Sun Cluster 3.0 U1 データサービスのインストールと構成

第 5 章 Sun Cluster HA for Apache のインストールと構成

この章では、Sun Cluster サーバーに Sun Cluster HA for Apache データサービスをインストールして構成する手順について説明します。

この章の内容は次のとおりです。

Sun Cluster HA for Apache データサービスは、フェイルオーバーサービスまたはスケーラブルサービスとして構成することができます。各サービスの概念については、第 1 章「Sun Cluster データサービスの計画」および『Sun Cluster 3.0 U1 の概念』を参照してください。


注 -

このデータサービスのインストールと構成には、SunPlex Manager が使用できます。詳細は、SunPlex Manager のオンラインヘルプを参照してください。


インストールと構成の計画

Sun Cluster HA for Apache データサービスをインストールする前に、Apache 構成ファイル (httpd.conf) の以下の情報を更新する必要があります。


注 -

Sun Cluster HA for Apache データサービスと別の HTTP サーバーを実行している場合は、HTTP サーバーがそれぞれ異なるポートで待機するように構成してください。異なるポートで待機するように構成しないと、2 つのサーバーの間でポートの衝突が発生します。


Sun Cluster HA for Apache データサービスを登録して構成するには、次の情報を検討し指定する必要があります。

Sun Cluster HA for Apache のインストールと構成

表 5-1 に、インストールと構成作業について説明している節を示します。

表 5-1 作業マップ: Sun Cluster HA for Apache のインストールと構成

作業 

参照個所 

Apache ソフトウェアのインストール 

「Apache Web サイトから Apache アプリケーションソフトウェアをインストールして構成する」

Sun Cluster HA for Apache データサービスパッケージのインストール 

「Sun Cluster HA for Apache パッケージをインストールする」

Sun Cluster HA for Apache データサービスの構成と起動 

「Sun Cluster HA for Apache を登録して構成する」

リソース拡張プロパティの構成 

「データサービスのインストールと構成を確認する」

障害モニターの情報の表示 

「Sun Cluster HA for Apache の障害モニター」

Apache のインストールと構成

この節では、Apache サーバーを Solaris 8 オペレーティング環境 CD-ROM か Apache Web サイトからインストールし、サーバーを Sun Cluster HA for Apache データサービスとして動作するように設定する方法について説明します。

Sun Cluster HA for Apache データサービスは、Web サーバーまたはプロキシサーバーとして構成された Apache ソフトウェアで動作します。

一般的なインストール手順については、Apache の Web サイト (http://www.apache.org) を参照してください。Sun Cluster ソフトウェアでサポートされている Apache リリースの一覧については、『Sun Cluster 3.0 U1 ご使用にあたって』を参照してください。

Apache アプリケーションソフトウェアを Solaris 8 CD-ROM からインストールして構成する

Apache バイナリは、SUNWapchrSUNWapchuSUNWapchd という 3 つのパッケージに格納されています。これらのパッケージは、全体として SUNWCapache パッケージメタクラスタを構成しています。必ず SUNWapchr パッケージをインストールしてから SUNWapchu パッケージをインストールする必要があります。

この Web サーバーのバイナリは、各クラスタノードのローカルファイルシステムに置くことも、クラスタファイルシステムに置くこともできます。

  1. pkginfo(1) コマンドを実行して、Apache パッケージの SUNWapchrSUNWapchuSUNWapchd がインストールされているかどうかを判定します。

    インストールされていない場合は、次の手順に従ってインストールします。


    # pkgadd -d Solaris 8 Product directory SUNWapchr SUNWapchu SUNWapchd
    ...
    Installing Apache Web Server (root) as SUNWapchr
    ...
    [ verifying class initd ]
    /etc/rc0.d/K16apache linked pathname
    /etc/rc1.d/K16apache linked pathname
    /etc/rc2.d/K16apache linked pathname
    /etc/rc3.d/S50apache linked pathname
    /etc/rcS.d/K16apache linked pathname
    ...
  2. SUNWapchr パッケージの一部としてインストールしたばかりの STARTSTOP 実行制御スクリプトを無効にします。

    Sun Cluster HA for Apache データサービスは、その構成を行ったあとで Apache アプリケーションの起動と停止を行います。そのため、これらのスクリプトを無効にする必要があります。次の各手順を実行します。

    1. Apache 実行制御スクリプトをリストする。

    2. Apache 実行制御スクリプトの名前を変更する。

    3. Apache に関連するすべてのスクリプトの名前が変更されていることを確認する。


    注 -

    次の例では、実行制御スクリプト名の最初の文字を大文字から小文字に変更しています。しかし、スクリプト名は、ユーザーの通常の管理規則に従って変更することができます。



    # ls -1 /etc/rc?.d/*apache
    /etc/rc0.d/K16apache
    /etc/rc1.d/K16apache
    /etc/rc2.d/K16apache
    /etc/rc3.d/S50apache
    /etc/rcS.d/K16apache
     
    # mv /etc/rc0.d/K16apache  /etc/rc0.d/k16apache
    # mv /etc/rc1.d/K16apache  /etc/rc1.d/k16apache
    # mv /etc/rc2.d/K16apache  /etc/rc2.d/k16apachc
    # mv /etc/rc3.d/S50apache  /etc/rc3.d/s50apache
    # mv /etc/rcS.d/K16apache  /etc/rcS.d/k16apache
     
    # ls -1 /etc/rc?.d/*apache
    /etc/rc0.d/k16apache
    /etc/rc1.d/k16apache
    /etc/rc2.d/k16apache
    /etc/rc3.d/s50apache
    /etc/rcS.d/k16apache

Apache Web サイトから Apache アプリケーションソフトウェアをインストールして構成する

  1. クラスタメンバーでスーパーユーザーになります。

  2. Apache のマニュアルに記述されている手順に従って Apache ソフトウェアをインストールします。

    Apache ソフトウェアに付属のマニュアル、または Apache の Web サイト (http://www.apache.org) を参照してください。

  3. httpd.conf 構成ファイルを更新します。

    • ServerName 命令を設定する。

    • BindAddress 命令を設定する (任意)。

    • Set the ServerType, ServerRoot, DocumentRoot, ScriptAlias, and LockFile 命令を設定する。

    • Port 命令を Port_list 標準リソースプロパティと同じ番号に設定する。詳細は、手順 4 を参照してください。

    • Apache ソフトウェアをプロキシサーバーとして実行する場合は、プロキシサーバーとして実行するための変更を行う。詳細は、Apache のマニュアルを参照してください。Apache ソフトウェアをプロキシサーバーとして実行する場合は、CacheRoot 設定で、クラスタファイルシステム上の場所を示す必要があります。

  4. httpd.conf ファイル内のポート番号が、Port_list 標準リソースプロパティのポート番号と一致していることを確認します。

    httpd.conf 構成ファイルを編集し、標準の Sun Cluster リソースプロパティのデフォルト (ポート 80) と一致するようにポート番号を変更できます。または、Sun Cluster HA for Apache データサービスを構成するときに、httpd.conf ファイル内の設定と一致するように Port_list を設定できます。

  5. (任意) Apache の起動/停止スクリプトの Bin_dir/apachectl を使用する場合は、スクリプトファイルのパスを更新します。

    Apache のデフォルトのパスを変更し、Apache のディレクトリ構造と一致させてください。

  6. 次のタスクを実行して構成の変更内容を確認します。

    1. apachectl configtest を実行し、Apache の httpd.conf ファイルが正しい構文になっているかどうかを確認してください。

    2. Apache が使用する論理ホスト名または共有アドレスが、正しく構成されておりオンラインになっていることを確認してください。

    3. apachectl start を実行することによって、Apache サーバーを手作業で起動します。Apache が正しく起動しない場合は、問題を修正してください。

    4. Apache の起動後、次の手順に移行する前に停止します。

次の作業

Apache のデータサービスパッケージが Sun Cluster Agents CD からインストールされていない場合は、「Sun Cluster HA for Apache パッケージのインストール」へ進みます。パッケージがインストールされている場合は、「Sun Cluster HA for Apache の登録と構成」へ進みます。

Sun Cluster HA for Apache パッケージのインストール

scinstall(1M) ユーティリィティにより、Sun Cluster HA for Apache データサービスパッケージ (SUNWscapc) をクラスタにインストールできます。このときに、非対話型の scinstall にすべてのデータサービスパッケージをインストールする -s オプションを指定しないでください。

ISun Cluster のインストール時にこのデータサービスパッケージをすでにインストールしている場合は、「Sun Cluster HA for Apache の登録と構成」に進んでください。まだインストールしていない場合は、次の手順に従って SUNWscapc パッケージをインストールします。

Sun Cluster HA for Apache パッケージをインストールする

この手順を実行するには、Sun Cluster Agents CD が必要です。Sun Cluster HA for Apache データサービスをマスターできるすべてのクラスタメンバーで、この手順を実行してください。

  1. Agents CD を CD-ROM ドライブに挿入します。

  2. オプションは指定せずに、scinstall ユーティリティを実行します。

    scinstall ユーティリティが対話型モードで起動します。

  3. 「Add support for new data service to this cluster node.」メニューオプションを選択します。

    このオプションは、CD 内にある任意のデータサービスのソフトウェアを読み込むことができます。

  4. scinstall ユーティリティを終了します。

  5. ライブから CD を取り出します。

次の作業

Sun Cluster HA for Apache データサービスを登録し、データサービス用にクラスタを構成するには、「Sun Cluster HA for Apache を登録して構成する」を参照してください。

Sun Cluster HA for Apache の登録と構成

この手順では、scrgadm(1M) コマンドを使って Sun Cluster HA for Apache データサービスの登録と構成を行う方法を説明します。

Apache は、フェイルオーバーサービスまたはスケーラブルサービスとして構成できます。

スケーラブルリソースグループはフェイルオーバーリソースグループに依存します。Apache をスケーラブルサービスとして構成する場合には、追加の手順が必要になります。このような手順には、その先頭部分に「スケーラブルサービスのみ」という表示をして区別します。Apache をスケーラブルサービスとして構成しない場合は、これらの手順は省略してください。

Sun Cluster HA for Apache を登録して構成する


注 -

任意のクラスタメンバーでこの手順を実行してください。


  1. クラスタメンバーでスーパーユーザーになります。

  2. データサービスのリソースタイプを登録します。


    # scrgadm -a -t SUNW.apache
    
    -a

    データサービスのリソースタイプを追加します。

    -t SUNW.apache

    データサービス用に事前に定義したリソースタイプ名を指定します。

  3. ネットワークリソースとアプリケーションリソースを保持するフェイルオーバーリソースグループを作成します。

    このリソースグループは、フェイルオーバーサービスとスケーラブルサービスの両方に必要です。フェイルオーバーサービスの場合、このリソースグループはネットワークリソースとフェイルオーバーアプリケーションリソースの両方を含みます。スケーラブルサービスの場合、ネットワークリソースのみを含みます。このグループとアプリケーションリソースを含むリソースグループとの間に、依存性が作成されます。

    必要に応じて、-h オプションを指定してデータサービスを実行できる一群のノードを選択することもできます。


    # scrgadm -a -g resource-group [-h nodelist]
    -a

    新しい構成を追加します。

    -g resource-group

    追加するフェイルオーバーリソースグループの名前を指定します。任意の名前を指定できますが、クラスタ内で一意のリソースグループにする必要があります。

    -h nodelist

    潜在的マスターを識別する物理ノード名または ID をコンマで区切って指定します (任意)。フェイルオーバー時は、この順序で主ノードが決まります。


    注 -

    -h を使用してノードリストの順序を指定します。クラスタ内のすべてのノードが潜在的マスターの場合、-h オプションを使用する必要はありません。


  4. 使用しているすべてのネットワークアドレスが、ネームサービスデータベースに追加されていることを確認します。

    Sun Cluster を始めてインストールするときに、この確認を行います。詳細は、『Sun Cluster 3.0 U1 ソフトウェアのインストール』の計画に関する章を参照してください。


    注 -

    ネームサービスの検索が原因で障害が発生するのを防ぐために、すべてのクラスタノードの /etc/hosts ファイルに、すべてのネットワークアドレスが登録されていることを確認してください。サーバーの /etc/nsswitch.conf ファイルのネームサービスマッピングは、NIS、NIS+、DNS にアクセスする前に、最初にローカルファイルを検査するように構成してください。


  5. ネットワークリソース (論理ホスト名または共有アドレス) を、手順 3 で作成したフェイルオーバーリソースグループに追加します。


    # scrgadm -a {-S | -L} -g resource-group ¥
    -l hostname, ... [-j resource] ¥
    [-X auxnodelist] [-n netiflist]
    -S | -L

    共有アドレスリソースには -S オプションを、論理ホスト名リソースには -L オプションを使用します。

    -l hostname, ...

    追加するネットワークリソースをコンマで区切って指定します。-j オプションを使用してリソース名を指定できます。リソース名を指定しないと、ネットワークリソースの名前は、コンマで区切ったリストの最初の名前になります。

    -g resource-group

    手順 3 で作成したフェイルオーバーリソースグループ名を指定します。

    -j resource

    リソースの名前を指定します。リソース名を指定しない場合、ネットワークリソース名は、デフォルトで -l オプションで最初に指定した名前になります。

    -X auxnodelist

    共有アドレスをホストできるクラスタノード (ただし、フェイルオーバー時に主ノードとして使用されない) を識別する物理ノード名またはノード ID をコンマで区切って指定します。このオプションを指定した場合は、これらのノードは、リソースグループの nodelist で指定されるノードと相互に排他的になります。

    -n netiflist

    各ノードの NAFO グループをコンマで区切って指定します (任意)。リソースグループの nodelist 内のすべてのノードが、netiflist に含まれている必要があります。このオプションを指定しない場合は、scrgadm は、nodelist 内の各ノードの hostname リストによって指定されるサブネット上からネットアダプタを見つけようとします。

  6. スケーラブルサービスのみ: クラスタ内の希望するすべてのノードで実行するスケーラブルリソースグループを作成します。

    Sun Cluster HA for Apache データサービスをフェイルオーバーデータサービスとして実行している場合は、手順 8 へ進んでください。

    データサービスアプリケーションリソースを保持するリソースグループを作成します。主ノードの最大数と希望数を指定する必要があります。


    注 -

    このリソースグループの主ノードとしてノード群の一部しか使用しない場合は、リソースグループを作成するときに、-h オプションを使ってこれらの主ノードの名前を指定する必要があります。


    このリソースグループと 手順 3 で作成したフェイルオーバーリソースグループとの間の依存性についても指定する必要があります。この依存性によって、フェイルオーバー時に 2 つのリソースグループが同じノードでオンラインになったとき、Resource Group Manager (RGM) は、ネットワークリソースに依存する任意のデータサービスが開始される前に、そのネットワークリソースを開始できます。


    # scrgadm -a -g resource-group ¥
    -y Maximum_primaries=m -y Desired_primaries=n ¥
    -y RG_dependencies=resource-group ¥
    [-h nodelist]
    -g resource-group

    追加するスケーラブルサービスリソースグループの名前を指定します。

    -y Maximum_primaries=m

    このリソースグループに許可するアクティブ主ノードの最大数を指定します。このプロパティに値を指定しない場合は、デフォルトの 1 になります。

    -y Desired_primaries=n

    このリソースグループに許可するアクティブ主ノードの希望数を指定します。このプロパティに値を指定しない場合は、デフォルトの 1 になります。

    -y RG_dependencies= resource-group

    作成されたリソースグループが依存する、共有アドレスリソースを含むリソースグループを指定します。これは、手順 3 で作成したフェイルオーバーリソースグループの名前です。

    -h nodelist

    このリソースグループの主ノードとして使用できるノードのリスト (オプション)。このリストは、リソースグループの主ノードとして使用できないノードがあるときだけ指定します。

  7. スケーラブルサービスのみ: スケーラブルリソースグループにアプリケーションリソースを作成します。

    Sun Cluster HA for Apache データサービスをフェイルオーバーデータサービスとして実行している場合は、手順 8 へ進んでください。


    # scrgadm -a -j resource -g resource-group ¥
    -t resource-type -y Network_resources_used=network-resource, ... ¥
    -y Port_list=port-number/protocol[, ...] -y Scalable=True ¥ 
    -x Confdir_list=config-directory -x Bin_dir=bin-directory
    
    -j resource

    追加するリソースの名前を指定します。

    -g resource-group

    リソースが配置されるスケーラブルリソースグループの名前を指定します。

    -t resource-type

    追加するリソースの種類を指定します。

    -y Network_resources_used= network-resource, ...

    データサービスが使用する共有アドレスを指定するネットワークリソース名をコンマで区切って指定します。

    -y Port_list=port-number/protocol, ...

    使用するポート番号とプロトコルをコンマで区切って指定します (例: 80/tcp,81/tcp)。

    -y Scalable=

    スケーラブルサービスの必須パラメータを指定します。True に設定してください。

    -x Confdir_list=config-directory, ...

    Apache 構成ファイルの場所をコンマで区切って指定します。Sun Cluster HA for Apache データサービスはこの拡張プロパティを必要とします。

    -x Bin_dir=bin-directory

    Apache バイナリをインストールする場所を指定します。Sun Cluster HA for Apache データサービスはこの拡張プロパティを必要とします。


    注 -

    必要に応じて、Apache データサービスに属する拡張プロパティをさらに設定し、デフォルト値を上書きできます。追加の拡張プロパティについては、表 5-2 を参照してください。


  8. フェイルオーバーサービスのみ: フェイルオーバーリソースグループにアプリケーションリソースを作成します。

    ここで説明する手順は、Sun Cluster HA for Apache データサービスをフェイルオーバーデータサービスとして使用している場合にのみ実行してください。Sun Cluster HA for Apache データサービスをスケーラブルサービスとして使用している場合は、手順 6 および 手順 7 を実行し、手順 10 へ進んでください。


    # scrgadm -a -j resource -g resource-group ¥
    -t resource-type -y Network_resources_used=network-resource, ... ¥
    -y Port_list=port-number/protocol[, ...] -y Scalable=False ¥ 
    -x Confdir_list=config-directory -x Bin_dir=bin-directory
    
    -j resource

    追加するリソースの名前を指定します。

    -g resource-group

    リソースが配置されるリソースグループの名前を指定します。これは、手順 3 で作成したものです。

    -t resource-type

    追加するリソースの種類を指定します。

    -y Network_resources_used= network-resource, ...

    追加するリソースの種類を指定します。

    -y Port_list=port-number/protocol, ...

    使用するポート番号とプロトコルをコンマで区切って指定します (例: 80/tcp,81/tcp)。

    -y Scalable=

    このプロパティは、スケーラブルサービスにのみ必要です。False に設定するか省略します。

    -x Confdir_list=config-directory

    Apache 構成ファイルの場所を指定します。Sun Cluster HA for Apache データサービスはこの拡張プロパティを必要とします。エントリは 1 つだけです。

    -x Bin_dir=bin-directory

    Apache バイナリをインストールする場所を指定します。Sun Cluster HA for Apache データサービスはこの拡張プロパティを必要とします。

  9. フェイルオーバーリソースグループをオンラインにします。


    # scswitch -Z -g resource-group
    
    -Z

    共有アドレスリソースと障害モニターを有効に設定し、リソースグループを管理状態に切り替え、オンラインにします。

    -g resource-group

    フェイルオーバーリソースグループの名前を指定します。

  10. スケーラブルサービスのみ:スケーラブルリソースグループをオンラインにします。


    # scswitch -Z -g resource-group
    
    -Z

    リソースとモニターを有効に設定し、リソースグループを管理状態にし、オンラインにします。

    -g resource-group

    スケーラブルリソースグループの名前を指定します。

例 -スケーラブル Sun Cluster HA for Apache の登録

スケーラブルサービスの場合、次のリソースグループを作成します。

次に、スケーラブル Apache サービスを 2 ノードクラスタに登録する例を示します。


Cluster Information
Node names: phys-schost-1, phys-schost-2
Shared address: schost-1
Resource groups: resource-group-1 (共有アドレスの場合), 
	resource-group-2 (スケーラブル Apache アプリケーションリソースの場合)
Resources: schost-1 (共有アドレス), 
apache-1 (アプリケーションリソース)
 
(フェイルオーバーリソースグループを追加して共有アドレスを含む)
# scrgadm -a -g resource-group-1
 
(共有アドレスリソースをフェイルオーバーリソースグループに追加する)
# scrgadm -a -S -g resource-group-1 -l schost-1 
 
(Apache リソースタイプを登録する)
# scrgadm -a -t SUNW.apache
 
(スケーラブルリソースグループを追加する)
# scrgadm -a -g resource-group-2 -y Maximum_primaries=2 ¥
-y Desired_primaries=2 -y RG_dependencies=resource-group-1
 
(Apache アプリケーションリソースをスケーラブルリソースグループに追加する)
# scrgadm -a -j apache-1 -g resource-group-2 ¥
-t SUNW.apache -y Network_resources_used=schost-1 ¥
-y Scalable=True -y Port_list=80/tcp ¥
-x Bin_dir=/opt/apache/bin -x Confdir_list=/opt/apache/conf
 
(フェイルオーバーリソースグループをオンラインにする)
# scswitch -Z -g resource-group-1
 
(両方のノードで、スケーラブルリソースグループをオンラインにする)
# scswitch -Z -g resource-group-2

例 - フェイルオーバー Sun Cluster HA for Apache の登録

次に、フェイルオーバー Apache サービスを 2 ノードクラスタで登録する例を示します。


Cluster Information
Node names: phys-schost-1, phys-schost-2
Logical hostname: schost-1
Resource group: resource-group-1 (すべてのリソースの場合)
Resources: schost-1 (論理ホスト名),
	apache-1 (Apache アプリケーションリソース)
 
(フェイルオーバーリソースグループを追加してすべてのリソースを含む)
# scrgadm -a -g resource-group-1
 
(論理ホスト名リソースをフェイルオーバーリソースグループに追加する)
# scrgadm -a -L -g resource-group-1 -l schost-1 
 
(Apache リソースタイプを登録する)
# scrgadm -a -t SUNW.apache
 
(Apache アプリケーションリソースをフェイルオーバーリソースグループに追加する)
# scrgadm -a -j apache-1 -g resource-group-1 ¥
-t SUNW.apache -y Network_resources_used=schost-1 ¥
-y Scalable=False -y Port_list=80/tcp ¥
-x Bin_dir=/opt/apache/bin -x Confdir_list=/opt/apache/conf
 
(フェイルオーバーリソースグループをオンラインにする)
# scswitch -Z -g resource-group-1

次の作業

「データサービスのインストールと構成を確認する」を参照し、インストールを確認してください。リソース拡張プロパティを設定または変更する場合は、「データサービスのインストールと構成を確認する」を参照してください。

SUNW.HAStorage リソースタイプを構成する

SUNW.HAStorage リソースタイプは、HA 記憶装置とデータサービス間の動作を同期させます。Sun Cluster HA for Apache データサービスはスケーラブルなので、SUNW.HAStorage リソースタイプを設定する必要があります。

このリソースタイプの詳細については、SUNW.HAStorage(5) のマニュアルページおよび 「リソースグループとディスクデバイスグループの関連性」を参照してください。設定手順については、「新しいリソース用に SUNW.HAStorage リソースタイプを設定する」を参照してください。

データサービスのインストールと構成を確認する

Sun Cluster HA for Apache データサービスを構成した後、ネットワークリソース (論理ホスト名または共有アドレス) およびポート番号を使用し、Web ブラウザから Web ページを表示できることを確認します。scswitch(1M) コマンドを使用してスイッチオーバーを実行し、サービスが引き続き二次ノードでも実行でき、さらに元の主ノードに戻すことができることを確認してください。

データサービスのインストールと構成を確認する

Apache サーバーリソースを作成するための必須拡張プロパティは、Confdir_listBin_dir プロパティだけです。Confdir_list プロパティは、conf という名前のサブディレクトリを含むディレクトリを指定します。conf には、Apache の構成プロパティ (httpd.conf) が存在します。

通常、拡張プロパティは、Apache サーバーリソースを作成するときに、コマンド行から scrgadm -xparameter=value を実行して構成します。拡張プロパティは、第 11 章「データサービスリソースの管理」に示す手順を使って後で構成することもできます。

すべての Sun Cluster プロパティについての詳細は、付録 A 「標準プロパティ」 を参照してください。.

拡張プロパティによっては、動的に更新できるものもあります。ただし、それ以外の拡張プロパティは、Apache サーバーリソースを作成するときにしか更新できません。次の表は、Apache サーバー用に構成できる拡張プロパティの説明です。「調整」の列は、各プロパティをいつ更新できるかを示しています。

表 5-2 表 5-2 Sun Cluster HA for Apache 拡張プロパティ

名前/データタイプ 

デフォルト 

範囲 

調整 

説明 

Bin_dir (文字列)

なし 

なし 

作成時 

Apache バイナリへのパス。Sun Cluster HA for Apache データサービスはこの拡張プロパティを必要とします。 

Confdir_ list (文字配列)

なし 

なし 

作成時 

conf サブディレクトリを含むディレクトリ。conf は、httpd.conf 構成ファイルを含みます。Sun Cluster HA for Apache データサービスはこの拡張プロパティを必要とします。

Monitor_ retry_ count (整数)

4

0 - 2,147,483,641

 

-1 は、再試行の数が無限であることを示す。 

作成時 

障害モニターの再起動を制御するとともに、 Monitor_retry_ interval プロパティで指定された時間の範囲内に、プロセスモニター機能 (PMF) が障害モニターを何回再起動するかを示します。このプロパティは、障害モニターの再起動について制御するのであって、リソースの再起動を制御するわけではありません。リソースの再起動は、システム定義プロパティの Retry_interval および Retry_count によって制御されます。

Monitor_ retry_ interval (整数)

2

0 - 2,147,483,641

 

-1 は、再試行の間隔が無限であることを示す。 

作成時 

障害モニターの失敗がカウントされる期間 (分)。この期間内に、障害モニターの失敗の数が、拡張プロパティ Monitor_retry_ count で指定した値を超えた場合、PMF は障害モニターを再起動しません。

Probe_ timeout (整数)

30

0 - 2,147,483,641

作成時 

Apache インスタンスの検証に障害モニターが使用するタイムアウト値 (秒)。 

Sun Cluster HA for Apache の障害モニター

Sun Cluster HA for Apache の検証機能は、Apache サーバーの状態を照会する要求をサーバーに送信します。検証機能が実際に Apache サーバーを照会する前に、ネットワークリソースがこの Apache リソース用に構成されていることの確認が行われます。ネットワークリソースが構成されていない場合は、エラーメッセージ (No network resources found for resource.) が記録され、検証はエラーとなり終了します。

検証機能は、次のことを行います。

  1. Probe_timeout リソースプロパティで設定されたタイムアウト値を使用し、Apache サーバーを正常に検証するための試行時間を制限します。

  2. Apache サーバーに接続し、HTTP 要求を送信して応答を受信することで、HTTP 1.0 HEAD 検査を実行します。検証機能は、各 IP アドレスとポートの組み合わせで Apache サーバーに順番に接続します。

    この照会の結果は、異常か正常のどちらかになります。検証機能が Apache サーバーからの応答を正常に受信した場合、検証機能は無限ループに戻り、検証と休止の次のサイクルを開始します。

    照会は、ネットワークトラフィックの混雑、過剰なシステム負荷、不適切な構成など、さまざまな理由によって失敗します。不適切な構成は、検証される IP アドレスとポートのすべての組み合わせに対し、Apache サーバーが待機するように構成されていない場合に生じます。Apache サーバーは、このリソースに指定した各 IP アドレスに対し、それぞれポートを提供する必要があります。 Probe_timeout で指定した制限内 (前の手順 1 で指定) に照会に対する応答を受信しない場合は、検証機能は、Apache データサービスの一部で異常が発生したと判断し、履歴に異常を記録します。Apache の検証異常は、致命的な異常、または一部の異常になります。

    致命的な異常とみなされる検証異常は、以下のとおりです。

    • サーバーへの接続に失敗した場合。次のエラーメッセージが表示されます。 %s はホスト名、%d はポート番号です。


      Failed to connect to %s port %d %s
    • サーバーに接続しようとしてタイムアウト (Probe_timeout リソースプロパティのタイムアウト値を超過) した場合。

    • 検証文字列をサーバーに送信することに失敗した場合。次のエラーメッセージが表示されます。最初の %s はホスト名、%d はポート番号です。最後の %s はエラーの詳細です。


      Failed to communicate with server %s port %d: %s

    モニターは、Retry_interval リソースプロパティで指定した期間内で、以下に示す 2 つの一部の異常を累積し、1 つの致命的な異常としてカウントします。

    部分的に異常とみなされる検証の障害は次のとおりです。

    • 検証機能による照会に対し、サーバーからの応答を読み取ろうとしてタイムアウト (Probe_timeout リソースプロパティのタイムアウト値を超過) した場合。

    • その他の理由によってサーバーからデータを読み取ることに失敗した場合。次のエラーメッセージが表示されます。最初の %s はホスト名、%d はポート番号です。最後の %s はエラーの詳細です。


      Failed to communicate with server %s port %d: %s

  3. 異常履歴に基づいて、データサービスのローカルでの再起動、またはデータサービスのフェイルオーバーのいずれかを実行します。詳細は、「データサービスの状態の検査」を参照してください。