複雑な環境では、構成の変更、システムのアップグレードおよび新しいアプリケーションのロールアウトの調整が要求されます。この項では、高可用性アーキテクチャでの操作を自動化して簡素化するのに使用可能なツールについて説明し、自己管理のOracleデータベース実現に向けての一歩を踏み出せるようにします。
この項の内容は、次のとおりです。
Oracle Databaseには、データベースが自己学習し、この情報を使用してワークロードの変動に対応したり、あらゆる潜在的な問題のほとんどを自動的に修正したりすることができる高度な自己管理インフラストラクチャがあります。自己管理インフラストラクチャ脚注1には次のようなものがあります。
自動ワークロード・リポジトリ
自動ワークロード・リポジトリ(AWR)は、問題の検出やセルフチューニングのためにOracle Databaseが使用するパフォーマンス統計を含む組込みリポジトリです。Oracle Databaseでは重要な統計とワークロード情報のスナップショットを定期的に作成し、AWRに格納します。スナップショットに含まれるデータは、自動データベース診断モニター(ADDM)で分析されます。
AWRおよびADDMの詳細は、『Oracle Databaseパフォーマンス・チューニング・ガイド』を参照してください。
一時的なパフォーマンスの問題は長続きしないため、ADDM分析に表示されません。これらの問題に対処するために、アクティブ・セッション履歴(ASH)を使用してデータベースの起動時にアクティブ・セッションのサンプリングを開始できます。ASHのサンプルは次の場合に収集できます。
データベースが(Oracle ASMインスタンスなどに)マウントされる前。
データベースが(Oracle Data Guardフィジカル・スタンバイ・インスタンスなどに)マウントされているが、オープンされていないとき。
データベースが(Oracle Active Data Guardフィジカル・スタンバイ・インスタンス、別名リアルタイム問合せなどに)マウントされているが、読取り専用にオープンされているとき。
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注意: アクティブ・セッション履歴のサンプリングは、Oracle Active Data GuardインスタンスおよびOracle Automatic Storage Management(ASM)インスタンスで使用できます。ただし、このリリースでは、Oracle Data Guardの構成でインテリジェントなインフラストラクチャのすべての機能を使用できるわけではありません。 |
フィジカル・スタンバイ・インスタンスの場合、ディスク上のASHデータはプライマリ・データベースのアクティビティを表し、メモリー内のASHデータはスタンバイ・データベースのアクティビティを表します(V$ACTIVE_SESSION_HISTORY内に表示)。ASHレポートでは、レポート生成にプライマリ・データベースとスタンバイ・データベースのどちらからサンプリングされたデータを使用するかを指定するよう求められます。
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関連項目:
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自動メンテナンス・タスク
AWRに格納された情報を分析することにより、データベースは日常的なメンテナンス・タスクを実行する必要があるかどうかを確認できます。自動メンテナンス・タスク・インフラストラクチャ(AutoTaskと呼ばれる)を使用すると、Oracle Databaseはこのような操作を自動的にスケジュール設定することができます。AutoTaskでは、メンテナンス期間と呼ばれるOracle Scheduler期間のセットで自動メンテナンス・タスクを実行するようにスケジュール設定します。メンテナンス期間は、Oracle Scheduler期間グループMAINTENANCE_WINDOW_GROUPのメンバーである期間です。詳細は、『Oracle Database管理者ガイド』および『Oracle Database 2日でデータベース管理者』を参照してください。
フォルト診断インフラストラクチャ
Oracle Databaseには、問題の防止、検出、診断および解決を行う高度なフォルト診断インフラストラクチャがあります。対象となる問題は、データベース・コードの不具合、メタデータの破損およびユーザー・データの破損から生じる重要なエラーです。診断インフラストラクチャには次のような機能があります。
自動診断リポジトリ(ADR)は、トレース、アラート・ログ、状態モニターのレポートといったデータベース診断データ用のファイルベースのリポジトリです。複数のインスタンスや製品にまたがる一元化されたディレクトリ構造を持っています。
データベース管理者が、重大なエラーに関連するすべての診断データ(トレース、状態チェック・レポート、SQLテスト・ケースなど)を自動で簡単に収集し、そのデータをOracleサポート・サービスへの転送に適したZIPファイルにまとめるために使用できるインシデント・パッケージ・サービス。
これらのコンポーネントの詳細は、『Oracle Database管理者ガイド』を参照してください。
問題が自動的に解決されず(領域不足など)、管理者に通知する必要がある場合、Oracle Databaseはサーバー生成アラートを提供します。Oracle Databaseは自らを監視し、アラートを送信して問題をユーザーに通知し、報告された問題の解決方法に関する提案を行います。これにより、問題が素早く解決され、潜在的な障害の防止に役立ちます。
Oracle Databaseには、データベースの様々なサブシステムに対する複数のアドバイザがあり、対応するサブコンポーネントの操作をさらに最適化できる方法を自動的に決定します。たとえば、SQLチューニング・アドバイザとSQLアクセス・アドバイザは、SQL文をより速く実行するための提案を行います。メモリー・アドバイザは、試行錯誤による方法を使用せず、様々なメモリー・コンポーネントのサイズ調整に役立ちます。セグメント・アドバイザは、領域関連の問題(消費済領域の再利用の提案や成長傾向の分析など)に対処し、UNDOアドバイザはUNDO表領域のサイズ設定を正しく行います。アドバイザの使用の詳細は、『Oracle Database 2日でデータベース管理者』を参照してください。
Oracle Databaseでは、データベースやSQLの変更による影響を分析できるように、変更前後のワークロードの自動取得とリプレイ機能を提供します。
データベース・リプレイ機能では、本番システムの実際のデータベース・ワークロードを取得して、それをテスト・システムでリプレイすることにより、実際のテストを実行できます。また、潜在的な問題(エラーの発生やパフォーマンスの相違)やその問題を修正する推奨方法を示す分析とレポート作成も提供されます。
SQLパフォーマンスの低下は、データベースのアップグレード、初期化パラメータの変更、および索引の追加や削除などのシステム変更において常に懸念事項になります。SQLパフォーマンス・アナライザ機能では、SQL文のパフォーマンスに対する変更の影響を評価する方法を提供して、変更前後のレスポンス時間を比較および対比することにより、この懸念事項を軽減します。SQパフォーマンス・アナライザを使用すると、本番データベースなどのソース・システムからSQLワークロードを取得して、変更が適用されたテスト・システムでこのワークロードをリプレイできます。
詳細は、『Oracle Database Real Application Testingユーザーズ・ガイド』を参照してください。
日常的なタスクや繰返しタスクの実行に必要な人的作業を減らすことで、サービスの安定性、信頼性および可用性が向上します。これは、管理者が多くのシステムをできるかぎり効率的に管理する必要がある場合に特に重要です。
Oracle Enterprise Manager Grid Controlは、管理者がOracleテクノロジ・スタック全体(ビジネス・アプリケーション、アプリケーション・サーバー、データベース、E-Business Suite)、およびOracle以外のコンポーネントにわたり完全な監視を行うことができるHTMLベースのインタフェースです。高速アプリケーション通知(FAN)のコンポーネントが使用できない、またはパフォーマンスの問題が発生した場合、Grid Controlには自動生成されたアラートが表示されるので、管理者は適切なリカバリ処置を行えます。
Grid Controlのコンポーネントには、次のものがあります。
Oracle Management Service (OMS)
OMS機能は、Grid Controlのインタフェースを提供するJ2EE Webアプリケーションのセットで、すべての管理エージェントと連係して監視情報を処理し、管理リポジトリを永続的なデータ・ストアとして使用します。
各監視対象ホストにデプロイされているプロセスで、ホスト上のすべてのターゲットを監視し、その情報をOMSに送信し、ホストおよびターゲットのメンテナンスを行います。
Oracle Database内のスキーマで、Grid Controlによって管理される管理者、ターゲットおよびアプリケーションに関するあらゆる情報が含まれます。
Grid Control、OMSおよびOracle Management Agents間の通信は、HTTPを通じて行われます。ファイアウォールで保護されている環境内の層と層の間における安全な通信を可能にするため、Secure Sockets Layer(SSL)を有効にできます。管理エージェントは、収集された監視データをOMSにアップロードし、OMSは、管理リポジトリにデータをロードします。ターゲット状態に変更(可用性状態の変更など)があると、Grid Controlにアラートが生成されます。
Grid Controlを使用して、管理者は次の操作を行うことができます。
アーキテクチャ・コンポーネントの監視、および障害発生時のアラートの受信
データベース・クラスタ内のノードの数、および現在のステータスなど全体的なシステム・ステータスの表示
すべてのインスタンスに関して発せられたアラートの表示
クラスタ全体のデータベースごとにアラート生成に対するしきい値の設定
すべてのインスタンスにまたがるパフォーマンス・メトリックの監視
バックアップおよびリカバリなど、データベース・クラスタ全体の操作の実行
クラスタ・データベースの監視のインターコネクト
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関連項目:
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脚注の凡例
脚注1: この項で説明している多くの自己管理機能を使用するには、Oracle Diagnostics Packのライセンスの購入が必要です。Oracle管理パックのライセンス情報の詳細は、『Oracle Databaseライセンス情報』を参照してください。