この章では、5.1 バージョンの製品を Sun N1 Service Provisioning System 5.2 へアップグレードする手順を示します。
バージョン 5.1 以前にリリースされたソフトウェアバージョンを使用している場合は、Sun N1 Service Provisioning System 5.2 にアップグレードする前にバージョン 5.1 にアップグレードする必要があります。バージョン 4.0 以前にリリースされたソフトウェアバージョンを使用している場合は、バージョン 4.1 にアップグレードする前にバージョン 4.0 にアップグレードする必要があります。
アップグレードの手順は、Sun N1 Service Provisioning System 5.2 がサポートするオペレーティングシステムバージョンで N1 Service Provisioning System 5.1 が稼働しているかどうかによって異なります。以前にサポートされていたオペレーティングシステムでも、新バージョンの Sun N1 Service Provisioning System でサポートされない場合があります。
Sun N1 Service Provisioning System アプリケーションのどれかをアップグレードする場合、5.2 アプリケーションをインストールする新しいサーバーは次の要件を満たしている必要があります。
オペレーティングシステム – 5.2 アプリケーションを実行するオペレーティングシステムは、5.1 アプリケーションを実行していたオペレーティングシステムと同じタイプでなければなりません。たとえば、Red Hat Linux Advanced Server 2.1 で稼働するマスターサーバーを Red Hat Linux Advanced Server 3.0 で稼働するマスターサーバーに移行できます。しかし、Red Hat Linux Advanced Server 2.1 で稼働するマスターサーバーを Solaris OS のいずれかのバージョンで稼働するマスターサーバーに移行することはできません。
ハードウェアアーキテクチャ – 5.2 アプリケーションを実行するサーバーのハードウェアアーキテクチャは、5.1 アプリケーションを実行していたアーキテクチャと同じでなければなりません。たとえば、Solaris OS で稼働する SPARC ベースサーバーから Solaris OS で稼働するほかの SPARC ベースサーバーにリモートエージェントをアップグレードできます。しかし、Solaris OS で稼働する SPARC ベースサーバーから Solaris OS で稼働する x86 ベースのサーバーにリモートエージェントをアップグレードすることはせきません。
アプリケーションのユーザー所有権 – 5.2 アプリケーションは、5.1 アプリケーションを所有するユーザーが所有するように設定する必要があります。たとえば、5.1 マスターサーバーをインストールしてユーザー foo に所有権を割り当てた場合、5.2 マスターサーバーにもその所有者として foo を割り当てる必要があります。
次に、Sun N1 Service Provisioning System 5.1 から Sun N1 Service Provisioning System 5.2 に正しくアップグレードするために必要な作業の概要を示します。
アップグレードするサーバーが Sun N1 Service Provisioning System 5.2 を稼働させる上での最小要件を満たしているかどうかを確認します。
第 2 章「Sun N1 Service Provisioning System 5.2 のシステム要件」を参照してください。
作業を行い、マスターサーバーをアップグレードします。
指示に従って、リモートエージェントとローカルディストリビュータをアップグレードします。
「リモートエージェントとローカルディストリビュータのアップグレード」を参照してください。
CLI Clients はアップグレードする必要はありません。5.2 バージョンの CLI Client をインストールし、5.1 バージョンをアンインストールしてください。
マスターサーバーアプリケーションのアップグレードは、通常のソフトウェアのようには行われません。まず、新バージョンのマスターサーバーを旧バージョンのマスターサーバーと同じサーバーにインストールします。続いて、旧バージョンのマスターサーバーから新バージョンのマスターサーバーにデータを移行します。
5.1 バージョンのマスターサーバーデータを 5.2 マスターサーバーに移行すると、5.2 バージョンのマスターサーバー内のデータはすべて削除されます。マスターサーバーの両バージョンは、移行作業が完了するまで移行スクリプトによって停止されます。移行作業が進行している間、マスターサーバーは利用できません。
アップグレードするサーバーのオペレーティングシステムバージョンが Sun N1 Service Provisioning System 5.2 でサポートされているか確認してください。サポートされているオペレーティングシステムのリストは、「オペレーティングシステム要件」を参照してください。
移行前にデータのバックアップをとってください。『Sun N1 Service Provisioning System 5.2 システム管理者ガイド』の第 9 章「バックアップと復元」を参照してください。
5.1 バージョンのマスターサーバーをインストールしたユーザーでマシンにログインします。
5.2 バージョンのマスターサーバーを 5.1 バージョンのマスターサーバーがインストールされているサーバーにインストールします。
Linux または UNIX システムを使用している場合は、「Linux および UNIX システムに Sun N1 Service Provisioning System 5.2 をインストールする」の説明に従って Sun N1 Service Provisioning System 5.2 マスターサーバーをインストールします。
Windows を使用している場合は、次の操作を行います。
Windows Administrative Tools 内の Service アプリケーションを使用して IPC Daemon サービスを停止することにより、5.1 マスターサーバーを停止します。
5.1 マスターサーバー (具体的には IPC Daemon と Server) を手動で起動するように設定します。
「Windows に Sun N1 Service Provisioning System 5.2 マスターサーバーをインストールする」の説明に従って、5.2 バージョンのマスターサーバーをインストールします。
5.1 バージョンのマスターサーバーマスターサーバーを所有するユーザーとグループによる所有権を指定して 5.2 マスターサーバーをインストールします。
Linux および UNIX マスターサーバーの場合、移行処理中にデータベースが最適化されないようにしてください。
データの移行中にデータベースの最適化を開始する cron ジョブがスケジュールされていないかを確認してください。
コマンドプロンプトにアクセスします。
Linux および UNIX サーバーでは、シェルウィンドウを開いてマスターサーバーを所有するユーザーとしてログインします。
Windows では、Command Prompt ウィンドウを開きます。
移行スクリプトが入っているディレクトリに移動します。
Linux および UNIX サーバーでは、次のように入力します。
% cd /N1SPS5.2-home/server/bin/migrate |
N1SPS5.2-home には、マスターサーバーをインストールしたディレクトリを指定します。
Windows では、次のように入力します。
C:\> cd C:\N1SPS5.2-home\server\bin\migrate |
C:\N1SPS5.2-home には、マスターサーバーをインストールしたディレクトリを指定します。
移行スクリプトを起動します。
Linux および UNIX サーバーでは、次のように入力します。
% ./migrateMS_5.1-5.2.sh |
移行スクリプトには、次のコマンド行オプションがあります。
archive_file に、マスターサーバーのアーカイブ先を指定します。
移行をバックグラウンドで実行します。
-bg オプションを使用する場合は、MS-Migration-number.log ファイルで移行が正常に完了したことを確認してから、マスターサーバーを起動する必要があります。
Migration started : date_and_time ... Master server migration completed successfully: date_and_time Stopping 5.2 Database stop Database in /opt/SUNWn1sps/N1_Service_Provisioning_System_5.2/server succeeded Issuing sync for flushing buffer data to disk. A log of migration can be found in /opt/SUNWn1sps/N1_Service_Provisioning_System_5.2/server/bin/migration/MS-Migration-number.log A log of output of database commands can be found in /opt/SUNWn1sps/N1_Service_Provisioning_System_5.2/server/bin/migration/MS-Migration-DB-CMD-number.log |
データベースの移行ログ出力を、デフォルトのログファイルではなく logfile に書き込みます。
パフォーマンス向上のため、データベースの復元中に fsync() システム呼び出しが移行スクリプトでオフされるようになりました。このオプションを指定すると、fsync() システム呼び出しがオンのままになります。
データベースの移行のために、移行スクリプトで新しい方法が使用されるようになりました。新しい方法では、テキストダンプの代わりにバイナリダンプが使用され、パフォーマンスが大幅に向上しています。-dbtextdump オプションは、以前の方法を使用する場合のために用意されています。
移行ログ出力を、デフォルトのログファイルではなく logfile に書き込みます。
archive_file に、マスターサーバーの移行元を指定します。
新しいマスターサーバーのインストール先パスを指定します。
以前のマスターサーバーのインストール先パスを指定します。
Java の移行をスキップします。
デフォルトが yes になります。
Windows では、次のように入力します。
C:\N1SPS5.2-home\5.2\server\bin\migrate\>.\migrateMS_5.1-5.2.cmd |
画面上に表示される説明に従って移行作業を進めます。
移行が完了すると、次のメッセージが表示されます。
Master Server migration completed successfully. |
Postgres データベース、ブラウザインタフェース、およびマスターサーバーのリスナーポート番号は移行されません。Sun N1 Service Provisioning System 5.2 マスターサーバーは、インストール時に指定されたポート番号を使用します。
ログファイルをチェックし、移行中にエラーが発生していないか確認します。
移行スクリプトにより、ログファイルの場所が表示されます。
マスターサーバー ブラウザインタフェースへのアクセスに使用するブラウザのキャッシュを消去します。
マスターサーバーをアップグレードする前にブラウザセッションを起動した場合は、ブラウザにキャッシュ化されているグラフィックとスタイルシートのために、アップグレートされたブラウザインタフェースが表示されなくなる可能性があります。
『Sun N1 Service Provisioning System 5.2 システム管理者ガイド』の第 9 章「バックアップと復元」の説明に従って、新しいマスターサーバーに移行したデータをバックアップします。
5.1 マスターサーバーのデータを 5.2 マスターサーバーへ復元することはできません。必要に応じて使用できる正確なバックアップ一式を保持するため、5.2 マスターサーバーデータをバックアップしてください。
(省略可能) 5.1 バージョンのマスターサーバーをアンインストールします。
5.1 バージョンのマスターサーバーを使用しない場合は、第 11 章「Sun N1 Service Provisioning System 5.2 のアンインストール」の説明に従ってアンインストールできます。
この節では、旧バージョンのマスターサーバーから新バージョンのマスターサーバーに移行されるデータについて詳しく説明します。
次に、マスターサーバー上で移行されるデータの種類を示します。
表 10–1 移行の概要
マスターサーバー上のデータ |
移行対象のデータですか |
移行手段 |
---|---|---|
PostgresSQL データ |
はい |
SQL スクリプト |
既存のコマンドに変更を加えるための CLI Client スクリプト |
いいえ | |
CLI Client でシリアル化されるオブジェクトの移行 |
いいえ | |
各ホスト上の config.properties ファイルに対する変更の移行 |
はい |
このファイルにリストされているプロパティは、「プロパティファイルの移行についての詳細」で説明されている方法を使用して移行する |
リソースの移行 |
はい |
リソースディレクトリをコピーする |
ロガー構成ファイル |
いいえ | |
ユーザーインタフェースのカスタマイズ |
いいえ |
5.1 config.properties は、5.2 config.properties ファイルへ移行されます。この移行では、5.1 ファイルに入っている各プロパティーの値が、5.2 config.properties ファイルに入っているプロパティーの値と比較されます。値が同じであれば、そのプロパティは無視されます。値が異なる場合は、5.1 の値が 5.2 の config.properties ファイルにコピーされます。プロパティが、5.1 バージョンのファイルに存在するが、5.2 バージョンのファイルには存在しない場合は、5.1 バージョンの値が 5.2 バージョンのファイルに追加されます。次に示すプロパティの値は、5.2 バージョンの config.properties ファイルに移行されません。
webserver.TomcatHome
rsrc.localrepo
db.port
db.password
db.hostname
db.instancename
db.username
db.type
db.maxconnections
hostdb.ms.ipaddress
hostdb.ms.port
note.mailsubject
net.server.nconn
net.server.type.1
net.server.ip.1
net.server.port.1
net.server.parms.1
note.url
pe.defaultUserToRunAs
hostdb.ms.connectiontype
pe.maxSimulPlans
5.1 のプロパティーファイルでこれらのプロパティーのいずれかの値を変更した場合は、5.2 config.properties ファイルの値を手動で変更する必要があります。
Sun N1 Service Provisioning System 5.2 には、マスターサーバーのブラウザインタフェースを使用してリモートエージェントとローカルディストリビュータをアップグレードできる自動アップグレードユーティリティーがあります。
CLI コマンドを使用したアップグレードの詳細については、『Sun N1 Service Provisioning System 5.2 コマンド行インタフェース (CLI) リファレンスマニュアル』の「node コマンドの概要」を参照してください。
リモートエージェントとローカルディストリビュータをアップグレードする前にマスターサーバーを移行します。
Sun N1 Service Provisioning System 5.2 マスターサーバーのブラウザインタフェースにログインします。
「Hosts」をクリックします。
「masterserver」をクリックします。
「Update Entire N1 SPS network...」ボタンをクリックします。
ウィンドウが開かれ、アップグレード中のホストの一覧と、アップグレードの進捗状態が表示されます。処理が完了したところで、次のメッセージが表示されます。
Host Update not yet complete. |
「Close」ボタンをクリックします。
アップグレードの第 2 段階を完了するために、「Update Entire N1 SPS network...」ボタンをもう一度クリックします。
アップグレード中のホストの一覧と、アップグレードの進捗状態が表示されます。処理が完了したところで、各ホストのステータスが「Updated」と表示されます。
「Close」ボタンをクリックします。
以上でアップグレードが完了します。
アップグレードしたホストの準備作業を行います。
アップグレードしたホストでプランを実行する前に、そのホストの準備作業を行う必要があります。ホストの準備作業は、『Sun N1 Service Provisioning System 5.2 システム管理者ガイド』の「物理ホストを準備する」の説明に従ってください。