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Oracle® Database高可用性概要
11gリリース2 (11.2)
B56308-04
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3 計画外停止時間用Oracle Database高可用性ソリューション

Oracle Databaseは、可用性を高め、計画停止時間と計画外停止時間のいずれもゼロまたは最小限に抑える高可用性ソリューションの統合スイートを提供します。これらのソリューションは、企業が24時間年中無休でビジネスの継続性を維持する場合に役立ちます。一方で、Oracle高可用性ソリューションは、プライマリ・システムおよびセカンダリ・システムでのシステム使用効率を高め、パフォーマンス、スケーラビリティおよび管理性全体の向上を支援するソリューションを提供することにより、停止時間の短縮にとどまらない機能を実現します。

Oracleには、次のような高可用性機能が備わっています。

また、第4章「計画停止時間用Oracle Database高可用性ソリューション」では、各種の計画停止時間に対応する主な高可用性ソリューションと、各ソリューションのリカバリ時間の概要について説明します。


関連項目:

  • 『Oracle Database概要』の高可用性の概要

  • 『Oracle Database新機能ガイド』の新しい高可用性機能の一覧


3.1 計画外停止時間用Oracle高可用性ソリューションおよびリカバリ

Oracle Databaseでは、あらゆるタイプの計画外障害に対して停止時間を防止および短縮するための高可用性ソリューションを提供しています。

表3-1は、計画外停止時間に対する様々なOracle高可用性ソリューションの説明です。この表は、3.2項から3.21項で説明した機能を使用して、計画外停止時間の様々な原因に対処する方法を示しています。いくつかのOracleソリューションがリストされている場合、MAA推奨ソリューションはOracleソリューション列に示しています。

また、各Oracle高可用性アーキテクチャでのあらゆるタイプの計画外停止時間に対する達成可能なリカバリ時間の概要は、表7-4を参照してください。

表3-1 計画外停止時間の停止タイプとOracle高可用性ソリューション

停止範囲 Oracleソリューション 利点

サイトの障害

Oracle Data Guard(MAA推奨)

  • 統合Oracleクライアントによるファスト・スタート・フェイルオーバーおよびFAN

  • フィジカル・レプリカ、高パフォーマンス、すべてのデータ型のサポート

サイトの障害

Oracle GoldenGateおよびOracle Streams


  • 柔軟なアクティブ-アクティブ高可用性ソリューション脚注1

サイトの障害

Recovery Manager


  • 完全に管理されたデータベース・リカバリおよびOracle Secure Backupとの統合

コンピュータ障害

Oracle Real Application ClustersおよびOracle Clusterware(MAA推奨)

  • 障害が発生したノードとインスタンスの自動リカバリ

  • 統合Oracleクライアント・フェイルオーバーによる高速アプリケーション通知(FAN)

コンピュータ障害

Oracle RAC One Node


  • 常時有効な単一インスタンス・データベース・サービス

  • 従来のコールド・フェイルオーバー・ソリューションよりも高いデータベースの可用性

  • データベース・サービスの統合

コンピュータ障害

ファスト・スタート・リカバリ


  • コンピュータ障害からのチューニングおよび予測可能なキャッシュ・リカバリ

コンピュータ障害

Oracle Data Guard


  • 統合Oracleクライアントによるファスト・スタート・フェイルオーバーおよびFAN

コンピュータ障害

Oracle GoldenGateおよびOracle Streams


  • 障害発生時に処理を再開するのに使用できる本番データベースのローカルまたはリモート・コピーの作成を容易にする

ストレージ障害

Oracle Automatic Storage Management(MAA推奨)

  • ミラー化およびオンライン自動リバランスによる、個別の障害グループへのデータの冗長コピーの配置。

ストレージ障害

Oracle Data Guard(MAA推奨)

  • 統合Oracleクライアントによるファスト・スタート・フェイルオーバーおよびFAN

ストレージ障害

高速リカバリ領域およびOracle Secure Backupを使用するRecovery Manager

  • 完全に管理されたデータベース・リカバリとディスクおよびテープのバックアップ

ストレージ障害

Oracle GoldenGateおよびOracle Streams


  • 本番データベースの(ローカルまたはリモート)オンライン・レプリカ・コピーでの処理の再開

データ破損

Oracle Exadata Storage Server Software(Exadataセル)およびOracle Automatic Storage Management(MAA推奨)

  • Oracle ASMでは、破損を検出し、良好なミラーがある場合、良好なブロックを返し、後続の書込みI/O中にその破損を修復

  • Exadataセルは、ディスクへの書込みによる破損を防ぐための最も包括的なソリューションです。

データ破損

破損の予防、検出および修復(MAA推奨)

DB_BLOCK_CHECKINGDB_BLOCK_CHECKSUMおよびDB_LOST_WRITE_PROTECTなどのデータベース初期化設定

  • 様々なレベルのブロック破損予防とデータベース・レベルでの検出

データ破損

高速リカバリ領域を使用するデータ・リカバリ・アドバイザおよびRecovery Manager(MAA推奨)

  • データ・リカバリ・アドバイザでは、データ破損が自動的に検出され、最適なリカバリ計画が推奨されます。

  • RMANオンライン・ブロック・メディア・リカバリ時間はより高速です。これは、RMANがフラッシュバック・ログを使用して、リカバリにデータ・ブロックの最新のコピーをリストアできるためです。

データ破損

Oracle Data Guard(MAA推奨)

  • フィジカル・スタンバイ・データベースから良好なバージョンを取得することにより、リアルタイムでプライマリ・データ・ブロックを修復

  • 統合Oracleクライアントによるファスト・スタート・フェイルオーバーおよびFAN

データ破損

Oracle GoldenGateおよびOracle Streams


  • 本番データベースの(ローカルまたはリモート)オンライン・レプリカ・コピーでの処理の再開

人的エラー

Oracleセキュリティ機能


  • 予防として、アクセスを限定

人的エラー

Oracle Flashbackテクノロジ


  • きめの細かいデータベース全体の巻戻し機能

人的エラー

LogMiner


  • REDOログの分析

書込み欠落

Oracle Data GuardRecovery ManagerおよびDB_LOST_WRITE_PROTECT初期化パラメータ

  • DB_LOST_WRITE_PROTECT初期化パラメータでは、書込み欠落が検出されます。

  • プライマリ・データベースで発生した書込み欠落がフィジカル・スタンバイ・データベースによって、またはプライマリ・データベースのメディア・リカバリ時に検出されると、リカバリはデータベースの一貫性を保つために停止します。ただし、Oracle Data Guardを使用してスタンバイ・データベースにフェイルオーバーすると、データの一部が失われます。

  • 書込み欠落がスタンバイ・データベースで検出される場合、書込み欠落を分離させて、ハードウェアの問題を修正できれば、影響を受けたファイルをリストアして、REDO Applyを再起動できます。

    注意: 書込み欠落はデータベース全体を破損する可能性があり、ハードウェアの問題を解決した後に、影響を受けたデータベースを再構築することが必要になります。

書込み欠落

Oracle Data Guard

Oracle Exadata Storage Server Software(Exadataセル)


  • 別のデータ・ファイルへの誤った(宛先違いの)書込みの検出および予防。

  • 最も包括的な書込みの欠落の防止には、Oracle Data Guardを使用し、プライマリおよびスタンバイ・データベースの両方でDB_LOST_WRITE_PROTECTパラメータを(TYPICALまたはFULLに)設定します。

停止または減速

Oracle DatabaseおよびOracle Enterprise Manager

  • Oracle Databaseは、自動的にデータベースの停止を監視し、解決しようとします。

  • アプリケーションまたはレスポンス時間の減速を検出し、これらのSLA違反に対応するようにOracle Enterprise Managerまたはカスタマイズしたアプリケーションのハートビートを構成できます。

    たとえば、Enterprise Managerのビーコンを構成して、アプリケーションのレスポンス時間を監視および検出できます。一定のしきい値に到達すると、Enterprise ManagerによってOracle Data GuardのDBMS_DG.INITIATE_FS_FAILOVER PL/SQLプロシージャがコールされ、フェイルオーバーが開始されます。『Oracle Data Guard Broker』の、アプリケーションによって開始されるファスト・スタート・フェイルオーバーに関する項を参照してください。


脚注1アプリケーションにより競合が回避または管理できる場合に有効です。アクティブ・アクティブ構成では通常、データの競合が回避されるか、少なくともアプリケーションにより管理される必要があります。そのため、リアルタイム・レプリケーションのためのアクティブ-アクティブ・アーキテクチャはカスタム・アプリケーションにより適してします。

3.2 ファスト・スタート・リカバリ

Oracle Databaseには、システム・フォルトとデータベース障害からの高速で予測可能なリカバリ機能があります。Oracle Databaseに含まれているファスト・スタート・リカバリ・テクノロジは、セルフチューニングされるチェックポイント処理を使用して、起動時にインスタンス・リカバリ時間を自動的に制限します。これにより、リカバリ時間を高速で予測可能なものにし、サービス・レベルの目標の達成能力を高めます。Oracleのファスト・スタート・リカバリ機能によって、負荷の多いデータベースのリカバリ時間を数十分から数秒に短縮できます。

ファスト・スタート・リカバリ機能には次のものがあります。

  • インスタンス障害、データベース障害およびコンピュータ障害からの、予測可能で、制限的なリカバリ

  • 希望のリカバリ時間目標を維持するためのセルフチューニングであるデータベース・チェックポイント


関連項目:

Oracle Databaseパフォーマンス・チューニング・ガイド

3.3 Oracle Restart

Oracle RestartはOracle 11gリリース2(11.2)の新機能で、単一インスタンスの(クラスタ化されていない)Oracle Databaseとそのコンポーネントの可用性を強化します。Oracle Restartは、単一インスタンス環境でのみ使用されます。Oracle Real Application Clusters(Oracle RAC)環境では、コンポーネントを自動的に再起動する機能がOracle Clusterwareによって提供されます。

Oracle Restartをインストールすると、ハードウェアまたはソフトウェア障害の後、あるいはデータベースのホスト・コンピュータが再起動するときは必ず、データベース、リスナー、およびその他のOracleコンポーネントは自動的に再起動します。また、Oracleコンポーネントが、コンポーネントの依存性に応じて、確実に正しい順序で再起動します。

Oracle Restartでは、Oracle Restartと統合されているコンポーネント(SQL*Plus、リスナー制御ユーティリティ(LSNRCTL)、ASMCMDおよびOracle Data Guardなど)の状態を定期的に監視します。コンポーネントのヘルス・チェックに失敗すると、Oracle Restartはそのコンポーネントを停止し、再起動します。

Oracle Restartは、Oracle Databaseホームとは別にインストールされるOracle Grid Infrastructureホームの外で稼働します。


関連項目:

  • Oracle Restart機能のインストールおよび構成の詳細は、『Oracle Database管理者ガイド』を参照してください。

  • プラットフォームの詳細は、Oracle Grid Infrastructureインストレーション・ガイドを参照


3.4 Oracle Real Application ClustersおよびOracle Clusterware

Oracle Real Application Clusters(Oracle RAC)とOracle Clusterwareを使用すると、Oracle Databaseはクラスタ化された一連のサーバー全体にパッケージまたはカスタム・アプリケーションを実行できます。この機能により、高いレベルの可用性および最も柔軟的なスケーラビリティが得られます。クラスタ化されたサーバーに障害がある場合でも、Oracle Databaseは残りのサーバー上で稼働し続けます。より高い処理能力が必要なときは、データへのユーザーのアクセスを中断することなく、他のサーバーを追加できます。

Oracle RACを使用すると、インターコネクトでリンクされた複数のインスタンスによるOracleデータベースへのアクセスの共有が可能になります。Oracle RAC環境では、単一の共有データベースに同時にアクセスしている間、Oracle Databaseはクラスタ内の2つ以上のシステム上で稼働します。その結果、複数のハードウェア・システムにまたがる単一データベース・システムとなり、Oracle RACではクラスタ内での障害時に高可用性と冗長性を提供できます。Oracle RACは、読取り専用のデータ・ウェアハウス・システムから更新頻度の高いオンライン・トランザクション処理(OLTP)システムまで、あらゆるタイプのシステムに対応しています。

Oracle Clusterwareは、同じオペレーティング・システムを実行するサーバーにインストールされる場合、これらのサーバーが連係して単一サーバーとして機能できるようにして、ユーザー・アプリケーションとOracleデータベースの可用性を管理するソフトウェアです。また、ノードのメンバーシップ、グループ・サービス、グローバルなリソース管理、高可用性機能といったクラスタ管理に必要な機能もすべて提供します。

  • 高可用性については、Oracleデータベース(単一インスタンスまたはOracle RACデータベース)とユーザー・アプリケーション(OracleおよびOracle以外)をOracle Clusterwareの管理と保護の下に置いて、プロセス障害時にはデータベースとアプリケーションが再起動し、ノード障害後には別のノードへのフェイルオーバーが行われるようにすることができます。

  • クラスタ管理については、複数の独立したサーバーがまるで単一システムのイメージまたは単一の仮想サーバーであるかのように示されます。この単一の仮想サーバーは、すべての管理操作に対してクラスタ全体で維持されるため、管理者はインストール、構成、バックアップ、アップグレードおよび監視の機能を実行できます。その後、Oracle Clusterwareが、これらの管理機能の実行を、クラスタ内の該当するノードに自動的に分散します。

Oracle Clusterwareは、Oracle RACを使用するための要件です。Oracle Clusterwareは、Oracle RACが動作する大部分のプラットフォームに必要な唯一のクラスタウェアです。Oracle Databaseでは引き続きサード・パーティのクラスタウェア製品を指定されたプラットフォームでサポートしますが、Oracle Clusterwareを使用すれば、次の主な利点があります。

  • ベンダー独自開発のクラスタウェアが不要

  • Oracle Automatic Storage Management(Oracle ASM)によるディスク管理を提供するOracleから、Oracle DatabaseおよびOracle RACによるデータ管理まで、統合ソフトウェア・スタックを使用

さらに、OracleサービスなどのOracle Database機能では、Oracle Clusterwareの基本的なメカニズムを使用して、それらの機能を提供します。

Oracle Clusterwareには2つのクラスタウェア・コンポーネントが必要です。1つはノード・メンバーシップ情報を記録する投票ディスク、もう1つはクラスタ構成情報を記録するOracle Cluster Registry(OCR)です。投票ディスクとOCRは共有ストレージに存在する必要があります。Oracle Clusterwareでは、各ノードがプライベート・インターコネクト経由でプライベート・ネットワークに接続されている必要があります。

詳細は、『Oracle Real Application Clusters管理およびデプロイメント・ガイド』を参照してください。

3.4.1 Oracle Clusterware使用の利点

Oracle Clusterwareには次のような利点があります。

  • コンピュータおよびインスタンス障害を許容し、迅速にリカバリします。

  • Oracle ClusterwareとOracle Databaseの併用により、管理およびサポートを単純に行えます。少数のベンダーとすべてのOracleスタックを使用することで、サード・パーティ・クラスタウェアを使用した場合より優れた統合を得られます。

  • システム変更およびハードウェア変更のローリング・アップグレードを実行します。たとえば、次のようなローリング方式で、Oracle Clusterwareのアップグレード、パッチ・セットおよび個別パッチを適用できます。

    • Oracle ClusterwareをOracle Database 10gからOracle Database 11gにアップグレード

    • Oracle ClusterwareをOracle Databaseリリース11.1からリリース11.2にアップグレード

    • Oracle Database 11.1.0.6から11.1.0.7へのパッチをOracle Clusterwareに適用

    • Oracle Database 10.2.0.2 Bundle 1からOracle Database 10.2.0.2 Bundle 2へのパッチをOracle Clusterwareに適用

  • エラーが発生したOracleプロセスを自動的に再開。

  • 仮想IP(VIP)アドレスを自動的に管理します。そのため、ノード障害が発生した場合は、そのノードのVIPアドレスが、接続受入れ可能な別のノードにフェイルオーバーされます。

  • 障害が発生したノードのリソースを残りのノードで自動的に再開。

  • Oracleプロセスを次のように制御します。

    • Oracle RACデータベースの場合、すべてのOracleプロセスはデフォルトでOracle Clusterwareによって制御されます。

    • 単一インスタンスのOracleデータベースの場合、Oracle Clusterwareで制御されるリソース・グループへのOracleプロセスを構成できます。

  • OracleアプリケーションおよびOracle以外のアプリケーションの場合、Application Programming Interface(API)が提供され、Oracle Clusterwareによるその他のOracleプロセス(再開、または障害や特定のルールへの応答など)を制御できます。

  • ノードのメンバーシップを管理し、2つ以上のインスタンスがデータベースを制御する際のスプリット・ブレイン・シンドロームを防止。

  • アプリケーションの停止時間ゼロで、Oracle Clusterwareのローリング・リリース・アップグレードの実行が可能。

詳細は、『Oracle Clusterware管理およびデプロイメント・ガイド』を参照してください。

3.4.2 Oracle Real Application ClustersおよびOracle Clusterware使用の利点

Oracle RACとOracle Clusterwareの併用には、3.4.1項に示したOracle Clusterwareのすべての利点に加え、次のような利点があります。

  • すべてのOracleソフトウェア・スタックを使用することで、サード・パーティ・クラスタウェアを使用した場合より優れたOracle Databaseの統合およびサポートを提供します。

  • Oracle Serviceの自動的再配置。さらに、高速アプリケーション通知(FAN)とクライアント構成を追加で実行する場合は、高速かつ自動のインテリジェントな接続とフェイルオーバーを実現するために、アプリケーションが素早く反応できるようなFANイベントの配信。

  • 接続障害を高速に自動検出し、Oracle Universal Connection Pool(UCP)、高速接続フェイルオーバーおよびFANイベントを使用するJavaアプリケーションの終了済接続を削除します。

  • Oracle UCPランタイム接続ロード・バランシングを使用して作業リクエストを均等に分散します。

  • Oracle UCP、Oracle Call Interface(OCI)およびOracle Data Provider for .NET(ODP.NET)でランタイム接続ロード・バランシングを使用します。

  • ロード・バランシング・アドバイザを使用して、使用可能なすべてのインスタンスに作業を分散します。

  • 停止時間またはアプリケーションへの変更なしで、汎用ハードウェアを使用して処理能力を向上できる柔軟性を提供します。

  • データベースおよびクラスタの機能を統合する包括的な管理性を提供します。

  • データベース・インスタンス全体にわたるスケーラビリティを提供します。

  • プールされていない接続の高速接続フェイルオーバーを実装します。

3.5 Oracle RAC One Node

Oracle Real Application Clusters One Node(Oracle RAC One Node)は、クラスタ内の1つのノードで実行されるOracle RACデータベースのシングル・インスタンスです。この機能により、最小限のオーバーヘッドで、多数のデータベースを1つのクラスタに統合し、計画および計画外停止から保護することができます。統合されたデータベースはフェイルオーバー保護、アプリケーションのオンライン・ローリング・パッチ適用、オペレーティング・システムおよびOracle Clusterwareのローリング・アップグレードという、高可用性の利点を得ます。

Oracle RAC One Nodeでは、オンライン・データベース再配置と呼ばれるOracleテクノロジにより、単一インスタンス・データベースのコールド・フェイルオーバーよりも高い可用性が可能になります。このテクノロジは高可用性とロード・バランシングのためにデータベース・インスタンスと接続を別のクラスタ・ノードへとインテリジェントに移行します。オンライン・データベース再配置はServer Control Utility(SRVCTL)を使用して実行されます。

Oracle RAC One Nodeでは次のことが提供されます。

  • 単一インスタンス・データベース・サービスが常に使用可能

  • 高可用性のための組込みクラスタ・ファイルオーバー

  • サーバーをまたがるインスタンスのライブ・マイグレーション

  • 単一インスタンス・データベースに対するオンライン・ローリング・パッチ適用およびローリング・アップグレード

  • 単一インスタンスから複数インスタンスOracle RACへのオンライン・アップグレード

  • データベース・サーバーの優れた統合

  • 拡張されたサーバーの仮想化

  • 完全Oracle RACの開発およびテスト・プラットフォームのコストの低減

  • Oracle Data Guardを使用して構成された、Oracle RACプライマリおよびスタンバイ・データベースの再配置(この機能はOracle Database 11gリリース2(11.2.0.2)から使用可能)

また、データベース記憶域の統合を促進し、データベース環境を標準化し、必要な場合は、完全な複数インスタンスOracle RACデータベースに停止時間または中断なしに移行することができます。

詳細は、7.1.3項を参照してください。

3.6 Oracle Data Guard

Oracle Data Guardは、企業データの高可用性、データ保護および障害時リカバリを保証します。Oracle Data Guardは、Oracleデータベースが災害およびデータ破損に耐えられるよう、1つ以上のスタンバイ・データベースの作成、メンテナンス、管理および監視を行うサービスの包括的なセットを提供します。Oracle Data Guardでは、スタンバイ・データベースがトランザクション的に一貫したプライマリ(本番)・データベースのコピーとしてメンテナンスされます。計画停止または計画外停止によりプライマリ・データベースが使用できなくなった場合は、任意のスタンバイ・データベースをプライマリ・ロールに切り替えて、停止に伴う停止時間を最小限に抑えることができます。Oracle Data Guardを従来のバックアップ、リストアおよびクラスタ技術とともに使用すると、高度なデータ保護およびデータ可用性が提供されます。Oracle Data Guardでは、管理者は、必要に応じて、リソース集中型バックアップ操作およびレポート作成操作をスタンバイ・システムにオフロードすることによって、プライマリ・データベースのパフォーマンスを向上できます。

Oracle Data Guard構成は、1つのプライマリ・データベースと1つ以上のスタンバイ・データベースからなります。プライマリ・データベースは、単一インスタンスOracleデータベースまたはOracle RACデータベースのいずれかになります。プライマリ・データベースのバックアップ・コピーを使用して、最大30のスタンバイ・データベースの作成およびOracle Data Guard構成への統合が可能です。スタンバイ・データベースが作成されると、Oracle Data Guardは、このスタンバイ・データベースにプライマリ・データベースからREDOデータを送信および適用して、自動的に各スタンバイ・データベースのメンテナンスを行います。

プライマリ・データベースと同様に、スタンバイ・データベースは、単一インスタンスOracleデータベースまたはOracle RACデータベースのいずれかになります。

スタンバイ・データベースは、フィジカル・スタンバイ・データベース、スナップショット・スタンバイ・データベース、ロジカル・スタンバイ・データベース、一時ロジカル・スタンバイ・データベースまたはOracle Active Data Guardのいずれかになります。Oracle Data Guard構成にはこのようなスタンバイ・データベースの種類の組合せ(フィジカル・スタンバイ・データベース、スナップショット・スタンバイ・データベースおよびロジカル・スタンバイ・データベース)を含めることができます。

Oracle Data Guard使用の利点

Oracle Data Guardには次のような利点があります。

  • リアルタイムでトランザクション的に一貫したデータベースのコピーが保持されるため、計画外の停止時間および災害からの保護を実現。

  • コンピュータ障害、人的エラー、データ破損、書込み欠落およびサイト障害からのデータ保護および迅速な修復。

  • すべてのネットワーク構成とビジネス要件をサポートする、柔軟性の高いデータ保護レベルを備えた自動フェイルオーバー。

  • 様々な強化機能による、REDO適用、REDO転送およびロール遷移の高速化。

  • システム変更、一部のプラットフォームの移行、ハードウェアおよびシステムのアップグレード、Oracleパッチ・セットとデータベースのアップグレードを目的とした計画停止時間の短縮(表4-1も参照)。

  • システム・パフォーマンス要件に対し、データ可用性のバランスを取るための複数レベルのデータ保護およびパフォーマンス。

  • 問合せ機能およびレポート作成機能をプライマリ・データベースからスタンバイ・データベースに転送することにより、システム・リソースの使用効率の向上を実現する、スケーラブルで可用性の高いリーダー・ファームの構成をサポート

  • レポート作成またはテスト(クローニング)を目的とするスナップショット・スタンバイ・データベースのサポート、およびレポート作成またはテスト完了後のプライマリ・データベースとの自動再同期化。

  • シームレスなアプリケーション接続および透過的なフェイルオーバーのための自動アプリケーション通知のサポート。

  • フェイルオーバーに続く、障害が発生したプライマリ・データベースの自動再同期化。

  • 管理を簡素化するため、すべてのシステムを単一の構成として管理。

  • プライマリ・システムとスタンバイ・システムで異なるCPUアーキテクチャ、オペレーティング・システム(WindowsとLinuxなど)、オペレーティング・システム・バイナリ(32ビットと64ビット)、Oracleデータベース・バイナリ(32ビットと64ビット)が使用されているOracle Data Guard構成の柔軟性の向上(http://support.oracle.com/のサポート・ノート413484.1に定義されている制限が前提)。

3.6.1 フィジカル・スタンバイ・データベース

フィジカル・スタンバイ・データベースは、プライマリ・データベースの物理的に同一なコピーになります。このコピーにはプライマリ・データベースと同一のデータ・ファイルがあります。索引などのデータベース・スキーマは同じです。また、フィジカル・スタンバイ・データベースは、REDO Applyによってプライマリ・データベースと同期化され、プライマリ・データベースから受信したREDOデータをリカバリし、フィジカル・スタンバイ・データベースに適用します。

障害リカバリ以外のビジネス目的で、フィジカル・スタンバイ・データベースを使用できます。たとえば、次のことができます。

  • REDOデータがスタンバイ・データベースに適用されている間、読取り専用アクセス用に開くことができます。このモードはOracle Active Data Guardオプションまたはリアルタイム問合せと呼ばれ、障害リカバリおよびOracle Databaseのデータ保護を提供しながら、ユーザーは最新のフィジカル・スタンバイ・データベースにアクセスできます。詳細は、3.6.2項を参照してください。

  • Oracle Active Data Guardを使用して、高速増分バックアップをスタンバイ・データベースにオフロードします。

  • プライマリ・データベースからのバックアップ実行のオーバーヘッドをオフロードできます。これが可能なのは、フィジカル・スタンバイ・データベースがプライマリ・データベースの完全なコピーであるためです。

  • フィジカル・スタンバイ・データベースを一時的なロジカル・スタンバイ・データベースに一時的に変換して、ローリング・アップグレードを実行します。3.6.3項を参照してください。

  • フィジカル・スタンバイ・データベースをスナップショット・スタンバイ・データベースに一時的に変換して、クローンまたはテスト・データベースとして使用します。3.6.4項を参照してください。

  • フィジカル・スタンバイ・データベースをロジカル・スタンバイ・データベースに変換します。

フィジカル・スタンバイ・データベースの利点

フィジカル・スタンバイ・データベースには、次の全体的な利点があります。

  • プライマリ・データベースの物理的なブロック対ブロックのコピーを保証

  • リアルタイムのレポート作成のためにREDO Applyがアクティブになっている間に、読取り専用問合せ用にオープン可能(3.6.2項で説明されているActive Data Guardオプションが必要)

  • ロール遷移時に、スタンバイ・データベースが古いプライマリ・データベースの正確なレプリカであることを保証

  • プライマリ・データベースからのバックアップのオフロードに使用可能

  • 非常に高いパフォーマンス、ワークロード・プロファイルに対する完全な透過性を提供

  • データ型制限なし

  • 計画された多数のメンテナンス・イベントに対する停止時間の最短化に便利

3.6.2 Oracle Active Data Guard

Oracle Active Data GuardはOracleデータベースのデータ保護および障害時リカバリに対するOracleの戦略的機能です。

Oracle Active Data Guardは、Oracle Data Guardのインフラストラクチャの組込みオプションで、プライマリ・データベースから変更が適用されている間も、フィジカル・スタンバイ・データベースを読取り専用で開くことができます。これにより、読取り専用アプリケーションは、プライマリ・データベースで非常に大きいトランザクション・ボリュームの処理中であっても、スタンバイ・データベースとプライマリ・データベース上のデータ間での遅延を最小限に抑えながら、フィジカル・スタンバイを使用できます。これはリアルタイム問合せと呼ばれることもあります。


注意:

Oracle Active Data Guardのリアルタイム問合せ機能を使用すると、REDO Applyがアクティブである間、フィジカル・スタンバイ・データベースを読取り専用で開くことができます。Oracle Active Data GuardはOracle Enterprise Editionの別個のデータベース・オプションとしてパッケージ化されています。本番データベースおよびOracle Active Data Guardオプションに使用されるすべてのフィジカル・スタンバイ・データベースにライセンスが必要です。

Oracle Active Data Guardスタンバイ・データベースは、アプリケーションに透過的に、プライマリ・データベースにより検出されたデータ破損の自動修復に使用されます。プライマリ・データベースでの計画外停止の場合も、スタンバイ・データベースへの迅速なフェイルオーバーにより高可用性が保たれます。Active Data Guardスタンバイ・データベースを使用して、プライマリのブロック対ブロックのフィジカル・レプリカである特定のプライマリ・データベースから高速増分バックアップをオフロードすることもできます。

Oracle Active Data Guardの利点

Oracle Active Data Guardには次のような利点があります。

  • 既存のフィジカル・スタンバイ・データベースを本番用に使用

  • スタンバイ・データベースに処理をオフロードすることによりプライマリ・データベースのパフォーマンスが向上

  • プライマリ・データベースからアクティブ・スタンバイに高速増分バックアップをオフロードすることによりバックアップのパフォーマンスが向上

  • ユーザーおよびアプリケーションに透過的に、アクティブ・スタンバイがプライマリ・データベースで検出されたブロック破損を自動的に修復可能(逆も同様)

  • レポート用のリアルタイムのデータ・アクセスを提供

  • Business Intelligence、EPMおよびOracle Exadata用のリアルタイム・データを提供

  • リーダー・ファームを介して、障害時リカバリを維持しながら、読取りパフォーマンスのスケールを変更する柔軟なオプションを提供します。

3.6.3 一時的なロジカル・スタンバイ・データベース

一時的なロジカル・スタンバイ・データベースでは、現在のフィジカル・スタンバイ・データベースを一時的にロジカル・スタンバイに変換して、ローリング・データベース・アップグレードを実行し、停止時間を最小限に抑えて再利用できます。

ローリング・データベース・アップグレードに対するMAA推奨のベスト・プラクティスは、一時的なロジカル・スタンバイ・データベースおよび、Oracleパッチ・セットまたは完全データベース・リリースへのデータベースのローリング・アップグレードを自動化するBourneシェル・スクリプト(Oracleにより作成)を使用します。データベースのローリング・アップグレードは、既存のData Guardフィジカル・スタンバイ・データベースおよび一時的なロジカル・スタンバイ・ローリング・アップグレード・プロセスを使用して実行されます。

physruという名前のBourneシェル・スクリプトは、アップグレード手順のほとんどを自動化することにより、ローリング・データベース・アップグレードの実行の複雑さを軽減します。スクリプトには、Oracle RACおよび単一インスタンス・データベースの両方のアップグレードを処理する機能を含む、多くの利点があります。physruスクリプトはアップグレード・タスクを自動化しますが、一時的なロジカル・データベース・ローリング・アップグレードの実行の手動プロセスと同じ前提条件および制限が適用されます。たとえば、 拡張データ・タイプへの対応には拡張データ型サポート(EDS)の実装が必要な場合があります。


関連項目:

次のMAAベスト・プラクティス・ホワイト・ペーパーを参照してください。
  • 一時的なスタンバイ・データベースおよびphysruスクリプトを使用したローリング・アップグレードの実行の手順については、「Database Rolling Upgrades Made Easy by Using a Data Guard Physical Standby Database」を参照してください。

  • 「Database Rolling Upgrades Using Transient Logical Standby: Oracle Data Guard 11g」および前提条件、制限、要件を十分理解するには、特に制限に関する一般的な情報およびデータ型のサポートの確認に関する項を参照してください。

  • ロジカル・スタンバイ・データベースが本来サポートしないデータ型に対応する方法は、「Extended Datatype Support(EDS) for Oracle Data Guard SQL Apply and Oracle Streams」を参照してください。

これらのホワイト・ペーパーはMAA Webサイトから入手可能です。

http://www.oracle.com/goto/maa


一時的なロジカル・スタンバイ・データベースの利点

一時的なロジカル・スタンバイ・データベースには、次の全体的な利点があります。

  • 本番アプリケーションおよびクライアントをアップグレードしたシステムへ切り替える前に、完全に別のシステムおよびデータベースで変更を適用およびテストできます。

  • PL/SQLの再コンパイルなどの、従来のデータベース・アップグレードに関連する多くの一般的なタスクに必要な計画停止をなくすことで、可用性を大幅に改善します。

  • データベース・ローリング・アップグレードに既存のフィジカル・スタンバイ・データベースを利用します。つまり、ローリング・アップグレードのためだけに、別のロジカル・スタンバイ・データベースをデプロイする作業または追加のストレージは必要ありません。

  • プライマリおよびスタンバイ・データベースの両方を新しいOracleリリースに移行するための単一カタログのアップグレードのみを実行する必要があります。

  • アプリケーションおよびクライアントを新しい環境に切り替える前に、アップグレードおよびシステムの追加の検証が可能です。

  • アップグレード・プロセスの完了時には、プライマリ・データベースおよびフィジカル・スタンバイ・データベースは両方とも新しいOracleリリースで実行します。


関連項目:


3.6.4 スナップショット・スタンバイ・データベース

スナップショット・スタンバイ・データベースは、更新可能なスタンバイ・データベースに一時的に変換されたフィジカル・スタンバイ・データベースです。スナップショット・スタンバイ・データベースをクローンまたはテスト・データベースとして使用して、新しい機能や新しいリリースを検証でき、その終了後は、データベースをフィジカル・スタンバイに変換できます。スナップショット・データベース・ロールで実行している間も、REDOデータの受信およびキューへの保存は継続するので、データ保護およびRPOが犠牲になることはありません。

スナップショット・スタンバイ・データベースは、プライマリ・データベースからREDOデータを受信してアーカイブすることでプライマリ・データベースのデータを常時保護しますが、スタンバイが読取り/書込みアクセス用にオープンしているときにはプライマリ・データベースのREDOデータを適用しません。そのため、スナップショット・スタンバイは、時間が経過するにつれてプライマリ・データベースと異なるものになります。REDO Applyは、スナップショット・スタンバイ・データベースをフィジカル・スタンバイ・データベースに戻し、スナップショット・スタンバイ・データベースに対して行われたローカルな更新がすべて破棄されるまでREDOデータを適用しません。スナップショット・スタンバイ・データベースのローカルな更新によって相違は増えますが、プライマリ・データベースのデータは、スタンバイ・サイトにあるREDOログによって完全に保護されます。

1つのコマンドでスナップショット・スタンバイをフィジカル・スタンバイ・データベースに戻すことができます。このとき、スナップショット・スタンバイ状態に加えられた変更が破棄され、アーカイブされたREDOを使用してフィジカル・スタンバイ・データベースとプライマリ・データベースがREDO Applyによって自動的に再同期化されます。

スナップショット・スタンバイ・データベースの利点

スナップショット・スタンバイ・データベースには、次の全体的な利点があります。

  • フィジカル・スタンバイ・データベースのすべての属性を継承

  • プライマリ・データベースとは無関係に、読取り/書込みI/O用にオープン可能、およびトランザクション処理可能

  • 読取り/書込みI/O用にオープン中のプライマリ・データベースを保護

  • 1つのコマンド発行により、スナップショット・スタンバイ・データベースを同期化したフィジカル・スタンバイ・データベースに変換可能

  • 特にOracle Real Application Testingと組み合せたときに、理想的なテスト・システムを実現

3.6.5 ロジカル・スタンバイ・データベース

ロジカル・スタンバイ・データベースには、プライマリ・データベースと同じ論理的な情報が含まれますが、データの物理的な編成と構造は異なります。ロジカル・スタンバイ・データベースは、SQL Applyによってプライマリ・データベースと同期化されます。SQL Applyは、プライマリ・データベースから受信したREDOデータをSQL文に変換し、スタンバイ・データベースでそのSQL文を実行します。

ロジカル・スタンバイ・データベースの利点

ロジカル・スタンバイ・データベースには、次の全体的な利点があります。

  • ロジカル・スタンバイ・データベースの主な利点は、レポート作成のワークロードを最適化する重要な補助構造(プライマリ・データベースのトランザクションのレスポンス時間に対する抑制効果をもたらす構造など)を作成できることです。ロジカル・スタンバイ・データベースは次のことが可能です。

    • データを、様々な索引を持ち、オンデマンドのリフレッシュ・マテリアライズド・ビューを作成および維持し、パーティションが異なる別のタイプの記憶域に物理的に再編成可能。マテリアライズド・ビューの概要は、『Oracle Database概要』を参照してください。

    • データ・キューブおよびその他のOLAPデータ・ビューの作成を実行するために使用可能。詳細は、『Oracle OLAP Java API開発者ガイド』を参照してください。

    • 障害リカバリ要件の達成、ユーザーに対する問合せ用のロジカル・スタンバイ・データベースへのアクセスの許可、レポート作成といった目的に加えて、いつでも他のビジネス目的に使用可能。

    • Oracle Databaseソフトウェアとパッチ・セットをほとんど停止時間なしでアップグレードするために使用可能。

    このように、データ保護、レポート作成およびデータベースのアップグレード目的でロジカル・スタンバイ・データベースを同時に使用することができます。

  • プライマリ・データベースの論理的なトランザクション対トランザクションのコピーを提供

  • 追加オブジェクトの作成、オブジェクトの変更が可能

  • 特定のオブジェクトに対する適用のスキップ機能

  • リアルタイムのレポート作成をサポート

  • 読取り/書込みI/O用にオープン(SQL Apply用に保持されている表内のデータは変更不可能)

  • ソフトウェア・アップグレードに対する停止時間の最小化(SQL Applyを使用したOracle Databaseソフトウェアのローリング・アップグレードの実行方法は『Oracle Data Guard概要および管理』を参照。)

3.7 Oracle GoldenGateおよびOracle Streams

Oracle GoldenGateはデータ分散とデータ統合に関するOracleの戦略的な製品です。これは高パフォーマンスのソフトウェア・アプリケーションで、ログ・ベースの双方向データ・レプリケーションを使用して、リアルタイムの取得、変換、ルーティング、異機種システム間のデータベース・トランザクションの配信を行います。Oracle GoldenGateにより、ミッションクリティカルなデータのリアルタイム統合および連続可用性が達成されます。詳細は、3.7.1項を参照してください。

Oracle Streamsは非常に柔軟で強力なデータベース・レプリケーション機能です。Oracleではこの機能へのサポートを継続する予定ですが、今後のリリースで大きな機能強化は行われない予定です。投資利益率を最大化するために既存のOracle Streamsデプロイメントを使用し続けることができます。ただし、組織向けの長期的なレプリケーション計画として、Oracle GoldenGateを検討する必要があります。Oracle Streamsのデータ・レプリケーションおよび統合の詳細は、『Oracle Database 2日でデータ・レプリケーションおよび統合ガイド』『Oracle Streams概要および管理』および『Oracle Streamsレプリケーション管理者ガイド』を参照してください。

Oracle GoldenGateはOracle Streamsの多くの優れた機能を強化し、両者の長所を生かした情報分散ソリューションを作成していきます。

3.7.1 Oracle GoldenGateの概要

Oracle GoldenGateは非同期、ログ・ベース、リアルタイムのデータ・レプリケーション製品で、異機種データベース、ハードウェアおよびオペレーティング・システム環境間で、影響を最小限に抑えながら、大量のトランザクション・データを移動します。

典型的な環境として、取得、ポンプおよび配信プロセスがあります。これらの各プロセスは、Oracle Databaseおよび非Oracleデータベースを含む、ほとんどの一般的なオペレーティング・システムおよびデータベースで実行できます。データのすべてまたは一部をレプリケートすることができ、プロセス内のデータは、異機種環境だけでなく、異なるデータベース・スキーマでも操作できます。Oracle GoldenGateはマルチマスター・レプリケーション、ハブ・アンド・スポーク方式のデプロイメントおよびデータ変換をサポートします。したがって、Oracle GoldenGateにより、クリティカルなシステムの24時間365日の稼動が可能になり、関連データを企業内に分散させて意思決定を最適化できます。

Oracle GoldenGateはプラットフォームの移行に加えて、アプリケーションおよびデータベースのアップグレードなどの、計画メンテナンス中の停止時間を最小化するための優れた方法でもあります。

Oracle GoldenGateの利点

Oracle GoldenGateは次の理由で、リアルタイムの情報アクセスおよび可用性を最適化します。

  • Oracle Databaseおよび非Oracleデータベースの異機種混合を含むレプリケーションをサポートします。

  • ミッションクリティカルなシステムの継続的な可用性を維持します。

    • 障害時リカバリおよびデータ保護

      最新のデータを使用した即時フェイルオーバー・サイトを作成および維持し、ミッションクリティカルなシステムのリカバリ時間を最小限に抑えます。

    • 停止時間ゼロ操作

      システム・アップグレード、移行およびメンテナンス・アクティビティ中も業務を中断させないことが可能です。

    • データ分散

      可用性およびスケーラビリティの向上のために、リアルタイムで分散アプリケーションのデータを同期させます。

    • 問合せのオフロード

      異機種ソースおよびターゲット間でデータをレプリケートすることにより、必要な読取り専用アクティビティをサポートしながら、本番システムでの高いパフォーマンスを保証します。

  • 企業内でリアルタイムのデータ統合を可能にします。

    • リアルタイム・データ・ウェアハウス

      OLTPシステムおよびデータ・ウェアハウス間で、最新の変更データの連続的でリアルタイムの取得および配信を提供します。

    • 操作レポート

      レポート・アクティビティを、本番データベースから、リアルタイム・レポート用の現在のデータが含まれる、より低コストのセカンダリ・システムにオフロードします。

    • 操作データの統合

      OLTPシステム間の操作データをリアルタイムで統合します。

3.7.2 Oracle GoldenGateとOracle Active Data Guardの使用

Oracle Golden GateおよびOracle Active Data GuardはOracleのソフトウェア・ポートフォリオ内の戦略的機能であり、互いに補完するものです。Oracle GoldenGateとOracle Active Data Guardを一緒に使用することで、他の製品では提供できない、ユニークなデータ保護および情報分散のソリューションが提供されます。


注意:

Oracle GoldenGateはOracleおよびサード・パーティのデータベース管理システム用のOracle Databaseとは別に販売されているOracle製品です。これはOracle Database Enterprise EditionおよびOracle Database Standard Editionの両方で使用できます。Oracle GoldenGateのライセンスには、Oracle Active Data Guardのライセンスが含まれます。

どちらの機能も一般的にはレプリケーション・テクノロジのカテゴリに分類されますが、重点を置く領域が大きく異なります。

  • Oracle Active Data GuardはOracle Databaseのデータ保護および障害時リカバリに対するOracleの戦略的製品です。

    Oracle Active Data GuardはOracle Database Enterprise Editionに含まれる標準のData Guard機能のサブセットなので、Active Data GuardもData Guardのすべての機能を継承します。

    • すべてのデータ型、記憶域属性、DMLおよびDDL間で透過的な操作

    • データベース全体の単純な一方向レプリケーションによる、管理の簡易さ

    • 優れた破損保護

    • 非同期または同期(データ損失ゼロ)保護の選択

    • 自動データベースおよびクライアント・フェイルオーバーによる計画外イベント中の高可用性

    • プライマリおよびスタンバイ・データベース間でのローリング方式による、データベース・アップグレードの実装、システムおよびサイトのメンテナンスまたはテクノロジの更新による停止時間を最小化

    Oracle Active Data Guardには別個のライセンスが必要で、Oracle Database Enterprise Editionとともに使用します。Oracle Database Enterprise EditionのActive Data Guardオプションとして購入できます。また、Oracle GoldenGateにも含まれています。基本Data Guard機能には別個のライセンスは必要なく、Oracle Enterprise Editionに含まれています。Oracle Active Data Guardについては、3.6.2項を参照してください。

  • Oracle GoldenGateはデータ分散およびデータ統合に関するOracleの戦略的製品です。

    Oracle GoldenGateはその異機種間および双方向のレプリケーション機能によりActive Data Guardを補完し、企業全体にわたる情報分散、停止時間ゼロのアップグレードおよび移行、異機種システムへの問合せのオフロードおよびマルチマスター・データベース・ソリューションを可能にします。

ビジネスの状況に応じて次のように選択します。

  • Oracle Active Data Guardを選択して、Oracleデータベース全体の障害時リカバリ、データ保護および高可用性に対する、単純で高パフォーマンスなドロップイン・ソリューションを実現します。

  • Oracle GoldenGateを選択して、Oracle間レプリケーション構成によるデータ分散およびデータ同期ソリューション、またはより柔軟なマルチマスターHAソリューションを実現します。

図3-1は、Oracle Data Guardフィジカル・スタンバイ・データベースが最適なデータ保護およびプライマリ・データベースからの読取り専用ワークロードのオフロードを提供する構成を示しています。また、本番データベースの様々なサブセットの複数のターゲット・データベースへの異機種間レプリケーションを提供します。本番データベースでのホストOracle GoldenGateレプリケーションではなく、Oracle GoldenGate取得プロセスが、アーカイブされたREDOログから変更が取得されレプリケートされるフィジカル・スタンバイ・データベースにオフロードされます。本番システムにOracle GoldenGateの処理のオーバーヘッドは必要ありません。

図3-1 計画外停止に対するOracle GoldenGateおよびOracle Data Guard

図3-1の説明が続きます
「図3-1 計画外停止に対するOracle GoldenGateおよびOracle Data Guard」の説明

Oracle GoldenGateは、アプリケーションおよびデータベースのアップグレードやプラットフォームの移行などの、計画メンテナンス中の停止時間を最小化するための優れた方法でもあります。


関連項目:

  • データベース・アップグレードを実行するためのOracle GoldenGateの使用の詳細は、4.1.9.3項を参照してください。

  • プラットフォーム移行を実行するためのOracle GoldenGateの使用の詳細は、4.1.10.2項を参照してください。


3.8 Oracle Flashbackテクノロジ

フラッシュバック・テクノロジは、過去の様々な時点におけるデータのビューを切り替えるための一連の機能を提供します。フラッシュバック機能を使用すると、スキーマ・オブジェクトの過去のバージョンや履歴データを問い合せることができます。また、変更分析の実行、データベースをオンラインにしたまま論理的破損からリカバリするセルフサービス修復も可能になります。

フラッシュバック・テクノロジは、人的エラーの分析および修復を素早く行うためのSQLインタフェースを提供します。フラッシュバック・テクノロジでは、誤った顧客オーダーの削除など、局部的な損傷のきめ細かな分析および修復が行われます。フラッシュバック・テクノロジを使用すると、より広範な損傷の修正も可能になります。しかも、修正は迅速に行われるため、停止時間が長期化することはありません。フラッシュバック・テクノロジはOracle Databaseに特有のものであり、行、トランザクション、表、表領域、データベースなどのあらゆるレベルでのリカバリをサポートしています。

他の機能(フラッシュバック・データベースやブロック・メディア・リカバリなど)ではフラッシュバック・ログが使用されるのに対し、ほとんどのフラッシュバック機能ではUNDOデータが使用されます。

  • UNDO表領域: データベースが自動UNDO管理モードで実行される場合に、UNDO情報のみが格納される専用表領域。

  • フラッシュバック・データ・アーカイブ: 表領域に格納されるアーカイブ。レコードの存続期間中に表のすべてのレコードに対して行われたトランザクションの変更が含まれます。アーカイブされたデータは、UNDO表領域で提供される保存期間よりも長く保存できます。

  • フラッシュバック・ログ: フラッシュバック・データベース操作またはブロック・メディア・リカバリ操作の実行に使用されるOracle生成ログ。データベースは、高速リカバリ領域にのみフラッシュバック・ログを書き込むことができます。フラッシュバック・ログは連続して書き込まれ、アーカイブされません。このログをディスクにバックアップすることはできません。

次の各項で、フラッシュバック機能について説明します。

3.8.1 Oracle Flashback Query

Oracle Flashback Queryでは、自動UNDO管理システムを利用してトランザクションのメタデータおよび履歴データを取得することで、過去に存在したデータを表示できます。UNDOデータは永続的で、データベースの異常や停止の際にも失われません。フラッシュバック問合せの独自の機能により、表の以前のバージョンの問合せが可能になり、誤った操作からリカバリするための強力なメカニズムも提供されます。

フラッシュバック問合せの用途は次のとおりです。

  • 失われたデータのリカバリや、誤ったコミット済の変更の取消しを行います。たとえば、削除または更新された行を、コミット後でもただちに修復できます。

  • 現行のデータと過去のある時点の対応するデータとを比較します。たとえば、前日のデータの変更を示す日次レポートを使用すると、表データの個々の行を比較したり、一連の行の共通部分または和集合を検索したりできます。

  • 特定の日の勘定残高を確認するなど、ある時点におけるトランザクション・データの状態をチェックします。

  • 特定のタイプの一時データを格納する必要をなくすことで、アプリケーションの設計を簡素化します。フラッシュバック問合せを使用すると、過去のデータをデータベースから直接取得できます。

  • レポート生成ツールなどのパッケージ・アプリケーションを過去のデータに適用します。

  • アプリケーションのセルフサービス・エラー修正を実現し、ユーザーが自分のエラーの取消しおよび修正を行えるようにします。

詳細は、『Oracle Database開発ガイド』を参照してください。

3.8.2 Oracle Flashback Version Query

Oracle Flashback Version QueryはSQLの拡張機能で、特定の表から特定の期間に存在した行のバージョンを取得するために使用できます。Oracle Flashback Version Queryでは、指定期間に存在した行のバージョンごとに1行が返されます。どの表についても、COMMIT文が実行されるたびに行のバージョンが新たに作成されます。

Oracle Flashback Version Queryは、データベース管理者(DBA)が問題の原因特定の分析を実行するために使用できる強力なツールです。さらに、アプリケーション開発者はOracle Flashback Version Queryを使用して、監査目的のカスタム・アプリケーションを作成できます。

詳細は、『Oracle Database開発ガイド』を参照してください。

3.8.3 Oracle Flashback Transaction

Oracle Flashback Transactionは、トランザクションとその依存トランザクションをバックアウトします。DBMS_FLASHBACK.TRANSACTION_BACKOUT()プロシージャは、データベースがオンラインのまま、トランザクションとその依存トランザクションをロール・バックします。このリカバリ操作ではUNDOデータを使用して、影響を受けたデータを元の状態に戻す補正トランザクションを作成および実行します。DBA_FLASHBACK_TRANSACTION_STATEビューに問い合せることで、トランザクションが依存ルールを使用してバックアウトされたか、次のいずれかで強制的に取り消されたかを確認できます。

  • 競合していない行のバックアウト

  • UNDO SQLの適用

Oracle Flashback Transactionでは、特定のトランザクション、またはトランザクションのセットとその依存トランザクションを迅速にバックアウトすることにより、論理リカバリ時の可用性が向上します。データベースがオンラインのまま、1つのコマンドを使用してトランザクションをバックアウトします。


関連項目:

  • Oracle Database開発ガイド

  • Oracle Database PL/SQLパッケージ・プロシージャおよびタイプ・リファレンス


3.8.4 Oracle Flashback Transaction Query

Oracle Flashback Transaction Queryは、データベースに加えられたすべての変更をトランザクション・レベルで表示するためのメカニズムを提供します。Oracle Flashback Version Queryと併用した場合、人的エラーまたはアプリケーションのエラーからリカバリする高速で効率的な手段となります。Oracle Flashback Transaction Queryでは、行を変更したデータベース・ユーザーが返されるため、データベースの問題のオンライン診断を実行する能力が強化されます。また、トランザクションの分析および監査も実行されます。

詳細は、『Oracle Database開発ガイド』を参照してください。

3.8.5 Oracle Flashback Table

Oracle Flashback Tableを使用すると、過去のある時点の状態に表をリカバリできます。フラッシュバック表は、人的エラーまたはアプリケーションのエラーによって変更された1つの表または一連の表をリカバリするための高速なオンライン・ソリューションを提供します。ほとんどの場合、Oracle Flashback Tableを使用することで、管理者がより複雑なポイント・イン・タイム・リカバリ操作を実行する必要性は軽減されます。元の表のデータは、Oracle Flashback Tableを使用すると表を元の状態に戻せるため失われません。

詳細は、『Oracle Databaseバックアップおよびリカバリ・ユーザーズ・ガイド』を参照してください。

3.8.6 Oracle Flashback Drop

オブジェクトの誤った削除は、データベース・ユーザーにも、データベース管理者にも同様に問題です。削除された表、索引、制約またはトリガーをリカバリする簡単な方法はありませんが、Oracle Flashback Dropでは、オブジェクトを削除する際の安全策が提供されます。表を削除すると、その表は自動的にごみ箱に入ります。ごみ箱は、すべての削除済オブジェクトが入っている仮想コンテナです。削除した表のデータは、引き続き問い合せることができます。

詳細は、『Oracle Databaseバックアップおよびリカバリ・ユーザーズ・ガイド』を参照してください。

3.8.7 Oracle Flashbackのリストア・ポイント

Oracle Flashbackのリカバリ操作がデータベースで実行されるとき、DBAは、適切な時間内に(システム変更番号(SCN)またはタイムスタンプで識別)、後でフラッシュバック可能なポイントを決定する必要があります。Oracle Flashbackのリストア・ポイントとは、フラッシュバック・データベース、フラッシュバック表およびOracle Recovery Manager(RMAN)操作で使用されるSCNまたはトランザクション時間に置き換えるためにユーザーが定義できるラベルです。さらに、データベースは、前回のデータベースのリカバリを通じてフラッシュバックでき、保証されたリストア・ポイントを使用して、OPEN RESETLOGSコマンドと同様に開くことができます。保証されたリストア・ポイントを使用して、データベースの巻戻しに必要なUNDOが保存されるようにすることで、データベースのバッチ・ジョブ、アップグレードまたはパッチなどの主なデータベース変更を素早く元に戻すことができます。

Oracle Flashbackのリストア・ポイント機能を使用すると、次の利点があります。

  • 一貫性のある状態、つまり失敗した計画操作(バッチ・ジョブ、Oracleソフトウェア・アップグレードまたはアプリケーション・アップグレードの失敗など)より前の適切なポイントに素早くリストアすることが可能

  • スナップショット・スタンバイとプライマリ・データベースの再同期化が可能

  • テスト・データベースまたはクローン化されたデータベースを元の状態に戻す迅速なメカニズム

詳細は、『Oracle Databaseバックアップおよびリカバリ・ユーザーズ・ガイド』を参照してください。

3.8.8 Oracle Flashback Database

Oracle Flashback Databaseは、データベースのポイント・イン・タイム・リカバリよりも効率的な代替策です。Oracle Flashback Databaseを使用すると、現行のデータ・ファイルを過去の内容に戻すことができます。つまり、データ・ファイルのバックアップからデータをリストアして、データベースのポイント・イン・タイム・リカバリを実行する場合とほぼ同じです。ただし、フラッシュバック・データベースではデータ・ファイルのリストアとほとんどのREDOデータの適用が省略されます。

Oracle Flashback Databaseを有効にすると、次の利点があります。

  • データベース全体に影響を与える人的エラー修正時のバックアップのリストア時間を排除

  • リアルタイム適用を使用してスタンバイ・データベースとプライマリ・データベースを同期化することにより、人的エラーを素早く元に戻すことが可能

  • データベースのフェイルオーバー後、スタンバイ・データベースの迅速な再インスタンス化が可能


参照:

  • 『Oracle Databaseバックアップおよびリカバリ・ユーザーズ・ガイド』

  • 『Oracle Database SQL言語リファレンス』


3.8.9 フラッシュバック・ログを使用したブロック・メディア・リカバリ

自動的な破損ブロック修復の試行後、ブロック・メディア・リカバリ機能で、フラッシュバック・ログからデータ・ブロックの最新コピーを必要に応じて取得して、リカバリ時間を短縮できます。自動ブロック修復を使用すると、検出されたプライマリ・データベースの破損ブロックをフィジカル・スタンバイ・データベースの良好なブロックを使用してただちに自動修復できます。

その上、インスタンスのリカバリで発生した破損ブロックによってインスタンスのリカバリが失敗することはありません。このようなブロックは破損として自動的にマークされ、V$DATABASE_BLOCK_CORRUPTION表のRMANの破損リストに追加されます。その後、RMANのRECOVER BLOCKコマンドを発行して関連ブロックを修正できます。また、フィジカル・スタンバイ・データベースが使用可能な場合には、RMAN RECOVER BLOCKコマンドはフィジカル・スタンバイ・データベースからブロックをリストアします。


関連項目:

  • ブロック・メディア修復の詳細は、『Oracle Databaseバックアップおよびリカバリ・ユーザーズ・ガイド』を参照してください。

  • RMAN RECOVER BLOCKコマンドの詳細は、『Oracle Databaseバックアップおよびリカバリ・リファレンス』を参照してください。

  • 3.20項「自動ブロック修復」


3.8.10 フラッシュバック・データ・アーカイブ

フラッシュバック・データ・アーカイブは表領域に格納され、レコードの存続期間中に表のすべてのレコードに対して行われたトランザクションの変更が含まれます。アーカイブされたデータは、UNDO表領域で提供される保存期間よりも長く保存できます。

詳細は、『Oracle Database開発ガイド』を参照してください。

3.9 Oracle Automatic Storage Management

Oracle ASM は、垂直方向に統合されたファイル・システムおよびボリューム・マネージャを直接Oracle Databaseカーネル内に構築し、次の機能を提供します。

  • データベース・ストレージのプロビジョニングに必要な作業量を大幅に削減

  • より高いレベルの可用性

  • 特殊なストレージ製品のコスト、インストールおよびメンテナンスを排除

  • データベース・アプリケーションの固有の機能

最適なパフォーマンスを実現するため、Oracle ASMは、ファイルをすべての使用可能なストレージ間で分散させます。また、データ損失から保護するために、Oracle ASMは、SAME(Stripe and Mirror Everything)の概念を拡大して、ディスク全体のレベルではなくデータベース・ファイル・レベルでのミラー化が可能となるように、SAMEにより柔軟性を持たせます。

さらに重要なことに、Oracle ASMは、ミラー化の設定、ディスクの追加および削除プロセスを簡素化します。数百または数千にもなりうる(大規模なデータ・ウェアハウスの場合)多数のファイルを管理するかわりに、DBAは、ASMを使用してディスク・グループと呼ばれるさらに大きなオブジェクトを作成および管理します。ディスク・グループは、論理ユニットとして管理されるディスク・セットを識別します。ファイルの名前付け、および基礎となるデータベース・ファイルの配置を自動化することにより、データベース管理者の時間を節約でき、標準的なベスト・プラクティスの適用を保証できます。

Oracle ASMネイティブ・ミラー化メカニズム(2方向または3方向)がストレージ障害から保護します。Oracle ASMミラー化を使用して、障害グループを使用する場合により高いレベルのデータ保護を実現できます。障害グループとは、障害が許容される、共通のリソース(ディスク・コントローラまたはディスク・アレイ全体)を共有するディスク・セットのことです。Oracle ASMの障害グループを定義することで、データの冗長コピーが個別の障害グループにインテリジェントに配置されます。これにより、ストレージのサブシステム内のいずれかのコンポーネントで障害が発生した場合でも、このデータを使用でき、また、透過的に保護されるようになります。

Oracle ASMを使用すると、次のことが可能です。:

  • ドライブおよびストレージ・アレイ間でのミラー化とストライプ化

  • 障害が発生したドライブから残りのドライブへの自動再ミラー化

  • データベースがオンラインのまま、ディスクの追加または削除時に格納されたデータの自動リバランスが可能

  • Oracle Automatic Storage Managementクラスタ・ファイルシステム(Oracle ACFS)を使用したOracleデータベース・ファイルおよびデータベース以外のファイルのサポート

  • データベース・ストレージ管理の操作の簡素化が可能

  • Oracle Cluster Registry(OCR)および投票ディスクの管理

  • インスタンスのローカル・ディスク上の優先読取り機能による、拡張クラスタのパフォーマンスの向上

  • 大規模データベースのサポート

  • Oracle ASMローリング・アップグレードのサポート

  • チューニングおよびセキュリティのきめ細かな粒度のサポート

  • ミラーのいずれかに適切なコピーが存在する場合、Oracle ASMの高速ミラー再同期およびブロック破損自動修復の機能を使用した、一時的なディスク障害発生後の高速修復を提供

  • Oracle ACFSファイルシステムのネットワーク経由でのリモート・サイトへのレプリケーションを可能にすることにより、ファイルシステムの障害時リカバリ機能を提供

ACFSの詳細は、『Oracle Automatic Storage Management管理者ガイド』を参照してください。

3.10 高速リカバリ領域

高速リカバリ領域は、Oracle Database内のすべてのリカバリ関連ファイルおよびアクティビティを対象とした一元的な格納場所です。この機能を有効にすると、すべてのRMANバックアップ、アーカイブREDOログ・ファイル、制御ファイルの自動バックアップ、フラッシュバック・ログおよびデータ・ファイルのコピーが自動的に特定のファイルシステムまたはOracle ASMディスク・グループに書き込まれ、このディスク領域はRMANとデータベース・サーバーによって管理されます。

高速リカバリ領域を使用するとテープへの書込みのボトルネックが解消されるため、ディスクへのバックアップ実行が高速化されます。さらに重要なことに、データベースのメディア・リカバリを行う必要がある場合は、データ・ファイルのバックアップがすぐに使用できます。必要なデータ・ファイルおよびアーカイブREDOログ・ファイルをリストアするためのテープおよび空きテープ・デバイスを見つける必要がないため、リストアおよびリカバリの時間が短縮されます。

高速リカバリ領域には、次の利点があります

  • 関連リカバリ・ファイルの格納場所の一元化

  • リカバリ・ファイルに割り当てられたディスク領域を管理し、データベース管理タスクを簡素化

  • 高速で信頼性の高いディスクベースのバックアップおよびリストア

  • 高速リカバリ領域全体のバックアップとリストアが可能

詳細は、『Oracle Databaseバックアップおよびリカバリ・ユーザーズ・ガイド』を参照してください。

3.11 Recovery Manager

Oracle Recovery Manager(RMAN)は、データベースのバックアップや、さらに重要なデータベースのリカバリを管理するためのOracleのユーティリティです。RMANは、操作の複雑さを排除するとともに、データベースの優れたパフォーマンスおよび可用性をもたらします。

RMANは、リクエストされたバックアップ、リストアまたはリカバリの操作を実行する最も効率的な方法を決定し、Oracle Databaseサーバーでの処理のために、これらの操作を発行します。RMANおよびサーバーは、データベース構造に加えられた変更を自動的に識別し、変更に適応するために必要な操作を動的に調整します。

RMANには次のような利点があります。

  • バックアップおよびリストア操作での自動チャネル・フェイルオーバー

  • リストア操作で欠落した、または破損したバックアップが検出された場合に、前回のバックアップへの自動フェイルオーバー

  • リカバリ中の一時ファイルおよび新規データベースの自動作成

  • 前回のポイント・イン・タイム・リカバリを使用した自動リカバリ(リセットログによるリカバリ)

  • ブロック・メディア・リカバリでは、データ・ファイルをオンラインに保ったまま、ブロックの破損を修復

  • ブロック・チェンジ・トラッキングを使用した高速増分バックアップ

  • イントラファイルおよびインターファイルの並列処理による高速バックアップ操作とリストア操作

  • 仮想プライベート・カタログによるセキュリティの強化

  • ネットワークでデータベースを作成する場合の、ステージング領域の削除による領域消費の削減

  • 増分バックアップをイメージ・コピーにバックグラウンドでマージし、最新のリカバリ可能性を提供

  • 必要なファイルのみ、バックアップおよびリストアを最適化

  • 保存方針により、関連のバックアップを確実に保存

  • 前回失敗した操作のバックアップおよびリストアを再開可能

  • 制御ファイルおよびサーバー・パラメータ・ファイルの自動バックアップを行うことにより、データベース構造の変化や、メディア障害や災害の発生時に、バックアップ・メタデータの使用が可能

  • データベースをホット・バックアップ・モードにする必要のないオンライン・バックアップ

詳細は、『Oracle Databaseバックアップおよびリカバリ・ユーザーズ・ガイド』を参照してください。

3.12 データ・リカバリ・アドバイザ

データ・リカバリ・アドバイザは、永続的な(ディスク上の)データ障害を自動的に診断し、適切な修復オプションを示し、リクエストに応じて修復操作を実行します。

データ・リカバリ・アドバイザを使用して、プライマリ・データベース、ロジカル・スタンバイ・データベースおよびスナップショット・スタンバイ・データベースをトラブルシューティングできます。

データ・リカバリ・アドバイザには、次の機能があります。

  • 障害診断

    通常、データベース障害の最初の兆候は、エラー・メッセージ、アラーム、トレース・ファイルおよびダンプ、ヘルス・チェックの失敗などです。これらの兆候を評価する作業はたいてい複雑で間違いやすく、時間がかかります。データ・リカバリ・アドバイザを使用すると、データ障害が自動的に診断され、これらの詳細が通知されます。

  • 障害の影響の評価

    障害の診断後、修復戦略について検討する前に、障害の範囲を把握し、アプリケーションに与える影響を評価する必要があります。データ・リカバリ・アドバイザを使用すると、障害の影響が自動的に評価され、わかりやすい形式でその結果が表示されます。

  • 修復の生成

    障害が正しく診断されたとしても、正しい修復方法の選択は容易ではなく、負担になります。さらに、判断を誤ると、停止時間の増加やデータ損失という点で大きな不利益を被ることになります。データ・リカバリ・アドバイザは、自動的に一連の障害に関する最善の修復方法を判断して提示します。

  • 修復の実行可能性チェック

    データ・リカバリ・アドバイザでは、修復オプションが示される前に、特定の環境や提案される修復処理を完了するために必要なメディア・コンポーネントの可用性に関して、これらの修復オプションが検証されます。

  • 修復の自動化

    提示された修復オプションを使用すると、この修復オプションが自動的に実行され、修復が成功したかどうかが検証されて、該当する障害が処置済となります。

  • データの整合性およびデータベースのリカバリ可能性の検証

    データ・リカバリ・アドバイザでは、選択すればいつでも、データ、バックアップおよびREDOストリームの整合性を検証できます。

  • 破損の早期検出

    状態モニターを使用して、データ・リカバリ・アドバイザによる診断チェックを定期的に実行するようスケジュール設定できます。これにより、トランザクションを実行しているデータベース・プロセスによって破損が検出されてエラーが通知される前に、データ障害を検出できます。早期の警告により、破損による損害を制限できます。

  • データの検証および修復の統合

    データ・リカバリ・アドバイザは、データの検証および修復用の単一のツールです。


注意:

データ・リカバリ・アドバイザでは、単一インスタンス・データベースのみがサポートされています。Oracle RACデータベースはサポートされていません。データ・リカバリ・アドバイザでサポートされるデータベース構成の詳細は、『Oracle Databaseバックアップおよびリカバリ・ユーザーズ・ガイド』を参照してください。

詳細は、『Oracle Databaseバックアップおよびリカバリ・ユーザーズ・ガイド』のデータ・リカバリ・アドバイザを使用した障害の診断および修復に関する項を参照してください。

3.13 Oracle Secure Backup

Oracle Secure Backupは、UNIX、Linux、WindowsおよびNetwork Attached Storage(NAS)の分散環境で実行される異種データ保護を提供する、集中型のテープ・バックアップ管理ソリューションです。ファイル・システムとOracle Databaseのデータを保護することにより、Oracle Secure BackupはIT環境に完全なテープ・バックアップ・ソリューションを提供します。

Oracle Secure BackupはRMANと緊密に統合されてRMANのメディア管理層を提供し、Oracle9i以降のリリースをサポートしています。Oracle Secure BackupとRMANは、最適化された統合ポイントを使用して、Oracle Databaseに最速で効率性が最も高いテープ・バックアップ機能を提供します。

バックアップ・ポリシーを使用して、分散サーバーをOracle Secure Backup中央管理サーバーからローカルおよびリモートのテープ・デバイスにバックアップできます。完全自動操作の場合はカレンダーに基づくスケジュールで、迅速な要件の場合はオンデマンドでバックアップされます。高度にスケーラブルなクライアント/サーバー・アーキテクチャにより、Oracle Secure Backupは安全なイントラドメイン通信と双方向サーバー認証のためにSecure Sockets Layer(SSL)を利用して、ローカルおよびリモートのデータ保護を提供します。

Oracle Secure Backupには次のような利点があります。

  • 現在使用されているブロックのみをバックアップして、バックアップ・パフォーマンスを10%から25%向上させることで、Oracle Databaseのテープ・バックアップを最適化

  • ポリシーに基づく管理により、バックアップ管理者はバックアップ・ドメインの正確な制御が可能

  • 動的ドライブ共有によるテープ・リソースの使用率の向上

  • 異種ストレージ・エリア・ネットワーク(SAN)のサポートにより、NAS、UNIX、WindowsおよびLinuxでテープ・ドライブとメディアの共有が可能

  • 完全および増分オフサイト・バックアップ・スケジューリングによる、ファイル、ディレクトリ、ファイル・システムまたはRAWパーティション・レベルでのファイル・システム・バックアップ

  • Oracle Enterprise Managerとの統合による、直感的で使いやすいインタフェースの提供

  • テープへのバックアップの暗号化

  • SANおよびSCSI環境における新しいテープ・デバイスと従来の幅広テープ・デバイスのサポート

  • Network Data Management Protocol(NDMP)のサポートによる、NASファイルの効率性の高いバックアップ

  • スケーラブルで低コストのライセンス・モデルによる、ITコストの削減と運用面の考慮事項の軽減

詳細は、『Oracle Secure Backup管理者ガイド』を参照してください。

3.14 Oracleセキュリティ機能

人的エラーに対する最大の保護とは、その発生を防ぐことです。人的エラーの最高の保護方法は、ユーザー・アクセスを、ビジネス機能の実行に本当に必要なデータおよびサービスのみに限定することです。Oracle Databaseでは、データベース・ユーザーの認証によりアプリケーション・データへのアクセスを制御し、管理者が任務の遂行に必要な権限のみをユーザーに与えることができる多種多様なセキュリティ・ツールを提供しています。

さらに、Oracle Databaseのセキュリティ・モデルでは、仮想プライベート・データベースを使用して行レベルにデータ・アクセスを制限し、アクセスする必要がないデータをデータベース・ユーザーから分離することが可能です。

Oracle Databaseには次のようなセキュリティ上の利点があります

  • ネットワーク、データベースおよびアプリケーションを使用したエンティティのアイデンティティを検証するための認証制御。データベース間のネットワーク・セッション(REDO転送セッションなど)も認証されます。

  • データベース・ユーザー・アイデンティティおよびロールにリンクされているアクセスおよびアクションを制限するための認証制御。

  • オブジェクトへのアクセスを制御し、エンティティの要求がオブジェクトに対するアクセスまたは変更のいずれであろうとオブジェクトを保護。

  • 特定のデータベース・アクティビティに関するデータの監視および収集、不審なアクティビティの調査、ユーザー(またはその他)の不適切なアクティビティの防止、および認証あるいはアクセス制御の実装による問題の検出を行う監査制御。

  • プロファイルを使用したセキュリティ・ポリシー管理。

  • データベースおよびバックアップ内に存在する、またはデータベース間で転送されるデータの暗号化。


関連項目:

  • Oracle Databaseセキュリティ・ガイド

  • 『Oracle Data Guard概要および管理』


3.15 LogMiner

Oracleログ・ファイルには、Oracle Databaseのアクティビティおよび履歴に関する有益な情報が含まれています。また、ログ・ファイルには、データベースのリカバリの実行に必要なすべてのデータが含まれており、データベース内のデータおよびメタデータに加えられたあらゆる変更も記録されます。

LogMinerは、SQLを使用したREDOログ・ファイルの読取り、分析および解析を可能にする完全なリレーショナル・ツールです。LogMinerを使用したログ・ファイルの分析は、次の用途に使用できます。

  • データへの変更の追跡または監査

  • チューニングおよび容量計画用に補足情報を提供

  • 複雑なアプリケーションのデバッグ用重要情報の取得

  • 削除されたデータのリカバリ

  • 論理障害のトラブルシューティングと解決に役立つ、ブラウザを中心とした簡素化

LogMiner機能には次のものがあります。

  • アプリケーション・レベルで発生したエラーなど、データベースの論理的破損が発生した可能性のある時期を特定

  • トランザクション・レベルでのきめの細かいリカバリを実行するために必要な処置を決定

  • 傾向分析によるパフォーマンス・チューニングおよび容量計画の提供

  • LogMinerの包括的なREDOログ・ファイルへのリレーショナル・インタフェースを使用した、システムの動作の分析およびデータベース使用の監査

詳細は、『Oracle Databaseユーティリティ』のLogMinerに関する章を参照してください。

3.16 Oracle Exadata Storage Server Software(Exadataセル)

Oracle Exadata Storage Server Softwareは、Oracle Databaseで使用するために高度に最適化された記憶域製品です。Exadataセルとも呼ばれ、Oracle Databaseの格納およびアクセスに使用されます。Oracle Exadata Storage Server SoftwareではExadataセル・ソフトウェアを実行します。従来の記憶域アレイおよび製品に加えて使用できます。Exadataセルは、SQL処理およびデータベース・アプリケーションに対する透過性を維持しながら、データベース・サーバーからデータベース処理をオフロードする機能など、データベースを意識した記憶域サービスを提供します。

Oracle Storage Gridは、Oracle ASMとOracle Exadata Storage Server Software、またはOracle ASMとサード・パーティのストレージを使用して実装されます。Exadataを使用したOracle Storage Gridを使用すると、MAA関連のテクノロジをシームレスにサポートでき、パフォーマンスが向上し、無制限のI/Oスケーラビリティが得られます。また、使用および管理が容易で、企業はミッション・クリティカルな可用性および信頼性を得られます。また、Exadataセルは、ディスクへの書込みによる破損を防ぐための最も包括的なソリューションです。DB_BLOCK_CHECKSUM初期化パラメータが有効化されると、Exadataはブロック・チェックサムを評価します。


関連項目:

  • Oracle Storage Gridのベスト・プラクティス推奨事項は、『Oracle Database高可用性ベスト・プラクティス』を参照してください。

  • Oracle Exadata Storage ServerのWebサイト(http://www.oracle.com/exadata)


3.17 Oracle Exadata Database Machine

Oracle Exadata Database Machineは事前に完全な最適化および構成が行われたソフトウェア、サーバーおよびストレージのパッケージで、スキャン集中型のデータ・ウェアハウス・アプリケーションから同時実行性の高いOLTPアプリケーションまで、あらゆるデータベース・ワークロードに対して最適なソリューションを提供します。Oracle Exadata Storage Server Software、Oracle DatabaseソフトウェアおよびSunのハードウェア・コンポーネントを組み合わせることにより、可用性が高く、非常にセキュアな環境で卓越したパフォーマンスを実現します。Oracle特有のクラスタリングおよびワークロード管理機能により、Database Machineは複数のデータベースを単一グリッドへ統合するのにも適しています。

Exadata Database MachineはOLTPおよびデータ・ウェアハウス・アプリケーションに高いパフォーマンス、スケーラビリティおよび可用性を提供するように設計されています。

計画外停止に対し、Exadata Database Machineはフォルト・トレラントであり、MAAベスト・プラクティスと統合されて、次の利点をもたらします。

  • Oracle RACによるノードおよびインスタンス障害への耐性

  • Oracle ASMおよびOracle Exadata Storage Server Gridによるディスクおよびセルの障害への耐性

  • Oracle ASM自動修復メカニズム、Exadataストレージ組込み破損チェックおよびOracle汎用ブロック破損パラメータを使用した、破損の防止および自動修復

  • 冗長でフォルト・トレラントなポート、ケーブル、ホスト・チャネル・アダプタおよび結合ネットワークの提供

  • Oracle Data Guardおよび別のExadata Database Machineを使用した完全なクラスタまたはDatabase Machineの障害を迅速に修復する機能の提供

計画メンテナンスに対し、Exadata Database Machineは次の利点をもたらします。

  • Oracle ASM、Oracle ClusterwareおよびOracle RACローリング・アップグレードまたはソフトウェア変更のサポート

  • Oracle Exadata Storage Server Softwareのパッチ用ローリング・アップグレードのサポート

  • Oracle Data GuardおよびOracle GoldenGateを使用したアプリケーションおよびシステム変更が可能

  • データベースへの一般的なオンライン・メンテナンス機能のすべてをサポート

バックアップおよびリカバリ操作に対し、単一のExadata Database Machineに特有な主要なパフォーマンスの差別化には、次のことを達成する機能が含まれます。

  • 1時間当たり7TBのRMANテープ・ベースおよびディスク・ベースの完全バックアップ

  • 1時間当たり10~48TBの、RMAN増分バックアップを使用したRMAN有効バックアップ率

  • 1時間当たり23TBのRMANリストア率

  • ワークロードに応じた、1秒当たり200~637MBのREDO Applyおよびリカバリ率

  • ハイエンドOLTPおよびデータ・ウェアハウス・アプリケーション向けの Data Guardデプロイメント

MAA構成ベスト・プラクティスは、Exadata Database MachineおよびExadata Cellの最初のインストールおよびデプロイ中に引き続き統合され組み込まれます。

MAA OTN WebサイトでExadata Database MachineのMAAベスト・プラクティスを参照してください。

3.18 Oracle Database File System(DBFS)

Oracle Database File System(DBFS)は、データベース表に格納されているファイルおよびディレクトリの最上位に、標準のファイル・システム・インタフェースを作成します。Oracle DBFSは、ローカル・ファイル・システムと類似した共有ネットワーク・ファイル・システムを提供する点で、ネットワーク・ファイル・システム(NFS)プロトコルと似ています。

NFSと同様に、サーバー・コンポーネントおよびクライアント・コンポーネントが存在します。サーバーはOracle Databaseで、ファイルはデータベース表のSecureFile LOBに格納されます。ファイルはデータベースに格納され、Oracle Databaseが提供する高可用性と障害時リカバリ保護はそのまま利用できるため、フル・スタックの障害時リカバリ・ソリューションが実現します。データベース内でのファイル・システムの実装はDBFSコンテンツ・ストアと呼ばれ、これによって各データベース・ユーザーは、クライアントによるマウントが可能な1つ以上のファイル・システムを作成できます。各ファイル・システムには、ファイル・システム・コンテンツが保持されるシステム専用の表があります。一連のPL/SQLプロシージャにより、ファイル・システム・アクセス(CREATEOPENREADWRITEおよびLIST DIRECTORYなど)がデータベースに実装されます。

Oracle DBFSには次のような利点があります。

  • 非構造化データと構造化データの両方を同じデータベースに格納する機能。

    これにより、両タイプのデータのバックアップおよび同期ポイント・イン・タイム・リカバリを実行できます。

    Oracle DBFSは、クライアントに対してNFSのようなファイル・システムを提示することにより、構造化されていない内容をデータベースに格納する機能を提供します。ファイル・システム自体は、Oracle Databaseの表領域に格納されます。データベース記憶域は、従来のNFSがマウントされた同じ機能のファイル・システムとして表示されるため、クライアントにとっては透過的ですが、DBFSでは、通常はファイル・システムに格納するあらゆる種類のファイル(ログや生成済レポートなど)を、データベースに直接格納する機能が提供されます。

  • 軽量プロセスによるクラスタ化ファイル・システム機能

    Oracle DBFSは、複数のクライアント・マシン(データベース・サーバー、中間層)にマウントでき、その結果、クラスタ化されたファイル・システムとしても使用可能です。ファイル・システムをアクセス可能にするために、軽量のプロセスは各クライアント・マシンで開始されます。このプロセスでは、Filesystem in Userspace(FUSE)APIを使用して、ファイル・システム・アクセスを実行します。

  • ファイル・システムとデータベースの両操作の高速かつ透過的なクライアント・フェイルオーバー(フル・スタック障害時リカバリ)

    クライアント・システム上のプロセスはOCIに基づいています。したがって、クライアントは、同じサービスベースの接続方法を使用して、FANおよび高速接続フェイルオーバー機能を利用できます。

詳細は、『Oracle Database SecureFilesおよびラージ・オブジェクト開発者ガイド』を参照してください。

3.19 クライアント・フェイルオーバー

高可用性アーキテクチャでは、アプリケーション層が生き残っているインスタンスまたはデータベースに透過的にフェイルオーバーして必要なサービスを通知する機能が必要です。これにより、ノード障害、インスタンス障害、データ破損またはデータベース障害時に、アプリケーションが通常どおり使用可能であることが保証されるか、または影響を最小限に抑えることができます。透過的なクライアント・フェイルオーバーにより、アプリケーションは別の使用可能なOracle RACインスタンスまたは別のデータベースにフェイルオーバーできます(Oracle Data Guardロール・トランジションの場合など)。

クライアント・フェイルオーバーには、障害の通知、接続のクリーンアップ、自動再接続、および別のOracle RACインスタンスまたはデータベースに存在するデータベース・サービスの再試行が含まれ、問合せの再試行も含まれる可能性があります。

クライアント・フェイルオーバーのベスト・プラクティスおよびネットワークのベスト・プラクティスについては、MAAホワイト・ペーパーのData Guard 11g リリース2のクライアント・フェイルオーバーのベスト・プラクティスを参照してください。

http://www.oracle.com/goto/maa

3.20 自動ブロック修復

自動ブロック修復を使用すると、破損したデータ・ブロックを破損検出と同時に自動修復できます。この機能により、ブロック破損によってデータがアクセス不可になる時間が短縮されます。最新の良好なブロックをリアルタイムで使用するため、ディスクやテープのバックアップまたはフラッシュバック・ログからブロックを取得するより、ブロックのリカバリ時間が短縮されます。

自動ブロック修復ではOracle Active Data Guardオプションの使用が必要で、これにより読取り/書込みI/Oでフィジカル・スタンバイ・データベースを開くことができます。また、この機能では、Oracle Data Guardが最大可用性モードで実行中で、LOG_ARCHIVE_DEST_n初期化パラメータがSYNC REDOトランスポート・モードに設定されている必要があります。


注意:

Oracle Active Data Guardのリアルタイム問合せ機能を使用すると、REDO Applyがアクティブである間、フィジカル・スタンバイ・データベースを読取り専用で開くことができます。Oracle Active Data GuardはOracle Enterprise Editionの別個のデータベース・オプションとしてパッケージ化されています。本番データベースおよびOracle Active Data Guardオプションに使用されるすべてのフィジカル・スタンバイ・データベースにライセンスが必要です。

表3-2 破損データ・ブロックの自動検出および修復

状況 結果

破損データ・ブロックがプライマリ・データベースで検出された

リアルタイム問合せモードで稼働するフィジカル・スタンバイ・データベースを使用して、プライマリ・データベースの破損データ・ブロックを修復できます。可能な場合は、プライマリ・データベースへのアクセス時に発生したすべての破損データ・ブロックが、リアルタイム問合せモードで稼働するフィジカル・スタンバイ・データベースの同じブロックの破損していないコピーに自動的に置換されます。自動修復不可の場合はORA-1578エラーが戻されます。

破損データ・ブロックがフィジカル・スタンバイ・データベースで検出された

フィジカル・スタンバイ・データベースで次のデータベース初期化パラメータが構成されている場合は、破損の自動修復がサーバーによって試行されます。この修復では、プライマリ・データベースからブロックのコピーが取得されます。

  • DG_CONFIGリストを使用してLOG_ARCHIVE_CONFIGパラメータを構成

  • プライマリ・データベースのLOG_ARCHIVE_DEST_nパラメータを構成


また、RMAN RECOVER BLOCKコマンドを使用して破損データ・ブロックを手動で修復することもできます。このコマンドは、複数の場所でデータ・ブロックの破損していないコピーを検索します。デフォルトでは、検索場所の1つは、リアルタイム問合せモードで稼働する使用可能な任意のフィジカル・スタンバイ・データベースです。RMAN RECOVER BLOCKコマンドのEXCLUDE STANDBYオプションを使用すると、置換ブロックのソースとしてフィジカル・スタンバイ・データベースを除外できます。


関連項目:

  • ブロック・メディア修復の詳細は、『Oracle Databaseバックアップおよびリカバリ・ユーザーズ・ガイド』を参照してください。

  • RMAN RECOVER BLOCKコマンドの詳細は、『Oracle Databaseバックアップおよびリカバリ・リファレンス』を参照してください。

  • リアルタイム問合せスタンバイ・データベースを使用した自動ブロック修復の詳細は、『Oracle Data Guard概要および管理』を参照してください。


3.21 破損の予防、検出および修復

MAA推奨の、最も包括的にデータ破損の防止および検出を実現する方法は、Oracle Data Guardを使用し、DB_BLOCK_CHECKINGDB_BLOCK_CHECKSUMおよびDB_LOST_WRITE_PROTECTデータベース初期化パラメータを、Data Guardプライマリおよびスタンバイ・データベースで構成することです。

Oracle Data GuardはOracleデータをデータ損失および破損、書込みの欠落から保護する最適なソリューションです。企業データを障害、エラーおよびデータ破損から守るために1つまたは複数のスタンバイ・データベースを保持するのはOracleの機能のみです。Data Guardを使用すると、ローカルまたはリモートのデータ・センターで、プライマリ(本番)データベースの1つまたは複数のスタンバイ・コピーをデプロイおよび管理できます。データ保護のすべての利点は、この事実から生じています。

たとえば、Data Guardを使用して、本番データベースからの変更で継続的に更新されているスタンバイ・データベース上のデータの別のコピーを保持できます。Data Guardはすべての変更をスタンバイ・データベースに適用される前に検証し、物理的な破損が伝播してフィジカル・スタンバイ・データベースを破損しないようにします。本番データベースがサイトの障害、データ破損または人的エラーにより使用できなくなった場合に、スタンバイ・データベースをアクティブにできます。

Oracle Database 11gリリース2(11.2)から、破損ブロックの修復は、フィジカル・スタンバイ・データベースから同じブロックの状態のよいバージョンを取得することで、プライマリ・データベースによりリアルタイムで自動的に行われます。さらに、Oracle Active Data Guardオプションの、REDO Applyがアクティブである間フィジカル・スタンバイ・データベースを読取り専用でオープンできる機能が、自動ブロック修復に必要です。この機能により、破損の検出後すぐに破損データ・ブロックを自動的に修復できます。詳細は、このホワイト・ペーパーの自動ブロック修復に関する項を参照してください。


注意:

Exadataセルは、ディスクへの書込みによる破損を防ぐための最も包括的なソリューションでもあります。破損を早期に検出して破損データがディスクに書き込まれるのを防ぐことができます。Exadataセルの詳細は、3.16項を参照してください。

Oracle Database 11gより前では、RMANで検出されたブロックの破損はV$DATABASE_BLOCK_CORRUPTIONで記録されていました。Oracle Database 11gからは、RMANなどのデータベースのコンポーネントとユーティリティで破損ブロックを検出でき、このビューで記録できます。Oracle Databaseは、(たとえば、ブロック・メディア・リカバリまたはデータ・ファイル・リカバリを使用して)破損ブロックが検出または修復されると、このビューを自動的に更新します。ブロックの破損は、今ではより早く発見されるようになりました。

これらの機能は、データ破損をすぐに検出できるため、Oracle Databaseにとって重要な高可用性の利点となります。

データ破損の防止、検出および修復の詳細は、『Oracle Database高可用性ベスト・プラクティス』を参照してください。これらのビューおよび初期化パラメータの詳細は、『Oracle Databaseリファレンス』を参照してください。