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Sun ONE Messaging Server 6.0 インストールガイド (Solaris 版)

第 4 章
Sun ONE Messaging Server へのアップグレード

この章では、Messaging Server 5.2 から 6.0 へのアップグレード方法について説明します。


Sun ONE Messaging Server 6.0 へアップグレードする前に、Messaging Server 5.2 にアップグレードまたは移行する必要があります。5.2 以前のバージョンから Messaging Server 6.0 へ直接アップグレードしたり移行することはできません。Messaging Server 5.2 への移行の詳細は、『iPlanet Messaging Server 5.2 移行ガイド』と『インストールガイド』を参照してください。


Messaging Server 5.2 から Messaging Server 6.0 へのアップグレードには、3 つのステップがあります。これらのプロセスを以下の項目で説明します。


アップグレードの実行前 :

  • Messaging Server 6.0 は、Messaging Server 5.2 システムと同じシステムまたは異なるシステム上にインストールされて設定されます (第 2 章「Messaging Server のインストール」の手順を使用)。
  • 既存の Messaging Server 5.2 インストールは、 imsimta dirsync ではなく MTA ダイレクト LDAP 検索によって設定されます。詳細は、『Sun ONE Messaging Server 6.0 管理者ガイド』を参照してください。


設定をアップグレードするアップグレードファイルの作成

この節では、Messaging Server 6.0 システム上で設定をアップグレードするために、特殊なアップグレードファイルを作成する方法を説明します。

概要

アップグレードユーティリティを実行して Messaging Server 5.2 を6.0 に移行する前に、最初に UpgradeMsg5toMsg6.pl Perl スクリプト (msg_svr_base/sbin に存在する) を実行する必要があります。

UpgradeMsg5toMsg6.pl は、5.2 設定ファイルを 6.0 設定ファイルと比較し、設定ファイルごとに、*.CHANGES ファイルと *.MERGEDファイルの 2 セットを作成します。

*.CHANGES ファイルと *.MERGED ファイルは、ワークスペースディレクトリ /var/tmp/UpgradeMsg5toMsg6.ScratchDir 内に生成されます。

*.CHANGES ファイルは、Messaging Server 5.2 と Messaging Server 6.0 の間の、設定ファイルの重要な相違点を示します。このファイルでは、Messaging Server 6.0 でのみ見つかった設定エンティティ、Messaging Server 6.0 では廃止された Messaging Server 5.2 の設定エンティティ、および Messaging Server 5.2 でのみ見つかった設定エンティティを強調しています。すべての *.CHANGES ファイルが設定ファイルのバージョン間の相違点を示すわけではなく、また、すべての設定ファイルが *.CHANGES ファイルを生成するわけではありません。

*.MERGED ファイルは、Messaging Server 5.2 と 6.0 の設定値と設定を統合したものです。一般に次のどちらかの場合に、Messaging Server 5.2 の設定パラメータ値は、Messaging Server 6.0 でも保持されます。

表 4-1 で、*.MERGED または *.CHANGES ファイルを生成する設定ファイルのリストを示します。

表 4-1 *.MERGED または *.CHANGES ファイルを生成する Messaging Server 設定ファイル 

設定情報

説明

*.MERGED ファイルを生成

*.CHANGES ファイルを生成

job_controller.cnf

ジョブコントローラファイル

X

X

変換

変換ファイル

X

 

channel_optionchannel は SMTP チャネル

SMTP チャネルオプションファイル

X

 

native_option

ネイティブチャネルのオプションファイル (channel_option の例外)

X

X

channel_headers.opt。channel は SMTP チャネル

ヘッダーオプションファイル

X

 

dispatcher.cnf

ディスパッチャファイル

X

X

imta_tailor

テイラーファイル

X

X

option.dat

グローバルな MTA オプションファイル

X

X

エイリアス

エイリアスファイル

X

 

imta.cnf

MTA 設定ファイル。組み込み参照 (ファイルディレクトリの場所など) のみが変更されます。書き換え規則およびチャネル設定は、5.2 の設定が保持されます。imta.cnf ファイルに LMTP を含めるには、LMTP 情報を 6.0 の imta.cnf ファイルからコピーします。

X

場合によっては、*.CHANGES ファイルが生成されることがあります。

mappings

マッピングファイル

X

 

mappings.locale

ローカライズされたマッピングファイル

X

 

internet.rules

インターネットルールの設定ファイル

X

 

backup-groups.conf

バックアップグループ定義

X

X

configutil

local.conf および msg.conf 設定ファイルにある設定パラメータの変更

 

X

UpgradeMsg5toMsg6.pl Perl スクリプトの実行

UpgradeMsg5toMsg6.pl を実行して、設定の更新に使用できるファイルのセットを作成するには、次の手順に従います。

  1. Messaging Server 5.2 および 6.0 バージョンが同じマシン上にない場合は、Messaging Server 5.2 の server-root ディレクトリを転送、抽出して、Messaging Server 6.0 システムにコピーします。これらのサーバーバージョンが同じマシン上にインストールされている場合は、この手順は省くことができます。
    1. メッセージストアがシステム間で転送するには大きすぎる場合は、umount (1M) コマンドと mount (1M) コマンドを使用して、5.2 システムからディスクのマウントを解除し、そのディスクを 6.0 システムにマウントすることができます。

      Messaging Server 5.2 のストアデータを Messaging Server 6.0 システムにコピーする必要はありませんが、アップグレードプロセス中に Messaging Server 5.2 のストアデータがアクセス可能であることを確認する必要があります。


    2. この時点で、5.2 システムと 6.0 システムの両方を実行することができます。
  2. 5.2 バージョンの msg-instance と 6.0 バージョンの msg_svr_base に対して、UpgradeMsg5toMsg6.pl アップグレードスクリプト (msg_svr_base/sbin に存在する) を実行します。
    例:

    perl UpgradeMsg5toMsg6.pl /usr/sunone/server5/msg-budgie ¥
      /opt/SUNWmsgsr

  3. ここで、/usr/sunone/server5/msg-budgie は 5.2 Messaging Server の msg-instance で、/opt/SUNWmsgsr は 6.0 Messaging Server の msg_svr_base です。


    Messaging Server 6.0 は複数のインスタンスをサポートしません。Messaging Server バージョン 5.2 のインスタンスが複数ある場合は、Messaging Server 6.0 にアップグレードできるインスタンスは 1 つだけです。さらに、アップグレードユーティリティで複数のインスタンスの移行を何回も試みても、設定が上書きされるだけです。


    *.MERGED ファイルと *.CHANGES ファイル (表 4-1 を参照) が作成されます。

  4. *.MERGED ファイルをよく確認してください。推奨されている設定を使用しない場合は、設定を手動で調整する必要があります。

このユーティリティは、Messenger Express カスタマイズファイルをアップデートしません。そのため Messaging Server 5.2 の関連情報を保持しながら Messaging Server 6.0 の新情報を追加するには、これらのファイルを手動で変更する必要があります。


アップグレードユーティリティの実行

この節では、do_the_upgrade.sh ユーティリティについて説明します。このユーティリティは /var/tmp/UpgradeMsg5toMsg6.ScratchDir にあり、4 つのサブスクリプトで構成されているシェルスクリプトです。この節には、以下の項目があります。

概要

4 つのシェルスクリプトと作成した *.MERGED ファイルで構成されています。do_the_upgrade.sh ユーティリティは Messaging Server 6.0 システムに含まれる基本設定と MTA 設定のファイルやファイルディレクトリの場所、configutil パラメータ、バックアップパラメータ、および mboxlist データベースを更新します。

このユーティリティでは do_the_upgrade.sh ユーティリティを実行するほかに、do_the_upgrade.sh ユーティリティを構成するスクリプト (make_mta_config_changes.shmake_configutil_changes.shmake_backup_config_changes.sh、および make_mboxlistdb_changes.sh) の 1 つまたは複数を個別に実行することができます。

do_the_upgrade.sh ユーティリティを実行するには、次のように指定します。

# sh /var/tmp/UpgradeMsg5toMsg6.ScratchDir/do_the_upgrade.sh


do_the_upgrade.sh ユーティリティやサブスクリプトを実行する場合、Messaging Server の 5.2 や 6.0 が起動や実行をしていないことを確認してください。


do_the_upgrade.sh スクリプトの実行後に5.2 へのパーティションとパスへの参照を継続するか(すると Messaging Server 5.2 の server-root ディレクトリは削除できなくなる) 5.2 が格納されているパーティションをMessaging Server 6.0 ディレクトリが割り当てられる場所に手動で移動するかそのどちらかを選択できます。この手順は Messaging Server の再起動のまえに実行しておくことが必要です。

MTA の設定

do_the_upgrade.sh ユーティリティの一部を構成する MTA アップブレード設定サブスクリプトは、make_mta_config_changes.sh (/var/tmp/UpgradeMsg5toMsg6.ScratchDir に存在する) と呼ばれます。

make_mta_config_changes.sh スクリプトは、*.MERGED サーバー設定ファイルをバックアップし、Messaging Server 6.0 のファイルディレクトリ構造内の元の名前と位置に戻します。

このスクリプトによるファイルの名前の変更と移動が完了すると、imsimta cnbuild コマンドが自動的に実行されて MTA 設定が再コンパイルされます。


MTA リレーマシンを Messaging Server 5.2 から Messaging Server 6.0 にアップグレードする場合、make_mta_config_changes.shmake_backup_config_changes.sh を実行します (「バックアップ設定」を参照)。


configutil の各パラメータ

do_the_upgrade.sh ユーティリティの一部を構成する configutil アップグレード設定サブスクリプトは、make_configutil_changes.sh スクリプト (/var/tmp/UpgradeMsg5toMsg6.ScratchDir に存在する) と呼ばれます。

make_configutil_changes.sh スクリプトは、msg.conf および local.conf ファイル内の新規またはアップグレードされたパラメータを組み込みます。Messaging Server 6.0 の configutil パラメータにデフォルト値が指定されていない場合、Messaging Server 5.2 の値が Messaging Server 6.0 バージョンに繰り越されます。

バックアップ設定

do_the_upgrade.sh ユーティリティの一部を構成するバックアップアップグレード設定サブスクリプトは、make_backup_config_changes.sh スクリプト (/var/tmp/UpgradeMsg5toMsg6.ScratchDir に存在する) と呼ばれます。

make_backup_config_changes.sh スクリプトは、backup-groups.conf ファイルにあるようなバックアップサービスの設定をアップグレードします。

mboxlist データベース

mboxlist データベースは、make_mboxlistdb_changes.sh スクリプト (/var/tmp/UpgradeMsg5toMsg6.ScratchDir に存在する) と呼ばれる do_the_upgrade.sh ユーティリティの一部を構成する、設定サブスクリプトをアップグレードします。

make_mboxlistdb_changes.sh スクリプトは、5.2 mboxlist データベースを転送してアップグレードし、それを Messaging Server 6.0 ディレクトリ構造にアップグレードします。このスクリプトは、4 つの *.db ファイル (folder.dbquota.dbperuser.db、および subscr.db) を、Messaging Server 5.2 システム上の server-root/msg-instance/store/mboxlist から Messaging Server 6.0 システム上の msg_svr_base/data/store/mboxlist にコピーします。


ユーザーメールボックスの移行

この節では、ユーザーメールボックスを Messaging Server 5.2 システムから Messaging Server 6.0 システムにオプションとして移行する方法について説明します。Messaging Server 5.2 と 6.0 を同じマシンにインストールしている場合は、ユーザーメールボックスを移行する必要はありません。また、ユーザーメールボックスを格納している 5.2. のマシンに引き続きアクセスできる場合は、ユーザーメールボックスを 6.0 のマシンに移行する必要はありません。Messaging Server 5.2 のマシンにアクセスしなくなる場合のみ、ユーザーメールボックスを移行する必要があります。

ユーザーメールボックスのデータを Messaging Server 5.2 から 6.0 にオンラインで移動するには、この節で説明する手順に従ってください。データの移動中に Messaging Server を停止する必要はありません。

以下の項目の概略について説明しています。

条件

移行の要件は、新旧両方の Messaging Server でストアド実行することだけです。

移行手順

ユーザーメールボックスを 5.2 システムから 6.0 システムに移行するには、次の手順に従います。

  1. データ移動プロセスが完了するまでメールボックスにアクセスできないことを、あらかじめユーザーに通知します。データを移動する前に、ユーザーがメールシステムからログアウトしていることを確認します。
  2. 保留キューにある受信メッセージを保留し、IMAP、POP、および HTTP を介してメールボックスにアクセスできないようにするために、5.2 メッセージストアのすべてのユーザーエントリの mailUserStatus ユーザー LDAP 属性を、active から hold に変更します。
  3. mailUserStatus の詳細については、『Sun ONE Messaging Server スキーマリファレンスマニュアル』を参照してください。

  4. このプロセス中に 5.2 と 6.0 の両方の Messaging Server が、起動して実行されていることを確認します。
  5. すべてのエントリ内の mailHost 属性を、古いメールサーバーから新しいメールサーバーに変更します。
  6. そのためには、次の ldapsearch コマンドを使用して、mailHost 属性の変更が必要なユーザーエントリを検索します。

    ldapsearch -h ldap.siroe.com -b "o=internet" ¥    "(&(objectclass=maildomain)(mailHost=oldmail.siroe.com))"

    次に、ldapmodify コマンドを使用して、これらのエントリを新しいメールサーバーに正しく変更します。

    mailhost の詳細については、『Sun ONE Messaging Server スキーマリファレンスマニュアル』を参照してください。

  7. 古いシステム (oldmail.siroe.com) で、ユーザーエントリを等分してグループ (1 行に 1 つのユーザー名) に分割し、ユーザーファイル内に入れます。
  8. ユーザーデータを、Messaging 5.2 メッセージストアから Messaging Server 6.0 メッセージストアに移動します。この手順は次の場合に実行する必要があります。
    • Windows から UNIX に、または UNIX から Windows に移行している場合
    • 一度にメッセージ全体を移行しない場合
    • ユーザーの名前を変更する必要がある場合。uid、ドメイン名、およびデフォルトドメインの変更を含む
    • これを行うには、imsbackup ユーティリティを使用して Messaging Server 5.2 メッセージストアをバックアップし、imsrestore ユーティリティを使用してメッセージストアを Messaging Server 6.0 にリストアします。

      ストアデータの転送方法として imsbackup および imsrestore ユーティリティを使用した移行を選択した場合、パーティションのパスを Messaging Server 5.2 のパーティションにマップしないでください。また、mboxlist のアップグレード手順を実行しないでください。アップグレードスクリプトで生成される make_configutil_changes.sh スクリプトによって、Messaging Server 5.2 パーティションにマップするパーティションパスが自動的に設定されます。これは手動で変更する必要があります。また、make_mboxlistdb_changes.sh スクリプトは実行しないでください。このスクリプトはデフォルトでは do_the_upgrade.sh スクリプトによって自動的に実行されるため、手動で削除する必要があります。

      imsbackup および imsrestore ユーティリティの構文と使用方法の詳細については、『Sun ONE Messaging Server リファレンスマニュアル』を参照してください。

      newmail.siroe.com で次のコマンドを実行します。

      rsh "ipaddress_of_oldmail.siroe.com /server-root/bin/msg/store/bin/imsbackup ¥
        -f- -u user_file" | /opt/SUNWmsgsr/sbin/imsrestore -f- -cy -n -v1

      user_file は、手順 5 で説明している、ユーザーメールボックス名が含まれているユーザーファイルです。

  9. ユーザーファイルを使用して、複数のバックアップとリストアセッション (10 〜 15) を同時実行すると、新しいメッセージストアへのリストアの速度を最適化できます。
  10. システムの新しいデフォルトのメッセージングサーバーに Messaging Server 6.0 を設定します。
  11. newmail.siroe.com (以前 oldmail.siroe.com によってホストされていたドメインを管理するサーバー) をポイントするように、oldmail.siroe.comA レコードを変更します。

  12. 次のコマンドを発行して、Messaging Server 5.2 システムの保留キューにあるメッセージを解放します。

    imsimta process_held -uid=user -domain=domain

  13. user はユーザー ID で、domain はユーザーが常駐するドメインです。

  14. ユーザークライアントで新しいメールサーバーが指定されていることを確認します。
  15. アップグレードが終了したら、ユーザーに、メールクライアントプログラムから新しいメールサーバーをポイントしてもらいます (この例では、oldmail.siroe.com から newmail.siroe.com をポイントしてもらいます)。

    別の方法として、MMP の使用があります。MMP を使用した場合、ユーザーが新しいメールサーバーでクライアントを直接ポイントする必要はありません。MMP は、LDAP ユーザーエントリに保存されている mailHost 属性から情報を取得し、その情報を新しいサーバーに自動的にリダイレクトします。



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