Solaris のシステム管理 (ネットワークサービス)

第 18 章 専用回線 PPP リンクの設定 (手順)

この章では、専用回線を使用した、ピア間での PPP リンクを設定する方法について説明します。主に次の内容について説明します。

専用回線の設定 (作業マップ)

専用回線リンクの設定は、ダイアルアップリンクのそれに比べて、比較的簡単です。ほとんどの場合、CSU/DSU、ダイアルサービス、または認証を設定する必要はありません。CSU/DSU の設定は複雑なので、これを設定する必要がある場合は、製造元のマニュアルを参照してください。

次の表の作業マップでは、基本的な専用回線リンクの設定に必要な作業について説明しています。


注 –

専用回線の中には、対するピアのアドレスを「ダイアル」するために、CSU/DSU を必要とするものもあります。たとえば、SVC (Switched Virtual Circuit) や Switched 56 サービスを使用するフレームリレーなどがあります。


表 18–1 専用回線リンクの設定 (作業マップ)

作業 

説明 

参照先 

1. 構成前の情報を収集する 

接続の設定に必要な情報を収集する 

表 16–4

2. 専用回線への接続に使用するハードウェアを設定する 

CSU/DSU および同期インタフェースカードを取り付ける 

「同期デバイスの設定方法」

3. 必要に応じて、インタフェースカードを設定する 

専用回線への接続を開始する際に使用するインタフェーススクリプトを設定する 

「同期デバイスの設定方法」

4. リモートピアに関する情報に基づいて設定する 

ローカルマシンとリモートピア間の通信方法を定義する 

「専用回線上のマシンの設定方法」

5. 専用回線への接続を開始する 

起動プロセスの一部として、PPP が専用回線を介して開始されるようにマシンを設定する 

「専用回線上のマシンの設定方法」

専用回線上の同期デバイスの設定

この節では、専用回線のトポロジに必要な機器を設定する方法について説明します。専用回線のトポロジについては、「専用回線リンクの構成例」で紹介しています。専用回線への接続に必要な同期デバイスには、インタフェースとモデムが含まれています。

同期デバイスを設定する際の前提条件

次の手順に従う前に、下記の項目を確認する必要があります。

Procedure同期デバイスの設定方法

  1. 必要に応じて、インタフェースカードをローカルマシンに取り付けます。

    製造元のマニュアルの手順に従います。

  2. CSU/DSU とインタフェースをケーブルで接続します。

    必要に応じて、CSU/DSU と専用回線のジャックまたは同等のコネクタをケーブルで接続します。

  3. 製造元またはネットワークプロバイダのマニュアルの手順に従って、CSU/DSU を設定します。


    注 –

    専用回線を貸し出しているプロバイダが、接続用の CSU/DSU を提供および設定する場合もあります。


  4. 必要に応じて、インタフェースのマニュアルの手順に従って、インタフェースカードを設定します。

    インタフェースカードの設定時に、インタフェースの起動スクリプトを作成します。図 16–2 のような専用回線設定では、LocalCorp にあるルーターは、HSI/P インタフェースカードを使用します。

    次のスクリプト hsi-conf によって、HSI/P インタフェースが開始されます。


    #!/bin/ksh
    /opt/SUNWconn/bin/hsip_init hihp1 speed=1536000 mode=fdx loopback=no \
    nrzi=no txc=txc rxc=rxc txd=txd rxd=rxd signal=no 2>&1 > /dev/null
    hihp1

    使用されている同期ポートが HSI/P であることを示す

    speed=1536000

    CSU/DSU の速度を示すために設定する

参照

専用回線上のローカルマシンの設定手順については、「専用回線上のマシンの設定方法」を参照してください。

専用回線上のマシンの設定

この節では、ルーターを専用回線の終端でローカルピアとして機能するように設定する方法について説明します。ここでは、「専用回線リンクの構成例」で紹介した専用回線を例として使用します。

専用回線上のローカルマシンを設定する際の前提条件

以降の手順を実行する前に、次の作業を終了しておく必要があります。

Procedure専用回線上のマシンの設定方法

  1. ローカルマシン (ルーター) 上のスーパーユーザー、またはそれと同等の役割になります。

    役割には、認証と特権コマンドが含まれます。役割の詳細については、『Solaris のシステム管理 (セキュリティサービス)』「RBAC の構成 (作業マップ)」を参照してください。

  2. リモートピア用のエントリをルーターの /etc/hosts ファイルに追加します。


    # cat /etc/hosts
    #
    # Internet host table
    #
    127.0.0.1       localhost
    192.168.130.10  local2-peer        loghost
    192.168.130.11  local1-net
    10.0.0.25       farISP
    

    /etc/hosts の例は、架空の LocalCorp のローカルルーター用のファイルです。サービスプロバイダのリモートピア farISP の IP アドレスおよびホスト名をメモしておきます。

  3. プロバイダのピアに関する情報を保持する /etc/ppp/peers/peer-name ファイルを作成します。

    この例の専用回線への接続用に、/etc/ppp/peers/farISP ファイルを作成します。


    # cat /etc/ppp/peers/farISP
    init '/etc/ppp/conf_hsi'
    local
    /dev/hihp1
    sync
    noauth
    192.168.130.10:10.0.0.25
    passive
    persist
    noccp
    nopcomp
    novj
    noaccomp

    次の表では、/etc/ppp/peers/farISP で使用されているオプションおよびパラメータについて説明しています。

    オプション 

    定義 

    init '/etc/ppp/conf_hsi'

    接続を開始する。次に、init はスクリプト /etc/ppp/conf_hsi のパラメータを使用して、HSI インタフェースを設定する

    local

    データ端末レディー (DTR) 信号の状態を変更しないように、pppd デーモンに指示する。また、データキャリア検出 (DCD) 入力信号を無視することも pppd に指示する

    /dev/hihp1

    同期インタフェースのデバイス名を指定する 

    sync

    接続の同期エンコーディングを確立する

    noauth

    ローカルシステムがピアに認証を要求する必要がないように設定する。ただし、ピアは認証を要求することができる

    192.168.130.10:10.0.0.25

    ローカルピアおよびリモートピアの IP アドレスをコロンで区切って定義する 

    passive

    最大数の LCP Configure-Request を発行したら、ピアが起動するまで待機するように、ローカルマシンの pppd デーモンに指示する

    persist

    接続が解除されたあとでもう一度接続を開始するように、pppd デーモンに指示する

    noccp、nopcomp、novj、noaccomp

    CCP (Compression Control Protocol)、プロトコルフィールドの圧縮、Van Jacobson 圧縮、およびアドレスとコントロールフィールドの圧縮をそれぞれ無効にする。これらの圧縮形式を使用すると、ダイアルアップリンクでの伝送速度は速くなるが、専用回線での伝送速度は遅くなる可能性がある 

  4. demand という初期設定スクリプトを作成します。こうすると、起動プロセスの一部として PPP リンクが開始されます。


    # cat /etc/ppp/demand
    #!/bin/sh
    if [ -f /var/run/ppp-demand.pid ] &&
       /usr/bin/kill -s 0 `/bin/cat /var/run/ppp-demand.pid`
    then
            :
    else
            /usr/bin/pppd call farISP
    fi

    demand スクリプトには、専用回線リンクを確立するための pppd コマンドが含まれています。次の表では、$PPPDIR/demand の内容について説明しています。

    コーディング例 

    意味 

    if [ -f /var/run/ppp-demand.pid ] && /usr/bin/kill -s 0 `/bin/cat /var/run/ppp-demand.pid`

    これらの行は、pppd が動作しているかどうかを確認する。pppd が動作している場合は、起動する必要はない

    /usr/bin/pppd call farISP

    この行は、pppd を起動する。pppd は、/etc/ppp/options からオプションを読み取る。 call farISP オプションをコマンド行で指定すると、/etc/ppp/peers/farISP も読み取る

    Solaris PPP 4.0 の起動スクリプト /etc/rc2.d/S47pppd によって、demand スクリプトが、Solaris の起動プロセスの一部として呼び出されます。/etc/rc2.dS47pppd にある次の行は、$PPPDIR/demand というファイルが存在するかどうかを調べます。


        if [ -f $PPPDIR/demand ]; then
                    . $PPPDIR/demand
            fi
            

    $PPPDIR/demand が検出された場合は、それが実行されます。$PPPDIR/demand の一連の処理の実行中に、接続が確立されます。


    注 –

    ローカルネットワークの外部にあるマシンにアクセスするためには、ユーザーに、telnetftprsh、または 同様のコマンドを実行させます。


参照

この章のすべての手順を実行すると、専用回線接続の構成が完了します。関連情報の参照先は次のとおりです。