この章では、BPELプロセスの設計を可能にするBusiness Process Execution Language(BPEL)、Oracle BPEL Process ManagerおよびOracle JDeveloperの概要について説明します。また、このマニュアルの使用方法の概要、およびOracle BPEL Process Managerとともにインストールされるその他のチュートリアルやデモンストレーションへの参照を示します。
この章の内容は次のとおりです。
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注意: このマニュアルを使用する前に、『Oracle BPEL Process Managerクイック・スタート・ガイド』および『Oracle BPEL Process Manager Order Bookingチュートリアル』で説明するチュートリアルを実行することをお薦めします。これらのチュートリアルでは、BPELプロセスの設計およびデプロイの概要を示しています。 |
BPELは、複数のWebサービスを組み合せて、複数のエンタープライズ間でタスクを共有できるようにするXMLベースの言語です。BPELは、XMLスキーマ、Simple Object Access Protocol(SOAP)およびWeb Services Description Language(WSDL)をベースとしています。BPELは、ビジネス・プロセスのオーケストレーションと実行に関する業界標準を企業に提供します。BPELを使用すると、独立した一連のサービスをエンドツーエンドのプロセス・フローに統合するビジネス・プロセスを設計できます。この統合により、プロセスのコストと複雑さが低減されます。BPEL言語を使用して、次の方法を定義できます。
リモート・サービスに対するXMLメッセージの送信方法と非同期の受信方法
XMLデータ構造の操作方法
イベントおよび例外の管理方法
プロセス実行のパラレル・フローの設計方法
例外発生時に一部のプロセスを元に戻す方法
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関連項目:
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Oracle BPEL Process Managerは、BPEL標準に基づくプロセスの設計、デプロイ、監視および管理を簡単に行うためのフレームワークを提供します。Oracle BPEL Process Managerでは、次の機能がサポートされます。
XML、SOAP、WSDLなどのWebサービス標準
サービス指向アーキテクチャ(SOA)
タスクのパラレル処理
設計時と実行時の両方におけるフォルト処理および例外管理
イベントのタイムアウトおよび通知
長時間実行トランザクションの実装の補正メカニズム
プロセスのスケーラビリティおよび信頼性
プロセスの管理
バージョン・コントロール
ビジネス・フロー履歴をトレースする監査証跡
複数のオペレーティング・システムへのインストール、および複数のアプリケーション・サーバー(Oracle Application Server、BEA WebLogic、JBossなど)とデータベースとの統合
Oracle BPEL Process Managerでは、Oracle JDeveloperの次の機能をサポートして、BPEL機能の価値と使いやすさを高めます。
トランスフォーメーション、ワークフロー、ワークリスト、通知、センサーおよびビジネス・ルール
テクノロジ・アダプタ(ファイル、FTP、データベース、アドバンスト・キューイング(AQ)、Java Messaging Service(JMS)、IBM WebSphere MQおよびOracle E-Business Suite用Oracle Applications)
サード・パーティ・アダプタ(J.D. Edwards OneWorld、PeopleSoft、SAP R/3、Siebel、Tuxedo、CICS、VSAM、IMS/TM、IMS/DBなど)
Oracle BPEL Process Managerは、Oracle Business Activity Monitoring、Oracle Application Server Portal、Oracle Application Server Integration B2BおよびOracle Application Server Integration InterConnectと統合することも可能です。
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関連項目:
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Oracle BPEL Process Managerでは、Oracle JDeveloperを使用したBPELプロセスのグラフィカルな設計がサポートされています。
Oracle JDeveloperは、Java、XMLおよびSQL標準を使用して、アプリケーションおよびWebサービスを構築する統合開発環境(IDE)です。Oracle JDeveloperでは、アプリケーションの設計、コーディング、デバッグ、テスト、プロファイリング、チューニングおよびデプロイのための統合化された機能を提供し、開発ライフ・サイクル全体がサポートされます。ビジュアルで宣言的な開発アプローチとOracle Application Development Framework(ADF)の組合せにより、アプリケーション開発が単純化され、コーディング・タスクが軽減されます。
Oracle JDeveloperでは、BPELをネイティブ・フォーマットとして使用します。つまり、Oracle JDeveloperで作成されたプロセスは、100%移植可能です。Oracle JDeveloperを使用すると、ツールの有用性を損なうことなくBPELソースを表示および変更できます。
要素(アクティビティ)をプロセスにドラッグ・アンド・ドロップし、プロパティ・ページを編集して、BPELプロセスを設計します。これにより、BPELコードを記述する必要がなくなります。BPELプロセスは外部サービス(パートナ・リンク)と統合できます。また、アダプタやサービス(ワークフロー、トランスフォーメーション、通知、センサー、ワークリスト・タスク管理およびビジネス・ルールなど)をプロセスと統合できます。Oracle JDeveloperでは、開発したプロセスをOracle BPEL Serverに直接デプロイできます。これにより、BPELプロセスの開発および保守が容易になります。
Oracle BPEL Process Managerでは、Oracle JDeveloperの次のサービスとアダプタをサポートしています。
トランスフォーメーション、ワークフロー、ワークリスト、通知、センサーおよびビジネス・ルール
テクノロジ・アダプタ(ファイル、FTP、データベース、AQ、JMS、MQおよびOracle Applications)
BPELプロセスを設計中のOracle JDeveloperを図1-1に示します。
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関連項目:
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このマニュアルは、複数の部で構成されています。BPEL開発の主要な概念と機能を紹介し、Oracle BPEL Process ManagerによってBPEL機能の価値と使いやすさがどのように向上するかを説明することを目的としています。このマニュアルの構成を表1-1に示します。
表1-1 開発者ガイドの内容
| 部 | 説明 |
|---|---|
| 第I部「概要」 |
第I部の各章では、次の項目の概要を説明します。
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| 第II部「基本的なBPEL開発の概念とコード・サンプルの確認」 |
第II部の各章では、基本的なBPEL開発の概念および関連するコード・サンプルについて説明します。これらの章は、開発者がBPELの基本機能を理解する上で役立ちます。次の項目について説明します。
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| 第III部「Oracle BPEL Process Managerサービス」 |
第II部で説明した基本的なBPEL開発の概念を正しく理解した後、Oracle BPEL Process Managerで次のサービスをサポートするよう、BPEL機能の価値と使いやすさを高める方法を習得できます。
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| 第IV部「開発およびデプロイのライフ・サイクル」 |
第IV部の各章では、デプロイ済のBPELプロセスをOracle BPEL Controlから実行および管理する方法、BPELプロセスを本番前環境でテストする方法、実行時レポートを作成する方法およびOracleAS Portalと統合する方法について説明します。 |
| 第V部「リファレンス情報」 |
第V部の各付録では、トラブルシューティング、サポートされるアクティビティ、デプロイメント・ディスクリプタのプロパティ、およびXPath式関数に関するリファレンス情報を示します。 |
このマニュアルで説明している内容の他、Oracle BPEL Process Managerの概念を理解し、実際の経験を深めるために、『Oracle BPEL Process Managerクイック・スタート・ガイド』と『Oracle BPEL Process Manager Order Bookingチュートリアル』、一連のデモンストレーション、アクティビティと概念に関する参照資料、およびチュートリアルが提供されています。これらの資料は、Oracle BPEL Process ManagerとともにSOA_Oracle_Home¥bpel¥samplesディレクトリにインストールされます。 これらのサンプルの使用手順は、samplesディレクトリにあるREADME.txtファイルで確認してください。
samplesディレクトリの内容を表1-2に示します。Oracle JDeveloperを使用している場合、「スタート」→「すべてのプログラム」→「Oracle - Oracle_Home」→「Oracle BPEL Process Manager」→「Getting Started with Samples」を選択し、スタート・メニューからこのディレクトリの詳細にアクセスすることもできます。
次の手順を実行すると、サンプル用のBPELプロジェクトを自動的に作成できます。
「アプリケーション・ナビゲータ」でアプリケーションを選択します。
Oracle JDeveloperの「ファイル」メイン・メニューから「開く」を選択します。
使用するサンプルのディレクトリに移動します。
サンプルの.jprファイルを選択します。
これにより、選択したサンプル用のBPELプロジェクトが「アプリケーション・ナビゲータ」に表示されます。
新しいサンプルが定期的に追加されます。Oracle Technology Network(OTN)のOracle BPEL Process Managerサイトに定期的にアクセスし、新しいサンプルのダウンロードに関する情報を確認してください。
http://www.oracle.com/technology/products/ias/bpel/index.html
表1-2 チュートリアル、デモンストレーションおよび参照資料
| ディレクトリ | 説明 |
|---|---|
demos
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一般的なビジネス・シナリオが含まれ、BPELでの実装方法を説明しています。使用可能なデモンストレーションを表1-3で説明します。 |
interop
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次のシステムで実装されたWebサービスとOracle BPEL Process Managerの連携を示す一連のBPELプロジェクトが含まれます。 |
references
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BPEL言語で定義されたアクティビティおよび概念が含まれます。使用可能なアクティビティおよび概念を表1-4で説明します。 |
tutorials
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様々なBPELタスクを対象とした、公開されている一連のBPELプロセスが含まれます。使用可能なチュートリアルを表1-5で説明します。 |
utils
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BPELサンプルで共用される一連のビルディング・ブロック・サービスが含まれます。 |
demosディレクトリに含まれる使用可能なBPELプロセスのデモンストレーションを表1-3に示します。これらのデモンストレーションの実行手順は、これらのディレクトリにあるドキュメントを参照してください。
表1-3 demosディレクトリの内容
referencesディレクトリに含まれる、確認および使用が可能なアクティビティと概念に関する参照資料を表1-4に示します。各bpel.xmlファイルおよび.bpelファイルのコメント行は、アクティビティが使用されている特定の状況を説明しています。
表1-4 referencesディレクトリの内容
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関連項目:
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tutorialsディレクトリに含まれる使用可能なチュートリアルを表1-5に示します。これらのチュートリアルの実行手順は、これらのディレクトリにあるドキュメントを参照してください。
表1-5 tutorialsディレクトリの内容