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Oracle Databaseバックアップおよびリカバリ・ユーザーズ・ガイド
11g リリース2(11.2)
B56269-05
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1 バックアップおよびリカバリの概要

この章では、Oracle Databaseのバックアップとリカバリについて説明し、Oracleソリューションの概要を示します。この章の内容は次のとおりです。


注意:

Recovery Manager (RMAN)をすぐに使用する場合は、第2章「RMANの概要」に進みます。

バックアップおよびリカバリの目的

バックアップ管理者の主な責務は、バックアップおよびリカバリ計画を立案、実装および管理することです。通常、バックアップおよびリカバリ計画の目的は、データの消失からデータベースを保護し、データの消失後にデータベースを再構築することです。バックアップ管理者の通常のタスクには、次のものがあります。

  • 様々な障害に対する対策の計画およびテスト

  • バックアップおよびリカバリ用のデータベース環境の構成

  • バックアップ・スケジュールの設定

  • バックアップおよびリカバリ環境の監視

  • バックアップに関する問題のトラブルシューティング

  • 必要に応じたデータの消失からのリカバリ

バックアップ管理者は、バックアップおよびリカバリに関する次のような他の責務を求められることもあります。

  • 長期格納用データベース・コピーを作成する場合のデータ保持

  • 1つのデータベースまたはホストから別のデータベースまたはホストにデータを移動する場合のデータ送信

このマニュアルでは、前述のタスクの実行方法について説明します。

データ保護

バックアップ管理者は、主にデータ保護用のバックアップを作成および監視します。バックアップとは、データを再構築するために使用可能なデータベースのデータのコピーのことです。バックアップは、物理バックアップまたは論理バックアップのいずれかです。

物理バックアップとは、データベースを保存およびリカバリするために使用する物理ファイルのコピーのことです。これらのファイルには、データファイル、制御ファイル、アーカイブREDOログなどがあります。つまり、データベース情報を別の場所(ディスク、またはテープなどのオフライン・ストレージ・メディア)に保存するファイルのコピーは、すべて物理バックアップになります。

論理バックアップには、表やストアド・プロシージャなどの論理データが含まれています。Oracle Data Pumpを使用すると、論理データをバイナリ・ファイルにエクスポートし、後でそのバイナリ・ファイルをデータベースにインポートできます。データ・ポンプのコマンドライン・クライアントであるexpdpおよびimpdpでは、DBMS_DATAPUMPおよびDBMS_METADATA PL/SQLパッケージが使用されます。

物理バックアップは、適切なバックアップおよびリカバリ計画の基礎となります。論理バックアップは、様々な状況で物理バックアップを補足するために役立ちますが、物理バックアップがなければデータ消失に十分に対処することはできません。

特に明記されていないかぎり、バックアップおよびリカバリのドキュメントで使用されているバックアップという用語は、物理バックアップを指します。データベースのバックアップとは、物理バックアップを作成する作業のことです。バックアップおよびリカバリのドキュメント・セットでは、ほとんどの場合、物理バックアップについて重点が置かれています。

Oracle Databaseの通常の操作を中断したり、データベースのI/O操作に影響を及ぼす問題はいくつかありますが、通常、DBAの介入やデータ・リカバリが必要となるのは、メディア障害、ユーザー・エラーおよびアプリケーション・エラーのみです。 他の障害で、データが消失しないDBAの介入、またはバックアップからのリカバリが不要なDBAの介入が必要になる場合もあります。たとえば、インスタンスの障害が発生した後にデータベースを再起動したり、データファイルが一杯になったことが原因で文の実行が失敗した後にディスク領域をさらに割り当てる必要がある場合があります。

メディア障害

メディア障害とは、データベースの実行に必要なディスク・ファイルの読取りまたは書込みの障害を発生させる、ディスクでの物理的な問題のことです。すべてのデータベース・ファイルで、メディア障害が発生する危険性があります。メディア障害が発生した後の適切なリカバリ技術は、影響を受けているファイルおよび使用可能なバックアップのタイプによって異なります。

バックアップおよびリカバリの特に重要な側面は、障害リカバリ計画を立案して、データベース・ホスト全体の消失などの重大なデータ消失を回避することです。

ユーザー・エラー

ユーザー・エラーは、アプリケーション・ロジックのエラーまたは手作業の誤りによって、データベース内のデータが誤って変更されたり、削除された場合に発生します。ユーザー・エラーは、データベースの停止時間を発生させる最も大きな原因であるとみなされています。

ユーザー・エラーによるデータの消失は、局所的な場合または広範囲に及ぶ場合があります。局所的な損害の例としては、従業員表から誤った人を削除してしまった場合などがあります。このタイプの損害には、的確な検出および修復が必要です。広範囲に及ぶ損害の例としては、現在の月の会社の注文を削除するバッチ・ジョブなどがあります。この場合は、データベースの停止時間が長くならないようにするために、思い切った処置が必要となります。

ユーザー・トレーニングや権限の慎重な管理によってほとんどのユーザー・エラーは回避できますが、ユーザー・エラーによってデータが消失した場合に、消失したデータを正常にリカバリできるかどうかは、バックアップ計画にかかっています。

アプリケーション・エラー

ソフトウェアの障害によってデータ・ブロックが破損する場合もあります。物理的な破損(メディア破損とも呼ばれます)の場合、ブロックがデータベースで認識されません。チェックサムが無効か、ブロック内容がすべて0(ゼロ)か、またはブロックのヘッダーとフッターが一致していません。破損が広範囲に及んでいない場合は、 ブロック・メディア・リカバリを使用して簡単に修復できることがあります。


関連項目:


データの保持

データの保持は、データの保護と関連していますが、目的が異なります。たとえば、ビジネスの四半期の終わりに存在していたデータベースのコピーを保持する必要がある場合があります。このバックアップは、障害リカバリ計画の一部ではありません。多くの場合、これらのバックアップが書き込まれるメディアは、バックアップの完了後に使用できません。火災の危険性がない保管場所にテープを送ったり、テスト施設にポータブル・ハード・ドライブを発送する場合などです。RMANには、バックアップを作成し、バックアップの保存方針からそのバックアップを除外する有効な方法が備えられています。このタイプのバックアップは、 アーカイブ・バックアップと呼ばれます。

データ送信

状況によっては、データベースまたはデータベース・コンポーネントのバックアップを作成し、それを別の場所に移動する必要がある場合があります。たとえば、Recovery Manager (RMAN)を使用すると、データベース・コピーの作成、別のデータベースにインポート可能な表領域コピーの作成、またはプラットフォーム間でのデータベース全体の移動を行うことができます。これらのタスクは、厳密にはバックアップおよびリカバリ計画の一部ではありませんが、データベースのバックアップを使用する必要があるため、バックアップ管理者の責務に含まれる場合があります。


関連項目:

第I部「RMANを使用したデータの送信」の章を参照してください。

Oracleのバックアップおよびリカバリのソリューション

バックアップおよびリカバリ計画の実装中に、次のソリューションを使用できます。

  • Recovery Manager (RMAN)

    Recovery Managerは、Oracle Databaseと完全に統合されており、一連のバックアップおよびリカバリ・アクティビティ(バックアップに関する履歴データのRMANリポジトリのメンテナンスなど)を実行します。RMANには、コマンドラインまたはOracle Enterprise Managerを介してアクセスできます。

  • ユーザー管理のバックアップおよびリカバリ

    このソリューションでは、ホスト・オペレーティング・システム・コマンドとSQL*Plusリカバリ・コマンドを組み合せて、バックアップおよびリカバリを実行します。管理者は、バックアップおよびリカバリを実行するタイミングと方法を詳細に決定する必要があります。

これらのソリューションはOracleによってサポートされており、完全に文書化されていますが、データベースのバックアップおよびリカバリのためのソリューションとしてはRMANを使用することをお薦めします。RMANでは、様々なホスト・オペレーティング・システム間で共通のバックアップ・タスク用インタフェース、およびユーザー管理の方法では使用できない複数のバックアップの方法が提供されています。

このマニュアルのほとんどの部分では、RMANベースのバックアップおよびリカバリについて説明しています。ユーザー管理のバックアップおよびリカバリの方法については、「ユーザー管理のバックアップおよびリカバリの実行」を参照してください。これらの機能の主なものを次に示します。

  • 増分バックアップ

    増分バックアップでは、前回のバックアップ以降に変更されたブロックのみが格納されます。このため、より圧縮されたバックアップおよび高速なリカバリが可能になり、データファイルのメディア・リカバリ中にREDOを適用する必要が少なくなります。ブロック・チェンジ・トラッキングを有効にした場合は、各入力データファイルで全体スキャンが行われないようにすることによって、パフォーマンスを向上させることができます。増分バックアップを実行するには、BACKUP INCREMENTALコマンドを使用します。

  • ブロック・メディア・リカバリ

    少数の破損データ・ブロックのみが含まれているデータファイルは、オフラインにしたりバックアップからリストアしたりせずに修復することができます。ブロック・メディア・リカバリを実行するには、RECOVER BLOCKコマンドを使用します。

  • バイナリ圧縮

    Oracle Databaseに統合されているバイナリ圧縮メカニズムによって、バックアップのサイズが削減されます。

  • 暗号化バックアップ

    RMANは、Oracle Databaseに統合されているバックアップの暗号化機能を使用して、暗号化された形式でバックアップ・セットを格納します。ディスクに暗号化バックアップを作成するには、データベースでAdvanced Security Optionを使用している必要があります。暗号化バックアップをテープに直接作成するには、RMANでOracle Secure Backup SBTインタフェースを使用している必要があります。

  • 自動化されたデータベースの複製

    ASMデータベース間での直接の複製を含む様々なストレージ構成をサポートしており、データベースのコピーを簡単に作成できます。

  • クロス・プラットフォームのデータ変換

RMANまたはユーザー管理の方法のいずれを使用しても、データ・ポンプ・エクスポート・ユーティリティを使用して作成したスキーマ・オブジェクトの論理バックアップで物理バックアップを補助できます。リストアおよびリカバリ後に、データ・ポンプ・インポートを使用してデータを再作成できます。論理バックアップの大部分は、バックアップおよびリカバリに関するドキュメントでは説明されていません。

表1-1に、様々なバックアップ方法の機能の概要を示します。

表1-1 バックアップ方法の機能比較

機能 Recovery Manager ユーザー管理 データ・ポンプ・エクスポート

クローズ状態のデータベース・バックアップ

サポートされています。インスタンスをマウントする必要があります。

サポートされています。

サポートされていません。

オープン状態のデータベース・バックアップ

サポートされています。BEGIN/END BACKUP文を使用する必要はありません。

サポートされています。BEGIN/END BACKUP文を使用する必要があります。

一貫性バックアップの生成にはロールバックまたはUNDOセグメントが必要です。

増分バックアップ

サポートされています。

サポートされていません。

サポートされていません。

破損ブロックの検出

サポートされています。破損ブロックを識別してV$DATABASE_BLOCK_CORRUPTIONに記録します。

サポートされていません。

サポートされています。エクスポート・ログで破損ブロックを識別します。

バックアップに含めるファイルの自動指定

サポートされています。バックアップするすべてのファイル(データベース全体、表領域、データファイル、制御ファイルなど)の名前および場所を指定します。

サポートされていません。バックアップするファイルを手動で検索し、コピーする必要があります。

該当なし。

バックアップ・リポジトリ

サポートされています。バックアップは、RMANメタデータのメイン・リポジトリである制御ファイルに記録されます。また、このメタデータを別のデータベースのスキーマであるリカバリ・カタログに格納することもできます。

サポートされていません。DBAは、独自のバックアップ・レコードを保持する必要があります。

サポートされていません。

メディア・マネージャへのバックアップ

サポートされています。メディア・マネージャとのインタフェースとして機能します。また、RMANは、プロキシ・コピーもサポートしています。プロキシ・コピーは、メディア・マネージャでディスクとバックアップ・メディア間のデータの転送を完全に管理できるようにする機能です。

サポートされています。テープへのバックアップは、手動で行うか、またはメディア・マネージャによって制御されます。

サポートされていません。

初期化パラメータ・ファイルのバックアップ

サポートされています。

サポートされています。

サポートされていません。

パスワードおよびネットワーク・ファイルのバックアップ

サポートされていません。

サポートされています。

サポートされていません。

プラットフォームに依存しないバックアップ用言語

サポートされています。

サポートされていません。

サポートされています。


Oracleフラッシュバック技術

『Oracle Database概要』で説明されているように、Oracleフラッシュバック技術は、物理バックアップおよびリカバリ計画を補完します。この機能セットによって、データ保護の追加レイヤーが提供されます。具体的には、Oracleフラッシュバックの様々な機能を使用すると、バックアップのリストアまたはPoint-in-Timeリカバリを実行せずに、過去の状態のデータを表示したり、データベースを巻き戻すことができます。通常、フラッシュバック機能が適用されるほとんどの場合は、フラッシュバック機能の方がメディア・リカバリより効率的で簡単です。

論理フラッシュバック機能

Oracleのほとんどのフラッシュバック機能は論理レベルで実行されるため、データベース・オブジェクトの表示および操作を行うことができます。Oracleの論理レベルのフラッシュバック機能は、RMANに依存しないため、バックアップ計画でRMANを使用するかどうかに関係なく使用できます。Oracle Flashback Dropを除き、論理フラッシュバック機能はUNDOデータに依存しています。UNDOデータは、各データベースの更新の影響およびその更新によって上書きされる値に関するレコードです。

Oracle Databaseには、次の論理フラッシュバック機能が含まれています。

  • Oracle Flashback Query

    目標時点を指定して、データベースに対する問合せを実行し、目標時点に表示される結果を確認できます。表への更新などの不要な変更からリカバリするには、エラー発生前の目標時点を選択し、消失した行の内容を取得する問合せを実行します。この機能の使用方法の詳細は、『Oracle Databaseアドバンスト・アプリケーション開発者ガイド』を参照してください。

  • Oracle Flashback Version Query

    指定した時間間隔で1つ以上の表に存在していたすべての行のすべてのバージョンを表示できます。様々なバージョンの行に関するメタデータ(バージョンを作成したトランザクションの開始時刻、終了時刻、操作、トランザクションIDなど)を取得することもできます。この機能を使用すると、消失したデータ値をリカバリし、問い合せた表に対する変更を監査できます。この機能の使用方法の詳細は、『Oracle Databaseアドバンスト・アプリケーション開発者ガイド』を参照してください。

  • Oracle Flashback Transaction Query

    単一のトランザクションによって行われた変更、または特定の期間にすべてのトランザクションによって行われた変更を表示できます。この機能の使用方法の詳細は、『Oracle Databaseアドバンスト・アプリケーション開発者ガイド』を参照してください。

  • Oracle Flashback Transaction

    トランザクションを無効にできます。Oracle Databaseによって、トランザクション間の依存性が判別され、不要な変更を無効にする補正トランザクションが実際に作成されます。データベースは、トランザクション、およびそのトランザクションに依存している他のすべてのトランザクションが発生しなかった場合と同様の状態まで巻き戻されます。この機能の使用方法の詳細は、『Oracle Databaseアドバンスト・アプリケーション開発者ガイド』を参照してください。

  • Oracle Flashback Table

    データベースのいずれの部分もオフラインにすることなく、表または表のセットを過去の指定した時点にリカバリできます。ほとんどの場合、フラッシュバック表を使用すると、より複雑なPoint-in-Timeリカバリ操作を行う必要がなくなります。フラッシュバック表では、表がリストアされ、同時に現在の索引、トリガーおよび制約などの関連する属性が自動的にメンテナンスされます。これによって、ユーザーはデータベース固有のプロパティを検索してリストアすることを回避できます。この機能の使用方法については、「フラッシュバック表を使用した表の巻戻し」を参照してください。

  • Oracle Flashback Drop

    DROP TABLE文の結果を無効にできます。この機能の使用方法については、「フラッシュバック・ドロップを使用したDROP TABLE操作の巻戻し」を参照してください。

フラッシュバック・データ・アーカイブでは、一部の論理フラッシュバック機能を使用して、非常に古いデータにアクセスできます。フラッシュバック・データ・アーカイブは、1つ以上の表領域または表領域の一部で構成されています。フラッシュバック・データ・アーカイブを作成する場合は、名前、保存期間および表領域を指定します。デフォルトのフラッシュバック・データ・アーカイブを指定することもできます。保持期間を経過すると、古い履歴データは自動的に消去されます。

フラッシュバック・アーカイブは、個々の表に対して有効または無効にすることができます。デフォルトでは、フラッシュバック・アーカイブはすべての表に対して無効になっています。


参照:


フラッシュバック・データベース

物理レベルでは、Oracle Flashback Databaseを使用すると、データベースのPoint-in-Timeリカバリ(DBPITR)より効率的なデータ保護を行うことができます。現行のデータファイルに不要な変更が含まれている場合は、RMANコマンドFLASHBACK DATABASEを使用して、データファイルを過去の時点の内容に戻すことができます。最終的に生成される結果はDBPITRの結果に類似していますが、バックアップからデータファイルをリストアする必要はなく、メディア・リカバリと比較するとREDOを使用する必要が少ないため、通常、はるかに短時間で戻されます。

フラッシュバック・データベースでは、過去のバージョンのデータ・ブロックへのアクセスにフラッシュバック・ログを使用します。また、アーカイブREDOログに含まれている情報も使用します。フラッシュバック・データベースを使用するには、データベース用の高速リカバリ領域を構成する必要があります。フラッシュバック・ログは、この領域にのみ格納できるためです。デフォルトでは、フラッシュバック・ロギングは有効になっていません。フラッシュバック・ログに使用される領域は、データベースによって自動的に管理され、高速リカバリ領域内の他のファイルに必要な領域との間でバランスが取られています。

Oracle Databaseでは、フラッシュバック・データベース、バックアップおよびリカバリとともにリストア・ポイントも使用できます。リストア・ポイントは、システム変更番号(SCN)に対応する別名です。データベースの一部またはすべてを任意の時点の内容に戻す必要が予測される場合は、リストア・ポイントをその時点に作成できます。保証付きリストア・ポイントによって、フラッシュバック・データベースを使用してデータベースをリストア・ポイントの時点に戻すことができます。


参照:

FLASHBACK DATABASEコマンドを使用してフラッシュバック・データベースを実行する方法については、「フラッシュバック・データベースを使用したデータベースの巻戻し」を参照してください。

データ・リカバリ・アドバイザ

Oracle Databaseには、データ・リカバリ・アドバイザ・ツールが含まれています。このツールは、永続的なデータの障害を自動的に診断し、適切な修復オプションを提示して、ユーザーの要求に応じて修復を実行します。データ・リカバリ・アドバイザによって、すべてのOracleバックアップおよびリカバリのソリューション用のシングル・ポイント・エントリが提供されます。データ・リカバリ・アドバイザは、Enterprise ManagerのDatabase ControlまたはGrid Controlのコンソール、あるいはRMANのコマンドライン・クライアントを介して使用できます。

通常、データベース障害は、エラー・メッセージ、アラート、トレース・ファイル、トレース・ダンプ、データ整合性チェックの失敗などの様々な症状を示します。データ・リカバリ・アドバイザは、自動的に診断を行い、これらの障害に関してユーザーに通知します。データ・リカバリ・アドバイザでは、障害とは、一連の修復処置に直接マップできる永続的なデータの破損のことです。各障害には、OPENまたはCLOSEDのステータスがあります。また、各障害には、CRITICAL、HIGHまたはLOWの優先順位があります。

障害は、データ整合性チェックによって検出されます。データ整合性チェックとは、データベースまたはそのコンポーネントの状態を評価するために実行する診断手順のことです。データ整合性チェックによって障害が検出された場合、データ・リカバリ・アドバイザは一連の障害による影響を自動的に評価し、一連の修復オプションに結果をマップします。通常、データ・リカバリ・アドバイザは自動修復オプションおよび手動修復オプションの両方を提示します。

データ・リカバリ・アドバイザは、最適な自動修復オプションおよびデータベースへのその影響を判断します。修復オプションには、データファイルのリストアおよびリカバリ、メディア・リカバリ、フラッシュバック・データベースなどの修復が含まれています。データ・リカバリ・アドバイザは、自動修復オプションを提示する前に、特定の環境でのそのオプションの妥当性、および提示する修復の実行に必要なメディア・コンポーネントの可用性を検証します。

自動修復オプションを選択すると、RMANによってOracle Databaseでのセッションが調整され、修復が自動的に実行されます。データ・リカバリ・アドバイザ・ツールは、修復が成功したことを確認し、該当する障害をクローズします。


関連項目:

データ・リカバリ・アドバイザの使用方法については、第15章「データ・リカバリ・アドバイザを使用した障害の診断および修復」を参照してください。

バックアップおよびリカバリのドキュメント・ロードマップ

図1-1に、バックアップおよびリカバリのドキュメントにナビゲートする場合の推奨方法を示します。ロードマップは、RMANによるバックアップとリカバリ、およびユーザー管理によるバックアップとリカバリの2つのメイン・パスに分かれています。それぞれのメイン・パスから分岐し、再度結合するオプションのパスも示されています。

Oracle Databaseについて十分な知識がなく、バックアップ・リカバリについて学習する必要がある場合は、『Oracle Database 2日でデータベース管理者』を参照してください。バックアップおよびリカバリに関する章で、Oracle Enterprise Managerを使用して基本的な操作を実行する方法が説明されています。また、必要に応じて、『Oracle Database概要』の関連する章を読むことによって、バックアップおよびリカバリの基本的な原則に関する知識を深めることができます。

図1-1 バックアップおよびリカバリのドキュメント・ロードマップ

図1-1の説明が続きます。
「図1-1 バックアップおよびリカバリのドキュメント・ロードマップ」の説明

図1-1に示すように、バックアップおよびリカバリ計画の実装には、RMANを使用する方法(推奨)、またはユーザー管理ツールを使用する方法を使用できます。

Recovery Managerのドキュメント・ロードマップ

RMANを基本的なバックアップおよびリカバリ・ソリューションとして使用する場合は、最初に「RMANの概要」を参照してください。この章は、RMANの最も基本的な方法について説明しており、目的に適しています。RMANを使用したバックアップおよびリカバリ計画の実装方法の包括的な説明は、次の順序に従って各章を参照してください(オプションの章は示されていません)。

  1. 第4章「RMANクライアントの起動および操作」を参照してください。

    この章では、RMANクライアントを起動してデータベースに接続する方法について説明します。

  2. 第5章「RMAN環境の構成」を参照してください。

    この章では、高速リカバリ領域バックアップの保存方針およびアーカイブREDOログの削除方針の構成などの基本的なタスクの実行方法について説明します。

  3. 第9章「データベースのバックアップ」を参照してください。

    この章では、基本的なバックアップ計画を実装する方法について説明します。

  4. 第11章「RMAN操作に関するレポート」を参照してください。

    この章では、RMANのバックアップおよびリカバリ操作の監視方法について説明します。具体的には、レポート・コマンド(LISTREPORTおよびSHOW)および関連するV$ビューとリカバリ・カタログ・ビューの使用方法について説明します。

  5. 第12章「RMANバックアップおよびリポジトリ・レコードのメンテナンス」を参照してください。

    この章では、バックアップの存在の確認、バックアップのリポジトリ・ステータスの変更、バックアップの削除、他のメンテナンス・タスクの実行を行う方法について説明します。

  6. 第15章「データ・リカバリ・アドバイザを使用した障害の診断および修復」を参照してください。

    この章では、データ・リカバリ・アドバイザ・ツールの使用方法について説明します。このツールを使用して、障害の表示、それらの障害への対応に関するアドバイスの入手、および状況によっては障害に対する自動修復を行うことができます。

  7. 第18章「フラッシュバックおよびデータベースのPoint-in-Timeリカバリの実行」を参照してください。

    この章では、FLASHBACK DATABASEコマンドの使用方法、およびRECOVER DATABASEコマンドを使用したPoint-in-Timeリカバリの実行方法について説明します。

  8. 第17章「データベースの完全リカバリの実行」を参照してください。

    この章では、個々の表領域またはデータベースのリカバリ方法について説明します。

ユーザー管理のバックアップおよびリカバリのドキュメント・ロードマップ

RMANを基本的なバックアップおよびリカバリ・ソリューションとして使用しない場合は、サード・パーティのツールを使用してバックアップを作成し、SQLまたはSQL*Plusのコマンドを使用してリカバリを実行する必要があります。次の順序に従って各章を参照してください。

  1. 第28章「ユーザー管理データベース・バックアップの作成」を参照してください。

    この章では、サード・パーティのツールを使用したバックアップの作成方法について説明します。

  2. 第29章「ユーザー管理のデータベースのフラッシュバックおよびリカバリの実行」を参照してください。

    この章では、SQL文FLASHBACK DATABASEの使用方法、およびSQL*PlusのRECOVERコマンドを使用したリカバリの実行方法について説明します。

  3. 第30章「ユーザー管理のリカバリの実行: 高度な例」を参照してください。

    この章では、様々なリカバリ・シナリオについて説明します。