このマニュアルで紹介する各種ツリーは、管理者ガイドに含まれているものとは異なります。Desktop Manager を使用するうえで、構成ツリーと構成プロファイルツリーという 2 種類のツリーに関する知識は不要のため、管理者ガイドは構成ツリーについては触れていません。
クライアント側から見ると、アプリケーションは 3 つの別々のデータソース (階層) から構成データを取得します。これらは、デフォルト階層、ユーザー階層、およびプロファイル階層です。
ユーザー階層とデフォルト階層は、クライアントのアプリケーションが現在使用している既存のデータソースです。デフォルト階層はアプリケーションと一緒に配備され、配備後は、ほとんど変わることはありません。これはアプリケーションと一緒にローカルに格納されています。ユーザー階層は、特定のユーザーがアプリケーションの設定に加えた変更を保存します。これはローカルまたは共有の場所に格納されています。
プロファイル階層は、構成リポジトリに一元的に格納されています。このリポジトリは Desktop Manager が管理する構成設定を含んでいます。これらの設定はサーバーでは、組織、役割、ユーザー、ホストなどの要素に関連付けられています。特定のユーザーやホストに代わってConfiguration Manager がこれらにアクセスし、ユーザーやホストには読み取り専用になっています。
Desktop Manager は、プロファイル階層の構成設定のみを読み書きできます。デフォルト階層またはユーザー階層のコンテンツには、Desktop Manager からアクセスできません。すべての階層の値の取得と組み合わせは、クライアントのアプリケーション構成システムが担当します。 「結合」を参照してください。
Desktop Manager は、「ツリー」 とも呼ばれる、4 つの異なる階層構造を取り扱います。Desktop Manager がどのように機能するかを理解するには、各種ツリーを区別することが重要です。
最初のツリーは「組織ツリー」 ( 図 5–1 のグレーの部分で、組織単位間の関係を表しています。このツリーの最初のレベルは組織自体を表します。その次のレベルは、たとえば部門や課を表すことができます。最後のレベルは、これらの部署のメンバーを表すことができます。
2 番目のツリーは「ドメインツリー」で、ドメインやホストなどのネットワーク要素間の関係を表しています。このツリーの最初のレベルは、ネットワーク全体を表します。その次のレベルは、たとえば各種サブネットを表し、最後のレベルはこれらのサブネット内の実際のホストを表します。
Desktop Manager では、上記の 2 つのツリーが現在 LDAP サーバーのコンテンツ (企業構造の代表的なリポジトリ) を解釈することによって取得されています。LDAP でツリー内の各場所は「要素」と呼ばれます。LDAP サーバー内のエントリは、Desktop Manager によって認識される要素、すなわち「組織」、「役割」、「ユーザー」、「ドメイン」、および 「ホスト」にマッピングされます。
3 番目のツリーは「構成ツリー」で、図 5–1 の青で表した部分です。構成ツリーは、バックエンドの構成設定を階層的にグループ化します。構成ツリーのトップレベルはコンポーネントです。コンポーネントは、1 つのソフトウェアコンポーネントを構成する構成設定で構成されています。コンポーネントの下にある要素はすべてノードかプロパティーです。ノードにはノードまたはプロパティーを含むことができます。プロパティーには構成設定が含まれています。構成設定のそれぞれはパスで表されます。たとえば、org.openoffice.Office.Common/ExternalMailer/Program は、「Common」コンポーネントの下の「External Mailer」ノードにある「Program」構成設定を表します。
組織ツリーとドメインツリーの各要素は独自の構成ツリーを持つことができるため、「ツリーのツリー」が 2 つ になります (構成ツリーが含まれた組織ツリーと、構成ツリーが含まれたドメインツリー)。
4 番目のツリーは「構成プロファイルツリー」で、図 5–1 の黄色の部分です。構成プロファイルツリーは、参照や編集がしやすいように構成設定を視覚的に分類するために使用します。これは、構成ツリーの階層から完全に独立した階層を定義して行います。構成プロファイルツリーに表示される実際の値は、構成ツリーの構成設定の場所を参照して取得されます。図 5–1 の矢印を参照してください。このようにすると、GUI とバックエンドのデータの異なる設計要件を分離できます。たとえば、構成設定の位置はバックエンドよりも GUI の方が早く変わります。
構成プロファイルツリーのトップレベルにはアプリケーションがあり、次のレベルはそのアプリケーションの各種モジュールやサブモジュール、最後のレベルは実際の構成設定に対応しています。多数のオプションを処理する StarSuite
TM や Mozilla
のような構成システムでも同様に表されます。たとえば、HomeUrl オプションは「設定」ダイアログの
Mozilla/Navigator/HomeUrl にあります。
このマニュアルで紹介する各種ツリーは、『Sun Desktop Manager 1.0 管理ガイド』 に含まれているものとは異なります。Desktop Manager を使用するうえで、構成ツリーと構成プロファイルツリーという 2 種類のツリーに関する知識は不要のため、管理者ガイドでは構成ツリーについては触れていません。
特定の要素に最終的に使用される構成設定は、その要素の構成定とその親要素の構成設定をクライアント側でマージして決定されます。たとえば、あるユーザー用の設定値では、そのユーザーに割り当てられたプロファイルとともに、そのユーザーが所属している組織に割り当てられたプロファイルが考慮されます。マージは継承によって実現します。すなわち、ユーザーは組織構造の上のレベルで指定されている設定を継承します。このプロセスについては、図 5–2 を参照してください。「marketing」組織の設定をそのメンバーの 1 人である 「jclarke」が継承する仕組みを表しています。ユーザー「jclarke」の構成設定が、継承された設定の一部を上書きします。
構成設定がプロファイル階層にマージされる場合と同様に、3 つの階層がマージされて、最終的な構成設定一式が形成されます。ユーザー階層はプロファイル階層より優先され、プロファイル階層はデフォルト階層より優先されます。ユーザー階層の構成設定がマージ処理中には考慮されないように、またユーザー自身のクライアントマシン上で Desktop Manager を使って管理者によって行われた設定に上書きすることが許可されないように、構成設定をプロファイル階層にマーキングすることが可能です。これを「保護」と呼んでいます。
組織団体ツリーとドメインツリーを使用した作業の考え方は同じです。この 2 つの大きな違いは、組織ツリーがユーザーで構成され、ドメインツリーがホストで構成されることです。ユーザーとホストを 2 つの別々のツリーに置くことによって、Desktop Manager はユーザーベースおよびホストベースの構成を提供することが可能です。
クライアント側では、ユーザーベースの構成設定は、ユーザー名に基づいて組織ツリーから取得されます。ホストベースの構成設定は、ユーザーが現在作業を行なっているホストの IP またはホスト名に基づいて、ドメインツリーから取得されます。ユーザー設定はホスト設定のあとでマージされます。すなわち、ユーザーの設定がホストの設定より優先されます。たとえば、この 2 種類の構成を提供すると、ローミングユーザーはユーザーベースの構成 1 つを使用できるだけでなく、作業中のホストに最適なプロキシ構成を利用することもできます。