Sun Enterprise 10000 Dynamic Reconfiguration ユーザーマニュアル

第 1 章 Sun Enterprise 10000 システム上の DR

この章では、Dymanic Reconfiguration (DR: 動的再構成) とその機能について説明しています。また、Sun EnterpriseTM 10000 システム上で使用可能な 2 種類の DR モデル (DR 2.0 と DR 3.0)、および両モデル間の切り替え手順についても説明します。

動的再構成の概要

DR ソフトウェアは、Solaris オペレーティング環境に付属しています。この DR ソフトウェアにより、システムのボードを安全に取り外し/取り付けて、ボードを動的に再構成することができます。Solaris オペレーティング環境を動作させながら、動的システムドメイン (このマニュアルでは簡単にドメインと呼びます) 内で実行されているユーザープロセスの中断を最小限に抑えて DR 操作を行います。

DR を使用して以下のことが行えます。

DR の概念

この節では、 Sun Enterprise 10000 システムを対象とした一般的な DR の概念を説明しています。

切り離し可能性

ある装置が切り離し可能であるためには、以下の条件を満たしている必要があります。

ボードには、ボードの資源を移動できないため、切り離せないものもあります。たとえば、ドメインにボードが 1 枚しかない場合は、そのボードを切り離すことはできません。また、起動ドライブを制御しているボードも切り離せません。ボードの代替パスがない場合は、以下の対処方法があります。

休止

常時メモリー (Open BootTM PROM またはカーネルメモリー) を搭載したシステムボードの構成解除を操作している間に、オペレーティング環境は短時間の間一時停止します。この状態をオペレーティング環境の休止と呼びます。構成解除操作の重大な局面では、センタープレーン上のすべてのオペレーティング環境および装置の動作を停止する必要があります。

休止できるようになるためには、オペレーティング環境は、すべてのプロセス、CPU、装置の動作を一時停止する必要があります。休止できなかった場合、オペレーティング環境は、以下のような理由を表示します。

一般的に、処理の中断を行えなくしている原因は一時的なものです。中断できない理由を調べてください。一時的な原因のためオペレーティング環境が処理を中断できなかった場合は、ユーザーは操作をやり直すことができます。

一時停止に対して安全な装置と一時停止に対して危険な装置

DR 操作によりオペレーティング環境の動作が一時停止するとき、オペレーティング環境に接続しているデバイスドライバもすべて一時停止する必要があります。ドライバを一時停止(および、停止後の再開)できないと、DR 操作は失敗します。

一時停止に対して安全な装置は、オペレーティング環境が休止しているときにメモリーアクセスやシステム割り込みを行いません。オペレーティング環境の休止 (一時停止・再開) に対応しているドライバは、一時停止に対して安全なドライバです。また、このようなドライバは、一時停止要求が行われたとき、そのドライバが管理する装置が開いていても、要求が正常に完了するまで、装置はメモリーへアクセスしないことを保証します。一方、一時停止に対して危険な装置とは、オペレーティング環境が休止しているときでも、メモリーアクセスやシステム割り込みを許可する装置です。

DR 操作では、dr.conf ファイル(DR モデル 2.0 の場合) と ngdr.conf ファイル (DR モデル 3.0 の場合) に保存されている一時停止に対して危険なドライバのリストを使用し、DR 操作中に、一時停止に対して危険な装置がメモリーへアクセスしたり、オペレーティング環境に割り込みを行ったりしないようにしています。この危険なドライバのリストは、dr.conf ファイルと ngdr.confファイルにしか保存されず、また、リストのエントリは以下の形式となります。


unsupported-io-drivers="driver1","driver2","driver3";

DR はオペレーティング環境の一時停止を準備するときにこのリストを読み込みますので、メモリーコンポーネントの構成を解除することができます。DR が一時停止に対して危険なドライバのリストから、動作中のドライバを見つけると、DR 操作を中止してエラーメッセージを表示します。このメッセージには、動作中の危険なドライバのIDが含まれます。以下の作業のいずれか、または組み合わせた作業を行うことにより、装置の使用を手動で解除する必要があります。

装置の使用を解除したら、DR 操作をやり直すことができます。


注 -

初めから DR モデルの切り替えを想定していない場合でも、一時停止に対して危険なドライバはすべて、dr.confngdr.conf の両方のファイルにリストしておくことを推奨します。このようにしておくと、後から DR モデルを切り替えることになっても、すべての危険なドライバへの参照が両方の構成ファイルに含まれるようになります。


DR モデル

Sun Enterprise 10000 システムで使用可能な DR モデルには 2 種類あります。DR モデル 2.0 を「従来型 DR」、DR モデル 3.0 を「次世代 DR」と呼ぶことがあります。どちらの DR モデルを使用するかは、ドメイン上で構成する Solaris オペレーティング環境により決まります。

DR モデル 3.0 は Solaris 8 10/01 オペレーティング環境から利用できますが、このモデルを使用するには、バージョン 3.5 の SSP ソフトウェアを SSP で実行する必要があります。また、Solaris 8 10/01 オペレーティング環境の場合、DR モデル 2.0 も DR モデル 3.0 も使用することができますが、Solaris 8 10/01 以前のバージョンの Solaris の場合は、DR モデル 2.0 のみ使用することができます。

ドメイン内で同時に複数の DR モデルを動作させることはできません。動作中の DR のバージョンを調べるには、以下のコマンドを使用します :domain_status -m。 (-m フラグが使用できるのは、バージョン 3.5 の SSP ソフトウェアのみとなります)。

Sun Enterprise 10000 システムでは、DR モデル間で一方から他方へ切り替えることができます。DR モデル 2.0 と 3.0 間の切り替えについては、「DR モデルの切り替え」を参照してください。

DR コマンドを実行して操作を開始する前に、必ず、domain_status(1M) コマンドに -m オプションを付けて、動作中の DR モデルを確認してください。domain_status(1M) コマンドの実行例を以下に示します。「DR-MODEL」欄に、動作中のモデルが示されます。


# domain_status -m

DOMAIN     TYPE                     PLATFORM   DR-MODEL   OS   SYSBDS
A          Ultra-Enterprise-10000   all-A      2.0         5.8  2
B          Ultra-Enterprise-10000   all-A      3.0         5.8  3 4
C          Ultra-Enterprise-10000   all-A      2.0        5.7  5 6

上記の表示から、ドメイン A は DR モデル 2.0 を使用して Solaris バージョン 8 ソフトウェア (OS 5.8) を実行、ドメイン B は DR モデル 3.0 を使用して Solaris バージョン 8 ソフトウェアを実行、ドメイン C は DR モデル 2.0 を使用して Solaris バージョン 7 ソフトウェア (OS 5.7) を実行していることがわかります。(Solaris バージョン 7 ソフトウェアで使用できるのは、DR モデル 2 のみとなります)。

各モデルで実行可能なコマンドは限定されていますので、サポートされていないコマンドを実行すると、コンソールにエラーメッセージが表示されます。

DR モデル 2.0

動的再構成 (DR: Dynamic Reconfiguration) モデル 2.0 および 3.0 により、マシンを停止させることなく、システムボードを論理的にオペレーティングシステムへ接続したり、オペレーティングシステムから切り離すことができます。DR 操作はホットスワップ (システムボードを物理的に取り外し、取り付けする処理) と合わせて使用します。DR 操作を実行して、新しいシステムボードの取り付け、修理したシステムボードの再取り付け、Sun Enterprise 10000 システムのドメイン構成の変更を行うことができます。

ドメインがシステムボードを使用している場合は、先にそのボードをシステムから切り離してから、ボードの電源を切断し、取り外してください。新しいシステムボードあるいは修理済みのシステムボードを取り付け、ボードの電源を投入すると、そのボードをドメインに接続することができます。

addboard(1M)、moveboard(1M)、deleteboard(1M)、および showusage(1M) といった DR の自動化 (ADR) コマンドを使用すると、System Service Processor (SSP) から DR 操作を行うことができます。

DR モデル 2.0 の使い方についての詳細は、「DR モデル 2.0 の操作手順」を参照してください。

マルチパスの使用条件

DR モデル 2.0 のドメイン上でマルチパスを使用するには、Sun Enterprise Server Alternate Pathing ソフトウェアを実行してください。DR モデル 2.0 は、この代替パスソフトウェアのどのバージョンとも互換性があります。AP についての詳細は、『Sun Enterpriseサーバー Alternate Pathing ユーザーマニュアル』を参照してください。

DR モデル 3.0

DR モデル 3.0 は、DR モデル 2.0 から以下の点を強化しています。

addboard(1M)、moveboard(1M)、deleteboard(1M)、rcfgadm(1M)、および showdevices(1M) といった SSP コマンドを使用すると、System Service Processor (SSP) から DR 操作を行うことができます。


注意 - 注意 -

Solaris 8 10/01 オペレーティング環境を実行しているドメインで DR モデル 3.0 へ切り替えるには、まず、SSP ソフトウェアをバージョン 3.5 へアップグレードする必要があります。これ以前のバージョンの SSP ソフトウェアは DR モデル 3.0 動作に対応していません。


DR モデル 3.0 の使い方についての詳細は、「DR モデル 3.0 の操作手順」を参照してください。

マルチパスの使用条件

DR モデル 3.0 のドメイン上でマルチパスを使用するには、IPMP (Solaris 8 オペレーティング環境で提供される IP マルチパスソフトウェア) と、MPxIO ソフトウェア(Solaris カーネルアップデートパッチ 111412-02、111413-02、111095-02、111096-02、111097-02 に付属) を実行してください。

DR モデルの切り替え

デフォルトの設定により、Solaris 8 10/01 オペレーティング環境をインストールすると、DR モデル 2.0 が使用可能になりますが、以下の手順を行うと、DR モデルを切り替えることができます。以下の操作はドメイン上で行ってください。


注意 - 注意 -

Solaris 8 10/01 オペレーティング環境を実行しているドメインで DR モデル 3.0 へ切り替えるには、まず、SSP ソフトウェアをバージョン 3.5 へアップグレードする必要があります。これ以前のバージョンの SSP ソフトウェアは DR モデル 3.0 動作に対応していません。


DR モデルを切り替える
  1. 以下のディレクトリへ移動します。


    % cd /platform/SUNW,Ultra-Enterprise-10000/kernel/drv
  2. DR モデルを変更するには、ngdr.conf ファイル内の legacy-dr-model 変数に割り当てている値 (デフォルトで設定される legacy-dr-model 変数の値は 1) を変更します。

  3. DR モデル 3.0 へ切り替えるには、legacy-dr-model 変数の値を 0 (ゼロ) に変更します。


    % legacy-dr-model=0;

    ドメインを再起動します。再起動後、/var/adm/messages ファイルを表示して以下のメッセージが記録されていれば DR モデル 3.0 が使用可能になったことを確認できます。


    NOTICE: Next Generation DR Model (DR 3.0) is enabled
  4. DR モデル 2.0 へ切り替えるには、legacy-dr-model 変数の値を 1 に変更します。


    % legacy-dr-model=1;

    ドメインを再起動します。再起動後、/var/adm/messages ファイルを表示して以下のメッセージが記録されていれば DR モデル 2.0 (従来版) が使用可能になったことを確認できます。


    NOTICE: Legacy DR Model (DR 2.0) is enabled
  5. モデルの変更を SSP が認識していることを確認するには、SSP 上で domain_status -m コマンドを実行してください。