セキュリティ管理者役割は、デフォルトのデモ版の label_encodings ファイルに定義されている格付け名を置き換えること、新しい格付け名を定義すること、または一意的な格付けを持った新しいファイルを作成することができます。
格付けとして定義されるキーワードを次の表に示します。アスタリスク(*)で始まるキーワードはオプションです。格付けに関連付けられるオプションの初期コンパートメントとマーキングの設定方法については、「デフォルト語句およびインバース語句の設定」を参照してください。
表 2-2 格付けの値
他の組織のラベルエンコーディングとの互換性が必要なエンコーディングを作成するのでなければ、使用するコンパートメントのビット番号については、気にする必要はありません。ただし、自分の使用している番号とそれぞれのビットの関係を把握してください。
以下に Trusted Solaris のデモ版のlabel_encodings ファイルの CLASSIFICATIONS セクションの冒頭部分を示します。
CLASSIFICATIONS: * name= UNCLASSIFIED; sname= U; value= 1; name= CONFIDENTIAL; sname= C; value= 4; initial compartments= 4-5 190-239; name= SECRET; sname= S; value= 5; initial compartments= 4-5 190-239; name= TOP SECRET; sname= TS; value= 6; initial compartments= 4-5 190-239; |
例 2-3 で定義された格付けにはそれぞれ、必須の name、sname、value が指定されています。CONFIDENTIAL、SECRET、TOP SECRET の格付けにはそれぞれ initial compartments (初期コンパートメント) が設定されていますが、UNCLASSIFIED には何も設定されていません。
以下の表は、初期コンパートメントのビットの割り当てとその意味を示しています。
表 2-3 初期コンパートメントのビット割り当て例とその意味
initial compartments= 4 5 100-227; |
この格付けのラベルでは、コンパートメントビットの 1、5、および 100〜227 は、初期設定でオンになっている (1 に設定)。 |
例 2-3 に示した初期コンパートメントの一部は、デフォルト語句やインバース語句を定義するために後で使用します。またインバース語句を後で定義するために予約されているものもあります。
初期コンパートメントが設定されていない簡単な格付けの例を以下に示します。
CLASSIFICATIONS: name= PUBLIC; sname= PUBLIC; value= 1; name= INTERNAL_USE_ONLY; sname= INTERNAL; aname= INTERNAL; value= 4; name= NEED_TO_KNOW; sname= NEED_TO_KNOW; aname= NEED_TO_KNOW; value= 5; name= REGISTERED; sname= REGISTERED; aname= REGISTERED; value= 6; initial compartments= 10; |
初期コンパートメントまたは初期マーキングのいずれかにビットが設定されると、格付けされているすべてのラベルのビットは 1 になります。初期コンパートメントに指定された各ビットは、後で label_encodings ファイルで定義することによって、「デフォルト語句」または「インバース語句」を作成できます。
デフォルトコンパートメント語句とは、格付けを含む任意のラベルに現れる語句のことです。
インバースコンパートメント語句とは、インバースコンパートメントのビットを使用してユーザーが定義した別の語句が存在しない場合に、関連の格付けを持つラベルの中に現れる語句のことです。
以下の表は、格付けに関連付けられた初期コンパートメント値の条件を要約しています。
表 2-4 格付けに使用する初期コンパートメントの値
値 |
条件 |
---|---|
*initial compartments= |
あらゆるデフォルトのコンパートメント語句 (関連付けられた格付けを持つラベルであれば、そのラベルに常に表示される名前) のビット番号を指定。 応用: インバース語句にもビット番号を指定。推奨: インバース語句を後で追加できるように初期コンパートメントを確保しておくこと。 |
コンパートメントビットとマーキングビットに使用する番号については、エンコーディングが、別の組織のものと互換性を持つ必要がある場合に限り、注意する必要があります。
以下の例では、格付けが PUBLIC のラベルには初期コンパートメントが割り当てられていませんが、格付けが SUN FEDERAL のラベルには 4-5 が初期コンパートメントとして割り当てられています。
name= PUBLIC; sname= P; value= 1; name= SUN FEDERAL; sname= SUNFED; value= 4; initial compartments= 4-5 |
例 2-5 のようにビットが割り当てられている場合には、PUBLIC 格付けを含むラベルには、デフォルトのコンパートメントが割り当てられていない一方で、SUN FEDERAL 格付けを含むラベルのコンパートメントビットの 4 と 5 が常にオンになります。これらの初期コンパートメントビットの語句への割り当てを示す例については、以下のコード例とそれに続く説明を参照してください。
SENSITIVITY LABELS: WORDS: name= DIVISION ONLY; sname= DO; minclass= SUN FEDERAL; compartments= 4-5; name= SMCC AMERICA; sname= SMCCA; minclass= SUN FEDERAL; compartments= ‾4; name= SMCC WORLD; sname= SMCCW; minclass= SUN FEDERAL; compartments= ‾5; |
label_encodings ファイルの SENSITIVITY LABELS セクションで定義された WORDS を上記のコード例に示します。コンパートメントビットの 4 と 5 が、DIVISION ONLY という語句に割り当てられています。コンパートメントビットの 4 と 5 は、インバース語句にも関連付けられており、SMCC AMERICA はインバースコンパートメントビットの ‾4 に、SMCC WORLD はインバースコンパートメントビットの ‾5 に割り当てられています。このエンコーディングの結果、格付けが SUN FEDERAL の情報ラベルには最初から DIVISION ONLY という語句が含まれ、そのバイナリ表現として、コンパートメントビットの 4 と 5 がオンになり、一方、格付けが PUBLIC の情報ラベルのコンパートメントビットの 4 と 5 は常にオフになります。その結果、SMCC AMERICA と SMCC WORLD が、ラベルに表示されます。IUO (INTERNAL_USE_ONLY) の minclass はインバース語句として指定されるため、SMCC AMERICA と SMCC WORLD は、PUBLIC の機密ラベルには表示されません。それによって、この 2 つのインバース語句の存在が分かります。
後で割り当てられることが予約されていないコンパートメントやマーキングビットに関しては以下のことを心掛けてください。指定された初期コンパートメントごとに SENSITIVITY LABELS: WORDS: セクションと INFORMATION LABELS: WORDS: セクションの中のビットに語句を割り当てる必要があります。