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Oracle SOA Suite開発者ガイド
10g(10.1.3.1.0)
B31839-01
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1.3 Oracle SOA Suiteを使用したSOAの採用

Oracle SOA Suiteは、SOAテクノロジの主なベストオブブリードで構成された総合的なスイートであり、異種ITインフラストラクチャに組み込まれ、企業によるSOAの段階的な採用を可能にします。 スイートの各コンポーネントは、単一のデプロイおよび管理モデルとツール、エンドツーエンドのセキュリティ、統一メタデータ管理などの共通機能を利用しています。 Oracle SOA Suiteの優れている点は、次のような統合された機能セットが備わっていることです。

これらと同時に、Oracle SOA Suiteでは、既存のミドルウェア・テクノロジ(サードパーティのJ2EEアプリケーション・サーバー、開発ツール、メッセージ・キュー、ESBなど)もサポートされます。 したがって、企業のIT部門は、スイート全体を導入して統合された機能セットを利用することも、コンポーネントを個別に導入することもできます。

図1-1に、Oracle SOA Suiteの各コンポーネントを示します。

図1-1 Oracle SOA Suite

図はOracle SOA Suiteの各コンポーネントを示しています。

1.3.1 サービスの作成

Oracle JDeveloper、Oracle Application Development Framework(Oracle ADF)およびOracle TopLinkはOracle SOA Suiteの開発コンポーネントであり、これら3つのコンポーネントをあわせて使用し、サービスを開発、構成してビジネス・プロセスに組み込むための総合的なISEを形成します。このビジネス・プロセスは、デプロイおよび登録して、デスクトップ・クライアント、ブラウザ、モバイル機器、Telnet機器などの各種のユーザー・インタフェースから使用できます。

Oracle JDeveloperを使用すると、開発者は、サービスに基づいて複合アプリケーションをモデル化、作成、検出、収集、統合、テスト、デプロイおよび保守できます。 Oracle JDeveloperは、SOAの原則とXML Webサービス標準をサポートするのみでなく、従来のJava、J2EEおよびPL/SQLコンポーネントとモジュール化コード・メカニズムもサポートしています。

Oracle ADFは、モデルドリブンのSOAフレームワークです。このフレームワークによって、ビジネス・サービスやデータ・サービスが自動化および管理され、JSR 227仕様に基づいた標準のデータおよびサービス・バインディング・レイヤーが提供されます。 このバインディング・レイヤーは、プロセス・フロー、ページ・フローおよびサービス起動で使用できます。 また、Oracle ADFでは、SOAの設計方法が実装され、ユーザー・インタフェースがサービスと同程度に疎結合されます。

Oracle TopLinkは、リレーショナル・データおよびXMLデータへのアクセスを可能にするデータ・サービス・フレームワークです。 オブジェクト/リレーショナル・マッピングおよびオブジェクト/XMLマッピングを容易にするためのビジュアル・マッピング・ツールが提供されます。 Oracle TopLinkとOracle ADFの両フレームワークを使用することによって、ビジネス・サービスおよびデータ・サービスを簡単に作成できます。これらのサービスは、サービス指向アプリケーションの多機能なWebインタフェースから起動できます。

Oracle JDeveloper、Oracle ADF、Oracle TopLinkの3つが合さって、総合的な統合サービス環境およびフレームワークが提供され、開発者は、モデルドリブンのアプリケーションやビジネス・プロセスを作成できます。これらのアプリケーションやビジネス・プロセスは、アプリケーション、サービスまたはビジネス・プロセスとしてOracle SOA Suiteコンポーネントにデプロイされ、登録されます。

主な機能は、次のとおりです。

  • ビジネス・サービスの作成: Oracle JDeveloperでは、Web Services Invocation Framework(WSIF)バインディングをサポートすることによって、Java、Enterprise JavaBeans(EJB)、Java Message Service(JMS)、およびJava Connector Architecture(JCA)アダプタを介して接続されるエンタープライズ・アプリケーションを、ネイティブに起動するサービスとして公開できます。 また、Oracle JDeveloperでは、REST(REpresentational State Transfer)ベースのサービスや、J2EE 1.4準拠のWebサービスの開発もサポートされ、JAXRPCクライアントおよびサービス、WS-Security、WS-Reliability、WS-Managementの作成も可能です。 メタデータ・タグを使用したボトムアップ・サービスの開発、およびWSDLエディタを使用したコントラクトドリブンの開発もサポートされています。

  • ビジネスおよびユーザー・インタフェース・ロジックの作成: Oracle JDeveloperでは、バックエンドのビジネス・ロジックと永続性マッピング機能を単純化するEJB 3.0がサポートされています。 EJB 3.0コンポーネントの生成にはOracle JDeveloperのウィザードを使用し、ビジネス・メソッドの追加の開発やマッピングの注釈にはプロパティ・エディタを使用します。 JavaServer Faces(JSF)テクノロジを使用したWebアプリケーションの作成がサポートされているため、豊富な機能のユーザー・インタフェースを作成できます。 Oracle JDeveloperには、この他にも、JSF WYSIWYGエディタを使用したビジュアルUIコンポーネントの編集、JSFコンポーネントをページ上に配置するドラッグ・アンド・ドロップ機能、JSFナビゲーションを簡単に開発できるビジュアル・ダイアグラマなど、各種のツールが用意されています。

  • ユーザー・インタフェースとサービスのバインディング: Oracle JDeveloperでは、ユーザー・インタフェースをデータ・ソースおよびサービスに簡単にバインドできるJSR 227仕様がサポートされています。 バックエンド・ビジネス・システムを公開しているデータ・コントロール・パレットから属性、コレクション、操作をドラッグ・アンド・ドロップする機能のサポート、およびサービスとビジネス・プロセスのサポートもあります。 また、Oracle ADF Facesコンポーネントをバックエンドのビジネス・サービスとビジネス・プロセスにデータ・バインディングする機能もサポートされています。

1.3.2 Enterprise Service Busの使用

エンタープライズ・アプリケーション・インフラストラクチャに対する結合手段として、統合プラットフォームは、企業の方針を決定する情報をあらゆるデータ・ソースから収集するための基盤になります。 Oracle ESBは、SOAとイベントドリブン・アーキテクチャ(EDA)を実現したもので、ここでは、分散アプリケーションが疎結合の理論的な枠組に統合されます。 ESBの中核にはメッセージングが実装されているため、同期と非同期の両方でサービスをメッセージ・ベースの理論的な枠組に統合できます。 また、ESBにはルーティング機能も組み込まれているため、メッセージ・コンテンツと任意の外部要因を管理するルールに基づいて、メッセージを適切なサービスにルーティングできます。 第三に、ESBはメッセージ・トランスフォーメーションも実現します。 ESBでは実行時にルーティングとトランスフォーメーションのロジックを変更できるため、サービス接続が安定したメンテナンス性の高いアプリケーションを作成できます。

Oracle ESBの主な機能は、次のとおりです。

  • 信頼性の高いマルチトランスポート・バス: Oracle ESBでは、SOAP、HTTP(S)、JMSなど、業界標準プロトコルをサポートする柔軟なリアルタイム・エンタープライズ・バックボーンが提供されます。 同じ仮想マシン内でのサービス・コールには、特別なメモリー内最適化が自動的に使用されます。 また、ポイントツーポイント方式とパブリッシュ/サブスクライブ方式の両方を使用して、高速でスケーラブルな1回かぎりのメッセージ配信が保証されます。 Oracle ESBでは、メッセージ・トランスポートとしてOracle独自のJMSまたはOracle Advanced Queuing(AQ)を使用できますが、IBM MQ、SonicMQ、Tibcoなど他のメッセージング・プロバイダも動作保証されています。

  • 複雑なビジネス・データ・トランスフォーメーション: ビジネスでは、複数の異なるシステムのデータ・モデルを柔軟に結合できる必要があります。 Oracle ESBは、Oracle JDeveloper内に用意された標準ベースのデータ・マッパー機能を使用して、企業間で再利用できるように、XSLT言語によるトランスフォーメーション・テンプレートを作成します。 自動マッピング機能によって、以前実施したトランスフォーメーションから共通のマッピングが取り出されて再利用されるため、ユーザーの生産性が向上します。

  • 総合的な管理とデプロイのインフラストラクチャ: Oracle ESB では、設計時に参照リポジトリ(UDDIなど)内に仮想サービス名を作成し、デプロイ時に定義する実際のアプリケーションURLまたは物理アプリケーションURLに後でバインドできます。 Oracle ESB Controlを使用すると、サービス間の関係を作成および視覚化でき、依存関係のグラフ、または予定されているシステム変更による影響分析のグラフを作成できます。 ビューアにはESB全体にわたる検索機能があり、無制限に条件を指定して、アダプタ、メッセージ、アクティブ・プロセス・インスタンスなどのコンポーネントを検索できます。 分散アプリケーションの集中管理機能は、Oracle ESBの主要コンポーネントです。

  • 広範なエンタープライズ・システム接続: アダプタは、エンタープライズおよびレガシー・システムのメタデータに対する主要な接続性と検出機能を提供し、ESBにおけるリアルタイム・イベントへのオブジェクトのマッピングを可能にします。 データベース、Oracle AQ、JMS、電子メール、FTPおよびファイル用の他に、Oracle E-Business Suite、PeopleSoft、JD Edwards、SAPなどのエンタープライズ・アプリケーションや、CICS、IMS、TPFなどのレガシー・システム用にもビルトインのアダプタ・ウィザードが用意されています。 どのアダプタも、主要なすべての統合ベンダーが採用しているJ2EE Connector Architecture(JCA)のオープン標準に準拠しています。

  • コンテンツ・ベースの柔軟なルーティング: ESBの最適な管理のためには、メッセージのコンテンツに基づいてデータをフィルタリングおよびルーティングできることが重要です。 Oracle ESBでは、設計時のデプロイメント・ディスクリプタ定義でルーティングを設定し、実行時にアプリケーション効率を調整するためにその内容を変更できます。 この結果、再デプロイによるオーバーヘッドが最小限になります。 たとえば、システム需要の増大に伴なってクラスタにサーバーを追加する場合は、通貨、地域、製品名など任意のコンテキスト・データのコンテンツに基づいてトラフィックを動的にルーティングできます。 Oracle ESBでは、Oracle BAM、Oracle Business Rules、外部プロバイダなど、フィルタリング用の様々なルール機能がサポートされています。 コンテンツ・フィルタリングは、構成可能なフィルタ・ベースのサブスクリプションやメッセージ・セレクタを使用するJMSなど、メッセージング・システムにも実装できます。

1.3.3 サービスの構成と組込み

Oracle BPEL Process Managerを使用すると、ビジネス・プロセスをモデル化して自動化し、監視できます。 ビジネス・プロセスを自動化するためのコード生成の技法とは異なり、Oracle BPEL Process Managerには、プロセスを実行するネイティブBPELエンジンがあります。 このアプローチによって、再利用が可能になるのみでなく、進行中のビジネス・プロセスに対する可視性が個別レベルおよび集計レベル(後者はOracle BAMによって提供)で実現され、クローズループのビジネス・プロセス管理、プロセス改善および準拠のための基盤が形成されます。

Oracle BPEL Process Managerでは、アプリケーションをまたがるビジネス・プロセスを、自動化されたステップとヒューマン・ワークフローのステップの両方を使用して作成、デプロイおよび管理するための標準ベースで使いやすい総合的なソリューションが提供されます。 BPEL標準で定義されたサービス指向ビジネス・プロセスが、高いパフォーマンスと信頼性で実行されます。 BPEL、XML、XSLT、XPATH、JMS、JCA、Webサービスなどの標準がネイティブでサポートされているため、プラットフォーム間での完全な移植が可能な統合ビジネス・プロセスを作成するための理想的なソリューションとなります。 完了したプロセスと進行中のプロセスの両方に関する監査証跡、およびプロセスの改善に役立つプロセス履歴も提供されます。

さらに、Oracle BPEL Process Managerは100%ネイティブなBPELエンジンで、既存のミドルウェア・テクノロジやプラットフォームとの共存にも問題がないため、優れたプロセスの移植性とベンダー選択の柔軟性を提供します。

Oracle BPEL Process Managerの主な機能は、次のとおりです。

  • 統合のための豊富なツール: Oracle JDeveloper環境でのOracle BPEL Process Designerは、ユーザー・インタフェースやオーケストレーション・サービスを開発するための統一された設計時環境を提供します。 ビルトインの統合サービスによって、開発者は、高度なワークフロー、接続性およびトランスフォーメーションの各機能を標準BPELプロセスから簡単に利用できます。 これらの機能には、XSLTおよびXQueryトランスフォーメーションに対するサポート、およびWSIFを使用した、JCAアダプタやネイティブ・プロトコルを通じた多数のレガシー・システムへのバインディングに対するサポートも含まれています。 この拡張可能なWSDLバインディング・フレームワークによって、SOAP以外のプロトコルやメッセージ書式への接続が可能となります。 バインディングは、JMS、電子メール、JCA、HTTPGET、POSTなど、多数のプロトコルで使用できるため、多くのバックエンド・システムに対する単純な接続を可能にします。 このアプローチによって、開発の容易さを維持しながら、優れたパフォーマンスを維持できます。 単純および複雑なヒューマン・ワークフロー・ステップの設定、アダプタの構成、複雑なトランスフォーメーション・マップの定義を実行するためのわかりやすいウィザードが、標準サービスとして用意されています。 タスク管理、通知管理、ID管理などのヒューマン・ワークフロー・サービスが、ビルトインのBPELサービスとして提供されているため、人と手動タスクをBPELフローに統合できます。

  • 総合的な監視と管理: Oracle BPEL Controlには、BPELサーバーにデプロイされたプロセスを管理およびデバッグするためのわかりやすいWebベースのインタフェースが用意されています。 監査証跡およびプロセス履歴/レポート情報が自動的に保持され、Oracle BPEL Controlから利用できます。 ワークフロー・タスクのリストとプロセス履歴分析レポートも、同じコンソールに統合されています。

  • 優れたスケーラビリティと可用性: 中核となるBPELエンジンでは、現在実装可能な最高のスケーラビリティと堅牢性を備えたBPELサーバーが提供されます。 Oracle BPEL Process Managerは、標準のBPELプロセスを実行し、デハイドレーション機能を提供するため、長時間実行フローの状態が自動的にデータベースに保持され、フェイルオーバーとスケーラビリティの両方に対応したクラスタリングが可能になります。 BPELサーバーでは、基礎となるJ2EEアプリケーション・サーバーとしてOracle Containers for J2EEが利用されますが、BEA WebLogicやJBossなどの主要な商用アプリケーション・サーバーもサポートされています。

1.3.4 ビジネス・ルールを使用したビジネス・ポリシーの自動化

敏捷性は、SOAとBPMの最大の効果の1つで、ビジネスで発生する変化に応じて迅速にプロセスを変更できる能力を指します。 このような変更は、プロセスに対する変更とはかぎりません。 プロセスを制御するルールに対する変更の場合もあります。 一般的なビジネス・プロセスには、多くの場合多数の決定ポイントが含まれています。 これらの決定ポイントは通常、プロセスのフローに影響を与えます。たとえば、注文者の与信評価によって、その注文に手動による承認が必要どうかが判断される場合があります。 このような決定は、特定の条件や事実に基づいて評価されますが、これらの条件や事実はビジネス・プロセスの内部や外部にあったり、事前定義された企業ポリシーまたはルールの場合もあります。 Oracle Business RulesのRules Engineによって、設計者は、エンタープライズ・アプリケーションに指示を与える決定ロジックを簡単に、かつ一元的に定義、自動化、管理および更新できます。このために、コードを記述したり、これらのアプリケーションをコールするビジネス・プロセスを変更する必要はありません。

ルール・エンジンは、自動化の時間の短縮、変更の容易性、ビジネス・ポリシーおよびルールのメンテナンス性などの向上によって、敏捷性に直接関係するため、SOAを構築する企業設計者にとって本質的な関心事項です。

BPMテクノロジとルール・エンジンは本質的に密接に関連しています。BPMによって、自動化された柔軟なビジネス・プロセスが実現し、ルール・エンジンによって、自動化された柔軟なビジネス・ポリシーが実現します。

Oracle Business Rulesの主な機能は、次のとおりです。

  • 全アプリケーションにわたるビジネス・ポリシーの取得: これまでは、ルール・エンジンは主に、高度な推測を必要とする非常に複雑な問題を解決するためのテクノロジとして使用されていました。 最近は、ルールの使用方法が進化し、ビジネス・ポリシーの実装のためにルールが使用されるようになりました。 Oracle Business Rulesを使用すると、SOA用に設計されたアプリケーションにかぎらず、あらゆるアプリケーションからビジネス・ポリシーを抽出できます。 Oracle Business RulesはJess Rules Engineをベースにしていますが、JSR-94仕様に準拠しているため、Javaでファクトを定義できます。

  • ビジネス・プロセスにおけるビジネス・ポリシーの自動化: ビジネス・プロセスには通常、意思決定のステップが含まれています。 Oracle Business Rulesでは、ビジネス・プロセスから意思決定およびビジネス・ポリシーを抽出できるため、一元的なポリシーの管理と変更が可能です。 モノリシックなBPMスイートとは異なり、ビジネス・プロセス外部のファクトをビジネス・ルールの評価でアサートできます。 ルールはプロセス・ロジックから切り離されているため、プロセス・ロジックに影響を与えることなく自由に変更できます。 この独立性が、ビジネス・プロセスを安定したものにします。つまり、ルールの変更は、ルール対応のプロセスやアプリケーションを変更または再作成せずにデプロイできます。

1.3.5 Oracle Web Services Managerを使用したサービスの保護と管理

Oracle Web Services Manager(Oracle WSM)を使用すると、SOAにおけるサービスやサービス間の相互作用を効果的に監視、管理および保護できます。 Oracle WSMには、新規または既存のアプリケーションやWebサービス上に配置可能なセキュリティ・ポリシーと操作ポリシーを作成するためのツールが用意されています。ランタイム機能では、アプリケーション間またはサービス間でのコールを捕捉してそれらのポリシーを実行でき、ダッシュボードでは、実行時にこれらのポリシーを監視し、サービス・レベルと潜在的な問題を確認できます。また、アラート通知によって適時の修正措置が可能になります。

Oracle WSMでは、アクセス・ポリシー、ロギング・ポリシー、コンテンツ検証など、Webサービスの操作を制御するポリシーを集中的に定義し、そのポリシーでサービスをラップできます。このとき、既存のWebサービスに対する変更は必要ありません。 また、サービス・レベルおよびセキュリティを保証するために、監視統計が収集され、Webダッシュボードに表示されます。 この結果、Webサービスの管理性と可視性が向上します。

Oracle WSMの主な機能は、次のとおりです。

  • ポリシー管理: Oracle WSMのPolicy Managerは、セキュリティ・ポリシーと操作ポリシーの新規作成、ポリシーの保存、およびランタイム・エージェントやゲートウェイに対するポリシーの配布と更新の管理を実行するためのグラフィカル・ツールです。 Policy Managerでは、クライアント側とサービス側の両方におけるポリシーの実施がサポートされているため、管理者は、どのような規模と複雑さのアプリケーション・デプロイメントに対しても、操作ルールを構成して適切な実施コンポーネントに伝播できます。 Oracle WSMでは、HTTP Basic認証、COREid、Netegrity、LDAPおよびX.509証明書を使用した認証および認可がデフォルトでサポートされています。 また、ロール・ベースの起動アクセスには、Oracle COREid、LDAP、Netegrityが利用され、異なるセキュリティ・システム間の相互運用には、Security Assertion Markup Language(SAML)がサポートされています。

  • 実施: 最大限に柔軟なデプロイを保証するために、Oracle WSMには、ポリシー・ゲートウェイとポリシー・エージェントの2種類の実施コンポーネントが用意されています。 ポリシー・ゲートウェイは、アプリケーションまたはサービス・グループの前に配置されます。 ポリシー・ゲートウェイは、ポリシーの各ステップを実施するためにこれらのアプリケーションへのインバウンド・リクエストを捕捉でき、すでにデプロイされたアプリケーションにセキュリティ・ルールや他の操作ルールを追加します。 ポリシー・エージェントは、アプリケーションまたはサービスに直接プラグインすることによって、詳細レベルのセキュリティを追加します。 Oracle WSMでは、真にエンドツーエンドのメッセージレベル・セキュリティが実施されます。認証および暗号化や署名などのメッセージレベル・セキュリティについてはWS-Securityがサポートされ、完全および部分的な暗号化および復号化のステップがサポートされています。

  • 監視: Oracle Web Services Manager Monitorでは、ポリシー実行時にゲートウェイとエージェントからデータが収集され、その結果がグラフィック形式で表示されます。 これによって、管理者は各アプリケーションに対するサービス品質レベルを設定できます。 設定されたターゲットをアプリケーションが超えると、モニターにアラートが表示されます。 また、IT操作スタッフに対しては、ビジネス・プロセスのエンドツーエンドの監視など、重要なWebサービスの状態、パフォーマンス、セキュリティ、使用状況などがリアルタイムで表示されます。 実施コンポーネントのリアルタイム・データ収集機能を利用すると、管理者は、予測と実際のパフォーマンスの差違を分析し、IT操作のベスト・プラクティスが達成されているかどうかを、モニターでリアルタイムに監視できます。これには、Webサービス単位、操作単位およびクライアント単位のセキュリティ違反の監査などが含まれます。 この結果、アプリケーションやサービスの開発方法とは関係なく、すべてのアプリケーションとサービス、および企業とそのパートナにわたるベスト・プラクティスのセキュリティと操作が実現します。

  • 各種プロトコルとサードパーティのプラットフォームに対する総合的なサポート: Oracle WSMは、BEA Systems、IBM、Microsoft、Netegrity、TIBCO、VeriSignなど、多数のWebサービス・プラットフォームおよびプロバイダと協調して動作します。 たとえば、TIBCO BusinessWorksを使用しているサイトでは、Oracle WSMエージェントを導入し、Webサービス・ポリシーを実施するSOAPインターセプタとして機能させることができます。 Oracle WSMでは、HTTP、HTTPS、JMS、IBM WebSphere MQなどの複数のトランスポート、および同期メッセージングと非同期メッセージングも含めた複数のメッセージング・モデルがネイティブにサポートされています。 また、メッセージ・キューイング、フェイルオーバー・ルーティング、構成可能なメッセージ再試行機能など、コンテンツ・ベースのルーティングとビルトインの障害処理機能も備えています。

1.3.6 SOAアプリケーションのデプロイ

Oracle SOA Suiteは、Oracle Application Server 10g リリース3(10.1.3.1.0)のみでなく、主なアプリケーション・サーバーにもデプロイされ、グリッド・コンピューティング・アーキテクチャで高度なパフォーマンス、スケーラビリティおよび高可用性をサポートする新機能を提供します。 動的ワークロード管理、拡張クラスタリング、自動バックアップおよびリカバリ、自動障害時リカバリ、および新規のJMXベースの管理コンソールなどは、このOracle SOA Suiteを、業界唯一のグリッド対応ミドルウェア・ソリューションにすることを目標に設計された新機能です。

Oracle Application Serverは、Spring、Apache Struts、Apache Axis、Apache MyFaces、Hibernate、Tapestry、JUnit、CVS、SubVersion、Ant、Eclipse、Log4Jなどのオープン・ソース・ソフトウェアで動作保証されています。 Oracle Application Server 10gでは、WS-Reliable Messaging、WS-Security、WS-Federation、Web Services Metadata、WSIF、REST Webサービスなど、次世代SOAの構築に必要な多数の標準がサポートされています。

1.3.7 Oracle SOA Suiteの利点

Oracle SOA Suiteでは、次に示す3つの利点によって、最高のTVO(投資価値)を達成できます。

  • アプリケーション開発とデプロイの高速化: 市場における唯一の統合SOAスイートであるOracle SOA Suiteは、アプリケーションの設計から開発、デプロイ、管理までの全体的なコストを大幅に削減します。 アプリケーションの作成から製品化までの時間、それに伴う利益回収期間も短縮されます。 経費が削減され、ソフトウェア技術者および資金を他のプロジェクトに割り当て直すことができます。

  • アプリケーション・デプロイメント・コストの削減: Oracle SOA Suiteは、グリッド・コンピューティングの利用を目的に設計された唯一のSOAスイートであり、モジュール型で低コストのハードウェアおよびストレージにエンタープライズ・アプリケーションをデプロイすることで、コストが削減されます。

  • メンテナンス・コストと管理コストの削減: Oracle SOA Suiteでは、システム・グループ間でソフトウェアのプロビジョニングを自動化し、システムの監視と管理を集中化することによって管理コストが削減されます。 また、IDおよびアクセス管理の集中化によってセキュリティ管理コストも削減されます。

Oracle SOA Suiteは、開発コストとデプロイメント・コストを削減し、その後のメンテナンス・コストも削減することによって、最高のTVO(投資価値)を達成し、最速の投資回収(ROI)を実現します。