この章では、Oracle Clusterwareに関するOracle Database 11gリリース2(11.2)および11gリリース2(11.2.0.1)の新機能について説明します。
この項では、Oracle Database 11gリリース2 (11.2.0.4)のOracle Clusterwareの管理およびデプロイメント機能について説明します。
Oracle RAC構成監査ツール
Oracle Real Application Clusters (Oracle RAC)構成監査ツール(RACcheck)は、構成の既知の問題、ベスト・プラクティス、通常のヘルス・チェックおよびアップグレード前後のベスト・プラクティスに対して、単一インスタンスおよびOracle RACデータベースのインストールを評価します。
関連項目: 詳細は、『Oracle Real Application Clusters管理およびデプロイメント・ガイド』を参照してください。 |
Oracleトレース・ファイル・アナライザ・コレクタ
Oracleトレース・ファイル・アナライザ(TFA)コレクタは、Oracle Clusterware、Oracle Grid InfrastructureおよびOracle Real Application Clusters (Oracle RAC)システムの診断データ収集を簡素化し、診断を収集するためのユーティリティです。
ここでは、Oracle Database 11gリリース2(11.2)からのOracle Clusterwareの管理およびデプロイメントに関する機能について説明します。
関連項目: Oracle Database 11gリリース2(11.2)の機能の詳細は、『Oracle Database新機能ガイド』を参照してください。 |
Oracle Real Application Clusters One Node(Oracle RAC One Node)
Oracle Real Application Clusters One Node(Oracle RAC One Node)は、強化された高可用性をシングル・インスタンス・データベースに提供し、データベースを計画済停止時間および計画外停止時間の両方から保護します。Oracle RAC One Nodeよって、次のことが実現されます。
常にオン状態のシングル・インスタンス・データベース・サービス
データベース・サーバーのより優れた統合
強化されたサーバーの仮想化
完全なOracle RACを対象にした低コストの開発とテスト・プラットフォーム
さらに、Oracle RAC One Nodeは、データベース記憶域の統合を容易にし、データベース環境を標準化します。必要に応じて、停止時間や中断を発生させることなく、完全な複数ノードOracle RACデータベースにアップグレードできます。
オンライン・データベース再配置を使用すると、サービスの可用性を維持したまま、あるノードから別のノードにOracle RAC One Nodeデータベースを再配置できます。
この機能には、Oracle RAC One Nodeとオンライン・データベース再配置の両方に対するサーバー制御ユーティリティ(SRVCTL)の拡張が含まれます。
関連項目: Oracle RAC One Nodeの詳細は、『Oracle Real Application Clusters管理およびデプロイメント・ガイド』を参照してください。 |
Oracle Grid Infrastructureソフトウェアの構成ウィザード
この構成ウィザードを使用すると、ソフトウェアのみのインストールを実行した後にOracle Grid Infrastructureソフトウェアを構成できます。このウィザードでは、順を追ってプロセスが進められるため、config_params
構成ファイルを手動で編集する必要がなくなりました。
クラスタ状態モニター(CHM)
クラスタ状態モニター(CHM)はリアルタイムにオペレーティング・システムのメトリックを収集し、後で分析するためにリポジトリに格納し、Oracleサポートの支援を受けながら、Oracle ClusterwareおよびOracle RACの多くの問題の原因を判断します。また、ノードでのメモリーのオーバーコミットメントを検出するためのメトリックを提供することによって、Oracle Databaseにおけるサービスのクオリティ管理(Oracle Database QoS Management)とあわせて使用することもできます。この情報を使用して、Oracle Database QoS Managementは、負荷を軽減し、既存のワークロードを保持することができます。
関連項目:
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グリッド・インフラストラクチャ管理用のSRVCTLの拡張
サーバー制御ユーティリティ(SRVCTL)の拡張では、新しい様々なOracle Grid InfrastructureとOracle RACリソースの管理が簡略化されます。
関連項目: SRVCTLの詳細は、『Oracle Real Application Clusters管理およびデプロイメント・ガイド』を参照してください。 |
冗長なインターコネクトの使用
以前のリリースでは、インターコネクトの冗長なネットワークを利用するために、ボンディング、トランキング、チーミングなどの類似テクノロジが必要でした。現在、Oracle Grid InfrastructureおよびOracle RACは、他のネットワーク・テクノロジを使用しなくても、冗長なネットワーク・インターコネクトを利用して、クラスタ内における最適な通信を向上できるようになりました。
冗長なインターコネクトの使用は、複数(最高4つ)のプライベート・ネットワーク(インターコネクトとも呼ばれる)全体で、ロード・バランシングおよび高可用性を可能にします。
Oracle Database Quality of Service Managementサーバー
システム管理者は、Oracle Database Quality of Service Managementサーバーを使用して、正確なランタイム・パフォーマンスとリソース・メトリックを相関させ、ポリシーベースのパフォーマンスの目標を達成するために推奨リソース調整を生成するエキスパート・システムで分析することで、Oracle Databaseクラスタでホストされるアプリケーションのサービス・レベルを管理できます。
関連項目: 詳細は、『Oracle Database Quality of Service Managementユーザーズ・ガイド』を参照してください。 |
ここでは、Oracle Database 11gリリース2(11.2.0.1)からのOracle Clusterwareの管理およびデプロイメントに関する機能について説明します。
Oracle Restart
Oracle Restartでは、Oracle Databaseおよびリスナーを自動的に再起動する機能が提供されます。
スタンドアロン・サーバーの場合、Oracle Restartによって、Oracle Automatic Storage Management (Oracle ASM)、Oracle DatabaseおよびリスナーなどのOracleプロセスがサーバー上で監視され、自動的に再起動されます。Oracle RestartおよびOracle ASMによって、スタンドアロン・サーバーにグリッド・インフラストラクチャが提供されます。
関連項目: Oracle Restartの詳細は、『Oracle Database管理者ガイド』を参照してください。 |
Oracle Clusterwareのリソース・モデリングの向上
Oracle Clusterwareでは、サード・パーティ製のアプリケーションを含め、異なるタイプのアプリケーションおよびプロセスを管理できます。アプリケーション間およびプロセス間の依存関係を作成し、それらを1つのエンティティとして管理できます。
Oracle Clusterwareでは、リソース、リソース・タイプ、サーバー、サーバー・プールなどの様々なエンティティを使用してアプリケーションおよびプロセスが管理されます。オラクル社は、Application Program Interface(API)の改訂に加え、これらのエンティティを管理する新しいAPIセットを作成しました。
関連項目:
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ポリシー・ベースのクラスタおよび容量の管理
クラスタをサーバー・プールに論理分割すると、サーバーの容量管理が向上します。カーディナリティ・ベースの方法によって、クラスタ内でリソースを実行する場所および方法を決定できます。その後、ノードは匿名になり、ノードにリソースを配置する際にノードを特定する必要がなくなります。
サーバー・プールには様々なレベルの重要度が割り当てられます。障害が発生した場合、Oracle Clusterwareは、ユーザー定義のポリシーに基づいて、アプリケーションの容量をクラスタ内の重要度が低い別のサーバー・プールに効率的に再割り当てします。この機能によって、フェイルオーバーおよび動的な容量割当てをより短時間で実行できます。
クラスタは、ユーザー定義のポリシーによってリソース消費を考慮して分離されたサーバー・プール内の(アプリケーションおよびデータベースとして定義された)リソースをホスティングできます。たとえば、個別のサーバー・プール内のすべての人事アプリケーション、会計アプリケーションおよび電子メール・アプリケーションの実行を選択できます。
ロール別管理
ロール別管理を使用すると、複数のアプリケーションおよびデータベースで同じクラスタ・リソースおよびハードウェア・リソースを共有しながら、他の管理グループによって妨げられることを相互に防ぐことができます。
クラスタ時刻同期化サービス
ベンダーの時刻同期ソフトウェア(UNIXのNTPやWindow Timeサービスなど)がインストールされていない場合は、クラスタ時刻同期化サービスによって、クラスタ内のすべてのノードのシステム時間が同期化されます。クラスタ全体でのシステム時間の同期化は、Oracleクラスタを正常に実行するための前提条件であり、これによりOracleクラスタ環境全体の信頼性が向上します。
Oracle Automatic Storage Management によるOracle Cluster Registryおよび投票ディスクの格納
OCRおよび投票ディスクは、Oracle Automatic Storage Management (Oracle ASM)に格納できます。Oracle ASMのPST(Partnership and Status Table)は複数のディスクにレプリケートされ、OCRを格納するために拡張されます。そのため、基礎となるディスク・グループ内のディスクと同数のディスクを失っても、OCRは有効で、ディスク障害に応じて再配置できます。
Oracle ASMは、投票ディスクの格納用にいくつかのブロックを各Oracle ASMディスクの一定の場所に確保しています。投票ディスクが保持されているディスクで障害が発生すると、Oracle ASMはこのデータを格納できる別のディスクを選択します。
OCRおよび投票ディスクをOracle ASMに格納することで、サード・パーティのクラスタ・ボリューム・マネージャが不要になり、Oracle ClusterwareインストールでOCRおよび投票ディスクのためにディスク・パーティションを管理する煩雑さがなくなります。
注意: 以前のバージョンのOracle Clusterwareで投票ディスクのバックアップおよびリカバリに使用されたdd コマンドは、Oracle Clusterware 11gリリース2(11.2)ではサポートされません。 |
Oracle Automatic Storage Management クラスタ・ファイル・システム
Oracle Automatic Storage Management クラスタ・ファイル・システム(Oracle ACFS)は、Oracle Databaseファイル以外のファイルに堅牢で汎用的なエクステント・ベースのジャーナル・ファイル・システムを提供することでOracle ASMを拡張します。Oracle ACFSでは、Oracleのバイナリ、レポート・ファイル、トレース・ファイル、アラート・ログ、その他のアプリケーション・データ・ファイルなどのファイルがサポートされます。Oracle ACFSを追加することで、Oracle ASMは、Oracleのデータベース・ファイルとデータベース・ファイル以外のファイルの両方に対応する完全なストレージ管理ソリューションになります。
また、Oracle ACFSには次の機能もあります。
64ビットのファイル・サイズおよびファイル・システム・データ構造サイズを持つ大規模ファイルをサポートすることで、エクサバイトに対応するファイルおよびファイル・システム容量をサポートします。
エクステント・ベースのストレージ割当てによってパフォーマンスを向上させます。
ログ・ベースのメタデータ・トランザクション・エンジンを使用して、ファイル・システムの整合性および高速リカバリを実現します。
Network File System、Common Internet File Systemなどの業界標準プロトコルによってリモート・クライアントにエクスポートできます。
Oracle ACFSを使用すると、サード・パーティのクラスタ・ファイル・システム・ソリューションが不要になる一方で、単一ノード環境でもOracle Real Application Clusters(Oracle RAC)およびグリッド・コンピューティング環境でもすべてのファイル・タイプの管理が合理化され、自動化され、簡素化されます。
Oracle ACFSは、停止時間なしにファイルシステムの動的な拡張および縮小をサポートします。また、ハードウェアのRAID機能に加えて、Oracle ASMのミラー化およびストライプ化機能を利用できます。
関連項目: Oracle ACFSの使用の詳細は、『Oracle Automatic Storage Management管理者ガイド』を参照してください。 |
Oracle Clusterwareのアウトオブプレース・アップグレード
Oracle Clusterwareの新しいバージョンを別のホームにインストールできます。アップグレードの前にOracle Clusterwareを別のホームにインストールすると、クラスタのアップグレードに必要な計画停止時間が短くなるため、可用性サービス・レベルの条件を満たすのに役立ちます。Oracle Clusterwareソフトウェアをインストールした後で、以前のバージョンのOracle Clusterwareソフトウェアを停止して、ノードごとに新しいバージョンを起動できます(これは、ローリング・アップグレードと呼ばれます)。
関連項目: アウトオブプレース・アップグレードの詳細は、『Oracle Grid Infrastructureインストレーション・ガイド』を参照してください。 |
クラスタ検証ユーティリティの拡張
クラスタ検証ユーティリティ(CVU)の拡張には、クラスタでの次のチェックが含まれます。
ノード追加の前後
ノード削除の後
ストレージ追加の前後
ストレージ削除の前後
ネットワーク変更後
Oracle ASMの整合性
これらのチェックは、コマンドライン・コマンドの他に、Oracle Universal Installer、Database Configuration AssistantおよびOracle Enterprise Managerでも実行できます。これらの拡張により、クラスタ環境の実装と構成が容易になり、クラスタ環境の問題を診断する支援機能が提供されるため、構成およびインストールの機能が向上しています。
関連項目:
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クラスタ検証ユーティリティとOracle Universal Installerとの統合の拡張
この機能によって、CVUとOracle Universal Installerが完全に統合され、複数ノードのチェックが自動的に実行されます。これによって、Oracleソフトウェアをインストールする前に、クラスタ設定の問題が検出および修正されます。
CVUは、Oracle RACデプロイメントの様々な段階(Oracle Clusterwareのインストール、Oracle RACデータベースのインストール、Oracle RACデータベースの構成など)でクラスタ・コンポーネントの妥当性をチェックし、クラスタの準備状況を検証します。また、Oracle RACデプロイメントの特定の段階が正常に完了したことを検証する場合にも役立ちます。
関連項目: インストール時に実行されるCVUチェックの詳細は、『Oracle Grid Infrastructureインストレーション・ガイド』を参照してください。 |
グリッド・プラグ・アンド・プレイ
グリッド・プラグ・アンド・プレイを使用すると、データ・センターを動的なグリッド・インフラストラクチャに移動できます。これによって、アプリケーションを統合してアプリケーションの管理コストを削減でき、ワークロードでの必要性に応じて容易にスケールを調整することができる高可用性の環境が提供されます。クラスタへのサーバーの追加を容易にし、さらにより動的なグリッドをサポートするために、Oracle RAC 11gリリース2(11.2)では数多くの変更が行われています。
これまでは、クラスタ内のサーバーを追加または削除しようとすると、様々な準備を手動で行う必要がありました。このリリースでは、次のタスクを自動化することで、グリッドのプラグ・アンド・プレイは、サーバー・ノードのインストール、構成および管理にかかるコストを低減できます。
Oracle RACデータベース・インスタンスの追加
ノード自体の適切なネットワークIDのネゴシエート
構成プロファイルからの操作に必要な追加情報の取得
ネットワーク上でホスト名とアドレスを解決可能できるようにするための、プロファイル・データを使用したノード自体の構成または再構成
また、ノードの追加および削除に必要な手順の数が少なくなっています。
Oracle Enterprise Managerには、グリッド・プラグ・アンド・プレイに対応するための変更がすぐに反映されます。
Oracle Enterprise ManagerによるOracle ACFSのサポート
この機能によって、Oracle ASMテクノロジを拡張する総合的な管理ソリューションが提供され、シングル・インスタンスのOracle DatabaseおよびOracle Clusterwareの両方の構成で、ASMでは直接サポートされていない汎用ファイルがサポートされます。また、Oracle Enterprise ManagerによるOracle ASMの既存のサポートも強化され、Oracle ASM動的ボリューム・マネージャ(ADVM)およびOracle ASMクラスタ・ファイル・システム(ACFS)・テクノロジをサポートするための新しい機能が追加されます。
Oracle Automatic Storage Management クラスタ・ファイル・システム(Oracle ACFS)は、Oracle ASMテクノロジを拡張するスケーラブルなファイル・システムおよびストレージ管理として設計されています。単一ホストおよびクラスタの両方の構成においてすべてのアプリケーション・データがサポートされ、既存のOracle ASMの機能を活用して次のことが実現されます。
ファイル・システムの動的なサイズ変更
Oracle ASMの自動分散によるパフォーマンスの最大化
使用可能なすべてのディスク間でのファイル・システムの分散およびストライプ化
Oracle ASMのミラー化およびパリティ保護によるストレージの信頼性の確保
Oracle ACFSによって、クラスタ全体のデータベース以外のカスタマ・ファイルにアクセスするための複数プラットフォーム・ストレージ管理ソリューションが提供されます。
関連項目: Oracle ACFSの使用の詳細は、『Oracle Automatic Storage Management管理者ガイド』を参照してください。 |
Oracle Enterprise ManagerベースのOracle Clusterwareリソースの管理
Oracle Enterprise Managerを使用して、Oracle Clusterwareリソースを管理できます。Oracle Clusterwareでリソースを作成および構成して、クラスタにデプロイすると、監視および管理することもできます。
Oracle Clusterwareにパッチを適用する場合の停止時間の排除
クラスタ全体を停止することなくOracle ClusterwareおよびOracle RACへのパッチの適用を完了できます。これによって、クラスタ・ソフトウェアおよびOracle Databaseのアウトオブプレース・アップグレードが可能になり、Oracle RAC環境で必要なメンテナンスのための計画停止時間が短くなります。
Oracle ClusterwareおよびOracle RACのプロビジョニングの向上
この機能は、Oracle RACシステムのプロビジョニングのための簡素化されたソリューションを提供します。Oracle Enterprise Manager Database Controlは、新しいノードでのプロビジョニング・タスクを自動化することで、Oracle RACクラスタの拡張を可能にします。