Enterprise Managerの分散アーキテクチャでは、バックアップ、リカバリおよび障害回復の計画に対し、多方面からのアプローチが必要です。この章では、効率的かつ堅牢なバックアップおよびリカバリ環境を実装する実際的なアプローチと、Enterprise Managerの各層のバックアップおよびリカバリのベスト・プラクティスについて説明します。
この章の内容は、次のとおりです。
Enterprise Managerは単一のエンティティとして機能しますが、技術的には、次のソフトウェア・コンポーネントで構成される分散型の多層ソフトウェア・アーキテクチャで構築されています。
Oracle Management Service(OMS)
Oracle Management Agent(エージェント)
Oracle Management Repository(リポジトリ)
各コンポーネントは、構成と機能がそれぞれ異なり、バックアップとリカバリに対して異なるアプローチを必要とします。このため、バックアップおよりリカバリ戦略について、この章では層別に説明します。Enterprise Managerアーキテクチャの概要は、『Oracle Enterprise Manager Grid Controlインストレーションおよび基本構成』を参照してください。
リポジトリは、エージェントが収集したすべての情報が格納される記憶域です。これは、データベース・ジョブ、パッケージ、プロシージャ、ビューおよび表領域などのオブジェクトで構成されます。リポジトリはOracle Database内で構成されるため、リポジトリのバックアップおよびリカバリ戦略は、基本的にはOracle Databaseの戦略と同じになります。データベースのバックアップ・プロシージャは、十分に確立した標準であり、RMANバックアップ・ユーティリティを使用して実装できます。このユーティリティには、Enterprise Managerコンソールからアクセスできます。
リポジトリ・データベースの計画外の停止を回避するために、高可用性のベスト・プラクティスを使用することをお薦めします。このためには、次の標準のデータベース・バックアップ戦略を使用します。
データベースはARCHIVELOGモードにします。リポジトリ・データベースをARCHIVELOGモードで実行しないと、メディア障害後のリカバリ不能な状況でデータベースが脆弱なままになります。
Enterprise Managerコンソールを介して推奨バックアップ戦略オプションを使用し、RMANによる通常のホット・バックアップを実行します。DataGuardやRACなどの他のユーティリティも、データ損失を防ぐ包括的な戦略の一部として使用できます。
これらの戦略に従うと、全体バックアップが作成された後、以降は毎回増分バックアップが作成されます。増分の変更はベースラインにロールアップされ、新しい全体バックアップ・ベースラインが作成されます。
推奨バックアップ戦略を使用すると、Enterprise Managerのバックアップ実行機能も利用でき、ジョブはEnterprise Managerのジョブ・サブシステムを通じて自動的にスケジュールされます。これで、バックアップの履歴がレビューで使用可能になり、バックアップのステータスがリポジトリ・データベース・ターゲットのホームページで表示されます。このバックアップ・ジョブとアーカイブおよびフラッシュバック・テクノロジを併用すると、リポジトリのいずれかの部分が失われた場合のリストア・ポイントが得られます。このタイプのバックアップ処理およびアーカイブ・ログとオンライン・ログにより、リポジトリを最後に完了したトランザクションまでリカバリできます。
バックアップの設定
まず、Enterprise Managerの「リカバリ設定」ページ(「ターゲット」→「データベース」→<リポジトリ・データベース・ターゲット>→「可用性」→「リカバリ設定」)にナビゲートし、図10-1に示すように、ログのアーカイブおよびデータベースのフラッシュバックを有効にします。
次に、「バックアップ・ポリシー」ページ(「ターゲット」→「データベース」→<リポジトリ・データベース・ターゲット>→「可用性」→「バックアップ設定」→「ポリシー」)にナビゲートし、図10-2に示すように、ブロック変更トラッキングを有効にしてバックアップ操作を高速化します。
Enterprise Managerを使用してバックアップを構成する方法の包括的な概要は、『Oracle Database 2日でデータベース管理者』にあります。データベースの高可用性に関するベスト・プラクティスの付加情報は、『Oracle Database高可用性ベスト・プラクティス』を参照してください。
リポジトリ・データベースの停止時はGrid Controlは使用できないため、リポジトリ・データベースのリカバリはRMANを使用して実行する必要があります。次の2種類のリカバリを考慮する必要があります。
完全リカバリ: Enterprise Managerに関する特別な考慮事項はありません。
ポイント・イン・タイム/不完全リカバリ: リカバリされたリポジトリは、トランザクションの損失のため、エージェントと同期化されていない場合があります。この状況では、エージェントで使用できる最新の状態とリポジトリが同期化されないかぎり、一部のメトリックがGrid Controlで誤って表示される場合があります。
Enterprise Managerバージョン10.2.0.5以上では、リポジトリの新しい再同期化機能により、Enterprise Managerリポジトリをエージェントで使用可能な最新の状態と同期化するプロセスを自動化できます。リポジトリをエージェントと再同期化するには、Enterprise Managerコマンドライン・ユーティリティ(emctl)のresync repos
コマンドを使用します。
emctl resync repos -full -name "<descriptive name for the operation>"
このコマンドは、リポジトリをリストアした後、かつ、OMSを起動する前に、OMS Oracleホームから実行する必要があります。コマンドの発行後、すべてのOMSを起動し、図10-3に示すように、Enterprise Managerコンソールの「リポジトリの同期化」ページからリポジトリの再同期化の進行状況を監視します。
リポジトリのリカバリが完了するのは、再同期化ジョブがすべてのエージェントで完了したときです。
障害発生時にデータベースを最新のトランザクションまでリカバリできるように、リポジトリ・データベースをARCHIVELOGモードで実行することをお薦めします。データベースを最後のトランザクションまでリカバリできない場合は、リポジトリの同期化を使用して、最後のバックアップの作成時に存在していたターゲットの監視機能をリストアできます。バックアップ後に行ったアクションは、自動的にはリカバリされません。リポジトリの同期化で自動的にリカバリされないアクションの例は次のとおりです。
通知ルール
優先資格証明
グループ、サービス、システム
ジョブ/デプロイメント・プロシージャ
カスタム・レポート
新規エージェント
手動によるエージェントの再同期化
Enterprise Managerのリポジトリの同期化機能は、10.2.0.5以上のエージェントにのみ使用できます。これより前のエージェントは、次の手順でエージェントを停止して手動で再同期化する必要があります。
エージェントを停止します。
agentstmp.txt、lastupld.xml、state/*およびupload/*ファイルを$AGENT_HOME/sysman/emd
ディレクトリから削除します。
エージェントを再起動します。
リポジトリ(または任意のデータベース)をリカバリする前提条件は、リポジトリの有効な一貫性バックアップがあることです。Enterprise Managerを使用してバックアップ・プロセスを自動化すると、リポジトリのリカバリが必要になった場合に備えて、通常の最新バックアップが常に用意されます。Recovery Manager(RMAN)は、Oracle Databaseのバックアップ、リストアおよびリカバリを行うユーティリティです。RMANのリカバリ・ジョブの構文は、安全な場所に保存する必要があります。これにより、Enterprise Managerリポジトリ・データベースの完全リカバリを実行できます。最も単純な形式では、構文は次のようになります。
run { restore database; recover database; }
実際の構文は、環境によって長さや複雑さが異なります。構文をRMANのバックアップおよびリカバリ・ジョブから抽出する方法、またはRMANの一般的な使用方法は、『Oracle Databaseバックアップおよびリカバリ・アドバンスト・ユーザーズ・ガイド』を参照してください。
次の各シナリオでは、様々なリポジトリのリカバリ状況とそのリカバリ手順を示します。
リポジトリ・データベースはARCHIVELOGモードで実行されています。最近のバックアップ、アーカイブ・ログ・ファイルおよびREDOログがあります。リポジトリ・データベースがクラッシュしました。
解決方法:
opmnctl stopall
を使用して、OMSを停止します。
RMANを使用して、データベースをリカバリします。
opmnctl startall
を使用して、すべてのOMS上でサイトを起動します。
これ以上のアクションは必要ありません。
サイトが完全に動作していることを確認します。
リポジトリ・データベースはNOARCHIVELOGモードで実行されています。全体オフライン・バックアップがあります。リポジトリ・データベースがクラッシュしました。
解決方法:
opmnctl stopall
を使用して、OMSを停止します。
RMANを使用して、データベースをリカバリします。
emctl resync repos -full -name "<resync name>"を使用して、OMS Oracleホームの1つからリポジトリの再同期化を開始します。
opmnctl startallを使用して、OMSを起動します。
10.2.0.5より前のすべてのエージェントを手動で修正します。このためには、エージェントを停止し、$AGENT_HOME/sysman/emdディレクトリのagentstmp.txt
、lastupld.xml
、state/*およびupload/*ファイルを削除します。エージェントを再起動します。
Grid Controlにログインします。「管理サービスとリポジトリ概要」ページにナビゲートします。「関連リンク」の下の「リポジトリの同期化」をクリックします。再同期化ジョブのステータスを監視します。エラーの修正後、失敗したジョブがあれば、そのジョブを再発行します。
サイトが完全に動作していることを確認します。
リポジトリ・データベースはホストA上でARCHIVELOGモードで実行されています。最近のバックアップ、アーカイブ・ログ・ファイルおよびREDOログがあります。ホストAはハードウェア障害のために失われました。
解決方法:
opmnctl stopall
を使用して、OMSを停止します。
RMANを使用して、データベースを別のホスト(ホストB)上でリカバリします。
各OMSのemoms.propertiesファイル内の接続記述子を変更し、ホストB上のデータベースを指すようにします。
opmnctl startallを使用して、OMSを起動します。
次のコマンドをOMSから実行し、リポジトリ・データベース・ターゲットをホストB上で実行されているエージェントに再配置します。
$emctl config repos -host <hostB> -oh <OH of repository on hostB> -conn_desc "<TNS connect descriptor>"
注意: このコマンドは、次の条件を満たしている場合にのみ、リポジトリ・データベースの再配置に使用できます。
新規エージェントがホストBにインストールされている場合は、以前に検出されたデータベース・ターゲットがないことを確認する必要があります。 |
次のコマンドをOMSから実行し、OMSおよびリポジトリ・ターゲットの監視構成を変更します。
$emctl config emrep -conn_desc "<TNS connect descriptor>"
サイトが完全に動作していることを確認します。
リポジトリ・データベースはホストA上でNOARCHIVELOGモードで実行されています。全体オフライン・バックアップがあります。ホストAはハードウェア障害のために失われました。
解決方法:
opmnctl stopall
を使用して、OMSを停止します。
RMANを使用して、データベースを別のホスト(ホストB)上でリカバリします。
各OMSのemoms.propertiesファイル内の接続記述子を変更し、ホストB上のデータベースを指すようにします。
次のコマンドを使用して、リポジトリの再同期化を開始します。
emctl resync repos -full -name "<resync name>"
これは、OMS Oracleホームの1つから開始します。
opmnctl startall
を使用して、OMSを起動します。
次のコマンドを実行し、ホストB上で実行されているエージェントにリポジトリ・データベース・ターゲットを再配置します。
emctl config repos -agent <agent on host B> -host <hostB> -oh <OH of repository on hostB> -conn_desc "<TNS connect descriptor>"
次のコマンドを実行し、OMSおよびリポジトリ・ターゲットの監視構成を変更します。
emctl config emrep -conn_desc "<TNS connect descriptor>"
10.2.0.5より前のすべてのエージェントを手動で修正します。このためには、エージェントを停止し、$AGENT_HOME/sysman/emdディレクトリのagentstmp.txt、lastupld.xml、state/*およびupload/*ファイルを削除します。エージェントを再起動します。
Grid Controlにログインします。「管理サービスとリポジトリ概要」ページにナビゲートします。「関連リンク」の下の「リポジトリの同期化」をクリックします。再同期化ジョブのステータスを監視します。前述のエラーの修正後、失敗したジョブがあれば、そのジョブを再発行します。
サイトが完全に動作していることを確認します。
OMSは、管理エージェントと連携するJ2EE Webアプリケーションであり、ターゲットの検出、監視および管理を行い、収集した情報をリポジトリに格納して将来の参照および分析を可能にします。OMSは、Enterprise Managerコンソール用のWebインタフェースもレンダリングします。
OMSは通常、ステートレスです。一時データおよび構成データの一部は、OMSファイルシステムに格納されます。共有ローダーの「recv」ディレクトリは、データがリポジトリにロードされる前に、エージェントからロードされたメトリック・データを一時的に格納します。OMSが停止すると、共有ローダー内の場所に格納されているデータを他の動作しているOMSがアップロードします。高可用性(HA)構成では、共有ローダーの受信ディレクトリはHA記憶域テクノロジを使用して保護する必要があります。
Enterprise Managerバージョン10.2.0.5以上では、OMS構成のスナップショットはemctl
exportconfig oms
コマンドを使用して取得できます。
emctl exportconfig oms [-sysman_pwd <sysman password>] [-dir <backup dir>] Specify directory to store backup file [-keep_host] Specify this parameter if the OMS was installed using a virtual hostname. For example: ORACLE_HOSTNAME
exportconfig
を実行すると、特定の時点のOMSのスナップショットが取得されるため、最新のOMS構成を定期的にバックアップできます。必要に応じて、最新のスナップショットを同一または別のホスト上のフレッシュOMSインストールにリストアできます。
OMSが失われた場合、ソフトウェアのインストールのみで構成は後で実行するというオプションを使用して、再インストールする必要があります。この追加管理サービス・オプションは、『Oracle Enterprise Manager Grid Controlインストレーションおよび基本構成』で説明されています。OMS構成はこの後、次のコマンドを使用してリストアできます。
emctl importconfig oms
以前にバックアップしたエクスポート・ファイルを使用します。このコマンドは、Enterprise Managerバージョン10.2.0.5以上で使用できます。
次の各シナリオでは、様々なOMSのリカバリ状況とそのリカバリ手順を示します。
重要: リカバリの前提条件は、最近の有効なOMS構成バックアップがあることです。OMS構成が変更されるたびに、emctl exportconfig oms コマンドを使用してOMSをバックアップすることをお薦めします。または、Enterprise Managerのジョブ・システムを使用して、このコマンドを定期的に実行できます。 |
単一OMSサイトです。SLBはありません。OMS構成はemctl exportconfig oms
コマンドを使用してバックアップされました。OMSが失われました。
解決方法:
可能であれば、Oracle Universal Installer(OUI)を使用して、OMSおよびエージェントのOracleホームを削除します。
注意: この手順は、OMSの一部がファイルシステムにまだ残っている場合にのみ適用されます。OUIによるOMSの削除は、OMSがディスク/メディア障害の結果として失われた場合は不可能です。 |
ソフトウェアのインストールのみで構成は後で実行する追加管理サービス・オプションを使用して、OMSを再インストールします。インストールの場所は、以前のインストールと同じである必要はありません。
次のコマンドを使用して、OMS構成をインポートします。
emctl importconfig oms -file <exportfile>
重要: importconfig コマンドの使用時には、次の制限があります。
|
この時点では、OMSとともに再インストールされたエージェントで使用されるポートに基づき、次の2つのオプションがあります。
オプションA: エージェントは以前のインストールと同じポートを使用します。
エージェントはOMSによって自動的にブロックされます。エージェントをエージェントのホームページから再同期化します。
オプションB: エージェントは別のポートを使用します。
次のコマンドを実行し、再インストールされたエージェントにOMSおよびリポジトリのターゲットを再配置します。
emctl config emrep -agent <reinstalled agent>
重複するターゲットを「管理サービスとリポジトリ概要」ページで探します。再インストールされたエージェントに、重複するターゲットを古いエージェントから再配置します。古いエージェントを削除します。
サイトが完全に動作していることを確認します。
単一OMSサイトです。OMSはホストA上で実行されています。SLBはありません。OMS構成はemctl exportconfig oms
コマンドを使用してバックアップされました。ホストAが失われました。
解決方法:
ソフトウェアのインストールのみで構成は後で実行する追加管理サービス・オプションを使用して、OMSを再インストールします。インストールの場所は、以前のインストールと同じである必要はありません。
次のコマンドを使用して、OMS構成をインポートします。
emctl importconfig oms -file <exportfile>
この時点では、ネットワーク設定に基づき、次の2つのオプションがあります。
オプションA: ホストBをホストAというホスト名で到達可能にします。
ホストBのネットワーク情報を更新し、古いホスト名を使用してホストAから到達可能にします。これを実現するには、マルチホーミングを行い、ホストAの追加IPをホストBに追加します。
OMSを再度保護します。
emctl secure oms -host <host A>
ホストB上のエージェントを再度保護します。
emctl secure agent -emdWalletUrlSrc "http://hostA:<httpport>/em"
注意: 新しいマシンでは古いマシンと同じホスト名を使用するため、監視対象の環境内のすべてのエージェントは、新しいOMSを探す場所をすでに認識しています。 |
オプションB: OMSを指すようにすべてのエージェントを変更した後、すべてのエージェントを再度保護します。
デプロイメント内のすべてのエージェントが、ホストB上で実行されている新しいOMSを指すようにします。各エージェントに対し、次のコマンドを実行します。
emctl secure agent -emdWalletUrlSrc "http://hostB:<httpport>/em"
次のコマンドを実行し、エージェントBにOMSおよびリポジトリ・ターゲットを再配置します。
emctl config emrep -agent <agent on host "B">
.
注意: 新しいマシンでは、OMSをホストしていた以前のマシンとは異なるホスト名を使用するため、監視対象の環境内のすべてのエージェントに、新しいOMSを検索する場所を指示する必要があります。 |
重複したターゲットを、Enterprise Managerコンソールの「管理サービスとリポジトリ概要」ページで探します。「重複したターゲット」リンクをクリックすると、「重複したターゲット」ページが表示されます。重複したターゲットのエラーを解決するには、重複したターゲットの名前を、競合が発生しているエージェントで変更する必要があります。
サイトが完全に動作していることを確認します。
複数OMSサイトです。すべてのOMSの前にSLBがあります。OMS構成はemctl exportconfig oms
コマンドを使用してバックアップされました。1つのOMSが失われました。
解決方法:
Oracle Universal Installerを使用して、OMSおよびエージェントのOracleホームを削除します。
ソフトウェアのインストールのみで構成は後で実行する追加管理サービス・オプションを使用して、OMSを同一ホストに再インストールします。インストールの場所は、以前のインストールと同じである必要はありません。
次のコマンドを使用して、OMS構成をインポートします。
emctl importconfig oms -file <exportfile
>
OMSとともにインストールされたエージェントを再度保護します。
emctl secure agent -emdWalletSrcUrl"http://slb:<httpport>/em"
OMSとともにインストールされているエージェントでは以前と同じポートを使用するため、エージェントはOMSによって自動的にブロックされます。エージェントはエージェント・ホームページから再同期化する必要があります。
サイトが完全に動作していることを確認します。
複数OMSサイトです。OMSの前にサーバー・ロード・バランサがあります。OMS構成はemctl exportconfig oms
コマンドを使用してバックアップされました。ホストA上のOMSが失われました。
共有ローダー受信ディレクトリと共有ソフトウェア・ライブラリの場所が新しいOMSホスト(ホストB)からアクセス可能であることを確認します。
ソフトウェアのインストールのみで構成は後で実行する管理サービス・オプションを使用して、OMSをホストBに再インストールします。インストールの場所は、以前のインストールと同じである必要はありません。
次のコマンドを使用して、OMS構成をインポートします。
emctl importconfig oms -file <exportfile>
OMSとともにインストールされたエージェントを再度保護します。
emctl secure agent -emdWalletSrcUrl"http://slb:<httpport>/em"
再インストールされたエージェントにOMSおよびリポジトリ・ターゲットを再配置します。
emctl config emrep -agent <agent on hostB>
重複したターゲットを「管理サービスとリポジトリ概要」ページで探します。ホストB上のエージェントに、重複したターゲットをホストA上のエージェントから再配置します。ホストA上のエージェントを削除します。
SLBを構成し、この新しいホストが構成内に含まれるようにします。
サイトが完全に動作していることを確認します。
エージェントは、監視対象の各ホストにデプロイされている統合ソフトウェア・コンポーネントです。これらのホスト上で実行されているすべてのターゲットの監視、中間層のOMSへのこの監視情報の伝達、ホストおよびそのターゲットの管理およびメンテナンスを行います。
エージェントのバックアップに関する特別な考慮事項はありません。ベスト・プラクティスとしては、エージェントの参照インストールを異なるプラットフォームに対して保持し、emd.propertiesファイルで実行済のカスタマイズと適用済のパッチが最新の状態に保たれるようにします。参照エージェント・インストールのインストールおよび保持には、Grid Controlコンソールのデプロイメント・オプションを使用します。
エージェントが失われた場合、参照インストールからクローニングして再インストールする必要があります。通常、参照インストールからのクローニングは、カスタマイズおよびパッチの追跡および再適用が不要なため、エージェント・インストールをリカバリする最速の方法です。同一ポートを使用してエージェントを再インストールする場合は、注意が必要です。Enterprise Managerのエージェントの再同期化機能を使用すると、再インストールされたエージェントを、リポジトリに存在するターゲット情報を使用して再構成できます。同一ポートを使用してエージェントを再インストールする場合、OMSは、エージェントが再インストールされたことを検出し、以前に行われたカスタマイズが再インストールされたエージェント内の自動検出ターゲットによって上書きされるのを防ぐため、エージェントを一時的にブロックします。
ブロックされたエージェント: ブロックされたエージェントとは、ブロックされたエージェントからのすべてのハートビートまたはアップロード・リクエストをOMSが拒否している状態です。このため、ブロックされたエージェントは、アラートまたはメトリック・データをOMSにアップロードできません。ただし、ブロックされたエージェントは、監視データの収集は続行します。 |
エージェントの再同期化ボタンをクリックすると、エージェントのホームページでエージェントを再同期化および非ブロック化できます。再同期化では、すべてのターゲットをリポジトリからエージェントにプッシュした後、エージェントを非ブロック化します。
次の各シナリオでは、様々なエージェントのリカバリ状況とそのリカバリ手順を示します。エージェントの再同期化機能では、再インストールしたエージェントが、クラッシュした以前のエージェントと同じポートを使用する必要があります。
エージェントは複数のターゲットを監視しています。エージェント・インストールが失われました。
Oracle Universal Installerを使用して、エージェントのOracleホームを削除します。
新規エージェントをインストールするか、エージェントのクローニング・オプションを使用して、Enterprise Managerを介してエージェントを再インストールします。クラッシュしたエージェントが使用していたものと同じポートを指定します。インストールの場所は、以前のインストールと同じである必要はありません。
OMSによって、エージェントが再インストールされたことが検出され、エージェントがブロックされます。
エージェントの再同期化をエージェントのホームページから開始します。
リポジトリ内のすべてのターゲットが新規エージェントにプッシュされ、エージェントが非ブロック化されます。
ユーザー定義メトリックのスクリプトの場所が変更された場合は、ユーザー定義メトリックを再構成します。
エージェントが動作しており、すべてのターゲット構成がリストアされたことを確認します。
エージェントは複数のターゲットを監視しています。エージェントOracleホームのファイルシステム・バックアップがあります。エージェント・インストールが失われました。
OUIを使用して、エージェントOracleホームを削除します。
エージェントをファイルシステム・バックアップからリストアします。エージェントを起動します。
OMSによって、エージェントがバックアップからリストアされたことが検出され、エージェントがブロックされます。
エージェントの再同期化をエージェントのホームページから開始します。
リポジトリ内のすべてのターゲットが新規エージェントにプッシュされ、エージェントが非ブロック化されます。
次のemctlコマンドを使用して、エージェントが機能しており、すべてのターゲット構成がリストアされたことを確認します。
emctl status agent emctl upload agent
エラーがなく、バックログにXMLファイルがないことを確認します。
OMSとリポジトリの両方に障害が同時に発生した場合は、OMSとリポジトリが関連付けられているかどうか、リカバリを同一または別のホスト上で行う必要があるかどうか、複数のOMSの前にSLBがあるかどうかなどの要因に応じて、リカバリ状況がより複雑になります。一般に、このタイプの複合障害のリカバリでは、前述の該当するリカバリ・シナリオで説明されている手順に従い、まずリポジトリを、次にOMSをリカバリします。次の各シナリオでは、OMSとリポジトリの2つの障害と、それに必要なリカバリ手順を示します。
リポジトリとOMSは同一ホスト(ホストA)にインストールされています。サーバー・ロード・バランサは構成されていません。リポジトリ・データベースはNOARCHIVELOGモードで実行されています。全体コールド・バックアップがあります。emctl exportconfig oms
を使用したOMS構成のエクスポートがあります。リポジトリ、OMSおよびエージェントがクラッシュしました。
RMANを使用して、リポジトリ・データベースをリカバリします。
OMS Oracleホームが使用できず、リストアしたリポジトリに対してOMSを起動する前にリポジトリの再同期化を開始する必要があるため、次のPL/SQLブロックを介して「resync」を発行します。SQLplusを使用してリポジトリにSYSMANとしてログインし、次のコマンドを実行します。
begin emd_maintenance.full_repository_resync('<resync name>'); end;
OUIを使用して、クラッシュしたOMSおよびエージェントのOracleホームを削除します。
「ソフトウェアのインストールのみで構成は後で実行する」を使用して、OMSを再インストールします。これは、追加管理サービス・オプションです。インストールの場所は、以前のインストールと同じである必要はありません。
次のコマンドを使用して、OMS構成をインポートします。
emctl importconfig oms -file <exportfile>
OMSとともにインストールされているエージェントでは以前と同じポートを使用するため、エージェントはOMSによって自動的にブロックされます。この時点で、エージェントをエージェント・ホームページから再同期化する必要があります。
10.2.0.5より前のすべてのエージェントを手動で修正します。このためには、エージェントを停止し、$AGENT_HOME/sysman/emdディレクトリのagentstmp.txt、lastupld.xml、state/*およびupload/*ファイルを削除します。エージェントを再起動します。
注意: リポジトリの同期化機能では、10.2.0.5以上のすべてのエージェントが自動的に修正されます。 |
Enterprise Managerにログインし、「管理サービスとリポジトリ概要」ページにナビゲートします。「関連リンク」の下の「リポジトリの同期化」をクリックします。再同期化ジョブのステータスを監視します。エラーの修正後、失敗したジョブがあれば、そのジョブを再発行します。
サイトが完全に動作していることを確認します。
リポジトリはホストXにインストールされています。2つのOMSがインストールされています(一方はホストA上、他方はホストB上)。OMSの前にSLBがあります。リポジトリ・データベースはNOARCHIVELOGモードで実行されています。全体オフライン・バックアップがあります。ホストXおよびホストBが失われました。
opmnctl stopall
を使用して、ホストA上のOMSを停止します。
RMANを使用して、データベースを新しいホストY上でリカバリします。
ホストA上のemoms.propertiesファイル内の接続記述子を更新し、ホストYを指すようにします。
次のコマンドを使用して、リポジトリの再同期化を開始します。
emctl resync repos -full -name "<resync name>"
これは、ホストAのOMS Oracleホームから開始します。
次のコマンドを実行し、リポジトリ・データベース・ターゲットを再配置および再構成します。
emctl config repos -agent <agent on hostY> -oh <OH on hostY> -host <hostY> -conn_desc "<TNS connect descriptor>"
次のコマンドを使用して、最新のOMS構成をホストAからエクスポートします。
emctl exportconfig oms -dir <export location>
共有ローダーの受信ディレクトリと共有ソフトウェア・ライブラリの場所がホストCからアクセス可能であることを確認します。
opmnctl startall
を使用して、ホストA上のOMSを起動します。
ソフトウェアのインストールのみで構成は後で実行する追加管理サービス・オプションを使用して、OMSをホストCに再インストールします。インストールの場所は、以前のインストールと同じである必要はありません。
次のコマンドを使用して、OMS構成をインポートします。
emctl importconfig oms -file <exportfile>
ホストBのエントリをホストCのエントリと置換することで、SLBプールを更新します。
OMSとともにインストールされたエージェントをホストC上で再度保護します。
emctl secure agent -emdWalletSrcUrl "http://slb/:<httpport>/em"
次のコマンドを使用して、OMSおよびリポジトリ・ターゲットを再配置および再構成します。
emctl config emrep -agent <agent on hostC> -conn_desc "<TNS connect descriptor>"
重複したターゲットを「管理サービスとリポジトリ概要」ページで探します。重複したターゲットをエージェントBからエージェントCに再配置します。ホストB上の古いエージェントを削除します。
10.2.0.5より前のすべてのエージェントを手動で修正します。このためには、エージェントを停止し、$AGENT_HOME/sysman/emdディレクトリのagentstmp.txt、lastupld.xml、state/*およびupload/*ファイルを削除します。エージェントを再起動します。
Grid Controlにログインし、「管理サービスとリポジトリ概要」ページにナビゲートします。「関連リンク」の下の「リポジトリの同期化」をクリックします。再同期化ジョブのステータスを監視します。前述のエラーの修正後、失敗したジョブがあれば、そのジョブを再発行します。
サイトが完全に動作していることを確認します。
Enterprise Managerコマンドライン・ユーティリティ(emctl)では、すべての主要コンポーネントで必要とされるバックアップおよびリカバリ操作の実行を可能にする新規コマンドが多数追加されています。
exportconfig oms
指定したディレクトリにOMS構成のスナップショットをエクスポートします。
使用方法:
emctl exportconfig oms [-sysman_pwd <sysman password>] [-dir <backup dir>] Specify the directory used to store the backup file [-keep_host] Specify to back up hostname if no SLB is defined (Use this option only if recovery will be performed on the machine that responds to this hostname)
importconfig oms
指定したバックアップ・ファイルからOMS構成をインポートします。
使用方法:
emctl importconfig oms [-sysman_pwd <sysman password>] [-reg_pwd <registration password>] -file <backup file> Required backup file to import from [-key_only] Specify to import emkey only [-no_resecure] Specify not to resecure the oms after import (default is to resecure after import)
config emrep
OMSおよびリポジトリ・ターゲットを構成します。このコマンドを使用して、ターゲットの監視エージェントや、このターゲットの監視に使用される接続文字列を変更します。
使用方法:
emctl config emrep [-sysman_pwd <sysman password>] [-agent <new agent>] Specify a new destination Agent for emrep target [-conn_desc [<jdbc connect descriptor>]] Update the Connect Descriptor with value if specified, else from value stored in the emoms.properties file.
config repos
リポジトリ・データベース・ターゲットを構成します。このコマンドを使用して、ターゲットの監視エージェントや監視プロパティ(ホスト名、Oracleホームおよびこのターゲットの監視に使用される接続文字列)を変更します。
使用方法:
emctl config repos [-sysman_pwd <sysman password>] [-agent <new agent>] Specify new destination agent for repository target [-host <new host>] Specify new hostname for repository target [-oh <new oracle home>] Specify new OracleHome for repository target [-conn_desc [<jdbc connect descriptor>]] Update the Connect Descriptor with the specified value, else from the value stored in emoms.properties
resync repos
リポジトリの再同期化操作を発行します。–full
オプションを指定すると、リポジトリへの最新の状態のアップロードがすべてのエージェントに指示されます。–agentlist
オプションを使用してエージェントのリストを指定すると、そのリストのエージェントと再同期化できます。
使用方法:
emctl resync repos (-full|-agentlist "agent names") [-name "resync name"] [-sysman_pwd "sysman password"]
abortresync repos
現在実行されているリポジトリの再同期化操作を中断します。リポジトリの再同期化を完全に停止するには、–full
オプションを使用します。–agentlist
オプションを使用すると、リストしたエージェントとの再同期化を停止できます。
使用方法:
emctl abortresync repos (-full|-agentlist "agent names") -name "resync name" [-sysman_pwd "sysman password"]
statusresync repos
指定したリポジトリの再同期化操作のステータスをリストします。
使用方法:
emctl statusresync repos -name "resync name"
create service
Windowsでのみ有効です。このコマンドにより、Oracle Management Service用のサービスがWindows上に作成されます。このコマンドを使用して、コールド・フェイルオーバー・クラスタ設定内のフェイルオーバー・ホスト上にあるOMS用のWindowsサービスを管理します。
使用方法:
emctl create service [-user <username>] [-pwd <password>] -name <servicename> Name of service to be created
delete service
Windowsでのみ有効です。Windows上のOracle Management Service用のサービスを削除します。
使用方法:
emctl delete service -name <servicename> Name of service to be deleted
resyncAgent
すべてのターゲット構成をリポジトリからプッシュすることで、リストアまたは再インストールされたエージェントを再同期化します。
使用方法:
emcli resyncAgent -agent="Agent Name" [-keep_blocked]