この節では、構成する Sun Cluster コンポーネントのガイドラインについて説明します。
適当な構成ワークシートに、次の情報を追加してください。
表 1–4 Sun Cluster 構成のワークシート
構成のワークシート |
保存場所 |
---|---|
クラスタ名は、Sun Cluster の構成の際に指定します。クラスタ名は、インストール環境全体で一意にする必要があります。
ノード名とは、Solaris OS のインストール中にマシンに割り当てる名前のことです。Sun Cluster の構成中に、クラスタとしてインストールするすべてのノード名を指定します。単一ノードのクラスタインストールでは、デフォルトのノード名とクラスタ名とが同じになります。
単一ノードのクラスタの場合、プライベートネットワークを構成する必要はありません。
Sun Cluster ソフトウェアは、ノード間の内部通信にプライベートネットワークを使用します。Sun Cluster 構成では、プライベートネットワーク上のクラスタインターコネクトへの接続が少なくとも 2 つ必要です。クラスタの最初のノードに Sun Cluster ソフトウェアを構成するときに、プライベートネットワークアドレスとネットマスクを指定します。デフォルトのプライベートネットワークアドレス (172.16.0.0) とネットマスク (255.255.0.0) をそのまま使用するように選択するか、デフォルトのネットワークアドレスがすでに使用中の場合は別のアドレスを入力できます。
インストールユーティリティー (scinstall、SunPlex Installer または JumpStart) が処理を完了し、クラスタを確立した後で、プライベートネットワークアドレスとネットマスクを変更することはできません。別のプライベートネットワークアドレスとネットマスクを使用するには、クラスタソフトウェアをいったんアンインストール後、再インストールしてください。
デフォルト以外のプライベートネットワークアドレスを指定する場合は、アドレスは次の条件を満たす必要があります。
デフォルトのアドレス 172.16.0.0 と同じように、アドレスの最後の 2 つのオクテットに 0 を使用する必要があります。Sun Cluster ソフトウェアは、最後にソフトウェア自身が使用する 16 ビットのアドレス空間が必要です。
アドレスは、RFC 1918 がプライベートネットワークで使用するために予約しているアドレスのブロックに含まれる必要があります。InterNIC に問い合わせて RFC のコピーを入手するか、http://www.rfcs.org でオンラインで RFC を表示できます。
複数のクラスタ上で同じプライベートネットワークアドレスを使用できます。プライベート IP ネットワークアドレスは、クラスタ外からはアクセスできません。
Sun Cluster ソフトウェアは、プライベート接続用に IPv6 アドレスをサポートしていません。
scinstall ユーティリティーにより、代替ネットマスクを指定できますが、ベストプラクティスはデフォルトのネットマスク 255.255.0.0を使用します。これより大規模なネットワークを表すネットマスクを指定しても利点はありません。また、scinstall ユーティリティーは、これより小さなネットワークを表すネットマスクを使用できません。
プライベートネットワークについての詳細は、『Solaris のシステム管理 (第 3 巻)』(Solaris 8) の「TCP/IP ネットワークの計画」を参照するか、『Solaris のシステム管理 (IP サービス) 』(Solaris 9) の「TCP/IP ネットワークの計画 (手順)」を参照してください。
プライベートホスト名とは、プライベートネットワークインタフェースを介したノード間の通信に使用される名前のことです。プライベートホスト名は、Sun Cluster の構成中に自動的に作成されます。これらのプライベートホスト名は、clusternodenodeid-priv という命名規則に従います。ここで、nodeid は、内部ノード ID の数値になります。ノード ID 番号は、Sun Cluster の構成中に各ノードがクラスタメンバーとなる際に、自動的に各ノードに割り当てられます。クラスタの構成後に、scsetup(1M) ユーティリティーを使用してプライベートホスト名を変更できます。
単一ノードのクラスタの場合、クラスタインターコネクトを構成する必要はありません。ただし、単一ノードのクラスタ構成に後でノードを追加する可能性がある場合は、将来の使用のためにクラスタインターコネクトを構成することもできます。
クラスタインターコネクトは、クラスタノード間のプライベートネットワーク通信にハードウェアパスを提供します。各インターコネクトは、次のいずれかの方法で接続されるケーブルで構成されます。
2 つのトランスポートアダプタの間
トランスポートアダプタとトランスポート接続点の間
2 つのトランスポート接続点の間
Sun Cluster の構成中に、2 つのクラスタインターコネクトに対して以下の構成情報を指定します。
トランスポートアダプタ – ネットワークインタフェースのポートなどのトランスポートアダプタ用に、トランスポートアダプタ名とトランスポートの種類を指定します。構成が 2 ノードクラスタの場合は、インターコネクトを直接接続 (アダプタからアダプタ) するか、トランスポート接続点を使用するかも指定します。2 ノードクラスタが直接接続されている場合でも、インターコネクトのトランスポート接続点を指定できます。
トランスポート接続点を指定すると、その後クラスタに別のノードを追加しやすくなります。
SBus SCI アダプタ – SBus SCI (Scalable Coherent Interface) はクラスタインターコネクトとしてサポートされていません。ただし、SCI–PCI インタフェースはサポートされています。
論理ネットワークインタフェース – 論理ネットワークインタフェースは、Sun Cluster ソフトウェアで使用するために予約されています。
特定のトランスポートアダプタに関する詳細については、scconf_trans_adap_*(1M) のマニュアルページを参照してください。
トランスポート接続点 – ネットワークスイッチなどのトランスポート接続点を使用する場合は、各インターコネクトのトランスポート接続点名を指定します。デフォルト名の switchN (N は、構成中に自動的に割り当てられた数)を使用するか、他の名前を作成します。例外は、接続点名 sw-rsmN が必要な Sun Firelink アダプタです。scinstall ユーティリティーは、ユーザーが Sun Firelink アダプタ (wrsmN) を指定した後、この接続点名を自動的に使用します。
また、接続点のポート名を指定するか、デフォルト名をそのまま使用します。デフォルトのポート名は、ケーブルのアダプタ側が接続されているノードの内部ノード ID 番号と同じです。ただし、SCI-PCI などの特定の種類のアダプタではデフォルトのポート名は使用できません。
3 つ以上のノードを持つクラスタでは、必ずトランスポート接続点を使用してください。クラスタノード間の直接接続は、2 ノードクラスタの場合だけサポートされています。
クラスタの確立後に、scsetup(1M) ユーティリティーを使用して、追加のプライベートネットワーク接続を構成できます。
クラスタインターコネクトの詳細については、『Sun Cluster の概要 (Solaris OS 版)』の「クラスタインターコネクト」と『Sun Cluster の概念 (Solaris OS 版)』を参照してください。
「パブリックネットワークのワークシート」に次の計画情報を追加してください。
ネットワークアダプタフェイルオーバー (NAFO) グループに代わるインターネットプロトコル (IP) ネットワークマルチパスグループは、パブリックネットワークアダプタの監視とフェイルオーバーを提供し、 ネットワークアドレスリソースの基盤構造です。マルチパスグループは、 2 つ以上のアダプタで構成されている場合に、高い可用性を提供します。1 つのアダプタで障害が発生しても、障害のあるアダプタ上のすべてのアドレスが、マルチパスグループ内の別のアダプタにフェイルオーバーされるからです。このようにして、マルチパスグループのアダプタは、マルチパスグループ内のアダプタが接続するサブネットへのパブリックネットワーク接続を維持します。
マルチパスグループを計画する際は、次の点を考慮してください。
各パブリックネットワークアダプタは、マルチパスグループに属している必要があります。
マルチパスグループに 2 つ以上のアダプタが含まれている場合は、グループのアダプタごとにテストIP アドレスを設定する必要があります。マルチパスグループにアダプタが 1 つしかない場合は、テスト IP アドレスを設定する必要はありません。
同一マルチパスグループ内のすべてのアダプタ用のテスト IP アドレスは、単一の IP サブネットに属する必要があります。
テスト IP アドレスは高可用性ではないため、通常のアプリケーションでは使用しないようにします。
/etc/default/mpathd ファイルで、TRACK_INTERFACES_ONLY_WITH_GROUPS の値はyes でなければなりません。
マルチパスグループの名前に、必要条件はありません。
IP ネットワークマルチパス 用の Solaris ドキュメントに示されている手続き、ガイドライン、および制限事項のほとんどは、クラスタ環境と非クラスタ環境のどちらであるかにかかわらず同じです。したがって、IP ネットワークマルチパス については、適切な Solaris ドキュメントを参照してください。
Solaris 8 OS の場合は、『IP ネットワークマルチパスの管理』の「ネットワークマルチパスの管理」を参照してください。
Solaris 9 OS の場合は、『 Solaris のシステム管理 (IP サービス)』の「ネットワークマルチパスの管理 (手順)」を参照してください。
『Sun Cluster の概要 (Solaris OS 版)』の「IP ネットワークマルチパスグループ (IPMP グループ)」と『Sun Cluster の概念 (Solaris OS 版)』も参照してください。
Sun Cluster 構成では、定足数 (quorum) デバイスを使用して、データとリソースの整合性を保持します。クラスタがノードとの接続を一時的に失っても、定足数デバイスによって、クラスタノードがクラスタに再結合しようとしたときの amnesia や split-brain といった問題を防止できます。 定足数デバイスを、scsetup(1M) ユーティリティーを使用して構成できます。
単一ノードのクラスタの場合、定足数 (quorum) を構成する必要はありません。
定足数デバイスを計画する際は、次の点を考慮してください。
最低数 – 2 ノードクラスタには、少なくとも 1 つの共有ディスクが定足数デバイスとして割り当てられている必要があります。その他のトポロジの場合は、定足数デバイスはオプションです。
奇数の規則 – 複数の定足数デバイスが、2 ノードクラスタまたは定足数デバイスに直接接続されているノードペアで構成されている場合、奇数個の定足数デバイスを構成します。このように構成することで、定足数デバイスが完全に独立した障害パスを持つようになります。
接続 – 定足数デバイスは 2 つ以上のノードに接続する必要があります。
定足数デバイスについて詳しくは、『Sun Cluster の概念 (Solaris OS 版)』の「定足数と定足数デバイス」および『Sun Cluster の概要 (Solaris OS 版)』の「クォーラムデバイス」を参照してください。