この節では、SAP とデータベースのインストールと構成に必要な手順について説明します。
次の手順で、SAP とデータベースをインストールします。
セントラルインスタンスをインストールするクラスタノードの 1 つでスーパーユーザーになります。
クラスタファイルシステムに SAP バイナリをインストールします。
SAP ソフトウェアをクラスタファイルシステムにインストールする前に、scstat(1M) コマンドで Sun Cluster ソフトウェアが完全に動作していることを確認します。
SAP アプリケーションを実行するすべてのクラスタノードで /etc/system ファイルを編集して、SAP に必要なすべてのカーネルパラメータを変更します。
/etc/system ファイルを編集してから、各ノードを再起動します。カーネルパラメータの変更については、SAP のマニュアル『R/3 Installation on UNIX-OS Dependencies』を参照してください。
セントラルインスタンス、データベース、およびアプリケーションサーバーインスタンスをインストールする方法についての詳細は、SAP のマニュアル『Installation of the SAP R/3 on UNIX』を参照してください。
スケーラブルアプリケーションサーバーを Sun Cluster 環境にインストールする手順については、「SAP スケーラブルアプリケーションサーバーをインストールして有効にする」を参照してください。
「フェイルオーバー SAP インスタンスをクラスタで実行可能にする」または「SAP スケーラブルアプリケーションサーバーをインストールして有効にする」に進みます。
次の手順で、スケーラブルアプリケーションサーバーインスタンスをインストールします。この手順を実行する前に、セントラルインスタンスとデータベースをインストールしておく必要があります。ここでは、Sun Cluster HA for SAP で SAP 6.10 と SAP 6.20 のサービスを管理し、オンラインにできるようにするために、SAP 6.10 と SAP 6.20 のユーザーが実行しなければならない手順も紹介します。SAP 6.10 と SAP 6.20 は、startsap スクリプトと stopsap スクリプトを 1 つずつ作成します。他の SAP バージョンの場合は、作成された各サービスに対して、これらのスクリプトのうちの 1 つを作成します。この相違により、SAP 6.10 と SAP 6.20 のユーザーの実行する手順が多くなります。
Sun Cluster HA for SAP で J2EE エンジンクラスタを構成する場合は、この手順を完了したあとで、「アプリケーションサーバーを指定してSun Cluster HA for SAP で SAP J2EE エンジンクラスタを構成する」にある追加の手順を完了します。
Sun Cluster HA for SAP エージェントで SAP Web ディスパッチャーを構成する場合は、この手順を完了したあとで、「Sun Cluster HA for SAP で SAP Web ディスパッチャーを構成する」にある追加の手順を完了します。
ファイルシステムの配置を次のようにすると、使い易さが増し、データの上書きを防止できます。
クラスタファイルシステム
/sapmnt/SID
/usr/sap/SID -> all subdirectories except the app-instance subdirectory
/usr/sap/SID/home -> SAPSIDadm のホームディレクトリ
/usr/sap/trans
ローカルファイルシステム
/usr/sap/local/SID/ app-instance
すべての SAP ディレクトリをクラスタファイルシステムに作成します。
セントラルインスタンスとデータベースがフェイルオーバー可能であることを確認します。
セントラルインスタンスのクラスタファイルシステムにロックファイルを設定して、複数のノードから起動が行なわれるのを防止します。
セントラルインスタンスにロックファイルを設定する手順については、「セントラルインスタンスまたはフェイルオーバーアプリケーションサーバー用のロックファイルを設定する」を参照してください。
すべてのアプリケーションサーバーがクラスタファイルシステムの SAP バイナリを使用できることを確認します。
セントラルインスタンスとデータベースをクラスタファイルシステムにインストールします。
コアインスタンスとデータベースのインストール手順については、SAP のマニュアル『Installation of the SAP R/3 on UNIX』を参照してください。
スケーラブルアプリケーションサーバーが動作する可能性があるすべてのノードで、アプリケーションサーバーの起動や停止に必要な data/log/sec/work ディレクトリとログファイルのローカルディレクトリを作成します。
新しい各アプリケーションサーバーのローカルディレクトリを作成します。
例:
# mkdir -p /usr/sap/local/SID/D03 |
この手順は必須です。この手順を行わないと、クラスタファイルシステムに異なるアプリケーションサーバーインスタンスを誤ってインストールし、それによって 2 つのアプリケーションサーバーが互いを上書きするおそれがあります。
リンクを設定して、クラスタファイルシステムからこのローカルアプリケーションサーバーディレクトリを指定します。これによって、アプリケーションサーバー、startup および stop ログファイルがローカルファイルシステムにインストールされます。
例:
# ln -s /usr/sap/local/SID/D03 /usr/sap/SID/D03 |
アプリケーションサーバーをインストールします。
SAP 6.10 または SAP 6.20 のユーザーですか。
ユーザー sapsidadm になります。
startsap スクリプトと stopsap スクリプトのコピーを作成し、これらのファイルを SAPSID adm のホームディレクトリに保管します。選択したファイル名でこのインスタンスを指定します。
# cp /usr/sap/SID/SYS/exe/run/startsap \ $SAPSID_HOME/startsap_instance-number # cp /usr/sap/SID/SYS/exe/run/stopsap \ $SAPSID_HOME/stopsap_instance-number |
次のファイルのバックアップを作成します。これらのファイルを変更するからです。SAP プロファイルディレクトリで、このインスタンスのファイル名をすべて変更します。インスタンス固有のファイル名を選択する必要があります。また、手順 8 で選択した命名規則に従う必要があります。
# mv SAPSID_Service-StringSystem-Number_physical-hostname \ SAPSID_Service-StringSystem_instance-number # mv START_Service-StringSystem-Number_physical-hostname \ START_Service-StringSystem_instance-number |
手順 9 で作成したファイルの内容を変更し、物理ホストの参照をインスタンス番号に置き換えます。
このスケーラブルアプリケーションサーバーを実行するすべてのノードから、このアプリケーションサーバーインスタンスを起動したり停止したりできるように、一貫性のある更新を実行することが重要です。たとえば、SAP インスタンス番号 02 を変更する場合は、このインスタンス番号を指定するところで、02 を使用します。使用する命名規則に一貫性がないと、このスケーラブルアプリケーションサーバーを実行するすべてのノードから、このアプリケーションサーバーインスタンスを起動したり停止したりすることができなくなります。
start スクリプトと stop スクリプトを編集し、 startup ログファイルと stop ログファイルがユーザー sapsidadm と orasapsid のホームディレクトリの下で、ノード固有になるようにします。
例:
# vi startsap_D03 |
この日付より前:
LOGFILE=$R3S_LOGDIR/`basename $0.log` |
この日付より後:
LOGFILE=$R3S_LOGDIR/`basename $0`_`uname -n`.log |
スケーラブルアプリケーションサーバーを実行するすべてのノードにアプリケーションサーバーを SAPSID と同じインスタンス番号でコピーします。
スケーラブルアプリケーションサーバーを実行するノードは、スケーラブルアプリケーションサーバーリソースグループ nodelist にあります。
各ノードからアプリケーションサーバーの起動や停止ができることを確認します。ログファイルが正しい場所にあることを確認します。
ログオングループを使用する場合は、SAP ログオングループを作成します。
Sun Cluster HA for SAP で J2EE エンジンクラスタを構成する場合は、「アプリケーションサーバーを指定してSun Cluster HA for SAP で SAP J2EE エンジンクラスタを構成する」に進みます。
Sun Cluster HA for SAP エージェントで SAP Web ディスパッチャーを構成する場合は、「Sun Cluster HA for SAP で SAP Web ディスパッチャーを構成する」に進みます。
Sun Cluster HA for SAP で J2EE エンジンクラスタまたは SAP Web ディスパッチャーを使用していない場合は、「可用性の高いデータベースの構成」に進みます。
SAP ソフトウェアは、インストールすると、その SAP インスタンスをインストールしたサーバー上にファイルとシェルスクリプトを作成します。これらのファイルやスクリプトでは物理サーバー名を使用します。SAP ソフトウェアを Sun Cluster ソフトウェアといっしょに使用する場合は、物理サーバーの参照をネットワークリソースの参照 (論理ホスト名) に変更する必要があります。次の手順を使用して、クラスタで SAP を実行できるようにします。
セントラルインスタンスを指定して Sun Cluster HA for SAP で J2EE エンジンクラスタを構成する場合は、この手順を完了したあとで、「セントラルインスタンスを指定してSun Cluster HA for SAP で SAP J2EE エンジンクラスタを構成する」にある追加の手順を完了します。
SAP アプリケーションサーバーを指定して Sun Cluster HA for SAP で J2EE エンジンクラスタを構成する場合は、「アプリケーションサーバーを指定してSun Cluster HA for SAP で SAP J2EE エンジンクラスタを構成する」に進みます。
Sun Cluster HA for SAP エージェントで SAP Web ディスパッチャーを構成する場合は、この手順を完了したあとで、「Sun Cluster HA for SAP で SAP Web ディスパッチャーを構成する」にある追加の手順を完了します。
SAP ソフトウェアをインストールしたノードにログインします。
SAP インスタンス (セントラルインスタンスとアプリケーションサーバーインスタンス) とデータベースを停止します。
SAP 6.10 または SAP 6.20 のユーザーですか。
startsap スクリプトと stopsap スクリプトのコピーを作成し、これらのファイルを SAPSIDadm のホームディレクトリに保管します。選択したファイル名でこのインスタンスを指定する必要があります。
# cp /usr/sap/SID/SYS/exe/run/startsap \ $SAPSID_HOME/startsap_logical-hostname_instance-number # cp /usr/sap/SID/SYS/exe/run/startsap \ $SAPSID_HOME/stopsap_logical-hostname_instance-number |
ユーザー sapsidadm になり、次の作業を行ないます。
SAPSIDadm ホームディレクトリで、物理サーバー名を参照するすべてのファイル名を変更します。
SAPSIDadm ホームディレクトリで、物理サーバー名を参照するすべてのファイル内容 (ログファイルの内容を除く) を変更します。
SAP プロファイルディレクトリで、物理サーバー名を参照するすべてのファイル名を変更します。
ユーザー sapsidadm で、パラメータ SAPLOCALHOST のエントリを追加します。
/sapmnt/SAPSID/profile ディレクトリにある SAPSID_ Service-StringSystem-Number _logical-hostname プロファイルファイルにこのエントリを追加します。
セントラルインスタンスの場合:
SAPLOCALHOST=ci-logical-hostname |
外部アプリケーションサーバーは、このエントリのネットワークリソース (論理ホスト名) を使用して、セントラルインスタンスの場所を見つけます。
アプリケーションサーバーの場合:
SAPLOCALHOST=as-logical-hostname |
ユーザー orasapsid になり、次の作業を行ないます。
oraSAPSID ホームディレクトリで、物理サーバー名を参照するすべてのファイル名を変更します。
oraSAPSID ホームディレクトリで、物理サーバー名を参照するすべてのファイル内容 (ログファイルの内容を除く) を変更します。
ユーザー sapsidadm とグループ sapsys が所有する /usr/sap/tmp ディレクトリが、フェイルオーバー SAP インスタンスをマスターする可能性があるすべてのノードに存在するか確認します。
セントラルインスタンスを指定して Sun Cluster HA for SAP で J2EE エンジンクラスタを構成する場合は、「セントラルインスタンスを指定してSun Cluster HA for SAP で SAP J2EE エンジンクラスタを構成する」に進みます。
SAP アプリケーションサーバーを指定して Sun Cluster HA for SAP で J2EE エンジンクラスタを構成する場合は、「アプリケーションサーバーを指定してSun Cluster HA for SAP で SAP J2EE エンジンクラスタを構成する」に進みます。
Sun Cluster HA for SAP エージェントで SAP Web ディスパッチャーを構成する場合は、「Sun Cluster HA for SAP で SAP Web ディスパッチャーを構成する」に進みます。
Sun Cluster HA for SAP エージェントで J2EE エンジンクラスタまたは SAP Web ディスパッチャーを使用していない場合は、「可用性の高いデータベースの構成」に進みます。
次の手順は、「SAP スケーラブルアプリケーションサーバーをインストールして有効にする」の手順を完了したあとで実行します。
SAP J2EE エンジンは、Sun Cluster HA for SAP の保護下にある SAP ディスパッチャーが起動します。SAP J2EE エンジンが停止した場合は、SAP ディスパッチャーが再起動します。
SAP J2EE の管理ツール GUI を使用して ClusterHosts パラメータを変更し、dispatcher/Manager/ClusterManager の下にセントラルインスタンスの論理ホストとポートペアを指定します。
logical-host-ci:port |
ファイル j2ee-install-dir/additionalproperties を次のように変更します。
com.sap.instanceId = logical-host-as_SID_SYSNR |
ファイル j2ee-install-dir/server/services/security/work/R3Security.properties を、次のように変更します。
sapbasis.ashost = logical-host-as |
「可用性の高いデータベースの構成」に進みます。
次の手順は、「フェイルオーバー SAP インスタンスをクラスタで実行可能にする」または「フェイルオーバー SAP インスタンスをクラスタで実行可能にする」の手順を完了してから実行します。
SAP J2EE エンジンは、Sun Cluster HA for SAP の保護下にある SAP ディスパッチャーが起動します。SAP J2EE エンジンが停止した場合は、SAP ディスパッチャーが再起動します。
SAP J2EE の管理ツール GUI を使用して ClusterHosts パラメータを変更し、dispatcher/Manager/ClusterManager の下にアプリケーションサーバーのすべての論理ホストとポートペアを指定します。次に例を示します。
as1–1h:port;as2–1h:port ... |
ファイル j2ee-install-dir/additionalproperties を次のように変更します。
com.sap.instanceId = logical-host-ci_SID_SYSNR |
ファイルj2ee-install-dir/server/services/security/work/R3Security.properties を次のように変更します。
sapbasis.ashost = logical-host-ci |
ファイル SDM-dir/program/config/flow.xml を変更します。
host = logical-host-ci |
「可用性の高いデータベースの構成」に進みます。
Sun Cluster HA for SAP でSAP Web ディスパッチャーを構成したあとで、次の手順を実行します。
SAP Web ディスパッチャーには、自動再起動の機能があります。SAP Web ディスパッチャーが停止すると、SAP Web ディスパッチャーのウォッチドッグプロセスが再起動します。現在、SAP Web ディスパッチャーに使用できる Sun Cluster エージェントはありません。
SAP Web ディスパッチャーには、セントラルインスタンスまたはアプリケーションサーバーインスタンスと異なるインスタンス番号を与える必要があります。
たとえば、SAP Web ディスパッチャーのプロファイルでは SAPSYSTEM = 66 が使用されています。
SAP Web アプリケーションサーバーをインストールしたあとで、Internet Communication Frame Services を手動でアクティブにします。
詳細は、SAP OSS ノートの 517484 を参照してください。
「可用性の高いデータベースの構成」に進みます。