Solaris 共通デスクトップ環境 ユーザーズ・ガイド

付録 E 障害を持つユーザのための機能

障害を持つユーザの多くは、コンピュータの標準キーボードやマウスを使用する際に使いにくさを感じます。2 つのキーを同時に押すこと (大文字や制御文字の入力) やマウスを使用すること、正確に入力することが、困難であったり不可能である場合もあります。

AccessX は CDE の拡張機能です。AccessX を使用すると、障害を持つユーザは、キーボードを使用したり画面上でポインタを動かすことをより簡単に行えるようになります。AccessX を使用すると、次のことが可能になります。

AccessX の起動

CDE を起動したときに AccessX のウィンドウが画面に表示されていない場合は、端末エミュレータウィンドウで「accessx &」と入力します。

AccessX のメインウィンドウ

accessx &」と入力すると、次の画面が表示されます。

図 E–1 AccessX のメインウィンドウ

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ボタンおよびキーのステータスの表示

[状態] メニューから表示できる 2 つのウィンドウには、マウスボタンおよび特定のキーのステータスが表示されます。スッティキー・キーのステータスウィンドウには、[Control] や [Shift] などのキーが押されているかどうかが表示されます。マウス・キーのステータスウィンドウには、マウスボタンが押されているかどうかが表示されます。

[状態] メニューを開くには、マウスのメニューボタンを押すか、[F10] キーと文字キーの [s] を押します。メニュー内は、矢印キーを使用して移動します。

図 E–2 [状態] メニュー

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注 –

スティッキーキーまたはマウスキーを使用する場合は、該当する機能のステータスウィンドウを表示してください。そうしない場合、大きな混乱を招く予期しない動作が発生する場合があります。たとえば、スティッキーキーの場合は、[Control] キーが押された状態で「ロック」されていると、文字キーの [c] を押したときに Control-C がコンピュータに送られます。スティッキーキーのステータスウィンドウを見ると、[Control] キーがアクティブになっていることを確認できます。


機能のオン/オフ状態が変化したときにビープ音を鳴らす

メインウィンドウには、[オン/オフ時に音を発生] というチェックボックスがあります (図 E–1 を参照)。このチェックボックスをオンにすると、スティッキーキーやスローキーなどの機能のオン/オフが変化したときにビープ音が鳴ります。

自動シャットオフタイマーの設定

AccessX を使用しないユーザと同じコンピュータを共有する場合は、マシンをが一定時間使用されなかったときに AccessX 自体が自動的に無効になるように設定しておくこともできます。そうしておけば、AccessX を使用するユーザも、使用しないユーザも、AccessX をシャットオフすることを、覚えておく必要がありません。

この AccessX のタイムアウト機能を有効にするには、[time out 後にオフ (分)] チェックボックスをオンにします (図 E–1 を参照)。該当するスライダを移動して設定した時間だけ入力がないと、AccessX が無効になります。0 〜 100 分の範囲の任意の時間を指定できます。

オンラインヘルプの表示

AccessX には、ヘルプウィンドウがいくつかあります。メインウィンドウの [ヘルプ] メニューから項目を選択してください。このメニューを開くには、マウスのメニューボタンを押すか、[F10] キーと文字キーの [h] を押します。メニュー内は、矢印キーを使用して移動します。

図 E–3 [ヘルプ] メニュー

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[設定] ウィンドウ

AccessX のメインウィンドウで [設定] ボタンをクリックすると、[設定] ウィンドウが表示されます。このウィンドウには、AccessX のさまざまな機能を調整するための一連のパラメータが表示されます。各機能と一連のパラメータについて説明します。

図 E–4 AccessX の [設定] ウィンドウ

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それぞれの機能

スティッキーキー

障害を持つユーザの多くは、2 つのキーを同時に押す、たとえば [Control]-[D] と押したり、[Shift] キーを押したままマウスでクリックすることが難しい場合があります。スティッキーキーを有効にしておくと、別のキーを押したりマウスボタンをクリックしたりする間、修飾キー (一般に、[Shift]、[Alt]、[Control]、[Meta] キー) がアクティブな状態のままになります。

スティッキーキーのオン/オフの切り替え

スティッキーキーのオン/オフは、次の 3 つの方法で切り替えることができます。

ラッチとロック

スティッキーキーは、ラッチすることもロックすることもできます。


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この場合は、[Shift] キーを、2 度押してロックし、コロン (:) キーおよび文字キーの [w][r] を押します。[Shift] キーのロックを再度押すと [Shift] キーのロックが解除されます。

ステータスウィンドウを見ると、キーのラッチ/ロック状態がわかります (ボタンおよびキーのステータスの表示を参照)。

スティッキーキーの設定値

修飾キーが押されたときにビープ音を鳴らす

修飾キーが押されるたびに、ビープ音を鳴らすことができます (ただし、スティッキーキーがオンの場合)。修飾キーを押すとそれらのキーがラッチ、ロック、またはリリースされるので、ビープ音を鳴らすと、修飾キーの有効/無効 (通常の入力時は、これを忘れがちになります) を確認できます。

この設定を有効にするには、[設定] ウィンドウの [修飾キーで音を発生] チェックボックスをオンにします (図 E–4を参照)。

2 つの修飾キーを同時に押してスティッキーキーを無効にする

[Settings] ウィンドウの [同時に押すとオフ] チェックボックスをオンにすると、2 つの修飾キー ([Control] キーや [Shift] キーなど) を同時に押してスティッキーキーを無効にすることができます。マウスでクリックしたり、[Shift] キーを 5 回押すよりもこの方が簡単と思うユーザもいます。

マウスキー

マウスが使うことが困難な場合は、マウスキーを使用すると、キーボードのテンキーを使用してマウスの操作をエミュレートできます。マウスを使用する場合と同様に、画面上でポインタを移動し、マウスボタンをクリックしたり押すことができます。

マウスキーのオン/オフの切り替え

マウスキーのオン/オフは、次の 2 つの方法で切り替えることができます。

キーボードによるマウスの操作のエミュレーション

マウスキーがオンの場合は、テンキーのキーが別の機能を持ちます。

ステータスウィンドウを表示すると、現在押されているマウスキーがわかります。

図 E–5 テンキーとマウスボタンの対応

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マウスキーの設定値

ポインタの最大速度の変更

意図する精度でポインタを移動することが困難な場合は、ポインタの移動速度を落とすことができます。ポインタの移動速度を変更するには、[Pointer の最大速度](pixel/秒) ボックスを使用し (図 E–4 を参照)、スライダを目的の速度に移動します。ポインタの移動速度はピクセル/秒の単位で指定し、その範囲は 10 〜 1000 です。 [ポインタの移動速度は、マウスキーが有効な場合にだけ適用されます。]

ポインタが最大速度になるまでにかかる時間の設定

ポインタが最大速度になるまでにかかる時間を設定できます (ただし、マウスキーの使用時)。これは、[最大速度までの時間 (秒)] スライダで調整します (図 E–4 を参照)。この時間を調整すると、ポインタの移動を制御しやすくなります。ポインタが最大速度になるまでにかかる時間は最大 4 秒まで設定できます。

トグルキー

多くのキーボードでは、特定のキーがアクティブなとき、インジケータライト (LED) が点灯します。[Caps Lock] キーもその一例です。[Caps Lock] キーを押すと、[Caps Lock] の LED が点灯します。

視力が低いユーザの場合は、これらのインジケータの用途が限定されてしまうこともあります。トグルキー機能は、そのようなインジケータの代役を果たします。[Num Lock]、[Caps Lock]、[Scroll Lock] がアクティブになると、ビープ音が 1 度鳴ります。それらのインジケータがアクティブでなくなると、ビープ音が 2 度鳴ります。

トグルキーのオン/オフの切り替え

トグルキー機能のオン/オフは、AccessX のメインウィンドウで [トグルキー] チェックボックスをオンまたはオフにして切り替えます。

リピートキー

キーやマウスボタンから指 (またはマウススティック) をすぐに離せないユーザもいます。たとえば、「k」と入力したい場合に、「kkkkkkkkk」と入力されてしまう場合もあります。リピートキーをアクティブにしてあれば、所定の時間だけキーを押し続けなければキーがリピートしません。

リピートキーのオン/オフの切り替え

リピートキーのオン/オフは、次の 2 つの方法で切り替えることができます。


注 –

[Shift] キーを 8 秒間押したままにしておくと、スローキーも有効になります。


リピートキーの設定値

リピートまでの遅延

リピートが開始されるまでにキーを押したままにしておく時間を設定できます。指定できる時間の範囲は、1/10 〜 10 秒です。このパラメータは、図 E–4 の [リピートまでの遅延] のスライダを動かして指定します。

リピート速度の設定

リピートの速度も設定できます。リピート速度は、押されたキーが 1 秒間にリピートされる回数を表しています。指定できる値の範囲は、0.1 (1 キー当たり 10 秒) 〜 10 (1 秒当たり 10 キー) です。この値が大きいほど、キーのリピート速度は速くなります。小さな値を設定すると、押されたキーをリピートしないようにしたり、すぐにリピートするのを止めることができます。

この値は、図 E–4 の [リピート速度] スライダを動かして指定します。

スローキー

キーボードをタイプするのが困難なユーザは、間違ったキーを押してしまうことがよくあります。たとえば、「t」を押そうとして「r」を押してしまう場合などがあります。スローキーをアクティブにしておけば、所定の時間以上押したキーだけが入力として受け入れられます。間違って押したキーは、入力とみなされません。


注 –

スローキーとバウンスキーを同時にアクティブにすることはできません。


スローキーのオン/オフの切り替え

スローキーのオン/オフは、次のいずれかの方法で切り替えることができます。


注 –

Shift キーを 8 秒間押したままにしておくと、リピートキーも有効になります。


スローキーの設定値

通知スタイルの設定

スローキーがアクティブなときは、キーのステータスを通知するように設定してください。そうしておけば、入力とみなされるだけの時間キーを押しているかどうかを推測する必要がありません。

[設定] ウィンドウには、スローキーが有効なときのキーのステータスの通知方法を設定するためのチェックボックスが 2 つ (「押された時」および「受け付けた時」) あります。これらのチェックボックスを使用すると、次のようにビープ音を鳴らすことができます。

受け付け遅延の設定

受け付け遅延とは、キーが初めて押されたときからそのキーが入力とみなされるまでの時間間隔のことです。この値は、図 E–4 の [受け付け遅延 (秒)] スライダを使用して設定できます。指定できる値の範囲は、0 〜 5 秒です。

バウンスキー

キーを押したままにしておくことが困難なユーザや、キーを 1 回だけ押すつもりでキーをリピートさせてしまうユーザには、バウンスキーが役立ちます。バウンスキーを使用すると、単一のキーをすばやく押した場合やリピートして押した場合に、キーをウィンドウシステムに無視させることができます。


注 –

スローキーとバウンスキーを同時にアクティブにすることはできません。


バウンスキーのオン/オフの切り替え

バウンスキーのオン/オフは、AccessX のメインウィンドウで [バウンスキー] チェックボックスをオンまたはオフにして切り替えます。

バウンスキーの設定値

再バウンド時間の設定

再バウンド時間とは、後続のキーストロークが無視される時間間隔のことです。

この期間は、図 E–4 の [再バウンド時間 (秒)] のスライダを使用して設定できます。指定できる値の範囲は、0 〜 5 秒です。

AccessX 機能で使用するキーストローク

表 E–1 に、AccessX の機能と関連するキーストロークを示します。これらのキーストロークをデフォルトで使用するには、-accessx オプションを指定して X サーバーを起動する必要があります。

表 E–1 AccessX の機能とキーストローク

機能 

キーストローク 

スティッキーキーのオン/オフを切り替え 

[Shift] キーを 5 回押す 

スティッキーキーをオフにする 

任意の修飾キー ([Shift]、[Alt] など) を 2 つ同時に押す。注: この機能は、[設定] ウィンドウでオンにします。 

マウスキーのオン/オフを切り替え 

[Alt]-[Shift]-[Num Lock] 

ポインタの移動 (マウスキーがオンの場合) 

テンキーの 1 〜 4 および 6 〜 9 のキー 

 

クリック 

ダブルクリック 

マウスボタンを押す 

マウスボタンを離す 

セレクト (マウスボタン 1) 

アジャスト (マウスボタン 2) 

メニュー (マウスボタン 3) 

リピートキーのオン/オフを切り替え 

[Shift] キーを 8 秒間押したままにしておく (4 秒経過するとビープ音が鳴る) 

スティッキーキーのオン/オフを切り替え 

[Shift] キーを 8 秒間押したままにしておく (4 秒経過するとビープ音が鳴る)