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SMS ユーティリティー

この章では、SMS のバックアップ、構成、復元、バージョンのユーティリティーについて解説します。これらのユーティリティーの詳細および例については、『System Management Services (SMS) 1.6 リファレンスマニュアル』およびオンラインのマニュアルページを参照してください。

この章では、以下の項目を説明します。


SMS バックアップユーティリティー

smsbackup は、SMS のオペレーティング環境を維持管理するファイルの cpio (1) アーカイブを作成します。



注 - このユーティリティーは SC 上で実行します。このユーティリティーを使用しても、SC やドメインの OS とドメインのアプリケーションデータを定期的または適宜にバックアップする必要がなくなるわけではありません。



ドメインへのボードの追加またはドメインからのボードの削除などで、SMS 環境を変更したときは、システムコントローラの現在のバックアップファイルを維持するために smsbackup を必ず再実行してください。

バックアップファイルの名前は smsbackup.X.X.cpio です。X.X はバックアップを行なったアクティブなバージョンを表します。

smsbackup ユーティリティーは、すべての構成、プラットフォーム構成データベース、SMS、およびログファイルを保存します。つまり、SMS はバックアップを作成したときの作業状態に SMS を戻すのに必要なすべてを保存します。

バックアップは、自動的には実行されません。SMS 環境を変更するときは、バックアップを実行する必要があります。この処理は、サイトの要件に応じて定期的に実行される root cron ジョブに組み込んで自動化することができます。

バックアップのログファイルは、/var/sadm/system/logs/smsbackup に格納されます。smsbackup を実行するときは、対象となる位置を指定する必要があります。



注 - 対象となる位置は、有効な UNIX ファイルシステム (UFS) ディレクトリである必要があります。smsbackup は、一時的なファイルシステムディレクトリに対して実行することはできません。



smsbackup を実行すると、処理の成功または失敗が必ず通知されます。

smsbackup を実行するには、スーパーユーザー特権が必要です。詳細と用例については、smsbackup のマニュアルページを参照してください。

SMS バックアップファイルを smsrestore (1M) コマンドを使用して復元します。


SMS 復元ユーティリティー

smsrestore ユーティリティーは、smsbackup(1M) によって作成されたバックアップファイルから SMS のオペレーティング環境を復元します。新しいディスクに SMS ソフトウェアをインストールした後またはハードウェアの交換や追加の後は、smsrestore を使用して SMS 環境を復元することができます。smsrestore を正しく実行するには、事前にフェイルオーバーを無効化し、SMS を停止しておく必要があります。詳細は、『System Management Services (SMS) 1.6 インストールマニュアル』の「SMS の停止および開始」を参照してください。

エラーが発生した場合は、smsrestore がエラーメッセージを /var/sadm/system/logs/smsrestore に書き込みます。



注 - このユーティリティーは SC 上で実行され、SC の OS、ドメインの OS、またはドメインのアプリケーションデータは復元しません。



smsrestore ユーティリティーは、バックアップされていないファイルを復元することはできません。ドメインの停止などで SMS 環境を変更したときは、システムコントローラの現在のバックアップファイルを維持するために smsbackup を必ず再実行してください。

smsrestore を実行するには、スーパーユーザー特権が必要です。詳細と用例については、smsrestore のマニュアルページを参照してください。


SMS バージョンユーティリティー

smsversion(1M) ユーティリティーは、同一の OS に共存している連続バージョンの SMS を管理します。SMS の連続バージョンとは、SMS 1.5 と SMS 1.6 など、バージョン番号が連続しているバージョンです。つまり、smsversion を使用して SMS 1.2 と SMS 1.6 を、または SMS 1.4.1 から SMS 1.6 へ直接切り替えることはできません。



注 - バージョンを SMS 1.6 から以前にインストールしたバージョンに切り替えると、SC のセキュリティーに影響が生じます。『System Management Services (SMS) 1.6 インストールマニュアル』の「SMS のバージョンの切り替え」を参照してください。



smsversion ユーティリティーを使用すると、同じ OS 上に共存している連続したバージョンの SMS を双方向に切り替えることができます。表 13-1 に、これを使用する場合の条件を示します。

 

表 13-1 SMS バージョン間の切り替え


条件

説明

新機能

新バージョンの SMS でサポートされている機能 (デフォルト機能による SC のセキュリティー保護など) は、旧バージョンではサポートされない場合があります。SMS を古いバージョンに切り替えると、これら新機能が失われる場合があります。また、新機能の設定が失われる場合もあります。

フラッシュPROMの違い

SMS のバージョンを切り替える場合、CPU フラッシュ PROM を、正しいファイルを使用して再フラッシュする必要があります。これらファイルは、/opt/SUNWSMS SMS_version/firmware ディレクトリに格納されています。バージョンを切り替えた後、flashupdate (1M)を使用して PROM を再フラッシュします。フラッシュ PROM の更新についての詳細は、flashupdate マニュアルページと『System Management Services (SMS) 1.6 インストールマニュアル』を参照してください。


 

連続リリースの SMS を切り替える場合、たとえば SMS 1.6 を SMS 1.5 に切り替える場合には、smsversion を実行する前に SMS を停止する必要があります。詳細は、『System Management Services (SMS) 1.6 インストールマニュアル』の「SMS の停止および開始」を参照してください。smsversion ユーティリティーは、システムとドメインに関する重要な情報をバックアップしてから、目的の SMS バージョンに切り替えます。あとで、連続する元の SMS バージョンに (たとえば SMS 1.6 から SMS 1.5 に) 切り替えて戻すこともできます。



注 - バージョンが異なる Solaris OS 間 (Solaris 8 と Solaris 9 など) では、SMS のバージョンが連続していても切り替えはサポートされません。Solaris 8 バージョンで SMS を使用していた環境から、Solaris 9 バージョンにアップグレードしたあと、旧バージョンに戻すには Solaris 8 の再インストールが必要になります。smsversion コマンドを使用して、SMS 1.6 が実行されている Solaris 10 から SMS 1.5 に戻す切り替えは、以前の OS を再インストールしないかぎりサポートされません。詳細については、『System Management Services (SMS) 1.6 インストールマニュアル』を参照してください。



オプションを省略すると smsversion は使用中の SMS のバージョンを表示し、インストール済み SMS のバージョンが 1 つだけであればそのまま終了します。

smsversion の実行中にエラーが発生すると、エラーメッセージが /var/sadm/system/logs/smsversion に出力されます。

smsversion を実行するには、スーパーユーザー特権が必要です。詳細と用例については、smsversion のマニュアルページを参照してください。

バージョンの切り替え



注 - SMS 1.6 から以前にインストールしたバージョンの SMS に切り替えると、SC のセキュリティーに影響が生じます。詳細については、『System Management Services (SMS) 1.6 インストールマニュアル』を参照してください。




procedure icon  連続する 2 つの SMS バージョンが共存している場合に、バージョンを切り替える

メイン SC で次の手順を実行します。

1. 現在の構成が安定しており、さらに smsbackup でバックアップ済みであることを確認します。

安定しているということは、smsconfigpoweronpoweroffsetkeyswitchcfgadmrcfgadmaddtagdeletetagaddboardmoveboarddeleteboardsetbussetdefaultssetobpparamssetupplatformenablecomponent、または disablecomponent の各コマンドは実行するべきでないということです。

2. setfailover off を実行してフェイルオーバーを無効化します。

スペア SC で次の手順を実行します。

3. /etc/init.d/sms stop を実行します。

4. smsversion を実行します。

5. smsrestore を実行します。

6. 必要に応じて smsconfig -m を実行し、再起動します。

復元した smsbackup の作成に、smsconfig -m を使用してネットワーク構成を変更した場合にのみ、smsconfig -m を実行してください。

メイン SC で次の手順を実行します。

7. /etc/init.d/sms stop を実行して SMS を停止します。

スペア SC で次の手順を実行します。

8. smsconfig -m を実行した場合は SC を再起動します。このコマンドを実行しなかった場合は、/etc/init.d/sms start を実行します。

SC の起動後、この SC がメイン SC になります。

9. 必要な場合は、flashupdate を使用して、CPU のフラッシュ PROM を更新します。

元のメイン SC で次の手順を実行します。

single-step bullet手順 4 〜 6 と 8 を繰り返します。

新しいメイン SC で次の手順を実行します。

single-step bulletsetfailover on を実行してフェイルオーバーを有効化します。

詳細については、『System Management Services (SMS) 1.6 インストールマニュアル』を参照してください。


SMS 構成ユーティリティー

smsconfig ユーティリティーは、MAN ネットワークを構成し、MAN デーモン mand(1M) によって使用されるホスト名と IP アドレスの設定を変更して、ドメインディレクトリのアクセス制御リスト (ACL) を管理します。また、現在の構成も表示します。

UNIX グループ

smsconfig ユーティリティーは、SMS によって使用される UNIX グループを構成してユーザー特権を記述します。SMS はデフォルトで、各 SC にローカルにインストールされた一連の UNIX グループを使用します。-g オプションを指定して smsconfig ユーティリティーを実行すると、これらのグループをカスタマイズできます。また、-a オプションを指定すればユーザーグループへのユーザーの追加、-r オプションを指定すればグループからのユーザーの削除をそれぞれ実行できます。

登録ユーザーの追加、削除、および一覧表示に関する情報と用例については、『System Management Services (SMS) 1.6 インストールマニュアル』と smsconfig(1M) のマニュアルページを参照してください。

アクセス制御リスト (ACL)

従来の UNIX ファイル保護は、次の 3 つのユーザークラスに対して読み取り、書き込み、実行を許可します。つまり、ファイル所有者、ファイルグループ、その他です。ドメイン情報の保護と分離を行う目的で、各ドメインのデータへのアクセスは未承認のすべてのユーザーに対して拒否されます。ただし、SMS デーモンは承認ユーザーと見なされ、ドメインのファイルシステムへのフルアクセス権を持ちます。たとえば、次のとおりです。

smsconfig ユーティリティーは、ドメイン管理者がドメインに対するフルアクセス権を持つように、ドメインディレクトリに関連付けられた ACL エントリを設定します。モードフィールドの右にあるプラス記号 (+) は、ACL が定義済みのディレクトリを示します。


domain-id:sms-user:> ls -al
total 6
drwxrwxrwx   2 root     bin          512 May 10 12:29 .
drwxrwxr-x  23 root     bin         1024 May 10 12:29 ..
-rw-rw-r--+  1 root     bin          312 May  4 16:15 blacklist

 

ACL にユーザーアカウントを登録するには、『System Management Services (SMS) 1.6 インストールマニュアル』に説明するように、ユーザーが有効な SMS グループに属している必要があります。



注 - ACL などの UFS 属性は、UFS ファイルシステムでのみサポートされます。ACL エントリのあるディレクトリを /tmp ディレクトリに復元またはコピーすると、すべての ACL エントリが失われます。UFS ファイルおよびディレクトリの一時的な格納には、/var/tmp ディレクトリを使用します。



ネットワーク構成

smsconfig はそのネットワーク内で 1 つまたは複数のインタフェース指示を個々に設定することができます。デフォルトでは、smsconfig は 3 つすべての内部ネットワーク (MAN、I1、および I2) の構成を走査します。

個々のネットワークを構成するには、コマンド行に net-id を付加します。MAN の net-id には、I1I2、および C を指定します。

目的のドメインとその net-id を指定して、エンタープライズネットワーク内で単独のドメインを構成します。MAN の hostname として NONE というワードを指定すれば、任意のドメインを I1 MAN から除外できます。



注 - MAN ネットワークの構成または構成の変更が完了したあとで変更を有効にするには、SC を再起動してください



smsconfig を実行するには、スーパーユーザー特権が必要です。詳細と例については、『System Management Services (SMS) 1.6 インストールマニュアル』、smsconfig のマニュアルページ、および 管理ネットワークのサービスを参照してください。

MAN 構成

smsconfig -m と入力すると、次の処理が実行されます。

1. /etc/hostname.scman[01] を作成します。

2. smsconfig の外部ネットワークプロンプトへの入力に応じて、/etc/hostname.hme0 および /etc/hostname.eri1 を作成します。

3. /etc/netmasks および /etc/hosts を更新します。

4. OpenBoot PROM 変数を local-mac-address?=true に設定します (デフォルトは false)。

smsconfig の詳細については、smsconfig(1M) のマニュアルページ、および 管理ネットワークのサービスを参照してください。