Sun Cluster HA for SAP DB を使って SAP DB を高可用性にするためには、Sun Cluster データサービスを次のように構成する必要があります。
SAP xserver をスケーラブルデータサービスとして構成してください。
Sun Cluster HA for SAP DB は、フェイルオーバーデータサービスとして構成する必要があります。
この手順を行う前に、Sun Cluster HA for SAP DB データサービスパッケージがインストールされていることを確認してください。
1 つの SAP xserver が複数の SAP DB インスタンスをサポートします。さらに、SAP liveCache が使用されていれば、クラスタの複数の SAP liveCache インスタンスをサポートします。したがって、同じクラスタに複数の SAP xserver リソースを構成しないでください。同じクラスタで複数の SAP xserver リソースを使用すると、それらのリソース間で衝突が生じます。このような衝突が発生すると、あらゆる SAP xserver リソースが利用できなくなります。SAP xserver を繰り返し起動しようとしても、その試みは失敗します。Address already in use (アドレスがすでに使用されている) というエラーメッセージが表示されます。
以下の各項ではリソースの登録と構成について説明します。これらの説明は、設定が必要な Sun Cluster HA for SAP DB の拡張プロパティに限られています。Sun Cluster HA for SAP DB のすべての拡張プロパティについては、付録 A 「Sun Cluster HA for SAP DB 拡張プロパティ」 を参照してください。拡張プロパティの中には動的に変更できるものがあります。ただし、それ以外の拡張プロパティは、リソースを作成するか無効にするときにしか更新できません。「調整可能」の欄には、そのプロパティをいつ変更できるかが示されています。
リソースの拡張プロパティを設定する際には、リソースを作成または変更する scrgadm(1M) コマンドに次のオプションを指定する必要があります。
-x property=value |
設定する拡張プロパティを指定します。
設定する拡張プロパティの値を指定します。
リソースを作成した後でリソースを構成する場合は、『Sun Cluster データサービスの計画と管理 (Solaris OS 版)』のデータサービスリソースの管理」に示されている手順を使用します。
root 以外のユーザーで SAP xserver を管理したい場合があります。その場合には、ユーザーの作成と定義を次のように行います。
そのユーザーを、SAP xserver をマスターするすべてのクラスタノードに作成する。
そのユーザーを、SAP xserver の登録と構成を行う際に定義する。SAP xserver を管理するユーザーを定義する場合は、SAP xserver リソースを作成する際に Xserver_User 拡張プロパティを設定する必要があります。Xserver_User 拡張プロパティについては、「SUNW.sap_xserver 拡張プロパティ」を参照してください。
クラスタノード上にインストールするクラスタノード上でスーパーユーザーになります。
SUNW.sap_xserver リソース型を登録します。
# scrgadm -a -t SUNW.sap_xserver |
SAP xserver リソースのスケーラブルリソースグループを作成します。
SAP DB リソースがフェイルオーバー可能なすべてのノードで SAP xserver を起動できるように SAP xserver を構成します。この構成を実装するためには、SAP xserver リソースグループのノードリストに、SAP DB リソースグループのノードリストにあるすべてのノードが含まれていなければなりません。このリソースグループは、「SAP DB をクラスタで実行するには」 という手順の実行時に作成されます。
# scrgadm -a -g xserver-rg -y Maximum_primaries=nodes-in-sapdb-rg -y Desired_primaries=nodes-in-sapdb-rg -h nodelist |
新しい構成を追加します。
作成するリソースグループの名前は xserver-rg です。
SAP xserver リソースを最大いくつのノードで起動できるかを指定します。この数は、SAP DB リソースグループのノードリストに指定されているノードの数と同じです。Desired_primaries プロパティにもこれと同じ数を指定する必要があります。
SAP xserver リソースをいくつのノードで起動すべきかを指定します。この数は、SAP DB リソースグループのノードリストに指定されているノードの数と同じです。Maximum_primaries プロパティにもこれと同じ数を指定する必要があります。
このリソースグループをオンラインにできるノードをコマンドで区切って指定します。このノードリストには、SAP DB リソースグループのノードリストに指定されているすべてのノードが含まれていなければなりません。
手順 3 で作成したリソースグループに SAP xserver リソースを作成します。
# scrgadm -a -j xserver-resource -g xserver-rg -t SUNW.sap_xserver |
新しい構成を追加します。
作成するリソースの名前は xserver-resource です。
このリソースを、手順 3 で作成したリソースグループに追加します。
このリソースは、SUNW.sap_xserver リソース型のインスタンスです。
手順 3 で作成したリソースグループを有効にします。
# scswitch -Z -g xserver-rg |
リソースグループを MANAGED 状態に移行してからオンラインにします。
手順 3 で作成したリソースグループを MANAGED 状態に移行してからオンラインにします。
この例は、SAP xserver リソースの構成に必要な一連のコマンドを示しています。これらのコマンドは 1 つのクラスタノードでのみ実行されます。
次のコマンドでは、SAP xserver リソースを含むスケーラブルリソースグループを 4 ノードクラスタ用に作成します。リソースグループの名前は xsrvrrg です。xsrvrrg リソースグループは、すべてのクラスタノードでオンラインにすることができます。
# scrgadm -a -g xsrvrrg -y Maximum_primaries=4 -y Desired_primaries=4 |
次のコマンドでは、SAP xserver リソースを xsrvrrs という名前で xsrvrrg リソースグループに作成します。SAP xserver リソースは、SUNW.sap_xserver リソース型のインスタンスです。この例には、このリソース型の登録はありません。
# scrgadm -a -j xsrvrrs -g xsrvrrg -t SUNW.sap_xserver |
次のコマンドでは、xsrvrrg リソースグループを MANAGED 状態にしてからオンラインにします。
# scswitch -Z -g |
SUNW.sapdb リソース型を登録します。
# scrgadm -a -t SUNW.sapdb |
SAP DB リソースを SAP DB リソースグループに作成します。
SAP DB リソースは次のリソースに依存していなければなりません。
SAP DB がインストールされている広域デバイスグループのHAStoragePlus リソース
SAP xserver リソース
このリソースを作成する際には、SAP DB データベースインスタンスに関する次の情報を指定する必要があります。この情報は、SAP DB のインストールと構成が行われる際に作成されます。これについては、「SAP DB のインストールと構成」を参照してください。
SAP DB データベースの名前
SAP DB データベースインスタンスを管理する OS ユーザーの UNIX ユーザー識別子
SAP DB データベースインスタンスを管理するデータベースユーザーのユーザーキー
# scrgadm -a -j sapdb-rs -g sapdb-rg -t SUNW.sapdb \ -x DB_Name=db-name -x DB_User=os-sapdb-adm-user \ -x User_Key=sapdb-adm-key -y resource_dependencies=hsp-resource,xserver-resource |
新しい構成を追加します。
作成するリソースの名前は sapdb-rs です。
このリソースを SAP DB リソースグループに追加します。
このリソースは、SUNW.sapdb リソース型のインスタンスです。
SAP DB データベースインスタンスの名前を大文字で指定します。
SAP DB データベースを管理する OS ユーザーの UNIX ユーザー識別子を指定します。このユーザーのホームディレクトリには、SAP DB のインストールおよび構成中に作成された .XUSER.62 ファイルがあります。詳細については、「SAP DB のインストールと構成」を参照してください。
SAP DB データベースインスタンスを管理するデータベースユーザーのユーザーキーを指定します。このユーザーキーは、SAP DB のインストールと構成の間に作成されたものです。詳細については、「SAP DB のインストールと構成」を参照してください。
SAP DB リソースが次のリソースに依存することを指定します。
SAP DB がインストールされている広域デバイスグループのHAStoragePlus リソース
SAP xserver リソース
SAP xserver リソースグループがオンラインになっているノードだけで SAP DB リソースグループがオンラインにされるように指定します。
この要件を満たすためには、SAP xserver リソースグループに対する強いポジティブアフィニティを SAP DB リソースグループに作成する必要があります。
# scrgadm -c -g sapdb-rg -y rg_affinities=++xserver-rg |
既存構成を変更します。
SAP DB リソースグループを変更します。
SAP xserver リソースグループに対する強いポジティブアフィニティを SAP DB リソースグループに宣言します。
# scswitch -Z -g sapdb-rg |
リソースグループを MANAGED 状態に移行してからオンラインにします。
SAP DB リソースグループを MANAGED 状態に移行してからオンラインにします。
(省略可能) クラスタを構成する際には、重要でないリソースグループが、SAP DB リソースグループと同じノードでオンラインにされることがないように配慮してください。
たとえば、SAP DB リソースがフェイルオーバーされ得るノードで優先度の低いサービスを実行するのも 1 つの方法です。この場合、リソースグループアフィニティを使用すれば、SAP DB リソースがこのノードにフェイルオーバーされたときに優先度の低いサービスを停止できます。
この動作を指定する場合は、優先度の低い各サービスのリソースグループに、SAP DB リソースグループに対する強いネガティブアフィニティを宣言します。
# scrgadm -c -g noncritical-rg \ -y rg_affinities=--sapdb-rg |
既存構成を変更します。
優先度の低いサービスのリソースグループを変更します。
優先度の低いサービスのリソースグループに、SAP DB リソースグループに対する強いネガティブアフィニティを宣言します。
# scrgadm -a -j sapdbrs -g sapdbrg -t SUNW.sapdb \ -x DB_Name=TST -x DB_User=dbadmin \ -x User_Key=DEFAULT -y resource_dependencies=hsprs,xsrvrrs |
この例で作成される SUNW.sapdb リソースは、次の特性を持っています。
このリソースの名前は sapdbrs です。
このリソースは、 sapdbrg という名前のリソースグループのメンバーです。このリソースグループの作成については、例 1–5 を参照してください。
このリソースは、SUNW.sapdb リソース型のインスタンスです。この例には、このリソース型の登録はありません。
このリソースに関連する SAP DB データベースインスタンスの名前は TST です。
SAP DB データベースを管理する OS ユーザーの UNIX ユーザー識別子は dbadmin です。
SAP DB データベースを管理するデータベースユーザーのユーザーキーは DEFAULT です。
SAP DB リソースは次のリソースに依存します。