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Oracle Real-Time Decisionsプラットフォーム開発者ガイド
リリース3.0
B54059-01
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1 Oracle Real-Time Decisionsについて

Oracle Real-Time Decisions(Oracle RTD)により、新世代のエンタープライズ分析ソフトウェア・ソリューションを実現します。これによって、ビジネス運用プロセスにおける重要な局面でより適切な意思決定を企業がリアルタイムにできるようになります。

Oracle RTDは、フロント・エンド(CRMアプリケーションなど)およびバック・エンド(エンタープライズ・データストアなど)のどちらでも、エンタープライズ・アプリケーションと容易に統合できます。またOracle RTDには、負荷テストやデバッグに役立つその他のツールも用意されています。

この章の内容は次のとおりです。

1.1 用語

Oracle RTDは、次の5つのコンポーネントで構成されています。

インライン・サービスとは、デプロイされる構成済アプリケーションを表します。

インライン・サービスは、Decision Studioを使用して構成およびデプロイされ、Decision Centerを使用して分析および更新されます。インライン・サービスの実行はReal-Time Decision Serverで行われます。

インライン・サービスを使用すると、リアルタイムで継続的にデータを収集し、エンタープライズ・ビジネス・プロセスの特性を分析できます。さらに、そのデータと分析を利用した意思決定や、重要なビジネス・プロセスへのフィードバックが可能になります。

要素は、次のオブジェクト・タイプのいずれかになります。


注意:

Oracle RTDドキュメント全体にわたって次の用語が参照されます。
  • RTD_HOME: Oracle RTDのインストール先のディレクトリです。C:\OracleBI\RTDなどがその例です。

  • RTD_RUNTIME_HOME: アプリケーション・サーバーによってOracle RTDが実行されるアプリケーション・サーバー固有ディレクトリです。

詳細は、『Oracle Real-Time Decisionsインストレーションおよび管理ガイド』の「Oracle RTDのランタイム環境について」を参照してください。


1.2 Decision Studioについて

Decision Studioは、インライン・サービスを構成するための開発ツールです。インライン・サービスは、ビジネス・プロセスのモデル化、統計の収集および提案の作成を目的として作成されます。Decision Studioは、Eclipse Foundation社により開発されたオープン・ソースのJava IDEであるEclipseと完全に統合されています。Decision StudioはEclipse環境に対する標準プラグインです。Eclipseを使用している場合は、この環境を利用して、追加の開発機能や高度な機能を使用できます。Eclipseに精通していない場合でも、Decision Studioを完全に透過的に使用できます。EclipseおよびDecision Studioでは、ともにヘルプ・メニューからオンライン・ヘルプを使用できます。Decision Studioでは、いくつかのパースペクティブからインライン・サービスを操作できます。パースペクティブは、そのパースペクティブのビューやエディタの初期設定およびレイアウトを定義します。パースペクティブはそれぞれ、特定のタイプのタスクを実行するための一連の機能を提供し、特定のタイプのリソースを操作します。パースペクティブによって、一部のメニューおよびツールバーの表示内容が制御されます。

パースペクティブ(インライン・サービス、Java、リソースなど)を選択したり、別のパースペクティブに変更したりするには、Decision Studioで「Window」メニューをクリックし、「Open Perspective」を選択して、使用可能なパースペクティブのリストから選択します。最初にDecision Studioを起動したときのデフォルトのパースペクティブは「Inline Service」です。このチュートリアルでは、このパースペクティブを使用します。通常、インライン・サービスの開発にはこのパースペクティブを使用します。

図1-1に示すように、デフォルトの「Inline Service」パースペクティブには、4つのビューおよびエディタ領域があります。

図1-1 Decision Studioの「Inline Service」パースペクティブ

図1-1の説明は次にあります。
「図1-1 Decision Studioの「Inline Service」パースペクティブ」の説明

この項の内容は次のとおりです。

1.2.1 「Inline Service Explorer」ビュー

Inline Service Explorer」ビューでは、ユーザーが構成するインライン・サービスのすべての要素が編成されます。

1.2.2 「Problems」ビュー

Problems」ビューには、インライン・サービスを構築してコンパイルする際の検証エラー(.sdaファイル)およびコンパイル・エラー(.javaファイル)が表示されます。検証エラーをダブルクリックすると、「Problems」ビューに、メタデータ/要素エディタがエラー・ポイントで開きます。コンパイル・エラーをダブルクリックすると、「Problems」ビューに、生成されたソース・コード(.javaファイル)がエラー・ポイントで開きます。生成されたソース・コード・ファイルは直接編集せず、関連するメタデータまたは要素の問題を修正してください。これにより、ソース・コードが再生成および再コンパイルされます。

1.2.3 「Test」ビュー

Test」ビューでは、インライン・サービスをサーバーにデプロイした後、Studioからインライン・サービスを直接テストできます。

1.2.4 「Cheat Sheets」ビュー

Cheat Sheets」ビューには、一般的なタスクの手順が表示されます。インストール後、このビューはウィンドウの右側に配置されます。


ヒント:

「Cheat Sheets」ビューを閉じてエディタ領域を拡大することもできます。このチュートリアルでは「Cheat Sheets」は使用しません。

1.2.5 エディタ領域

インライン・サービス・パースペクティブの中央の領域がエディタ領域です。ここには、プロジェクト・ツリーで選択したノードに固有のエディタが表示されます。新しいエディタに変更するには、「Inline Service Explorer」ビューで編集する要素をダブルクリックします。

1.2.6 ビューの配置とエディタのサイズ変更

エディタのタブには、現在編集のために開かれているリソース名が表示されます。アスタリスク(*)は、変更がまだ保存されていないことを示します。

パースペクティブのビューおよびエディタは、画面上の任意の領域にドラッグできます。.ビューおよびエディタのサイズは、配置される領域に合せて自動的に変更されます。(主な作業場所である)エディタまたはビューの一部が、他のビューに覆われたり、使用するには不便な領域にサイズ変更される場合があります。エディタまたはビューのサイズを変更するには、開いている別のビューを閉じて残りが自動的にサイズ変更されるようにするか、エディタ・タブをダブルクリックすることによりエディタまたはビューを最大化します。

エディタとビューはどちらも、タブをダブルクリックするか、右クリックして表示されるメニュー・アイテムを使用して、最大化と最小化を切り替えることができます。

さらにビューを表示するか、閉じたビューを開くには、Decision Studioの「Window」メニューをクリックし、「Show View」を選択して使用可能なビューのリストから選択します。

1.3 Decision Centerについて

Decision Centerは、ビジネス・アナリストによる、デプロイされたインライン・サービスの監視および最適化を可能にするWebベースのアプリケーションです。Decision Centerでは、意思決定方法の調整だけでなく、モデルから収集された統計の表示や、抱合せ販売などのキャンペーンの微調整を実行できます。Decision Centerのユーザー・インタフェースでは、インライン・サービスを2つのペインで表示します。左側のペインにはインライン・サービスの要素のリストが表示され、右側のペインには選択された要素に関連する詳細情報が表示されます。

図1-2 Decision Center

図1-2の説明は次にあります。
「図1-2 Decision Center」の説明

1.4 インライン・サービスのライフサイクルについて

インライン・サービスはDecision Studioを使用して作成されます。図1-3は、インライン・サービスのライフサイクルを示しています。

図1-3 インライン・サービスのライフサイクル

図1-3の説明は次にあります。
「図1-3 インライン・サービスのライフサイクル」の説明

次の手順では、インライン・サービスを作成、デプロイおよびダウンロードするプロセス全体の概要を示します。

  1. 作成: Decision Studioを使用して、Oracle RTDの統合先となるビジネス・プロセスに合せて要素を構成します。要素の例には、選択肢グループ、パフォーマンス目標、デシジョン、インフォーマント、アドバイザ、エンティティおよびデータソースなどがあります。

    一部の要素では、「Logic」属性および「Asynchronous Logic」属性にJavaスクリプトレットを使用できます。例として、図1-4にインフォーマント要素を示します。この要素の名前はCall Beginです。「Description」および「Advanced」ボタンの他に3つのタブがあり、それぞれにインフォーマントの属性のセットがあります。

    図1-4 Call Beginインフォーマント

    図1-4の説明は次にあります。
    「図1-4 Call Beginインフォーマント」の説明

    図1-5に示すように、このCall Beginインフォーマントの「Logic」タブで、特定のタスクを実行するオプションJavaコードを記述できます。

    図1-5 Call Beginインフォーマントの「Logic」タブ

    図1-5の説明は次にあります。
    「図1-5 Call Beginインフォーマントの「Logic」タブ」の説明

    要素が作成され保存されると、オブジェクトを記述するXMLメタデータがメモリーに作成されます。

  2. 保存: Decision Studioでインライン・サービスを保存すると、ローカル・ファイル・システム上のインライン・サービス・ディレクトリで、拡張子*.sdaのXMLファイルにメタデータが記述されます。Call BeginインフォーマントのメタデータはCallBegin.sdaというファイルに保存され、その内容の例は次のようになります。

    <?xml version="1.0" encoding="UTF-8"?>
    <sda:RTAPType xmlns:sda="http://www.sigmadynamics.com/schema/sda"
    internalName="CallBegin" lastModifiedTime="1133228616435" name="Call Begin"
    schemaVersion="20050818" forcesSessionClose="false" order="1.0">
      <sda:description>The Call Begin Informant starts the session after the
      customer's call enters the IVR system. Logic could be added here to pre-
      populate certain values (example: customer profile) that may be used later   on.</sda:description>
      <sda:system ref="Ivr"/>
      <sda:sessionKey path="customer.customerId" relativeTo="session"/>
      <sda:requestMapper internalName="RequestMapper">
        <sda:entity type="ApplicationSession" var="session"/>
        <sda:dataSource type="RequestDataSource" var="result">
          <sda:arg>
            <sda:path localVarName="session" path="request" relativeTo="local"/>
          </sda:arg>
        </sda:dataSource>
      </sda:requestMapper>
      <sda:requestData internalName="RequestDataSource">
        <sda:param internalName="message" dataType="object"
    objectType="com.sigmadynamics.client.wp.SDRequest"/>
        <sda:request>
          <sda:resultSet/>
        </sda:request>
      </sda:requestData>
      <sda:body>
        <sda:java order="0">/* Trigger data retrieval
    */&#xD;&#xA;session().getCustomer().fill(); </sda:java>
      </sda:body>
      <sda:postOutputBody/>
    </sda:RTAPType>
    

    Decision Studioで要素に割り当てられたセッション・キーおよび外部システムなどの属性がここに示されます。JavaスクリプトレットもXMLファイルのボディに挿入されていることに注意してください。

    インライン・サービスの要素が追加、構成および保存されると、Decision Studioは自動的に必要なJavaコードを生成し、これらをJavaクラス・ファイルにコンパイルします。2つのクラスのJavaコードが生成されます。最初のセットは、インライン・サービスで使用される基本Javaファイルです。これらのファイル名は、要素IDの前にGENを付けた名前となります。たとえば、CallBegin要素はGENCallBegin.javaというファイルを生成します。

    2番目のJavaファイルのセットは、生成されたコードを上書きできるように作成されます。これらのファイル名は要素IDと同じ名前になります。たとえば、CallBegin要素はCallBegin.javaというファイルを生成します。デフォルトでは、JavaクラスCallBeginは、クラスGENCallBeginを単純に拡張します。

    インライン・サービスのコンパイル時には、上書きコードを使用する特別な指示がないかぎり、生成されたコードが使用されます。上書きコードを使用するには、上書きJavaファイル(CallBegin.javaなど)を更新し、次の生成されたソース・ファイルのフォルダ

    Inline_Service_project_root_folder\gensrc\com\sigmadynamics\sdo
    

    から、次の上書きソース・ファイルのフォルダに移動します。

    Inline_Service_project_root_folder\src\com\sigmadynamics\sdo
    

    これにより、Decision Studioでは、生成されたJavaファイルではなく、上書きJavaファイルを使用してコンパイルが実行されます。


    ヒント:

    インライン・サービス・オブジェクトのXMLは、Decision Studioの組込みテキスト・エディタで表示できます。「Inline Service Explorer」ビューでインライン・サービス・オブジェクトを右クリックし、「Open With」メニューから「Text Editor」を選択します。通常のエディタ形式に戻すには、「Inline Service Editor」オプションを選択します。Decision Studioの「Open With」→「Text Editor」メニューを表示します。

    インライン・サービス・オブジェクトを変更する場合は、XML(*.sda)ファイルを直接編集しないでください。変更するには、対応するインライン・サービス・エディタを使用してください。


  3. デプロイ: インライン・サービスは、Decision Studioを使用してReal-Time Decision Serverにデプロイされます。このサーバーの管理サービスでは、メタデータおよびコンパイルされたインライン・サービス・ファイルの受信、インライン・サービスのデータベースへの格納、およびインライン・サービスのメモリへのロードが行われます。これにより、インライン・サービスを利用して、リクエストの処理やレポートの表示などを実行できます。

  4. 表示および更新: レポートおよび学習は、ブラウザベースのDecision Centerインタフェースを介して表示されます。インライン・サービスの選択された要素およびパラメータは、Decision Centerから更新できます。更新されたインライン・サービスは、再デプロイされるまでランタイムで使用できません。

  5. 再デプロイ: Decision Centerでインライン・サービスを更新した場合、Decision Centerでインライン・サービスを再デプロイすることで、この変更を使用できるようになります。管理サービスでは、必要なすべてのメタデータとJavaファイルの再生成、インライン・サービスの再コンパイル、インライン・サービスのデータベースへの格納、およびメモリーへのロードが行われます。

  6. ダウンロード: Decision Studioを使用して、デプロイされたインライン・サービスをサーバーからダウンロードできます。ダウンロードでは、データベースにあるインライン・サービスをコピーして、メタデータ、Javaおよびクラス・ファイルをハード・ドライブ上のDecision Studioプロジェクトに配置します。これは、インライン・サービスの元の開発者ではないためにメタデータ・ファイルがない場合に便利です。ビジネス・プロセスで他のユーザーにDecision Centerを介したインライン・サービスの変更および再デプロイを許可している場合は、インライン・サービスを最初にDecision Studioで開発およびデプロイしたユーザーであっても、Decision Studioでそのインライン・サービスをさらに変更するには、まずサーバーから最新バージョンをダウンロードする必要があります。