Oracle WebCenter Framework WebCenterアプリケーションの構築 - ステップ・バイ・ステップ 10g(10.1.3.2.0) E05617-02 |
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この章では、Oracle WebCenter Suiteの概要と機能およびこのマニュアルで使用されるシナリオの概要について説明します。
この章では、次の重要な項目について説明します。
この章を読み終えたら、独自のWebCenterアプリケーションの作成を開始できます。
Wiki、RSS、ブログなどの主要なテクノロジによって世界中の個々人に能力が与えられ、インターネットの展望が変化するにつれて、トランザクションを簡略化するアプリケーションに対するユーザーの要求は顕著になってきています。トランザクションを簡略化する1つの方法は、特定の作業に対応するのにユーザーが必要とするすべての要素をアプリケーションそのものに組み込むことです。図1-1に示す例で考えてみます。
この例では、入社したばかりのユーザーが、会社の保険契約に扶養家族を追加できるアプリケーションを使用しています。トランザクションそのものの周囲に、次のようなユーザーの理解を助けるコンテキストが他にもあることに注意してください。
Oracle WebCenter Suiteまでは、この種のアプリケーションの構築は非常に冗長なプロセスでした。たとえば、アプリケーション・プログラミング・インタフェース(API)での必要に応じて、JCR 1.0 Java Content Repository(JSR 170)内を参照するためのポートレットの作成に使用される受給者シナリオにアクセスすることは可能でした。Oracle WebCenter Suiteでは、サービス指向アーキテクチャ(SOA)の概念を利用することで、これまでユーザーに必要なビジネス・コンポーネントを提供するのに必要とされたフロントエンドの労力を軽減しています。Oracle WebCenter Suiteは、SOAの他にJCR 1.0 Java Content Repository(JSR 170)などの業界標準にも準拠しているため、多種多様なプラグ・アンド・プレイ製品、ツールおよびサービスを使用でき、ユーザーが求めるアプリケーションの構築が簡単になります。図1-2に、Oracle WebCenter Suiteの構成を示します。1
では、これらの構成要素を詳しく見ていきます。
Oracle WebCenter Frameworkは、追加の統合オプションとランタイム・カスタマイズ・オプションを提供することによってJava Server Faces(JSF)環境を補強します。つまり、これまでOracle Application Server Portal(OracleAS Portal)製品に組み込まれていた機能をJSF環境の構造に直接統合します。これにより、ユーザーに対する人為的な障壁が取り除かれ、図1-1に示したようなコンテキスト・リッチなアプリケーションを開発するための基礎が提供されます。
ポートレットを使用すると、Webやデータベースなどからアプリケーションにデータを取り込むことができます。Oracle JDeveloperを使用すると、JSR 168またはWSRP互換のポータルによって使用される標準ベースのポートレットを独自に作成できます。Oracle Application Server Portal Developer Kit(PDK)は機能拡張され、WSRP 2.0で定義されている拡張的なポートレット機能をJava Portlet Standards APIの構造内でサポートできるようになりました。WebCenterアプリケーションからは、JSR 168、WSRP 1.0、WSRP 2.0またはOracle PDK-Javaポートレットをすべて同じアプリケーション内で、あるいは同じページ内でも使用できます。
Preconfigured Oracle Containers for J2EE(OC4J)を介して使用できる、事前に構築されたポートレットがいくつかあります(Preconfigured OC4JはJDeveloperを介して自動的に使用可能になります)。このような2つのポートレット(OmniPortletおよびWebクリッピング)を使用すると、ユーザーは独自のデータを収集できます。これに対し、リッチ・テキスト・ポートレットを使用すると、ユーザーは独自の告知や掲示を公開できます。これらのポートレットは、ページ上にドロップすることで、ユーザーが使用できるようにすることができます。また、これらのポートレットを自分で使用してユーザーのニーズに応じた特定のポートレットを作成することも可能です。
開発者は、(従業員ディレクトリを作成する場合などに)このツールを使用してユーザーのデータを収集および書式設定し、ユーザーが使用できるようにページ上に配置できます。配置されたポートレットは、JDeveloperのコンポーネント・パレットから使用可能になり、他のユーザーはそれぞれのアプリケーションで使用できます。
WebCenter Frameworkには、新しいJSFコンポーネントが用意されており、開発者はアプリケーションをカスタマイズできるようにすることができます。これらの新しいコンポーネントはコンテナとして機能し、開発者はこのコンテナの中に別のFacesビュー・コンポーネントやポートレットをドロップできます。これらの機能が設定されていれば、管理者はページ上のコンポーネントを最小化/最大化、非表示/表示または移動することで、ほとんどのJSFページをカスタマイズできます。
Oracle Content DB、OracleAS Portalなどのコンテンツ管理システム(あるいはファイル・システム上)に存在するデータを、アプリケーションで使用できるようにするとします。WebCenter Frameworkには、そのコンテンツにアクセスするのに必要なJCRアダプタが備わっています。JDeveloperを使用すると、JCRデータ・コントロールを構築してコンテンツをグラブし、様々な表示モードでのページ上にドロップできます。また、WebCenter FrameworkにはOracle Driveが付属しており、これを使用すると、OracleAS Portalリポジトリの内容をデスクトップ上にツリー構造として表すことができます。
WebCenter Frameworkに備わっているOracle ADF拡張機能を使用すると、アプリケーション全体、アプリケーション内のページ、カスタマイズ可能コンポーネントによって提供される個々のアクションに対してセキュリティを定義できます。このマニュアルでは、パブリックにアクセスされるログイン・ページの作成方法について説明します。このログイン・ページでは、ユーザーが資格証明を入力すると様々なページやページ内のコンポーネントにアクセスできるようになります。また、ログイン/ログアウト・リンクを作成する方法および権限を各種ロールに関連付ける方法については、例を示します。
多くの場合、電子メールなどの独自の認証メカニズムを備えた既存のアプリケーションを活用することが望ましいです。WebCenter Frameworkでは、外部アプリケーション・ウィザードを使用してこれらのアプリケーションを埋め込むことができます。詳細は、『Oracle WebCenter Framework開発者ガイド』を参照してください。
WebCenter Frameworkでは、次のような複数のツールを使用することで、アプリケーションの構築、デプロイおよび移行に必要な時間を短縮します。
Oracle WebCenter Servicesには、次のような様々なコンテンツ管理、検索および通信のサービスがあります。
Oracle Content DBは、機能が限定されたファイル・サーバーと、非常に幅広く使用できる専門的で、高価かつ複雑なコンテンツ管理アプリケーションとの間のギャップを埋めるものです。
Oracle JDeveloperは、Java、XML、WebサービスおよびSQLの最新の業界標準を使用してサービス指向アプリケーションを構築するための統合開発環境(IDE)です。Oracle JDeveloperでは、アプリケーションのモデリング、コーディング、デバッグ、テスト、プロファイリング、チューニングおよびデプロイを行うための統合機能により、完全なソフトウェア開発ライフサイクルをサポートしています。Oracle JDeveloperの視覚的で宣言的なアプローチとOracle ADFが連動して機能することにより、アプリケーション開発は簡略化され、日常的なコーディング作業が削減されます。たとえば、多くの標準的なユーザー・インタフェース・ウィジェット(ボタン、値リスト、ナビゲーション・バーなど)のコードが事前にパッケージ化されています。コンポーネント・パレットから適切なウィジェットを選択して、アプリケーション内にドロップするだけです。
このマニュアルを読み進むうちに、Oracle JDeveloperとそのメリットについての理解が深まっていきます。Oracle JDeveloperの詳細は、Oracle JDeveloperの「ヘルプ」メニューからアクセス可能なOracle JDeveloperの開始ページ(図1-3)から、数多くある参考資料の1つにアクセスしてください。
このマニュアルの手順では、ポートレットの追加方法、既存のコンテンツの統合方法、アプリケーションへのカスタマイズの追加方法およびインタラクティビティの作成方法を示します。このようなインタラクティビティには、ポートレット対ポートレットの通信やADF Facesコンポーネント対ポートレットのインタラクティビティがあります。また、実行時に管理者がページをカスタマイズできるようにする方法についても学びます。
このマニュアルでは、顧客サービス・リクエストを追跡管理するための既存のADFアプリケーションを利用し、既存のアプリケーションを変更せずにポータル機能を追加します。このService Requestアプリケーションを使用すると、顧客、技術者および管理者は、サービス・リクエストに関する情報をすべて同じインタフェースから確認できます。シナリオは次の3つです。
顧客
顧客がアプリケーションにログインすると、最新のお知らせおよび既存のサービス・リクエストとその詳細を表示できます(図1-4を参照)。また、これまで購入した製品に関する情報やサービスを提供している企業との現在の契約のリストも表示できます。既存のサービス・リクエストについて、フィードバックを送信することも可能です。
技術者
技術者がアプリケーションにログインすると、自分に割り当てられたサービス・リクエストを表示して(図1-5を参照)、既存のサービス・リクエストを更新できます。
管理者
管理者がアプリケーションにログインすると、実行時に、顧客に表示されるお知らせを更新できます。また、実行時に、コンテンツ・リポジトリ内のコンテンツを使用してページを変更できます。たとえば、現在、新規サービスを顧客が使用できる場合、管理者はこの新規サービスに関する情報を実行時に追加できます。顧客が返してきたフィードバックを検討して、管理者独自のメモを追加することもできます。さらに、ダッシュボード・ページを使用してサイトの統計を表示したり、このダッシュボード・ページをカスタマイズすることも可能です。ダッシュボード・ページには、現在のサービス・リクエストの量、最もアクティブ顧客などが表示されます。管理者は、ある1つのページからサイトの一般管理を実行することもできます。このページでは、スキンの切り替えによるルック・アンド・フィールの変更およびログインのカスタマイズが可能です。図1-6に、アプリケーションの管理者用の表示を示します。
始める前に、サンプル・アプリケーションとサポート・ファイルをダウンロードして設定します。このマニュアルに関連するサンプル・ファイルは、Oracle Technology Network(OTN)のOracle WebCenter Suiteの「Documentation」ページ(http://www.oracle.com/technology/products/webcenter/documentation.html)にあります。SRDemo_App_Download.ZIP
ファイルをダウンロードして解凍し、install.html
ファイルの指示に従ってください。ファイルの設定が終了したら、次の項の説明に従って完成したデモを表示できます。あるいは、第2章「ポートレットの構築」に進んでアプリケーションの構築を開始できます。
サンプル・ファイルのインストールおよび設定を終了すると、完成した作業バージョンのデモを表示できるため、後続の各章で構築するものを確認できます。この項では、デモとその実行時の使用方法について説明します。
デモを実行するには、次のようにします。
http://localhost:8888/SRDemo/faces/app/SRWelcome.jspx
ユーザーID: sking
パスワード: welcome
アプリケーションに作成されているユーザーには、顧客、技術者および管理者の3種類があります。顧客の観点からアプリケーションを表示するには、次の情報を使用してログインします。
顧客は、サービス・リクエストのステータスおよび履歴を表示できます。「MyAcme」タブをクリックし、サービス・リクエストを選択して詳細を表示します。
顧客の観点からアプリケーションを表示するには、次の情報を使用してログインします。
技術者も、顧客のサービス・リクエストのステータスおよび履歴を表示できます。「My Acme」タブをクリックし、オープン・サービス・リクエストの1つを選択してそのサービス・リクエストに関する最新情報を表示します。そのサービス・リクエストは、「My Service Requests」タブで変更できます。
また、顧客が参照できない他のコンポーネントにアクセスできます。「My Acme」ページの「Product Information」サブタブの新規コンポーネント(JSR 168ポートレット)を使用すると、特定の洗濯機や乾燥機などの製品の詳細を表示できます。
最後に、「Schedule On-Site Service」サブタブにアクセスできます。このサブタブでは、外部アプリケーションにより、スケジュール可能な次のオンサイト・サービスを表示できます。
顧客の観点からアプリケーションを表示するには、次の情報を使用してログインします。
管理者は、アプリケーション内で使用可能なすべてのタブを表示できます。「Management」タブをクリックし、「Dashboard」サブタブをクリックしてアプリケーション内のサービス・リクエストに関する情報を表示します。次の詳細情報を確認できます。
df%
と入力して「Search」をクリックし、顧客dfaviet
の契約を表示します。
管理者は、サイト管理者でもあります。再度「Management」タブをクリックし、「Site Administration」をクリックします。使用可能なスキンの1つを選択して、アプリケーションのスキンを変更できます。
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図に示されているコンポーネントの中には、Oracle WebCenter Suiteの初期のリリースでは使用できないものがあります(Presence/IM、ディスカッションおよびWiki)。この章では、Oracle WebCenter Frameworkのこのリリースに関連するコンポーネントについて説明します。
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