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Oracle Enterprise Manager アドバンスト構成
10gリリース5(10.2.0.5.0)

B53907-01
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10 Enterprise Managerでのデプロイメント・プロシージャを使用したグリッドの自動化

デプロイメント・プロシージャは、グリッド関連の操作を自動化するためのOracleの最新機能です。この章では、システムの管理者およびインテグレータを対象に、デプロイメント・プロシージャの概念について説明します。また、デプロイメント・プロシージャの利点および機能を詳しく説明し、デプロイメント・プロシージャで解決できるユースケースの例を示します。

デプロイメント・プロシージャは、Oracle Enterprise Managerによって編成された一連のステップの列挙で構成される、即時利用可能なベスト・プラクティスです。Oracleには、プロビジョニングおよびパッチ適用に関連するタスクを実行するための、ベスト・プラクティスのデプロイメント・プロシージャのセットが同梱されています。デプロイメント・プロシージャは、顧客のニーズに応じて拡張およびカスタマイズできます。単一インスタンス・データベースにパッチを適用するデプロイメント・プロシージャは、Data GuardまたはRAC環境にパッチを適用するデプロイメント・プロシージャとは異なります。デプロイメント・プロシージャは顧客ごとに異なり、テスト・インストールと本番インストールでも異なる可能性があります。

ほとんどの環境は同じではなく、それぞれの環境が、様々な層および複数の依存状態が関係する複雑性を有しています。デプロイメント・プロシージャは、この事実を考慮して解決します。環境は、既存の操作プラクティスによってさらに複雑になります。たとえば、一般的なデータ・センターでは、デプロイメント・プロシージャには、(一般的に主要管理者が実行する)設計時アクティビティおよび(一般的にオペレータが実行する)実行時アクティビティが含まれます。

デプロイメント・プロシージャは、プロビジョニングおよびパッチ自動化パックでライセンスが付与されます。

10.1 デプロイメント・プロシージャの主な利点

デプロイメント・プロシージャの主な利点は、データ・センターを自動化するための非常に柔軟なフレームワークが提供されることにあります。多くの場合、Oracleのようなベンダーでは、パッチ適用やプロビジョニング用に特定のベスト・プラクティスが推奨されていますが、現実には、データ・センターごとに独自の方法があります。デプロイメント・プロシージャは、Oracleの即時利用可能ベスト・プラクティスと顧客独自の方法との相乗効果を得るためのフレームワークにすぎません。特殊なタスクの処理には、カスタム・スクリプトをデプロイメント・プロシージャに簡単にプラグインできます。デプロイメント・プロシージャの価値を高めるものには、次の特性があります。

  1. 拡張可能

    デプロイメント・プロシージャの目的は、即時利用可能なベスト・プラクティス方式をできるかぎり多くすることです。たとえば、顧客が一連のターゲットに対してデプロイメント・プロシージャをそのまま実行できることが理想です。Oracleに同梱されているベスト・プラクティス・デプロイメント・プロシージャは、変更できません。顧客は、Oracleに同梱されているデプロイメント・プロシージャのコピーを作成し、それを変更して、ステップおよびエラー処理モードの挿入や削除を行えます。

  2. 再利用可能

    デプロイメント・プロシージャは、再利用可能です。デプロイメント・プロシージャのステップは、ソフトウェア・ライブラリに格納されているディレクティブに基づいて作成できます。また、デプロイメント・プロシージャは、異なる環境間でエクスポートおよびインポートできます。そのため、テスト環境用に開発されたデプロイメント・プロシージャを、本番環境用に作成しなおす必要はありません。

  3. ホットプラグ可能

    即時利用可能なデプロイメント・プロシージャはメタデータ・ドリブンであるため、新しいプロシージャのセットをOracle Enterprise Manager環境に追加しても、付加的な停止が発生しません。

  4. 自動化可能

    すべてのデプロイメント・プロシージャのランタイムは、EMCLIおよび関連付けられている動詞(Oracleパッチ適用、OSパッチ適用など)を使用して自動化できます。これらの動詞の詳細は、次のURLで入手できる『Oracle Enterprise Managerコマンドライン・インタフェース』を参照してください。

    http://www.oracle.com/technology/documentation/oem.html

10.1.1 Oracle Enterprise Managerに同梱されているデプロイメント・プロシージャ

即時利用可能なデプロイメント・プロシージャは次のとおりです。

10.2 デプロイメント・プロシージャの要件

デプロイメント・プロシージャを実行する場合の要件を次に示します。

10.2.1 製品のサポートされているバージョン

デプロイメント・プロシージャを実行できる製品のバージョンを次に示します。

表10-1    製品のサポートされているバージョン 
デプロイメント・プロシージャ名  製品のサポートされているバージョン 

Oracleデータベースのプロビジョニング -
単一インスタンス 

Oracle Database 10.2、11.1 

Oracleデータベースのプロビジョニング -
RACインスタンス 

  • Oracle Database 10.2、11.1

  • Oracle Clusterware 10.2、11.1

  • Automatic Storage Management(ASM)10.2、11.1

 

Application Serverのプロビジョニング 

Oracle Application Server 10.1.3、10.1.3.1 SOA、10.1.2.0.2、10.1.3、10.1.2.0.2 

10.2.2 SUDO/PBRUNのサポートされているバージョン

SUDOのサポートされているバージョンは1.6.9.5 P5です。

PBRUNのサポートされているバージョンは4.0.8です。

10.2.3 管理エージェントの要件

Oracle Management Agent 10gリリース2(10.2.0.2.0)以上を使用できます。ただし、次のURLで入手できる最新の管理エージェントのリリースを使用することをお薦めします。

http://www.oracle.com/technology/software/products/oem/htdocs/
agentsoft.html

10.2.4 Oracleソフトウェア・ライブラリの要件

デプロイメント・プロシージャを使用するには、最初にソフトウェア・ライブラリを設定する必要があります。これにより、即時利用可能な状態でデプロイメント・プロシージャがインストールされます。ソフトウェア・ライブラリを設定しなかった場合は、後で設定し、インストール後に手動でファイルをデプロイする必要があります。

ソフトウェア・ライブラリの設定方法は、16.7項「Oracle Enterprise Managerでのソフトウェア・ライブラリの設定および構成」を参照してください。詳細は、10.9.1項「既知の問題」を参照してください。

10.2.5 パッチの要件

デプロイメント・プロシージャを使用する前に、My Oracle Supportノート427577.1に示すように、使用しているEnterprise Manager Grid Controlのリリースに必要なパッチを適用してください。

Enterprise Manager 10g Grid Controlリリース5(10.2.0.5)を使用していても、それがパッチ適用のオフライン・モード用として構成されていない場合、パッチを適用するターゲットに必要なプラットフォームおよびバージョンに応じたパッチ6880880をMy Oracle Supportから手動でダウンロードし、ソフトウェア・ライブラリにアップロードしてください。これはプラットフォーム固有のパッチであるため、このパッチのダウンロード時にはプラットフォームを慎重に選択する必要があります。

たとえば、Linux x86で実行されているOracle Database 11gリリース1(11.1)にパッチを適用する場合、Linux x86プラットフォームおよび11.1.0.0.0リリース用のパッチ6880880をダウンロードします。パッチをソフトウェア・ライブラリにアップロードするには、Grid Controlで、「デプロイ」タブをクリックし、「パッチ適用」セクションで「パッチの表示/アップロード」をクリックします。このパッチは必ず、リリースとプラットフォームの詳細が適切な製品ファミリ「システム管理製品: Universal Installer」の下でアップロードしてください。

10.3 デプロイメント・プロシージャのユースケース

次の各項では、デプロイメント・プロシージャのユースケース例を示します。

10.3.1 デプロイメント・プロシージャを使用したOracleデータベースへのセキュリティ関連クリティカル・パッチ更新の適用

即時利用可能なデプロイメント・プロシージャ「Oracleデータベースへのパッチ適用」を使用すると、クリティカル・パッチ更新(CPU)を複数の単一インスタンス・データベースに同時に適用できます。次の例では、パッチ5049080(クリティカル・パッチ)が10.2.0.1のデータベースに適用されます。


注意:

パッチ適用関連のデプロイメント・プロシージャを実行する前に、10.2.5項「パッチの要件」に記載されている前提条件を満たしてください。 


次のステップが含まれます。

  1. パッチのダウンロードおよびアップロードのステップ(オプション)

    このパッチは、Oracleソフトウェア・ライブラリまたはパッチ・キャッシュにアップロードできます。

  2. 実行時(デプロイメント時)のステップ

    実行時には、パッチ番号、ターゲットおよび資格証明の3つを指定する必要があります。また、プロシージャのスケジュールを即時実行または遅延実行に指定する必要があります。

    1. 即時利用可能なデプロイメント・プロシージャ「Oracleデータベースへのパッチ適用」を選択して実行します。

      このパッチは、My Oracle Supportまたはソフトウェア・ライブラリから選択することもできます。

    2. デフォルトSQL(CPU用のcatcpu.sql)が存在する場合は、このSQLがデプロイメント・プロシージャによってデフォルトで実行されますが、実行するカスタムSQLスクリプトを指定することもできます。

    3. 次に、ターゲットのリストからターゲットを選択します。このリスト内のターゲットは、パッチが適用される製品のバージョンに基づいて画面上で自動的に移入されます。

    4. 次は資格証明です。リポジトリにあるORACLE_HOME資格証明を使用することもできます。

    5. 最後に、プロシージャのスケジュールを指定し、発行します。「プロシージャ完了ステータス」リンクを使用してプロシージャを監視できるようになります。必要に応じて、失敗したステップからやりなおすことができます。

10.3.2 デプロイメント・プロシージャを使用したReal Application Clustersの単一クリック拡張

即時利用可能な「Real Application Clustersの拡張」デプロイメント・プロシージャを使用すると、既存のReal Application Clusterを1つ以上のノードに拡張できます。次の例では、既存のクラスタが1つの追加ノードに拡張されます。

次のステップを使用します。

  1. 実行時(デプロイメント時)のステップ

    1. 即時利用可能な「Real Application Clustersの拡張」プロシージャを実行します。

    2. 拡張する既存のクラスタを選択して、クラスタの拡張先となる新規ノードの詳細を記述します。

    3. 新しいノードの資格証明情報を記述して、拡張操作のスケジュールを指定します。完了したら「発行」ボタンをクリックして、デプロイメント・プロシージャを実行します。

    プロシージャの発行後は、「プロシージャ完了ステータス」リンクを使用してプロシージャを監視できます。

10.3.3 デプロイメント・プロシージャを使用したReal Application Clustersの削除または縮小

即時利用可能な「Oracle Real Application Clustersの削除/縮小」デプロイメント・プロシージャを使用すると、既存のReal Application Clusterの削除または縮小を行えます。

次のステップを使用します。

  1. 実行時(デプロイメント)のステップ

    1. 即時利用可能な「Oracle Real Application Clustersの削除/縮小」プロシージャを実行します。

    2. 使用可能なノードのリストから、クラスタから削除する1つ、複数またはすべてのノードを選択します。

    3. 新しいノードの資格証明情報を記述して、拡張操作のスケジュールを指定します。完了したら「発行」をクリックして、デプロイメント・プロシージャを実行します。

プロシージャの発行後は、「プロシージャ完了ステータス」機能を使用してプロシージャを監視できます。

10.3.4 ULN用の拡張Linuxパッチ

Enterprise Managerの拡張Linuxパッチ機能では、EMを介してUnbreakable Linux Network(ULN)サブスクライバをサポートしています。ULNを使用すると、カスタマはLinuxソフトウェアのパッチにアクセスしたり、Linuxソフトウェアの更新や問題解決を実行したりできます。Oracleでは、次の3つのレベルでUnbreakable Linuxをサポートしています。

10.3.4.1 ステージング・サーバーの設定

拡張Linuxパッチ機能を使用する前に、ステージング・サーバーを設定する必要があります(これは1度だけ行う作業です)。ステージング・サーバーを設定する場合は、次のようなプロセスを実行します。

これらのプロセスを実行できるデプロイメント・プロシージャは、次の4つのステップから構成されています。

  1. up2dateツールをステージング・サーバーにインストールします。

  2. ステージング・サーバーをULNに登録します。これは、手動によるステップです。

  3. 追加のULNチャネルにステージング・サーバーをサブスクライブします。

    これも手動によるステップであり、デプロイメント・プロシージャはこれら2つのステップをEMの外部で手動により実行するよう指示します。

  4. デプロイメント・プロシージャは、サブスクライブされたチャネルからステージング・サーバーに、最新のパッケージをダウンロードします。

    これは、24時間に一度実行されるステップです。このステップにより、ULNチャネルで利用可能な新しいパッケージがないかチェックされ、あればステージング・サーバーにダウンロードされます。最初の3つのステップは、1度だけ実行されます。最後のステップは、手動による2つのステップが完了した後でのみ実行されます。

10.3.4.1.1 手動によるステージング・サーバーの登録

ステージング・サーバーは、up2dateツールにより、ULNに登録できます。up2dateというプログラムを使用すると、マシンと最新のパッケージを同期させることができます。ULNとup2dateを使用するには、ステージング・サーバーをULNに登録し、ULNチャネルにサブスクライブする(複数のチャネルにサブスクライブすることもできます)必要があります。利用可能なULNチャネルはいくつか存在しており、ステージング・サーバーのアーキテクチャおよびOSのバージョンに応じて最新バージョンが含まれるULNチャネルが登録時に自動的に選択されます。

ステージング・サーバーをULNに登録する際は、rootユーザーとして次の操作を実行します。

  1. Enterprise Linux up2date RPMをhttp://linux.oracle.comからダウンロードします。コマンドラインで次のコマンドを入力し、up2date RPMをインストールします。

    #rpm -Uvh up2date-4.4.6936.i386.rpm

    up2dateのバージョンとアーキテクチャは、ステージング・サーバーの構成によって異なります。このコマンドは、rootユーザーとして実行します。

  2. 次のコマンドを実行して、OracleのGPGキーをインポートします。

    #rpm -- import /usr/share/rhn/RPM-GPG-KEY


    注意:

    ソフトウェア・ライブラリにはデフォルト時、Red Hat Enterprise Linux 4(i386ハードウェア・プラットフォーム)用の最新バージョンのup2dateが含まれています。ステージング・サーバーのリリース・バージョンまたはアーキテクチャ(使用するシステム上でuname -pを実行するとアーキテクチャがわかります)が異なる場合は、該当するバージョンの"up2date"および"up2date-gnome"パッケージをリンクhttp://linux.oracle.com/switch.htmlからダウンロードしてください。これら2つのパッケージは、Zipユーティリティを使用して
    "up2date_comp.zip"という名前のファイルに圧縮し、ソフトウェア・ライブラリの格納先(Components>Oracle Components>
    Stage Server Up2date Component>10.2.0.4.0>Linux>UP2DATE_RPM)に保存します。 


  3. 次のコマンドを実行して、サーバーを登録します。

    #up2date --nox -- register

    このコマンドを実行すると一連の質問画面が表示され、最終的にはULNがデフォルト・チャネルel4_<arch>_latestに登録されます。

10.3.4.1.2 追加のULNチャネルに対する手動サブスクライブ

ULNのWebインタフェースを使用すると、追加のULNチャネルにサブスクライブすることができます。そのWebインタフェースにはhttp://linux.oracle.comからアクセスします。ログオンするには、登録時に与えられたユーザー名とパスワードを指定します。このプロセスは、ステージング・サーバーを新しいULNチャネルにサブスクライブするたびに実行する必要があります。

現在のところ、ULNインタフェースでは、マシンのアーキテクチャに一致するチャネルにしかサブスクライブすることができません。

10.3.4.1.3 EMでのステージング・サーバーの構成

EMでステージング・サーバーの設定プロセスを開始するには、次のステップを実行します。

  1. 「パッチ適用設定」ページでステージング・サーバーの設定のリンクをクリックします。

    Enterprise Managerによって「Linuxステージング・サーバー設定」ページが表示されます。

  2. ステージング・サーバーを設定しUnbreakable Linux Network(ULN)に登録する必要があるホストを選択します。

  3. パッチに使用するステージング・サーバー・ホストの資格証明を指定します。

EMによってスケジューリングされる自動更新ジョブにより、サブスクライブしたULNチャネルから最新のパッケージがステージング・サーバーにダウンロードされます。このジョブは、"yum-arch"コマンドおよび"up2date"コマンドの実行により、パッケージのヘッダー情報の抽出も行います。

10.3.5 デプロイメント・プロシージャまたはクローニング・ウィザードを使用したOracleホームのプロビジョニング

デプロイメント・プロシージャまたはクローニング・ウィザードを使用してOracleホームをプロビジョニングできます。Oracleホームのタイプに応じて、1つの方法が他の方法より適切な場合があります。いつどのような方法を使用するかについては、My Oracle Supportノート737939.1を参照してください。

10.4 カスタマイズ可能なデプロイメント・プロシージャ

即時利用可能なデプロイメント・プロシージャは、(「類似作成」機能を使用して)類似したプロシージャを作成するための開始テンプレートとして使用できます。デプロイメント・プロシージャを編集して、ステップまたはフェーズの挿入、削除、有効化または無効化を行えます。また、デプロイメント・プロシージャでは、状況に応じて異なるエラー処理方法を使用できます。たとえば、ホストを同時にパッチするパッチ適用操作では、障害が発生するホストは単純にスキップするのが賢明です。一方、デバイス作成が失敗した場合は、残りのプロビジョニング操作が無効になる可能性があります。そのため、このようなステップでの障害では、プロシージャ全体を中断する必要があります。

10.4.1 フェーズとステップ

デプロイメント・プロシージャには、様々なフェーズとステップがあります。各フェーズには一連のステップまたはさらなるフェーズが含まれ、どのフェーズにもターゲット・リストが
1つ関連付けられます。フェーズは、内部のステップの実行を定義します。フェーズのタイプを次に示します。

ステップとは、作業単位を抽象化したものです。たとえば、データベースの起動がそれに当たります。ステップは、フェーズの一部であり、独立しています。ステップのタイプを次に示します。

「プロパティのマップ」を使用すると、ディレクティブまたはコンポーネントと関連付けられる様々なプロパティに値を設定することができます。Windowsプラットフォームの場合は、標準、SudoおよびPAM(Pluggable Authentication Modules)という3つの実行権限があります。権限は、「実行モード」セクションの「実行権限」リスト・ボックスから適切なものを選択できます。

10.4.2 カスタマイズ例

次の各項では、デプロイメント・プロシージャのカスタマイズ方法を示す3つの例について説明します。

10.4.2.1 パッチ適用の前にカスタム・ステップを挿入したデータベースのバックアップ

Oracle DatabaseのインストールがOracleの最新のクリティカル・パッチ更新(CPU)による影響を受けているという通知が、Grid Controlからデータ・センターに送られます。セキュリティ管理者は、その影響を調査して、CPUを最初にテスト・システムに適用する主要DBAに渡します。この処理の中で、セキュリティ管理者は、パッチを適用する前にデータベースのバックアップが必要と考えます。そこで、即時利用可能なOracleデータベースへのパッチ適用デプロイメント・プロシージャの「類似作成」機能を使用して、「パッチの適用」ステップの前に、ソフトウェア・ライブラリにアップロードしたバックアップ作成用スクリプトを関連付けたカスタム・ステップを挿入します。その結果、デプロイメント・プロシージャを実行する際には、パッチ適用のたびに、あらかじめデータベースのバックアップが実行されます。

10.4.2.2 手動ステップ

XYZ社では、データベースを停止する前に、ユーザーがそれぞれのアプリケーションからログオフしていることを確認しています。DBAは、データベースの停止操作に移る前に、キー・ユーザーが実際にログオフ済であることをチェックします。この処理は、「データベースの停止」ステップの前に手動ステップを導入することで実現できます。プロシージャは、手動ステップの完了時に一時停止します。DBAが続行を選択した場合のみ、プロシージャが前に進みます。

10.4.2.3 アプリケーション・サービスの停止および起動の処理

デプロイメント・プロシージャを使用すると、即時利用可能なプロシージャのスコープ外の操作を実行できます。その例としては、ERPアプリケーションの停止と起動、また、新たにプロビジョニングされたサービスのロード・バランサへの登録などがあげられます。これらの各ステップは、オペレーティング・システムの有効なユーザーのコンテキストで実行でき、pbrun(Powerbroker)などのPluggable Authentication Moduleを利用できます。また、sudoを使用してスーパーユーザー・モードでも実行できます。

10.4.2.4 デプロイメント・プロシージャの実行に対する通知の設定

Enterprise Manager Grid Controlには、デプロイメント・プロシージャの実行ステータスについて通知を送信できる機能があります。

デプロイメント・プロシージャから通知を受け取るには、設計時に次の手順を実行します。

  1. 即時利用可能プロシージャの「類似作成」を実行します。

  2. 「通知の有効化」チェック・ボックスを選択し、オプションとして通知タグ名を指定します。

  3. 通知を送信するステータスをリストから選択します。たとえば、「成功」、「失敗」または「アクション必須」を選択します。

  4. プロシージャを保存します。

  5. 「プリファレンス」の「通知ルール」ページで、標準PAFステータス通知ルールの「電子メールの送信」オプションを有効にします。

プロシージャを実行すると、通知対象として選択したステータスについて、電子メール・アドレスが設定されているユーザーが通知を受け取ります。

この例では、メール・サーバーが構成されており、電子メール・アドレスがOralce Enterprise Manager Grid Controlで事前に設定されていると仮定します。通知の構成方法は、13.1項「通知の設定」を参照してください。

上級ユーザーは、特定のデプロイメント・プロシージャについて必要な方法で通知を受信するように、標準PAFステータス通知ルールをカスタマイズすることができます。たとえば、テスト・システムのプロシージャでは電子メールによる通知、本番実行ではSMSアラートによるステータスの通知が必要であるとします。特定の要件を組み込んで、様々な通知方法を有効にするには、「類似作成」機能を使用する必要があります。即時利用可能な標準通知ルールを変更し、デプロイメント・プロシージャで使用される特定の通知タグ名を使用してジョブを編集し、事前定義済の通知方法の中から固有の通知方法を関連付けます。

10.4.3 デプロイメント・プロシージャのインポートまたはエクスポート

ソフトウェア・ライブラリから取得されたデプロイメント・プロシージャまたはコンポーネント、もしくはその両方、およびディレクティブは、基本的にプロシージャ・アーカイブ(PAR)・ファイルに格納されます。デプロイメント・プロシージャをインポートまたはエクスポートする場合、技術的にはPARファイルをインポートまたはエクスポートします。これらのPARファイルは、即時利用可能なPARDeployユーティリティを使用してインポートまたはエクスポートできます。

PARDeployユーティリティは$ORACLE_HOME/binディレクトリにあり、PARファイルは$ORACLE_HOME/sysman/prov/pafにあります。

$ORACLE_HOME/bin/PARDeployの実行時に表示される使用情報は、次のとおりです。

PARDeploy -action <deploy|view> -parFile <file> -force(optional)
PARDeploy -action <deploy|view> -parFile <file> -force(optional) -ssPasswd 
<password>
PARDeploy -action <deploy|view> -parDir <dir> -force(optional)
PARDeploy -action export -guid <procedure guid> -file <file> -displayName <name> 
-description <desc> -metadataOnly(optional)
PARDeploy -check
PARDeploy -help 

また、次のオプションが用意されています。

表10-2    PARDeployのオプション 
オプション  説明 

-force 

swlibエンティティを強制的に作成/再アップロードします。すでに存在する場合は新規リビジョンを作成します。 

-check 

ソフトウェア・ライブラリが構成されているかどうかを確認します。 

-file <file> 

PARファイル。 

-action <deploy|view|export> 

PARファイルのデプロイ、表示またはエクスポートを実行します。 

-verbose 

冗長モード。 

-help 

ヘルプ・メッセージを表示します。 

-displayName <displayName> 

PARファイル名。 

-parDir <dir> 

PARファイルがあるディレクトリ。 

-metadataOnly 

メタデータのみのエクスポートを示すフラグ。 

-guid <guid> 

エクスポートするプロシージャGUID。複数のプロシージャをエクスポートするには、「,」で区切ったGUIDを指定します。 

-parFile <file> 

PARファイルのパス。 

-description <description> 

PARファイルの説明。 

-ssPasswd <secretStorePassword> 

これはオプションです。

-action exportとともに使用する場合、エクスポートした任意のソフトウェア・ライブラリ・エンティティにシークレット・プロパティが含まれていると、シークレット・プロパティの値を格納するためにOracle Walletが作成されます。Oracle Walletは、指定されたパスワードを使用して作成されます。-ssPasswdスイッチが使用されており、コマンドライン引数としてパスワードが指定されていない場合、パスワードを入力するよう求められます。新規リポジトリにPARファイルをインポートする間は同じパスワードを使用する必要があります。

-action <deploy|view>とともに使用する場合、(エンティティのシークレット・プロパティ値を格納する)パスワードで保護されたOracle WalletがPARファイルに含まれていると、ストアを開くためにこのパラメータが必要になります。-ssPasswdスイッチが使用されており、コマンドライン引数としてパスワードが指定されていない場合、パスワードを入力するよう求められます。 


注意:

複数のOMSがある環境では、PARdeployユーティリティを1度だけ実行し、PARファイルのデプロイ、または他の関連操作を実行します。 


PARDeployを実行してPARファイルをインポートまたはエクスポートする前に、
$ORACLE_HOME環境変数がOMSのOracleホーム・ディレクトリに設定されており、ソフトウェア・ライブラリ・パスが構成されていることを確認してください。

10.4.3.1 ソフトウェア・ライブラリのチェック

ソフトウェア・ライブラリをチェックするには、次のコマンドを実行します。

$ORACLE_HOME/bin/PARDeploy -check

10.4.3.2 特定のPARファイルのデプロイ

特定のPARファイルをデプロイするには、次のコマンドを実行します。

$ORACLE_HOME/bin/PARDeploy -action deploy -parFile
$ORACLE_HOME/sysman/prov/paf/<par_file_name> -force

次に例を示します。

$ORACLE_HOME/bin/PARDeploy -action deploy -parFile
$ORACLE_HOME/sysman/prov/paf/asprov.par -force

10.4.3.3 すべてのPARファイルのデプロイ

ディレクトリ内のすべてのPARファイルをデプロイするには、次のコマンドを実行します。

$ORACLE_HOME/bin/PARDeploy -action deploy -parDir
$ORACLE_HOME/sysman/prov/paf/ -force

10.4.3.4 デプロイメント・プロシージャ(またはPARファイル)のエクスポート

デプロイメント・プロシージャをエクスポートするには、特定のデプロイメント・プロシージャを含むPARファイルを最初に作成する必要があります。各デプロイメント・プロシージャには一意のGUIDがあります。PARDeployツールを使用してデプロイメント・プロシージャをエクスポートする前に、デプロイメント・プロシージャのGUIDを取得してください。

デプロイメント・プロシージャのGUIDを取得する手順は次のとおりです。

  1. Grid Controlで、「デプロイ」タブをクリックします。

  2. 「デプロイ」ページで、「デプロイメント・プロシージャ・マネージャ」セクションの「デプロイメント・プロシージャ」をクリックします。

  3. 「デプロイメント・プロシージャ・マネージャ」ページの「プロシージャ」表で、エクスポートするデプロイメント・プロシージャをクリックします。

  4. 「プロシージャの表示」ページで、ブラウザのアドレス・バーからページのURLをメモします。

    URLの書式は次のようになります。

    http://<OMS host>:<port>/em/console/paf/
    procedureView?guid=<value of GUID>

このデプロイメント・プロシージャを含むPARファイルを作成するには、exportオプションをactionとして使用してPARDeployユーティリティを実行し、エクスポートするデプロイメント・プロシージャのGUIDを引用します。

$ORACLE_HOME/bin/PARDeploy -action export -guid <GUID>
-file exportedDP.par -displayName "User exported DP"
-description "<description>"

たとえば、エクスポートするデプロイメント・プロシージャのGUIDがFAC05DD31E3791C3E030579D23106C67の場合は、次のコマンドを実行します。

$ORACLE_HOME/bin/PARDeploy -action export -guid FAC05DD31E3791C3E030579D23106C67 -file exportedDP.par
-displayName "User exported DP" -description
"Deployment Procedure to be copied to other OMS"

このコマンドの実行後、コマンドを実行したディレクトリに、exportedDP.parという名前の新しいPARファイルが作成されます。このPARファイルは、別のOMSにインポートできます。

複数のデプロイメント・プロシージャまたはPARファイルをエクスポートするには、カンマで区切ったGUIDを指定します。


注意:

PARDeployを使用してプロシージャをエクスポートした場合は、そのプロシージャによって参照されるディレクティブまたはコンポーネントもエクスポートされます。ただし、エクスポートされるのは最新バージョンのディレクティブまたはコンポーネントのみです。コンポーネントまたはディレクティブがエクスポートされないようにするには、PARDeployの実行時に-metadataOnlyフラグを指定します。 


10.4.3.5 PARファイルのインポート

PARファイルをインポートしたりOMSにデプロイするには、PARDeployユーティリティを使用できます。また、2つ目のEnterprise Manager Grid Controlにログインし、「デプロイメント・プロシージャ・マネージャ」ページにナビゲートし、「アップロード」をクリックしてPARファイルをアップロードすることもできます。

10.4.3.6 シークレット値を持つコンポーネントまたはディレクティブのインポートまたはエクスポート

シークレット値を持つプロパティを含むコンポーネントまたはディレクティブをインポートまたはエクスポートする場合、-ssPasswdコマンドを使用し、シークレット・ストア・パスワードを指定してOracle Walletを作成する必要があります。これにより、これらのプロパティを安全に格納および取得できるようになります。-ssPasswdコマンドの詳細は、
表10-2「PARDeployのオプション」を参照してください。

10.5 SUDO、PowerBrokerおよび権限委譲を使用したデプロイメント・プロシージャの実行

Enterprise Manager Grid Controlでは、SUDO、PowerBrokerおよび権限委譲などの認証ユーティリティを使用してデプロイメント・プロシージャを実行できます。

SUDOおよびPowerBrokerはEnterprise Manager Grid Controlでサポートされているサード・パーティ・ユーティリティである一方、権限委譲はOracle独自の手段です。権限委譲は、SUDOまたはPowerBrokerを使用し、別のユーザーの権限を利用してアクティビティを実行できるフレームワークです。権限委譲では、SUDOとPowerBrokerのどちらかを使用できますが、両方を使用することはできません。また、その設定は単一ホストのみを対象としています。このため、pbrunを使用してホストが設定されている場合、pbrunのみが使用されます。

SUDOおよびPowerBrokerはEnterprise Manager 10g Grid Controlリリース4(10.2.0.4)以下でサポートされていますが、権限委譲はEnterprise Manager 10g Grid Controlリリース5(10.2.0.5)以上でのみサポートされています。

権限委譲の詳細は、「その他の構成タスク」の章の「権限委譲プロバイダの構成」の項を参照してください。また、Enterprise Manager Grid Controlに用意されているオンライン・ヘルプ・システムでも、権限委譲に関する情報を参照できます。

10.5.1 SUDOおよびPowerBrokerと権限委譲

これらの任意のユーティリティを使用して、Enterprise Manager Grid Controlでデプロイメント・プロシージャを実行できます。ただし、SUDOおよびPowerBrokerの使用には次のような制限があります。

SUDOとPowerBrokerが統合されたフレームワークである権限委譲は、これらと同じ機能を提供し、次のような利点を持ちます。

10.5.2 権限委譲テンプレートの作成

SUDOおよびPowerBrokerでは前提条件を作成する必要はありませんが、権限委譲では必要です。このため、デプロイメント・プロシージャを編集する前に、ホストに必要な設定を使用して権限委譲テンプレートを作成してください。これを行うには、次の手順を実行します。

  1. Grid Controlで、右上隅にある「設定」をクリックします。

  2. 「設定の概要」ページで、垂直メニューから「権限委任設定の管理」をクリックします。

  3. 「権限委任設定の管理」ページで、「関連リンク」セクションから「権限委任設定テンプレートの管理」をクリックします。

  4. 「権限委任設定テンプレートの管理」ページで、「作成」リストから権限委譲タイプとして「sudo」または「PowerBroker」を選択し、「実行」をクリックします。

  5. 「''<delegation type>''設定テンプレートの作成」ページで、テンプレート名および実行コマンドを指定し(PowerBrokerの場合は必要に応じてパスワード・プロンプトを指定できます)、「保存」をクリックします。

  6. 「権限委任設定テンプレートの管理」ページで、作成したテンプレートを選択し、「適用」をクリックします。

  7. 「''<delegation type>''設定の適用 :新規」ページで、「ターゲットの追加」をクリックし、選択したホストに権限委譲テンプレート設定を適用し、「適用」をクリックします。


    注意:

    ターゲットに権限委譲テンプレート設定を適用せずに、権限委譲モードで実行するデプロイメント・プロシージャのステップを構成する場合、このターゲットのデプロイメント・プロシージャによってステップが通常モードで実行されます。 


10.5.3 デプロイメント・プロシージャでのSUDO、PowerBrokerおよび権限委譲の使用

デプロイメント・プロシージャの編集時には、SUDO、PowerBrokerまたは権限委譲を使用して任意のステップを実行できます。

SUDOおよびPowerBrokerの場合、実行するSUDOおよびPowerBrokerコマンドを指定するとともに、これらの環境変数および優先コマンド・インタプリタも設定できます(図10-1)。

図10-1    SUDOおよびPowerBroker設定の指定


権限委譲の場合、ステップを実行するユーザーおよびプロファイルを指定できます(図10-2)。

図10-2    権限委譲設定の指定


ステップごとに、「実行権限」列から「sudo」「PAM」または「権限委任」を選択できます(図10-3)。

図10-3    SUDO、PowerBrokerおよび権限委譲設定の適用


「sudo」または「PAM」を選択する場合、「実行権限コマンド/権限委任」列で、「別名実行」コマンドを指定します。「権限委任」を選択する場合、最初のテキスト・ボックスで「別名実行」値を指定し、2つ目のテキスト・ボックスで「プロファイル」値を指定します。


注意:

「sudo」または「PAM」を選択する場合、「権限コマンドの実行」列を空白のままにすると、「sudoコマンド」および「PAMコマンド」フィールドに指定したコマンド(図10-1)が使用されます。ただし、グローバルに宣言されたこれらのコマンドが一部のステップによって上書きされるようにするには、そのステップの「権限コマンドの実行」列で、かわりに使用する必要があるコマンドを指定します。これらの設定が行われない場合、優先資格証明とともに指定した「別名実行」および「プロファイル」値が使用されます。 



関連項目

My Oracle Supportノート603108.1にアクセスすると、SUDOおよびPAM設定の適用方法を説明するユースケースを参照できます。 


ファイル転送ベースのジョブ・ステップの場合、このステップの編集時に権限委譲設定を適用できます。たとえば、「ワンクリックでクラスタ・データベース拡張」デプロイメント・プロシージャのステップの1つは、「アーカイブのコピー」です。これは、権限委譲設定を適用できるファイル転送ベースのジョブ・ステップです。これを行うには、ステップ名をクリックし、「パラメータのマップ」ページの「実行モード」セクションで、「ソース・ターゲットの権限実行」リストおよび「宛先ターゲットの権限実行」リストから「権限委任」を選択します。次に、使用する必要がある「別名実行」値およびプロファイルを指定します。

図10-4    ファイル転送ジョブ・ステップの権限委譲設定の適用



注意:

構成収集ベースのジョブ・ステップの場合、権限委譲設定は適用できません。たとえば、「ワンクリックでクラスタ・データベース拡張」デプロイメント・プロシージャのステップの1つは、「ホスト構成のリフレッシュ」です。これは、権限委譲設定を適用できない構成収集ベースのステップです。 


10.6 デプロイメント・プロシージャの変数

Oracle Enterprise Managerでは、デプロイメント・プロシージャで使用できる変数が公開されています。Oracleの顧客は、これらの変数を使用して、起動および停止などの特定のタスクを独自のディレクティブを使用してカスタマイズできます。

データベース固有の変数:

oraHome: ORACLE_HOMEのディレクトリ

instances: ORACLE_HOMEから選択済のデータベース・ターゲット

all_instances_home: ORACLE_HOMEから実行されるすべてのデータベース・ターゲット

dbSIDs: ORACLE_HOMEのすべてのSID

dbListeners: ORACLE_HOMEのすべてのリスナー

runRootScript: rootスクリプトの実行が必要かどうかを示すyes/no

自動ストレージ管理固有の変数:

asmTargetHome - 選択済のASMターゲットORACLE_HOME

asmIntanceName - ORACLE_HOMEで実行しているASMインスタンス

asminstances - ORACLE_HOMEで実行しているASMインスタンス(複数)

Real Application Clusters固有の変数:

racLocalInstanceNames - ORACLE_HOME外で実行しているすべてのローカルRACデータベース・インスタンス

racLocalInstanceTgtNames - ORACLE_HOME外で実行しているすべてのローカルRACデータベース・ターゲット名

racLocalInstanceHomes - RACデータベース・インスタンスをローカルで実行しているすべてのORACLE_HOME

racLocalInstanceSids - ORACLE_HOMEで実行しているローカルRACインスタンスのSID

クラスタウェア固有の変数:

nodeName - パッチ適用中のRACインスタンスが実行しているCRSノードの名前

crsName - クラスタ名

アプリケーション・サーバー固有の変数:

oracleSid - AS ORACLE_HOMEに存在できるSIDの値

グローバル変数:

isPatchset: パッチ・セットがORACLE_HOMEに適用されるかどうかを指定するYes/No。

stageDir: 使用するステージング・ディレクトリ。%oracle_home%....のように指定されます。

replacedStageDir: パッチの絶対ステージング位置。

patchIDs: 選択済パッチIDのリスト。

patchSrcs: パッチがMy Oracle Supportおよびソフトウェア・ライブラリのどちらから取得されたかを示します。

patchData: パッチのUniform resource Name(URN)。

patchReleases: 対応するパッチのリリース。

targetVersion: パッチ適用中のターゲットのバージョン。

10.7 デプロイメント・プロシージャを実行するためのEMCLIの概念および要件

次の項では、EMCLIを使用してデプロイメント・プロシージャを実行するためのEMCLIの基本的な概念と要件について説明します。

10.7.1 EMCLIの概念

EMCLIを使用してデプロイメント・プロシージャを実行する前に、次に説明するEMCLIの概念をよく理解してください。

10.7.2 EMCLIの要件

EMCLIを使用してデプロイメント・プロシージャを実行する前に、次の要件が満たされていることを確認する必要があります。

10.8 EMCLIを使用したデプロイメント・プロシージャの実行

Oracleでは、最も一般的なユースケースで使用されるデプロイメント・プロシージャのランタイム・データを作成するための、即時利用可能なテンプレートを提供しています。これらのテンプレートは、ランタイム・データ・テンプレートと呼ばれます。OMS Oracleホームのemcli/samplesディレクトリ下でこれらのテンプレートにアクセスして、テンプレートの構成プロパティを変更できます。

EMCLIを使用したデプロイメント・プロシージャの実行手順を、図10-5に示します。

図10-5    デプロイメント・プロシージャを実行するためのEMCLIの手順


画像の説明

デプロイメント・プロシージャを実行するには4つのアクションが必要です。次に手順を説明します。

  1. 手順1: EMCLIを使用して実行するプロシージャのGUIDを検索します。これは1度だけ行います。

  2. 手順2: 実行する必要があるプロシージャのRuntimeData xmlまたはRuntimeDataテンプレートを取得します。これも1度だけ行います。

  3. 手順3: RuntimeData xmlまたはRuntimeDataテンプレートのプロパティ・ファイルを作成します。この手順はプロシージャを実行するたびに必要です。

  4. 手順4: 次に、即時利用可能なスクリプトの入力として、RuntimeData xmlまたはRuntimeDataテンプレート、実行のためのプロパティ・ファイル、およびプロシージャのGUIDを発行します。このスクリプトによって、新しいランタイム・データ・レスポンス・ファイルが作成されます。このレスポンス・ファイルを使用して、EMCLIでプロシージャを実行します。

これらの各手順についてはこの後の項で詳しく説明します。

10.8.1 手順1: プロシージャのGUIDの検索

EMCLIでは大文字と小文字が区別されるため、正しいEMCLI動詞を使用し、正しい入力を渡すようにしてください。即時利用可能プロシージャとカスタマイズ・プロシージャのGUIDは、次のEMCLI動詞を使用して検索できます。

get_procedures

使用方法:
emcli get_procedures -type="procedure type"

説明:
デプロイメント・プロシージャのリストを取得します。

オプション:

-type="procedure type"
タイプがprocedure typeのすべてのデプロイメント・プロシージャを表示します。

出力列:
GUID、プロシージャ・タイプ、名前、バージョン、作成者

RACプロシージャのタイプ: RACPROV
ASプロシージャのタイプ: AS Provisioning
スタンドアロン・データベース、RACローリング、CRSパッチ適用プロシージャのタイプ: PatchOracleSoftware

また、プロシージャに関連付けられているタイプは、get_procedure_type EMCLIコマンドを使用して検索することもできます。

get_procedure_types

使用方法:
emcli get_procedure_types

説明:
すべてのデプロイメント・プロシージャ・タイプのリストを取得します。

出力列:
プロシージャ・タイプ


注意:

即時利用可能プロシージャのGUIDとプロシージャ・タイプは、
付録A「即時利用可能RuntimeDataテンプレート」を参照してください。 


10.8.2 手順2: RuntimeDataテンプレートとRuntimeData XMLの取得

即時利用可能なプロシージャの場合、RuntimeDataテンプレートはOracle Management Service(OMS)のOracleホームのemcli/samplesディレクトリにあります。即時利用可能プロシージャおよび対応する即時利用可能テンプレートの詳細は、付録A「即時利用可能RuntimeDataテンプレート」を参照してください。

カスタマイズ・プロシージャの場合は、同じプロシージャの前回の実行で生成されたRuntimeData xmlをダウンロードする必要があります。RuntimeData xmlを取得するには、プロシージャの前回の実行に関連付けられたインスタンスGUIDをまず検索してください。そのGUIDを使用して、生成されたRuntimeData xmlをダウンロードします。次のEMCLI動詞を使用してRuntimeData xmlをダウンロードできます。

emcli get_instances -type="procedure type"

使用方法:
emcli get_instances -type="procedure type"

説明:
プロシージャ・インスタンスのリストを表示します。カスタマイズ・プロシージャの前の実行に関連付けられたインスタンスGUIDを取得するEMCLI動詞です。

オプション:
-type="procedure type"
指定したタイプのすべてのプロシージャ・インスタンスを表示します。

出力列:
インスタンスGUID、プロシージャ・タイプ、インスタンス名、ステータス

プロシージャに関連付けられているタイプを探すには、get_procedures_type動詞を使用します。

emcli get_instance_data_xml -instance="instance_guid"

使用方法:
emcli get_instance_data_xml -instance="instance_guid"

説明:
インスタンス・データXMLをダウンロードします。インスタンスGUIDを使用してRuntimeData xmlをダウンロードするEMCLI動詞です。

オプション:
-instanceを使用してインスタンスGUIDを指定します。

:
emcli get_instance_data_xml -instance="16B15CB29C3F9E6CE040578C96093F61"

出力:
インスタンス・データXML

10.8.3 手順3: プロパティ・ファイルの作成

次の項では、即時利用可能プロシージャとカスタマイズ・プロシージャのためのプロパティ・ファイル、およびプロシージャ実行を拡張するためのプロパティ・ファイルについて説明します。

10.8.3.1 即時利用可能プロシージャのプロパティ・ファイル

即時利用可能なRuntimeDataテンプレートを使用している場合、ユーザーはRuntimeDataテンプレート・ファイル内で、プロシージャの特定の実行に対する構成プロパティの値で置換する必要がある変数を識別します。RuntimeDataテンプレートに含まれるすべての変数のうち、プロシージャを実行するための必須変数はごく一部です。変数を識別したら、プロパティ・ファイルを作成できます。プロパティ・ファイルには変数と値を指定する名前/値ペアが含まれ、これらによって値が置換されてRuntimeData xmlファイルが生成されます。

即時利用可能プロシージャのサンプル・プロパティ・ファイルは、付録B「即時利用可能RuntimeDataテンプレートのサンプル・プロパティ・ファイル」を参照してください。対応するRuntimeDataテンプレートは、このドキュメントが含まれていたzipファイルにあります。

付録Bの各サンプル・プロパティ・ファイルには必須変数のセクションが含まれています。このセクションはプロパティ・ファイルに必要であり、実行時に対応する値で置換されます。オプションとして、テンプレートに含まれる他の変数にも値を指定できます。

10.8.3.2 カスタマイズ・プロシージャのプロパティ・ファイル

カスタマイズ・プロシージャの場合は、構成プロパティのプレースホルダ変数ではなく実際の値がRuntimeData xmlに含まれます。前の実行のRuntimeData xmlに含まれる古いランタイム値を、新規実行に対応する新しいランタイム値で置き換える必要があります。

このため、次の書式のプロパティ・ファイルを使用できます。

<old_value>=<new_value>

たとえば、Oracleデータベースへのパッチ適用に使用されるRuntimeData xmlの次の部分について考えてみます。

...

<scalar value="dbtarget1" classname="java.lang.String" name="targetsToPatch"/>

<scalar value=" HostPrefNormal" classname="java.lang.String" name="hostCredentialSet"/>

<list classname="java.util.Vector" name="patchIDs">

<scalar value="=%oracle_home%/EMStagedPatches " classname="java.lang.String" name="stageDir"/>

<scalar value="false" classname="java.lang.String"
name="isPatchset"/>

<scalar value="true" classname="java.lang.String"
name="isNotPatchset"/>

<scalar value="defaultSqlScript" classname="java.lang.String" name="sqlScript"/>
...

二重引用符の部分は、パッチ適用プロシージャの前回の実行で使用された実際の構成プロパティ値です。

別のデータベースにパッチを適用するには、少なくとも必須パラメータに対してoldvalue=newvalueタイプのエントリを含むプロパティ・ファイルを作成する必要があります(パッチ適用の場合、必須パラメータはtargetsToPatchです)。このため、新しいプロパティ・ファイルは次のようになります。

dbtarget1=dbtarget2

この方法では、古い文字列が新しい文字列に単純に置き換えられるため、古い文字列がデプロイメント・プロシージャ・ランタイムXMLの複数の文字列のサブストリングである場合に、問題が発生します。このような場合は、誤ったランタイムxmlが作成されます。この問題を回避するために、プロパティ・ファイルを適切な書式で作成することをお薦めします。基本方針は、汎用値の前に固有値を配置することです。具体例として、old-value=new-valueというペアの書式で記述されたプロパティ・ファイルの一部を下に示します。

node1.test.com=node2example.com

node1=node2

node1,node2=node3,node4

また、プロパティ・ファイルにパスワードを指定する場合は、パスワードを記述する前に、必ず次の行をプロパティ・ファイルに含めてください。

oracle.sysman.pp.paf.impl.EncryptedString =oracle.sysman.pp.paf.impl.UnencryptedString

この後で、次の例のようにパスワードを記述することができます。

  1. パスワード値でテンプレート・ファイルのプレースホルダ変数を置き換える場合

    oracle.sysman.pp.paf.impl.EncryptedString=oracle.sysman.pp.paf.impl.

    UnencryptedStringcrsasmrac_provisioning_USER_PASSWORD=mypassword

  2. 新しいパスワード値でRuntimeData xmlの古いパスワード値を置き換える場合

    oracle.sysman.pp.paf.impl.EncryptedString=oracle.sysman.pp.paf.impl.

    UnencryptedStringmyOLDpass=myNEWpassword

これらの例で使用したmypasswordとmyNewpasswordは、クリアテキスト・パスワードであることに注意してください。


注意:

Opatchのアップグレードをサポートするために、
var_runOpatchUpgradeおよびvar_isUpgradeStepEnabledという2つの要素が追加されています。最初の要素は、opatchのアップグレード・ステップを実行する場合、"true"に設定する必要があります。
var_isUpgradeStepEnabledは、opatchをアップグレードする場合は"true"に、そうでない場合は"false"に設定します。 


10.8.3.3 プロシージャ実行拡張のプロパティ・ファイル

プロパティ・ファイルを使用すると、ユースケースを拡張するために同じRuntimeData xmlを使用することができます。たとえば、あるターゲットに対するプロシージャ実行(クラスタの部分的な拡大または縮小、あるいはパッチ適用)が成功したため、同じプロシージャ実行を一連の新規ターゲットに拡張するとします。

これは、プロパティ・ファイルを使用し、ファイル内のパラメータ値を置き換えることで実行できます(様々なプロシージャの詳細は、付録B「即時利用可能RuntimeDataテンプレートのサンプル・プロパティ・ファイル」の必須パラメータに関する項を参照してください)。次に例を示します。

node1 = node2,node 3

このとき、node1は、前にプロシージャを実行したときのターゲットです。node2node3は、プロシージャ実行を拡張する対象のターゲットです。

このルールの例外は、パッチ適用プロシージャを異なるターゲット・セットに拡張する場合です。<old-value>=<new-value>の方法ではなく、次の必須パラメータを含むプロパティ・ファイルが必要になります。

PA_VAR_targetsToPatch=Tgt2, Tgt3, Tgt4

このとき、Tgt2Tgt3およびTgt4は、プロシージャ実行を拡張する対象の新しいターゲットです。

プロパティ・ファイルを作成するためのデータ取得に使用できる問合せのリストは、10.8.8項「パッチ適用ランタイムのデータを取得する問合せ」を参照してください。

10.8.3.4 複数のパッチを一度に適用するためのプロパティ・ファイル

10.2.0.4では、複数のパッチをサポートするために、新しい要素がRuntimeData xmlに追加されています。それらの新しい要素は、次のものです。

10.8.4 手順4: プロシージャの実行


注意:

Enterprise Manager 10g Grid Controlリリース3(10.2.0.3)を使用している場合、まず、My Oracle Supportパッチ5890474をダウンロードしてOMS 10.2.0.3に適用する必要があります。EMCLIプロシージャ実行スクリプト、即時利用可能テンプレートおよびプロパティ・ファイルが更新されます。これにより、OMS Oracleホームのemcli/samplesディレクトリとemcli/scriptsディレクトリが更新されます。OMSにパッチを適用したら、EMCLIクライアントを設定したマシンに、プロシージャ実行スクリプト、即時利用可能テンプレートおよびプロパティ・ファイルをダウンロードします。  


パッチ適用とプロビジョニングのための即時利用可能テンプレートとプロパティ・ファイルは、OMSHOME/emcli/samples/内の該当するディレクトリにあります。

RuntimeDataテンプレートまたはRuntimeData xmlとプロパティ・ファイルの準備ができたら、次のスクリプトを使用してプロシージャを実行できます。

使用方法:

perl executeDP.pl
-t <template>
-p <properties file name>
-g <DP GUID>
[-s <schedule>(yyyy/MM/dd HH:mmの書式)]
[-z <time zone ID>]
[-d <emcli directory path>(emcli実行可能ファイルが現行ディレクトリにない場合は必須)S]

テンプレート -- 即時利用可能プロシージャのRuntimeDataテンプレートの名前、またはカスタマイズ・プロシージャの実行後にダウンロードされるRuntimeData xmlファイルの場所。

プロパティ・ファイル名 -- プロシージャを実行するために作成されるプロパティ・ファイルの場所。

DP GUID -- 実行する必要があるプロシージャのGUID。

emcliディレクトリ -- EMCLI実行可能ファイルを含むディレクトリ。現行の作業ディレクトリにEMCLI実行可能ファイルが含まれる場合、このパラメータはオプションです。

スケジュール -- デプロイメント・プロシージャの実行をスケジュールする時刻。指定しないと、デプロイメント・プロシージャの即時実行がデフォルトで指定されます。HH:MMは24時間表記です。22:30のように指定します。

タイムゾーンID -- デプロイメント・プロシージャの実行をスケジュールするタイムゾーン。指定しないと、OMSのタイムゾーンがデフォルトで指定されます。

次のサンプル・コード文字列では、即時利用可能プロシージャを使用してUNIXでのRACプロビジョニング・プロシージャが実行されます。

perl executeDP.pl -t crsasmrac_gold_prov_template.xml -p
Properties.txt -g 31ABCFF2199BB77990B057AC4A442DAC -t 2007/02/03 10:00 -z Americas/New_York -d /oracle/prod/orahome/

このスクリプトのパラメータについて次に説明します。

crsasmrac_gold_prov_template.xmlは、即時利用可能テンプレートの名前です。

Properties.txtは、プロパティ・ファイルです。

31ABCFF2199BB77990B057AC4A442DACは、UNIX用RACプロビジョニング・プロシージャのGUIDです。

2007/02/03 10:00は、デプロイメント・プロシージャの実行をスケジュールする日時です。

Americas/New_Yorkは、時刻のスケジュールを設定するタイムゾーンIDです。

/oracle/prod/orahome/は、EMCLI実行可能ファイルのディレクトリの場所です。

プロパティ・ファイルと即時利用可能テンプレートは、実行されるスクリプトと同じディレクトリに配置されます。

10.8.4.1 即時利用可能プロシージャを使用したUNIX用単一インスタンス・データベースへのパッチ適用

次のサンプル・コード文字列では、即時利用可能なプロシージャを使用してUNIXでのSIDBパッチ適用が実行されます。

perl executeDP.pl patch_standalone_DB.xml Properties.txt 2EECED3592A0175FE040578CE808291F

このスクリプトのパラメータについて次に説明します。

patch_standalone_DB.xmlは、即時利用可能テンプレートの名前です。

Properties.txtは、プロパティ・ファイルです。

2EECED3592A0175FE040578CE808291Fは、UNIX用の単一インスタンス・データベースのパッチ適用プロシージャのGUIDです。

テンプレート、プロパティ・ファイルおよびEMCLI実行可能ファイルは、実行されるスクリプトと同じディレクトリに配置されます。また、デプロイメント・プロシージャは、OMSのタイムゾーンで即時実行されるようにスケジュールされます。

10.8.5 EMCLIベースのプロビジョニングおよびパッチ適用のユースケース


注意:

次の項では、EMCLIベースのプロビジョニング・プロシージャとパッチ適用プロシージャの様々なユースケースについて説明します。まず、My Oracle Supportパッチ5890474をダウンロードしてOMS 10.2.0.3に適用する必要があります。EMCLIプロシージャ実行スクリプト、即時利用可能テンプレートおよびプロパティ・ファイルが更新されます。これにより、OMS Oracleホームのemcli/samplesディレクトリとemcli/scriptsディレクトリが更新されます。OMSにパッチを適用したら、EMCLIクライアントを設定したマシンに、プロシージャ実行スクリプト、即時利用可能テンプレートおよびプロパティ・ファイルをダウンロードします。  


パッチ適用とプロビジョニングのための即時利用可能テンプレートとプロパティ・ファイルは、OMS HOME/emcli/samples/内の該当するディレクトリにあります。

Real Application Clusters(RAC)関連のプロシージャを使用する前には、ノードの管理エージェントがクラスタ・エージェントであることを確認してください。スタンドアロン・エージェントからクラスタ・エージェントへの変換の詳細は、10.8.7項「スタンドアロン・エージェントからクラスタ・エージェントへの変換」を参照してください。

10.8.5.1 CRS/ASM/RACプロビジョニング・プロシージャのユースケース

ユースケース1: ユーザーが、EMCLIを使用し、ソフトウェア・ライブラリのゴールド・イメージを使用して2ノードRACをプロビジョニングします。この操作の実行には、即時利用可能テンプレートとプロパティ・ファイルを使用します。

ユースケース2: ユーザーは、EMCLIを使用し、別の4ノードRACをプロビジョニングします。ユースケース1と同じ即時利用可能テンプレートとプロパティ・ファイルを使用してこの操作を実行します。

ユースケース3: ユーザーは、EMCLIを使用し、参照インストールを使用して2ノードRACをプロビジョニングします。この操作の実行には、即時利用可能テンプレートとプロパティ・ファイルを使用します。

ユースケース4: ユーザーは、参照ホストを使用する即時利用可能RACプロビジョニング・プロシージャをカスタマイズしてテストします。EMCLIを使用して2ノードRACをプロビジョニングしようとしています。カスタマイズ・プロシージャを試行した際のランタイム・データxmlとプロパティ・ファイルを使用して、同様の2ノードRACに対してこの操作を実行します。

ユースケース5: ユーザーは、即時利用可能RACプロビジョニング・プロシージャをカスタマイズしてテストします。EMCLIを使用してNノードRACをプロビジョニングしようとしています。カスタマイズ・プロシージャを試行した際のランタイム・データxmlとプロパティ・ファイルを使用して、MノードRAC(M>N)に対してこの操作を実行します。

10.8.5.2 クラスタ拡張プロシージャのユースケース

ユースケース1: ユーザーは、EMCLIを使用し、2ノードRACを4ノード・クラスタに拡張します。この操作の実行には、即時利用可能テンプレートとプロパティ・ファイルを使用します。

10.8.5.3 RAC削除/縮小プロシージャのユースケース

ユースケース1: ユーザーは、EMCLIを使用し、2ノードRACクラスタを削除します。この操作の実行には、即時利用可能テンプレートとプロパティ・ファイルを使用します。

ユースケース2: ユーザーは、EMCLIを使用し、2ノードRACクラスタを縮小します。この操作の実行には、即時利用可能テンプレートとプロパティ・ファイルを使用します。

10.8.5.4 パッチ適用のユースケース

ユースケース1: ユーザーは、即時利用可能なデータベースのパッチ適用プロシージャを使用して、データベースに個別パッチを適用します。この操作の実行には、即時利用可能テンプレートとプロパティ・ファイルを使用します。

ユースケース2: ユーザーは、データベースのパッチ適用プロシージャを使用して、複数のデータベースに複数の個別パッチを適用します。この操作を実行するために、前のユースケース1で作成した即時利用可能テンプレートとプロパティ・ファイルを使用します。

ユースケース3: ユーザーは、データベースのパッチ適用プロシージャを使用して、一連のデータベースにパッチ・セットを適用します。この操作を実行するために、前のユースケース1で作成した即時利用可能テンプレートとプロパティ・ファイルを使用します。

ユースケース4: ユーザーは、即時利用可能なOracleクラスタウェアのパッチ適用プロシージャをカスタマイズしてテストします。EMCLIを使用して2ノード・クラスタにパッチを適用しようとしています。カスタマイズ・プロシージャを試行した際のランタイム・データxmlとプロパティ・ファイルを使用して、同様の2ノード・クラスタに対してこの操作を実行します。

ユースケース5: ユーザーは、即時利用可能なOracleクラスタウェアのパッチ適用プロシージャをカスタマイズしてテストします。EMCLIを使用して2ノード・クラスタにパッチを適用しようとしています。カスタマイズしたプロシージャを試行した際のランタイム・データxmlとプロパティ・ファイルを使用して、同様のNノード・クラスタでこの操作を実行します。

10.8.5.5 制限事項

EMCLIでパッチ適用デプロイメント・プロシージャを使用する際には、制限事項に注意してください。

アプリケーション・サーバーのパッチ適用や、Real Application Clustersの全ノードおよび前提条件チェッカ(データベース、Real Application Clusters(RAC)、自動ストレージ管理(ASM)、クラスタウェア対応)などのパッチ適用デプロイメント・プロシージャに対しては、即時利用可能テンプレートはありません。これらのプロシージャをEMCLIで使用するには、次のようにします。

10.8.6 ターゲットの優先資格証明の設定

EMCLI実行では、プロシージャを実行しているOMSユーザーのEnterprise Managerにあるターゲットの資格証明が参照されます。パッチ適用では、ターゲットに対して事前に設定された資格証明が参照されます。または、プロビジョニング・プロシージャでは、参照として使用されるターゲットに対して事前に設定された資格証明が参照されます。

パッチ適用またはプロビジョニング操作をEnterprise Managerユーザー・インタフェースで実行するときは、プロシージャ実行の「資格証明」セクションに資格証明を格納できます。格納しない場合は、資格証明をEnterprise Manager OMSで明示的に設定したり、EMCLIコマンドを使用して設定することもできます。

10.8.6.1 Oracle Enterprise Managerユーザー・インタフェースでの資格証明の設定

次の手順を実行すると、ターゲットの資格証明をOracle Enterprise Managerユーザー・インタフェースを使用して設定できます。

  1. Oracle Enterprise Mangerにログインします。

  2. ページの右上の「プリファレンス」リンクにアクセスします。

  3. そのページのオプション・セクションの「優先資格証明」リンクをクリックします。

  4. このページでターゲット・タイプに対して「標準」または「優先資格証明」を設定します。(例: 「データベース・インスタンス」、「クラスタ・データベース」または「クラスタ」)。

10.8.6.2 EMCLIでの資格証明の設定

次のコード・シーケンスを使用して、EMCLIコマンドライン・インタフェースでターゲットの資格証明を設定できます。

set_credential
-target_type="ttype"
[-target_name="tname"]
-credential_set="cred_set"
[-user="user"]
-columns="col1:newval1;col2:newval2;..."
[-input_file="tag1:file_path1;tag2:file_path2;..."]
[-oracle_homes="home1;home2"]

EMCLIコードで使用されるオプションを次に説明します。

列および列が所属する資格証明セットのリストは、各ターゲット・タイプのメタデータ・ファイルに含まれます。これらの資格証明およびその他の資格証明の情報は、メタデータの<CredentialInfo>セクションにあります。

次にシーケンスの例を示します。

emcli set_credential
-target_type=host
-target_name=host.us.oracle.com
-credential_set=OHCreds
-user=admin1
-column="OHUsername:joe;OHPassword:newPass"
-oracle_homes="database1;mydb"

EMCLIの詳細は、次のURLで入手できる『Oracle Enterprise Managerコマンドライン・インタフェース』の「Verbリファレンス」を参照してください。

http://www.oracle.com/technology/documentation/oem.html

10.8.6.3 EMCLIでの資格証明の消去

次のコード・シーケンスを使用して、EMCLIコマンドライン・インタフェースで特定のユーザーの優先資格証明または監視資格証明を消去できます。

emcli clear_credential
       -target_type="ttype"
       [-target_name="tname"]
       -credential_set="cred_set"
       [-user="user"]
       [-oracle_homes="home1;home2"] 

EMCLIコードで使用されるオプションを次に説明します。

例1:
emcli clear_credential
        -target_type=oracle_database
        -target_name=myDB
        -credential_set=DBCredsNormal
        -user=admin1
例2:
emcli clear_credential
        -target_type=oracle_database
        -credential_set=DBCredsNormal
        -user=admin1

10.8.7 スタンドアロン・エージェントからクラスタ・エージェントへの変換

RAC関連のプロシージャを使用する場合、クラスタ・ノードにクラスタ・エージェントが必要です。次の方法で、クラスタ上のスタンドアロン・エージェントをクラスタ・エージェントに変換することができます。

次の手順を実行する前に、次のURLで入手できる『Oracle Enterprise Manager Grid Controlインストレーションおよび基本構成』で説明されているエージェント・インストールの前提条件を満たしてください。

http://www.oracle.com/technology/documentation/oem.html

  1. Oracle Enterprise Managerを使用したスタンドアロン・エージェントからクラスタ・エージェントへの変換

    • Oracle Enterprise Mangerにログインします。

    • 「デプロイ」タブにナビゲートし、「エージェントのインストール」をクリックしてから「フレッシュ・インストール」をクリックします。

    • 表示されるエージェント・デプロイ・アプリケーション・ページで、次の操作を実行します。

      • 「ソースShiphomeディレクトリ」のデフォルトの選択肢を選択します。

      • すでにインストール済のスタンドアロン・エージェントに該当するバージョンを選択します。デプロイメント・プロシージャを使用するには、これらのエージェントのバージョンが10.2.0.2以上であることが必要です。

      • 必要なプラットフォームを選択します。

      • クラスタの一部を構成するホストのリストを指定します。

      • 「クラスタ・インストール」チェック・ボックスを選択します。

      • 「デフォルト値の移入」ボタンを使用して「クラスタ・ノード・リスト」パラメータに値を入力します。

      • 既存クラスタのクラスタ名を指定します。

      • クラスタを形成するノードについて、ホスト資格証明とエージェントのインストール・ベース・ディレクトリを指定します。

      • その他のオプション・パラメータを指定し、「続行」ボタンをクリックします。

  2. agentcaユーティリティを使用したスタンドアロン・エージェントの変換

    • 各クラスタ・ノードのスタンドアロン・エージェントの<Agent Oracle home>/binディレクトリから、-fおよび-cオプションを使用してagentcaを起動します。また、クラスタの名前を指定するには、-nオプションを使用します。次に例を示します。

      <Agent Oracle Home>/bin/agentca -f -n <cluster name> -c
      "
      {<クラスタ・ノードのカンマ区切りリスト。例: node1, node 2…>}"

    • ssh接続がクラスタ・ノード間に設定されている場合、いずれかのノードの
      <Agent Oracle Home>/oui/binディレクトリから次のコマンドを実行します。

      ./runInstaller -updateNodelist ORACLE_HOME=<Agent Oracle Home>
      "CLUSTER_NODES=
      {<クラスタ内のノードのカンマ区切りリスト>}"

    • ssh接続がノード間に設定されていない場合、各ノードの
      <Agent Oracle Home>/oui/binディレクトリから次のコマンドを実行します。

      ./runInstaller -updateNodelist ORACLE_HOME=< Agent Oracle Home >
      "CLUSTER_NODES=
      {<クラスタ内のノードのカンマ区切りリスト>}" -local

10.8.8 パッチ適用ランタイムのデータを取得する問合せ

次の問合せを使用して、パッチ適用ランタイムのためにデータを取得します。

10.9 既知の問題およびトラブルシューティング

次の項では、デプロイメント・プロシージャに関連する問題、およびデプロイメント・プロシージャの使用時に発生する可能性がある問題の解決方法について説明します。

10.9.1 既知の問題

バージョン10.2.0.1または10.2.0.2の既存のEnterprise Managerをバージョン10.2.0.3にアップグレードする場合は、RACプロシージャまたはアプリケーション・サーバー・プロシージャの既存のShiphomeを、手動ですべて再アップロードする必要があります。

10.9.2 トラブルシューティング

デプロイメント・プロシージャに関するトラブルシューティングのシナリオを次に示します。

10.9.2.1 デプロイメント・プロシージャの失敗時に確認するログ・ファイル

デプロイメント・プロシージャが失敗した場合、次のログ・ファイルで失敗の原因の詳細を確認できます。失敗の原因を修正して、デプロイメント・プロシージャを再実行します。デプロイメント・プロシージャ関連の問題をより迅速に解決するには、サポート・リクエストを作成する際に、これらのファイルをOracleサポート・サービスに提供できるように準備してください。

必要に応じて、より詳細な情報を取得するためにロギングの精度を高めることができます。次の手順に従い、ログ・レベルをリセットし、前述のログを取得します。(注意:古いログをアーカイブし、ログ・レベルをリセットした後、新規ログを取得するよう新規に実行することをお薦めします。)

前述の設定は、より詳細な情報が必要なときに、問題のデバッグに十分な情報がログにない場合にのみ行います。問題を再生成した後は、デバッグ・レベルを必ず元のレベルに戻してください。デプロイメント・プロシージャに関する問題を報告する場合、前述の両方の場所にあるログのtar/zipをSRに関連付けてください。


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