済の単一の実行で行う際に必要なすべての手順が処理されます。
関連項目:
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Grid Controlを使用してMAAアーキテクチャへ構成を移動できない場合、SQL*Plus文を使用して、手動で手順を実行することができます。
現在の構成設定に応じて、この項の関連するトピックを実行してください。表6-1に、例としていくつかの可能な開始構成に対応する手順を示します。
表6-1 MAA環境に移動する開始構成
開始構成 | 対応する移動手順 |
---|---|
単一インスタンスのプライマリ・データベース |
「単一インスタンス・データベースのOracle RAC・データベースへの変換」の手順に従って、プライマリ・データベースをOracle RACに変換します。 |
単一インスタンスのスタンバイ・データベース |
「単一インスタンス・データベースのOracle RAC・データベースへの変換」の手順に従って、スタンバイ・データベースをOracle RACに変換します。 |
単一インスタンスのData Guard構成 |
「単一インスタンス・データベースのOracle RAC・データベースへの変換」の手順に従って、プライマリ・データベースとスタンバイ・データベースのいずれかまたは両方をOracle RACに変換します。 |
Oracle RACプライマリ・データベース(ただし非Data Guard構成) |
「Oracle RACプライマリ・データベースへのOracle Data Guard構成の追加」の手順を参照して、単一インスタンスのスタンバイ・データベースまたはOracle RACスタンバイ・データベースを構成に追加します。 |
ASMのない単一インスタンス・データベースまたはOracle RACデータベース |
MAAホワイト・ペーパー『Migration to Automatic Storage Management』( |
Oracle RACデータベースを構成するためにノードを追加する手順では、まずOracleクラスタウェアとOracle RACソフトウェアをノードにインストールしてクラスタを作成し、次にOracle RACインスタンスを追加します。この手順には、次の基本タスクが含まれます。
クラスタにノードを接続します。
Oracleクラスタウェアを、クラスタを構成するすべてのノード上にインストールします。
新規ノードにOracle RAC用の記憶域を準備します。
Oracle RACデータベース・レイヤーにノードを追加します。
新規ノードにデータベース・インスタンスを追加します。
関連項目: 手順の詳細は、ご使用のプラットフォームに対応するOracle RACのインストレーション・ガイドを参照してください。 |
単一インスタンスのData Guardスタンバイ・データベースまたはOracle RACスタンバイ・データベースの作成方法の詳細な手順は、現在までに公開されている一連のMAAホワイト・ペーパーを参照してください。次の各項では、実行する必要がある作業の概要を説明するとともに、詳細な説明を含むホワイト・ペーパーへのリンクを提供します。
既存のOracle RACプライマリ・データベースからのOracle RACスタンバイ・データベースの作成には、次の基本的な作業が含まれます。
ファイルを収集してバックアップを実行します。
スタンバイ・データベースでOracle Netを構成します。
スタンバイ・インスタンスおよびデータベースを作成します。
Data Guardのプライマリ・データベースを構成します。
Data Guard構成を検証します。
手順説明は、次の場所にある『MAA / Data Guard 10g Setup Guide - Creating an Oracle RAC Standby for an Oracle RAC Primary』ホワイト・ペーパーを参照してください。
http://www.oracle.com/technology/deploy/availability/pdf/MAA_WP_10g_RACPrimaryRACPhysicalStandby.pdf
既存のOracle RACプライマリ・データベースのための単一インスタンス・スタンバイ・データベースの作成には、次の基本的な作業が含まれます。
ファイルを収集してバックアップを実行します。
フィジカル・スタンバイ・データベースでOracle Netを構成します。
フィジカル・スタンバイ・インスタンスおよびデータベースを作成します。
Data Guardのプライマリ・データベースを構成します。
Data Guard構成を検証します。
手順説明は、次の場所にある『MAA / Data Guard 10g Setup Guide - Creating a Single-Instance Standby for an Oracle RAC Primary』ホワイト・ペーパーを参照してください。
既存のOracle RACフィジカル・スタンバイ・データベースからのOracle RACロジカル・スタンバイ・データベースの作成には、次の基本的な作業が含まれます。
フィジカル・スタンバイ・データベース環境を準備します。
フィジカル・スタンバイ・データベースをロジカル・スタンバイ・データベースに変換します。
Data Guard構成を検証します。
手順説明は、次の場所にある『MAA / Data Guard 11g Setup Guide - Creating an Oracle RAC Logical Standby for an Oracle RAC Primary Database』ホワイト・ペーパーを参照してください。